仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

リターナー

2017年07月02日 | ムービー
『リターナー』(2002年/山崎貴監督)を見た。
物語は、「未来の地球は"ダグラ"と呼ばれる宇宙生物からの攻撃を受け、人類は絶滅寸前の状況だった。2084年、生き残ったわずかな人間はチベット高原の基地に隠れて生き延びていたが、ブラウン博士(ディーン・ハリントン)が発明した戦略時間兵器(タイムマシーン)を使い、ミリ(鈴木杏)が2002年の日本へとやって来た。目的は、地球に降り立った最初のダグラを抹殺するためだった。ミリが現れたのは、ミヤモト(金城武)が"人身売買の闇取引を妨害してブラックマネーを奪う"という裏世界の仕事をしている真っ最中だったことから、劉老板(高橋昌也)率いるチャイニーズマフィア"劉グループ"の溝口(岸谷五朗)らとの銃撃戦に巻き込まれてしまう。間違ってミリを撃ってしまったミヤモトは、彼女を自分の部屋へ連れて行き、休ませていたのだが、ミリが話す荒唐無稽な物語に、つきあいきれないとばかりに部屋から放り出してしまい・・・」という内容。
題名になっている"リターナー"とは、ミヤモトの闇稼業のことをさすらしいのだが、実は少しばかりのひねりも含まれているらしい。
へぇって感じだ。
(^。^)
溝口という人間は何とも残忍な男のようで、かつて、大陸(中国?)のマンホールチルドレンとして生活していた孤児のミヤモト(本郷奏多/少年時代)の仲間・シーファンを臓器売買のために連れ去り、殺害した張本人だった。
その男が"ダグラ"が乗ってきた宇宙船の超絶パワーを奪おうと画策するのだから、もしそれが成功すれば、未来の地球が宇宙人の攻撃を受けて人類壊滅寸前になってしまうという展開も充分納得できる仕立ての物語になっていた。
ただ、"ダグラ"のデザインや、「あれ!?この感じは何かの映画で見たことがあるな」という場面がいたるところに出てきて、その演出には「おいおい・・・」とも思ってしまう。
(^_^;)
日本に渡ってきた男に"ミヤモト"という名前を与えたのは、情報屋の謝(樹木希林)とのことだが、このばあちゃんが海千山千のつわもののようで、「人間は平気で嘘をつく生き物だよ。特にやましいことをした奴等はね」との台詞には、充分に納得させられる気がする。
表家業の店構えといい、絶妙な存在感が溢れる登場人物だった。
それに対して、少し残念だったのが国立宇宙開発研究所の第2研究所所属の科学者・八木(岡元夕起子)。
密かに劉グループと繋がっていて、機密情報を流出させる存在として描かれていたのだが、まだまだ悪人として活躍できる余地があるように思えた。
日本映画にしては珍しく、見ている側が恥ずかしくならない、まともなSFアクション作品だった。
(^_^)

僕と妻の1778の物語

2017年05月30日 | ムービー
『僕と妻の1778の物語』(2011年/星護監督)を見た。
物語は、「SF小説しか書かない作家・牧村朔太郎(サク/草彅剛)の妻・節子(竹内結子)は、彼の良き理解者だった。ある秋の休日、家事をこなしていた節子は突然の腹痛に苦しむ。大家の野々垣佳子(佐々木すみ江)はおめでたではないかと喜んだのだが、病院で虫垂炎と診断され、緊急手術を受けることになった。ところが、担当医・松下照夫(大杉漣)が執刀してみると、随分と進行した大腸ガンが見つかった。"病状の進行からみて、一年先のことを考えるのは難しい"と妻の余命を宣言されたサクは・・・」という内容。
医師からの説明があった翌朝、サクは節子に病気のことを話すのだが、「そうかぁ。あたし治るの?」と割とあっけらかんとした口調で聞く節子には、「5年後の生存率は0%」と言われたことは話せなかった。
まぁ、それはそうだよなぁ・・・。
(-_-;)
そして、自宅で闘病を続けることになる節子に対し自分は何ができるのだろうと考えたサクは、「自分は小説家なので小説を書くことしかできない」との結論に達し、「笑うことで免疫力が上がることがある」との松下医師の助言もあって、「妻一人のために毎日、原稿用紙3枚以上の笑える短編小説を書く」と決めた。
しかし、親友であり、妻・美奈(吉瀬美智子)を含め家族同士の付き合いをしている同じSF作家の滝沢蓮(谷原章介)は、「その小説が終わる時がどんな時か分かっているのか」と言う。
確かに、それを始める前から、つらい結末が倍以上の威力になってサクを襲うことは間違いないと分かっているのだから、「切りが良いところでやめるべきだ」という滝沢の言葉にも一理あるような気もした。
すでに第50話「ある夜の夢」は、サクの深層心理が表れたような内容であり、いつまで節子を笑わせるものが書けるか、実は自分自身が不安に思っていたのだろう。
これは、『僕の生きる道』(2003年/全11話)に始まる草彅剛主演による一連のテレビドラマの延長上にあるような映画作品で、大杉漣、谷原章介のほか、小日向文世(新聞の集金人役)、浅野和之(玩具店の店主役)など続けての共演者や、製作スタッフも多いようだ。
BGMの多用がなく静かな場面が多かったり、タイトルのデザインも『僕の生きる道』と同様のロゴだったり、随分と意識されているようだった。
冒頭、銀行で突然に火星人の話を始めたサクに、窓口係の節子が驚きもせず対応している場面も面白かったし、病院の食堂での執筆作業中、奇声をあげたり意味不明な動作をすることから、看護師や患者達から遠巻きに見られていたサクが、事情を理解した清掃係のおじいさん(高橋昌也)のおかげで皆に受け入れられるようになったりと、ほのぼのしたエピソードも多い内容ではあったのだが、やはり随分と切ない物語なのだった。

吸血鬼ゴケミドロ

2017年02月28日 | ムービー
『吸血鬼ゴケミドロ』(1968年/佐藤肇監督)を見た。
物語は、「飛行機内に時限爆弾が持ち込まれたとの警察情報により、羽田空港へ引き返すことになったJA307便は、外国大使を暗殺した殺し屋の寺岡博文(高英男)にハイジャックされてしまう。同時刻、日本領空に未確認飛行物体が侵入し、自衛隊機とアメリカ空軍機がスクランブル発進したのだが、JA307便はその未確認飛行物体とすれ違った際に計器がすべて使用不能となり、2基のエンジンのうち1基が破損。操縦不能の状況となって不時着する。機長は死亡したが、副操縦士・杉坂英(吉田輝雄)、スチュワーデス・朝倉かずみ(佐藤友美)、乗客では寺岡、次期総理大臣候補の政治家・真野剛造(北村英三)、兵器製造会社の重役・徳安(金子信雄)、その妻・法子(楠侑子)、精神科医・百武(加藤和夫)、宇宙生物学者・佐賀敏行(高橋昌也)、ベトナム戦争で夫と死別した未亡人・ニール(キャシー・ホーラン)、時限爆弾を持ち込んだ自殺志願者・松宮(山本紀彦)の10人だけが生き残り・・・」という内容。
羽田空港発伊丹空港行きのJA307便は、爆弾騒ぎで羽田に引き返すことになったものの、ハイジャック犯の指示により沖縄へと向かったのだが、途中、無線機が破壊され、未確認飛行物体のおかげで計器類もすべて使えなくなったことから、一体どこに不時着したのか誰も分からない。
ただ、「高い場所に登って周囲を見渡せばいいじゃないか」と思えるほどに、どう見ても機械的に採掘された跡が丸分かりの景色が見える。
スタッフはあまり良いロケ地を見つけることが出来なかったのだろうか。
(^_^;)
救助が来るまでこの場所を離れない方がいいと言う杉坂の判断は正当な判断なのだろうが、(設定や画像など)きちんと作り込まれていない作品というのは、どうにも陳腐に見えてしまって残念だ(主人公の杉坂が少しマヌケに見える)。
不時着後、謎の宇宙生物ゴケミドロに身体を乗っ取られてしまった寺岡が次々と生存者達を襲い出すのだが、生存者達の人間関係は酷くなる一方。
事件が起きる前は「それにしても嫌な世の中だ。国際紛争は拡大するし、テロが世界中に横行する。現代は狂っとる」などと言っていた政治家の真野が一番どうしようもない人間だったが、あり得ない状況を作った上で、その登場人物を使い、社会や人間を批判しているような演出もあり、ニールの英語の台詞などは、反戦思考の台詞だけが字幕で表示されていたくらいだ。
CGがない時代のずいぶん昔の特撮作品なことから、思わず笑ってしまうような場面もあったのだが、最新VFXを駆使してリメイクすれば、現代でも通用するそこそこ面白い作品になり得るのではないかと思った。