ぶらぶら★アフリック

アフリカ・プロモーター、ンボテ★飯村がお送りする100%アフリカ仏族ぶらぶらトーク!

祝・コンゴ共和国独立記念日!~二つのコンゴ

2013-08-15 07:30:53 | アフリカ情勢
今日は日本では終戦記念日に当たる。そういえば広島の原子爆弾には、コンゴ・カタンガ州のウランが使用された(→カタンガ州についてはこちらの記事、前編後編ビール編をご参照のほど!)。アフリカと日本の戦争における接点の一つだ。アフリカではこのことがしばしば報じられていた。


さて、アフリカでは独立記念日がまだまだ続く。きょうは信愛なるコンゴ共和国。ンボテが住み、愛したコンゴ民主共和国の向かいに位置する。


こちらがコンゴ民主共和国、キンシャサ、旧ベルギー領。あちらがコンゴ共和国、ブラザビル、旧仏領。コンゴ川を隔ててほんの数百メートル。首都間の距離が世界でもっとも短かいとされる。しかしこの川が二つの国の運命を決定的に分けることになった。

(キンシャサよりブラザビルを臨む。)



キンシャサ、人口公称800万人。サブサハラ最大級の都市。高い人口圧のもと、緊張と混沌の中で人々が暮らしている。

一方のブラザビル。国全体を足しあげても人口は300万人しかいない。土地と空が広く、流しで拾えるタクシーが走る。ブラザビロワ、人々も穏やかだ。おっと、ここで揉め事が、、、というシーンに出くわすと、「あ、あいつらはキノワだ」(→「キノワ」「ブラザビロワ」についてはこちらをご参照)。


ンボテの半生をまとめていただいた記事「トポ・ナ・コンゴ」の冒頭、コンゴ人ミュージシャン「スタッフ・ベンダ・ビリリ」の歌を引用して、両国の近くて遠い関係を紹介した。

ひとたび連絡船に乗れば15分。あっという間の旅である。しかし、キンシャサの港、ンゴビラビーチの手続きはたっぷり1~2時間。またアウェー感この上ない。もちろん官憲による嫌がらせと金品要求付きだった。今もそのままであろうか?

対するブラザビル側も決して対応が良くない。時間がかかるし、第一、窓口というものがない。これはキンシャサ側も同じだが、制服すらきていないおっちゃんがパスポートを持って、どこかに手続きにいっていまう。パスポートが帰ってこなかったことはないが、しばしきもちがわるい。かくして、両国には距離以上の往来の障害がある。

(ブラザビル側からキンシャサを望む。喧騒が迫ってくる。)



かつてキンシャサがいまだ落ち着きを見せなかった頃、三ヶ月に一度のペースで銃撃戦があった。その流れ弾が川を越えてブラザビルに着弾するといえば、距離感の想像がつくだろう。このことについてのくだらないエピソードはこちらで書いている。

当時、キンシャサとブラザビルのフランス大使館は川を隔てて向かい合って位置していた。というのも、キンシャサで何かあった時、川を渡って対岸のフランス大使館にに逃げるという退避オプションが取れるようになっていたのだ。なんせフランス大使は90年代のキンシャサ大暴動ののち、この地で命を落としている。

2006年のフランス革命記念日、14 juillet。仏大使公邸レセプションの際、お祝いとして、向かいのブラザビルにあるフランス大使館が花火をあげた。それを聞いた招待客は銃撃戦だと勘違いして、机の下に一斉に隠れようとする一幕があった。


この近い距離では、アフリカの政権がよくやる情報統制も効かない。例えばフランス国際放送ラジオがキンシャサ政権に都合の悪いことを報じ、当局が電波(105.0MHz)を閉ざしても、ブラザビルの電波(93.2MHz)で電波が拾えてしまう。このことはこちらの記事でもご紹介した。


近くて「遠い」のはそれだけではない。例えば携帯電話。キンシャサでは南ア系のVodacomが主流であった。対するブラザビルは、旧仏領。オランジュやセルテルが普及している。つまり近い距離にもかかわらず、ローミングでの通話となる。つながりにくい上に、非常に高くなる。逆に河畔では、ところによりブラザビルでもキンシャサの電波を拾えることがある。


ここまで書くとキンシャサがひどくて、ブラザビルが天国に聞こえるかもしれないが、どちらも仕事をするのに骨が折れる国だ。例えば、商業活動のやりやすさ、ビジネス環境を示す指標である'Doing business'。世界銀行が毎年ランキングを発表しているが、2013年度版では、全185カ国中、キンシャサは181位、ブラザビルはそれ以下の183位である。そろってキビシイ評価となっている。


二つの都市、異兄弟。そもそも同じ言葉を話し、同じものを食べていた人々が暮らす地であった。ベンダ・ビリリが歌うとおり、歴史の中で「忌々しい川」が二つの国を隔て、違う個性の街が今日隣り合っている。

(おわり)


◆独立記念日・ナショナルデーシリーズ
アフリカの独立記念日~いろいろな事情
中央アフリカ共和国
チャド
コートジボワール
前編
中編
後編
ニジェール
前編
後編
ベナン
フランス
'Le 14 juillet'にみるアフリカとフランス
14 juilletにみるサヘル情勢(前編)
14 juilletにみるサヘル情勢(後編)
コンゴ民主共和国
第一話
第二話
第三話
トーゴ
カメルーン


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