謄写版の学校へ

2013-01-24 21:18:08 | サラリーマン人生
 入社して最初の頃の仕事は図面のコピーや保管棚からの出し入れの仕事が多かったけれど、 図面のトレースの仕事も与えられるようになって来ました。 それは嬉しいかったのだけれど、 最初に製図したものを依頼された人に渡した時の顔は忘れられません。 だって「お前が担当したのか、 文字が下手で、美しくない図面だ、 こんなの受けとりたく無い!」 言葉では言われなかったけれど、 顔の表情が強烈にそう言ってましたからね。

 たしかに職場の先輩の描く図面の中の文字は読みやすく、美しい。 それに較べたら僕の稚拙な文字の並ぶ図面は醜かったとおもいます。

 そこで 「どうしたら先輩の様な文字が書ける様になれるだろうか?」と聞いてみました。 入社した年の夏に富士登山に僕を連れて行ってくれた先輩は「謄写版の学校に行って、文字の書き方を教わった」 と教えてくれました。

 そうです、当時は”ガリ版”と呼ばれる方法で印刷物を作るのが小規模な印刷物、例えば学校の先生が作る試験問題やお知らせなどを発行する時の主流であったのです。

 ガリ版印刷では薄い蝋引きされた半透明な用紙を細かい目をした平らなヤスリの上に置き、 「鉄筆(てっぴつ)」と呼ぶボールペンの先の様な先の丸まった先端が鉄の筆記具を使って蝋引きの版下用紙に文字を書くのです。 すると鉄筆が走った線に沿って細かな孔の連なりが出来るのです。 その版下は細かな目の布で作られた印刷器具に印刷用のインクの粘着力で貼り付けます。

 その版下を張り付けた印刷器具の下に印刷用紙を置き、 インクを載せたローラーを転がすと版下の細かな孔を通して用紙にインクが乗り、 印刷物が出来上がるって訳です。

 ところで、ロウ引きされた版下用紙には原稿用紙と同じ様な体裁で、もっと小さな四角い枠が印刷されていて、 その中にバランスよく活字のような文字を書き込む。 そんな能力を身につけさせてくれる学校が、当時はあったのです。 僕は会社が終わると先輩の教えてくれた御茶ノ水駅近くにあった謄写版の学校へ半年ほど通いました。

 その結果、 Top写真の様な文字を書く僕が出来あがりました。 ちなみに、この写真は所属した山岳会の会報をガリ版で発行した時の僕がガリ切りを担当したページの一部です。
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