仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

悪の紋章

2017年07月06日 | ムービー
『悪の紋章』(1964年/堀川弘通監督)を見た。
物語は、「大田区内を流れる多摩川で若い女性の絞殺死体が発見され、城南署に捜査本部が設けられたものの、わずか40日で捜査本部は解散し、あっという間に迷宮入り事件となった。その後も捜査を続けていた警部補の菊地正明(山崎努)は、容疑者とにらんだ日進商事社長・柴田(戸浦六宏)の身柄確保に近づいたと思ったある日、暴力団員・花井和夫(清村耕次)の覚せい剤運搬に関わり賄賂を受け取った容疑をかけられて、逮捕、起訴され、裁判の結果、2年間服役することになる。人生を棒に振った菊地は、自分を罠にかけた人間を見つけ出し、復讐をしようと、2年前の事件を再び調べ始めるのだが・・・」という内容。
出所した菊地は、警察官時代の先輩・松野誠太郎(大坂志郎)のおかげで、"稲村清一"と名前を変え、大正7年創業だという"塚本興信所"に調査員として勤務することになる。
「何もかも承知してくれた塚本所長(志村喬)の取り計らいなので、昔のいざこざは忘れて頑張ってほしい」と言われるものの、彼の頭には"復讐"の文字しかないのだから、忘れろというのは無理な話だ。
稲村の最初の仕事は、高沢光江(岸田今日子)という女性の素行調査だったが、彼女は、先代が死亡し、跡を継いだ高沢コンツェルンの2代目会長・高沢重治(佐田啓二)の妻であり、政界の長老・海老原寛(柳永二郎)の一人娘なのだが、稲村はその調査の過程で、尾行に気づかれながらも、柴田と高沢のつながりを知る。
また、電車内で偶然見かけたスリの獲物(定期入れ)を追いかけた通路で奪い取り、ポケットに入れた数日後、その被害者らしき女性・浅井節子(新珠三千代)の自殺未遂事件を知るのだが、これらの人間達が複雑に絡み合う人間模様が面白い。
節子「暗い川ね」
稲村「そう。人生みたいにね」
この会話が、偶然に知り合ってしまった2人の人生を言い表しているようだった。
これは、『朝日新聞』で1962(昭和37)年に連載された同名小説(橋本忍/作)の小説が原作で、この映画化のあと、1965(昭和40)年と1979(昭和54)年にはテレビドラマ化されているらしい。
なかなかに面白い物語だった。

ウール100%

2008年05月27日 | ムービー
『ウール100%』(2005年/富永まい監督)を見た。
物語は、「敷地にゴミを山のように積んでいる"ひろいもの屋敷"の住民・梅さん(岸田今日子)と亀さん(吉行和子)は、街中からゴミを拾って来ては磨き上げて綺麗にし、すべてを台帳に記録するのが日課だ。そして、飾られているゴミ達はいつしか"モノノケ"となり、2人を守っていた。しかし、ある日拾った"赤い毛糸の玉"の端を手繰って現れたモノノケの"アミナオシ"が2人の台帳に載っているゴミを次々に破壊していき・・・」という内容。
事前情報がマッタク無いままに見始めたので、途中さっぱり訳が解らなかったのだが、徐々に不思議な話であると共に少し哀しい話であることが解ってきた。
その存在自体が"モノノケ"になりかかっているかもしれない婆さん達だが、この婆さん達にとっての幸せは何だったのだろう。
"モノノケ"に憑りつかれて昔の記憶を失っていたとしても、小さな子供達から同情されていたとしても、彼女達はそこそこ楽しく暮らしていたのではないだろうか。
"アミナオシ"が他の"モノノケ"を退治していく毎に昔の記憶が戻っていく婆さん達。
若かりし頃の記憶を取り戻して、人生をやり直せるとでもいうのか。
それが幸せか?
また、この物語に登場する人物は少なく、それぞれの台詞が少ない。
台詞が少なければ少ないほど役作りが難しいのではないかと思うが、梅さんも亀さんも台詞が極端に少ない割には、見ている側に物語の不自然さを覚えさせない。
その辺りが、共に"さすが大女優"と言われる所以なのだろう。
(^_^)