仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

僕と妻の1778の物語

2017年05月30日 | ムービー
『僕と妻の1778の物語』(2011年/星護監督)を見た。
物語は、「SF小説しか書かない作家・牧村朔太郎(サク/草彅剛)の妻・節子(竹内結子)は、彼の良き理解者だった。ある秋の休日、家事をこなしていた節子は突然の腹痛に苦しむ。大家の野々垣佳子(佐々木すみ江)はおめでたではないかと喜んだのだが、病院で虫垂炎と診断され、緊急手術を受けることになった。ところが、担当医・松下照夫(大杉漣)が執刀してみると、随分と進行した大腸ガンが見つかった。"病状の進行からみて、一年先のことを考えるのは難しい"と妻の余命を宣言されたサクは・・・」という内容。
医師からの説明があった翌朝、サクは節子に病気のことを話すのだが、「そうかぁ。あたし治るの?」と割とあっけらかんとした口調で聞く節子には、「5年後の生存率は0%」と言われたことは話せなかった。
まぁ、それはそうだよなぁ・・・。
(-_-;)
そして、自宅で闘病を続けることになる節子に対し自分は何ができるのだろうと考えたサクは、「自分は小説家なので小説を書くことしかできない」との結論に達し、「笑うことで免疫力が上がることがある」との松下医師の助言もあって、「妻一人のために毎日、原稿用紙3枚以上の笑える短編小説を書く」と決めた。
しかし、親友であり、妻・美奈(吉瀬美智子)を含め家族同士の付き合いをしている同じSF作家の滝沢蓮(谷原章介)は、「その小説が終わる時がどんな時か分かっているのか」と言う。
確かに、それを始める前から、つらい結末が倍以上の威力になってサクを襲うことは間違いないと分かっているのだから、「切りが良いところでやめるべきだ」という滝沢の言葉にも一理あるような気もした。
すでに第50話「ある夜の夢」は、サクの深層心理が表れたような内容であり、いつまで節子を笑わせるものが書けるか、実は自分自身が不安に思っていたのだろう。
これは、『僕の生きる道』(2003年/全11話)に始まる草彅剛主演による一連のテレビドラマの延長上にあるような映画作品で、大杉漣、谷原章介のほか、小日向文世(新聞の集金人役)、浅野和之(玩具店の店主役)など続けての共演者や、製作スタッフも多いようだ。
BGMの多用がなく静かな場面が多かったり、タイトルのデザインも『僕の生きる道』と同様のロゴだったり、随分と意識されているようだった。
冒頭、銀行で突然に火星人の話を始めたサクに、窓口係の節子が驚きもせず対応している場面も面白かったし、病院の食堂での執筆作業中、奇声をあげたり意味不明な動作をすることから、看護師や患者達から遠巻きに見られていたサクが、事情を理解した清掃係のおじいさん(高橋昌也)のおかげで皆に受け入れられるようになったりと、ほのぼのしたエピソードも多い内容ではあったのだが、やはり随分と切ない物語なのだった。