仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

BALLAD 名もなき恋のうた

2017年06月25日 | ムービー
『BALLAD 名もなき恋のうた』(2009年/山崎貴監督)を見た。
物語は、「内気で少し臆病な小学生・川上真一(武井証)は、湖のほとりで祈りをささげる着物姿の女性の夢を何度も見ていたが、大きなクヌギの木の下で古い手紙を見つけた時に、大昔へとタイムスリップしてしまう。行きついたのは戦国時代。天正2(1574)年の春日の国だった。何も理解できないまま声をかけた相手は、馬上の侍大将・井尻又兵衛(草彅剛)を草むらから狙っていた足軽だった。そのおかげで狙いが外れ、助かった又兵衛は、城主・康綱(中村敦夫)の元へ真一を連れていく。そこへ現れた廉姫(新垣結衣)こそが、真一の夢に何度も現れていた女性だった。廉姫の命により真一を預かることになった又兵衛は・・・」という内容。
これは、アニメ映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』(2002年/原恵一監督)を原案とし実写映画化された作品で、野原しんのすけ(矢島晶子/声)が川上真一、野原ひろし(藤原啓治/声)が川上暁(筒井道隆)、野原みさえ(ならはしみき/声)が川上美佐子(夏川結衣)という配役になっているのだが、戦国時代の登場人物は、基本的に両作品とも同一の氏名が使われているようである。
未来から来たという真一に将来のことを訪ねた城主・家綱は、自らが治める春日の国も、廉姫に婚姻を申し込んだ大倉井高虎(大沢たかお)が納める大国も未来の日本には存在しないと聞き、「空しいのう。戦に明け暮れ、国を守っておるが、いつかは滅びる定めか」とガッカリする。
しかし、それが転機となり、自国を守るための"政略結婚"から娘を守ろうとするのだから、真一は少なからず歴史に影響を与えてしまったわけだ。
(^_^;)
面白いのは、真一が未来から持ってきたクヌギの木の実を、未来のその木が生えている場所に埋めたこと。
玉子が先か、鶏が先かという類の訳の分からない展開だ。
(^。^)
物語は原案同様に少し切ない展開となっていたのだが、やはり面白い作品だった。

僕と妻の1778の物語

2017年05月30日 | ムービー
『僕と妻の1778の物語』(2011年/星護監督)を見た。
物語は、「SF小説しか書かない作家・牧村朔太郎(サク/草彅剛)の妻・節子(竹内結子)は、彼の良き理解者だった。ある秋の休日、家事をこなしていた節子は突然の腹痛に苦しむ。大家の野々垣佳子(佐々木すみ江)はおめでたではないかと喜んだのだが、病院で虫垂炎と診断され、緊急手術を受けることになった。ところが、担当医・松下照夫(大杉漣)が執刀してみると、随分と進行した大腸ガンが見つかった。"病状の進行からみて、一年先のことを考えるのは難しい"と妻の余命を宣言されたサクは・・・」という内容。
医師からの説明があった翌朝、サクは節子に病気のことを話すのだが、「そうかぁ。あたし治るの?」と割とあっけらかんとした口調で聞く節子には、「5年後の生存率は0%」と言われたことは話せなかった。
まぁ、それはそうだよなぁ・・・。
(-_-;)
そして、自宅で闘病を続けることになる節子に対し自分は何ができるのだろうと考えたサクは、「自分は小説家なので小説を書くことしかできない」との結論に達し、「笑うことで免疫力が上がることがある」との松下医師の助言もあって、「妻一人のために毎日、原稿用紙3枚以上の笑える短編小説を書く」と決めた。
しかし、親友であり、妻・美奈(吉瀬美智子)を含め家族同士の付き合いをしている同じSF作家の滝沢蓮(谷原章介)は、「その小説が終わる時がどんな時か分かっているのか」と言う。
確かに、それを始める前から、つらい結末が倍以上の威力になってサクを襲うことは間違いないと分かっているのだから、「切りが良いところでやめるべきだ」という滝沢の言葉にも一理あるような気もした。
すでに第50話「ある夜の夢」は、サクの深層心理が表れたような内容であり、いつまで節子を笑わせるものが書けるか、実は自分自身が不安に思っていたのだろう。
これは、『僕の生きる道』(2003年/全11話)に始まる草彅剛主演による一連のテレビドラマの延長上にあるような映画作品で、大杉漣、谷原章介のほか、小日向文世(新聞の集金人役)、浅野和之(玩具店の店主役)など続けての共演者や、製作スタッフも多いようだ。
BGMの多用がなく静かな場面が多かったり、タイトルのデザインも『僕の生きる道』と同様のロゴだったり、随分と意識されているようだった。
冒頭、銀行で突然に火星人の話を始めたサクに、窓口係の節子が驚きもせず対応している場面も面白かったし、病院の食堂での執筆作業中、奇声をあげたり意味不明な動作をすることから、看護師や患者達から遠巻きに見られていたサクが、事情を理解した清掃係のおじいさん(高橋昌也)のおかげで皆に受け入れられるようになったりと、ほのぼのしたエピソードも多い内容ではあったのだが、やはり随分と切ない物語なのだった。

私は貝になりたい

2017年04月13日 | ムービー
『私は貝になりたい』(2008年/福澤克雄監督)を見た。
物語は、「高知の小さな町で、清水理髪店を営む清水豊松(中居正広)と妻・房江(仲間由紀恵)は、かつて駆け落ち同然で新しい生活を始めた2人だった。太平洋戦争の戦局が激しさを増し、庶民の日常生活もいよいよ厳しくなってきた昭和19(1944)年、ついに豊松にも召集令状が届く。配属先は矢野中将(石坂浩二)率いる本土決戦を想定した部隊で、滝田二等兵(荒川良々)とともに立石上等兵(六平直政)に目をつけられた豊松は、撃墜されたB29から脱出したアメリカ兵の"処刑"に関与することになる。"一番たるんでいる奴にやらせろ!!"という上官の命令で立石上等兵は滝田二等兵と清水二等兵を指名したのだが・・・」という内容。
召集令状を配る竹内(武田鉄矢)という役場職員は、根本(西村雅彦)に「どうもあんたの顔を見ると赤紙を連想する・・・」(確かそのような台詞)と言われるのだが、こういう役目を担うことになった人にも相当な気苦労があったのだろう。
仁左衛門祖母に聞いたところによると、戦時中、仁左衛門伯父に赤紙が届いた時、近所に住んでいた役場の担当者は、「あとでお伺いしますが驚かないでください」と事前に電話をくれていたのだという。
そのおかげで覚悟する時間ができたと、感謝していた。
さて、上官から、捕虜としたアメリカ兵を銃刀で突き刺すという"処罰"を命令された豊松。
「捜索して適切な処置を」との指令本部・矢野中将の命令は、現場の日高大尉(片岡愛之助)の「2名を処罰する」との判断になり、「第3班より2名を選抜しろ」との命令で選ばれてしまった豊松らは、「立派な帝国軍人になったところをお見せしろ!!」、「突撃!!進め!!」と、息も絶え絶えのアメリカ兵に突撃する。
戦後、この"大北山事件"に関与した旧帝国軍人を裁く進駐軍のBC級戦犯の裁判で、豊松らが、「上官の命令は天皇陛下の命令である!!」と常々教え込まれていたと主張しても、アメリカ人は爆笑するだけで取り上げてくれない。
まぁ、リーダーである大統領が選挙で選ばれる"民主主義"を標榜するアメリカ人にとっては、絶対君主である天皇を頂点とした日本の組織の考え方は、理解の範囲を超えたものであったのだろう。
後半、巣鴨プリズンに収容されていた大西三郎(草彅剛)や西沢卓次(笑福亭鶴瓶)、矢野といった死刑囚の姿も描かれていたのだが、サンフランシスコ講和条約の発効が昭和27(1952)年4月28日よりも早ければ、処刑されなくても済む人達だったのだろう。
この物語は、あくまでもフィクション。
ちょっと救いのない物語だった。