モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

妻女山と茶臼山。アカボシゴマダラ、オオアオイトトンボ、アオイトトンボ、オツネントンボ、モノサシトンボ、ナミルリモンハナバチ、ルリチュウレンジ(妻女山里山通信)

2022-08-01 | アウトドア・ネイチャーフォト
 週末は、前週と同じく土曜日に妻女山へ。日曜日に茶臼山へ。両日とも最高気温が35度と、非常に厳しい撮影環境になりました。山上は、4〜5度低いのですが、森の中は湿度が100%近く。クロメマトイ、ヤブ蚊やアブも取り付きます。集中して撮影するには非常に厳しい環境ですが、絶滅危惧種に指定されているところもある、幸せの青い蜂・ブルービーに出会うという奇跡。素晴らしい発見もありました。

 妻女山へは前回と同じく歩きで登ると、長坂峠のクヌギの樹液バーでとんでもないものを発見してしまいました。特定外来生物のアカボシゴマダラ。国立環境研究所のサイトによると、「“放蝶ゲリラ”による人為的な放蝶によると考えられている。」とあります。タテハチョウ科は、植物防疫法で検疫有害動物に指定されています。ゴマダラチョウやオオムラサキと競合するので、それらの減少を招く危険性があります。90年代に誰かが中国から持ち込んだと考えられますが、生態系を破壊する犯罪行為です。左はコガタスズメバチ。

 ハルジオンで吸蜜するのは、もしかしてニホンミツバチでしょうか。複眼が面白く写っています。茶臼山の山村では、ニホンミツバチを飼っている方を知っていますが、妻女山山系では、千曲市のネオニコチノイド系農薬の空中散布で絶滅したと思っていました。復活したのなら非常に嬉しいのですが。

 ウワミズザクラ(上溝桜)のサクランボ。黄色から熟すと朱色、赤紫。黒と変化します。ほろ苦甘く、果実酒ができますが、樹も高く実が小さいのでたくさん集めるのが大変です。

 翌日の茶臼山での撮影です。第10腹節だけが白いので、オオアオイトトンボでしょうか。イトトンボの仲間はけっこう見分けが難しいのです。アオイトトンボより少し大型です。水面におおいかぶさった木の樹皮に産卵する習性があるため、茶臼山では溜池の周辺で見られます。

 第9,10腹節が白く胸側も白いので、アオイトトンボでしょう。アオイトトンボ科アオイトトンボ属。

 これは難しい。アオイトトンボ科オツネントンボ属に属するイトトンボの一種、オツネントンボ。産卵期以外は水辺ではなく森にいるそうです。そのためなかなか目にすることがないトンボだとか。成虫のまま越冬する数少ないトンボ。そのため「越年(おつねん)トンボ」と呼ばれます。

 モノサシトンボ。モノサシトンボ科モノサシトンボ属。文房具の物差しの様にメモリが入っているトンボ。細くて黒い部分が多いので目立たなく、見つけにくいイトトンボです。

 ノアザミ(野薊)に青いハナバチが。ナミルリモンハナバチ(波瑠璃紋花蜂)ミツバチ科ルリモンハナバチ属。以前下にある茶臼山自然植物園で見かけたのですが、すぐに飛び去ってしまい撮影できませんでした。「幸せを呼ぶ青い蜂」といわれ、ブルービー(Blue Bee)」の愛称を持ち、非常に希少な種で絶滅危惧種に指定されているところもあります。

 特徴の一つに「労働寄生」があります。 他の花蜂の巣に侵入して卵を産み付け、幼虫は宿主が保存する餌を横取りして成長するもので、労働寄生の対象となる花蜂は、コシブトハナバチ類やケブカハナバチ類と言われていますが詳細は不明です。

 とにかく吸蜜の時間が短く頻繁に位置を変えるので撮影が大変でした。

 たった数十秒の非常に短い邂逅でしたが、やっと出会えて撮影できて、非常にラッキーでした。画像検索してもほとんど出てこないので本当に貴重な出会いでした。

 近くにナミルリモンハナバチより小さなラピスラズリの様に輝く昆虫がいました。ルリチュウレンジ(瑠璃鐫花娘子)というハバチ(葉蜂)です。これも初めて撮影しました。瑠璃色をした雌の成虫が花の茎を彫って卵を産み付けることからの命名とか。幼虫の食草はツツジ類。撮影中に腕にヤブ蚊が止まるのです。でも撮影のために我慢します。ヤブ蚊に献血です。

 サキグロムシヒキのメス。捕らえたのは小さな蛾。体液を吸います。時には自分より大きな昆虫も捕まえます。

 ノアザミの花を巡って小さなハナアブ二匹が場所取りの戦いをしていました。結局左の個体が右のを排除しました。左は不明ですが、右はヒラタアブの仲間だと思います。

 胸の横の模様と腹部の色から、未成熟のアキアカネだと思います。秋には里山だけでなく里でも群舞が見られます。

 撮影は、20分ごとに車に戻ってエアコンを入れルイボスティーを飲んで小休止の繰り返し。2時間ほどで信里小の上の駐車場に戻りました。そこから南の風景。千曲市や坂城町、上田市の塩田平方面です。

 今回もチチタケ(チタケ)を採りました。この後にもう1本。前回同様にナスと炒めて汁に。前回は鰹と昆布出汁でしたが、今回はアゴ出汁とダシ粉で。こちらの方がチチタケに合ってますね。冷やして素麺でいただきました。やや薄味にしたので、汁まで飲み干す旨さでした。汁がもう一回分あったので翌日は冷たい蕎麦に冷たい汁をぶっかけて。馬鹿旨。チチタケは本当に美味しい出汁が出ます。

 世界三大猛毒キノコのひとつドクツルタケ。小さめですが、2,3人分の致死量の毒があります。最近話題の触っても駄目なカエンタケと違い触るのは問題ありません。触ったら手を洗って。

 下って茶臼山自然植物園へ。展望台下の斜面の花もほとんど終わりました。よって昆虫もあまりいません。かわりにコウロギやキリギリスが鳴き出しましたが、草むらの中で見えません。セミは鳴いていますが、ヒグラシとツクツクボウシぐらいで数も少なめ。アブラゼミやミンミンゼミの鳴き声は聞こえません。今年はカッコウやホトトギスも鳴かなかったし、ツバメの飛来もほとんど見られません。

 探すとコミスジが葉の上で休憩中。そうっと撮影しました。暑すぎて昆虫もいないので温泉へ向かいます。オオムラサキやスミナガシはどこかでお休み中。

 茶臼山動物園の出口付近から妻女山方面の眺め。妻女山や象山から鏡台山までの峰を戸神山脈といいます。その大嵐山の右を森の平といい、川中島の戦いの時に、向こう側の西条から武田別働隊が越えたという言い伝えがあります。一旦、倉科に下りて兵馬(ひょんば)で隊を整え、天城山の向こうの二本松峠から陣場平、斎場山、妻女山(当時は赤坂山)へ攻め込んだということです。上杉軍は既に山を降りて雨宮の渡しへ。すでにもぬけの殻でしたが霧が晴れて、お互い本当は望まない大合戦になりました。菅平高原の大松山山頂付近からはこちら側がよく見えます。同定している山は、すべて拙書で紹介しています。眼下は篠ノ井の市街地。15分に1回は水分を補給しないと脱水症状になります。塩分やミネラルの補給も必要です。味噌きゅうりがおすすめ。 

『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
 インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。シニア大学や自治体などで好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。大学や市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする