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中国人が共産党に入党する動機

2010-11-12 | 日記
陳惠運・野村旗守 『中国は崩壊しない』 ( p.46 )

 政府関連機関が入党希望者にアンケートを試みたところ、志願理由の第一位は「自分の将来の発展につながると思うから」だった。
 ここで言う「自分の将来」というのは漠然とした観念上の問題ではなく、きわめて具体的で即物的な問題である。たとえば、中国の政府機関などでは新たに職員を募集するとき、党の学生幹部、あるいは学生党員から優先して採用する。党員学生は一定の組織経験と管理能力があると見做されるからだ。大学卒業生の三分の一に職がなく、「卒業=失業」とまで言われる昨今の中国の就職事情を考えればこの魅力は途方もなく大きい。
 著者の一人陳惠運は上海の出身だが、その親戚の子が数年前、大学を卒業して上海市政府関連機関の採用試験を受けた。受験者はいずれも大学卒業予定者で、なかには中国有数の名門大学の学生も含まれていた。ところが、採用されたのは彼一人だけだった。後ほど人事担当者が伝えたところによると、「君だけが党員だったので選んだ。党の期待を裏切らないよう頑張ってくれ」とのことだった。
 ようは、学生時代に入党して党の学生幹部になれば卒業時の評価が高くなり、就職の際に有利に働くのだ。この傾向は年ごとに強くなっている。
 また、共産党員であることはそのまま本人の政治的資本となり、中央・地方政府機関はもちろん、国営の大企業においても有力な出世の道具になる。中国の役人世界において、地位はすなわち名誉であり、権力であり、非常にしばしば莫大な富をもたらす。その権益の大きさは、日本の官僚機構など物の比ではない。
 たとえば〇六年、共産党は北京大学のエリート党員を八八人選抜し、卒業と同時に北京郊外の農村に派遣して村長や村の党書記の助手などの要職に就かせた。地方での賄賂・買収・恐喝などの不正行為が眼を覆うばかりとなったため、彼ら幹部候補生にこの実態を把握させ、監視させるのが目的だった。
 大学を出たばかりの彼ら中央幹部予備軍の給料は村からではなく国から支給されるので、その額は村長の三倍から五倍にものぼる。数年の経験を経てやがて彼らが村長や村の党書記になれば、村が管轄する土地を民間に払い下げたり、工場を誘致したりといったことさえ可能な、巨大な権限を付与されることになる。そして将来は北京に召還され、党の中央幹部となる。共産党は、今後の五年間に同様の方式で一〇万人の若手党員を各地の農村に派遣する予定という。
 また中国の場合、鉄道・道路・エネルギー・鉄鋼・通信・金融など、万単位の社員を抱える基幹産業はほとんどが国営企業だが、これらの企業のトップは「太子党」と呼ばれる共産党高級幹部の二世・三世たちが九〇%以上を占める。
 今も昔も中国でものを言うのはコネである。血縁・地縁といった有力なコネが、本人の能力以上に大きな威力を発揮する。それが中国という社会である。そして彼ら太子党の権益は、さらにその子孫や親族・縁者たちによって受け継がれてゆくので、コネのない者がつけ入る余地はほとんどない。これら太子党の息のかかったわずか一六〇社ばかりの大企業が中国のGDPの六割を支配すると言えば、この利権がどれだけ巨大なものかがわかるだろう。そしてこの巨大利権を裏担保する保証人こそが、中国共産党という唯一絶対の権力機構なのだ。
 もし太子党企業と利害が衝突し、これに対抗しようと思う者がいたなら、彼らに勝る方法は一つしかない。太子党の権力基盤となっている党の長老幹部たちより強い発言力を持つ現役の党中央高級幹部に巨額の賄賂を払うなどして取り入り、太子党企業の力を封じることだ。その可能性はほとんどないが、これが唯一の方法である。そしてこの場合にも肝要なのは、共産党の権力なのだ。中国共産党の中枢に入って権力を握れば、欲しいものはすべて手に入る。
 個人で商売をはじめるにしても、有力なコネのない者は中国では成功しない。その中国社会でもっとも有力なコネといえば、共産党の人脈をおいて他にない。たとえ組織に属さないベンチャー企業の社長であっても、共産党員であることはそのままビジネスチャンスに結びつく。それに、ただの金持ちであれば窮地に陥っても誰も助けてくれないが、党員として一定の地位を占めれば救済の望みがある。
 中国には二種類の法律がある。一般国民が従う法律と、上級党員が従う法律 (党規) とである。そして党規は国内法に優先する。党員が何か重大犯罪を犯した場合でも、党内の処分が決定しない限り司法は罪を問えない。たとえば〇七年、元上海市長で上海市党委員会書記だった陳良宇は高速道路建設に絡んで縁故企業に三五億元 (約五二五億円) の情実融資をはかる等さまざまな事件で摘発されたが、党内の審議が長引き二年以上ものあいだ裁判をおこなうことができなかった。陳の汚職によって上海市政府がこうむった被害は数十億元に達する。通常ならば中国では極刑にも値する重大犯罪だが、結局懲役一八年の判決が下されただけだった。懲役とはいっても彼が送られたのは北京郊外にある党高級幹部専用の刑務所 (秦城監獄) であり、所内ではテレビや新聞も自由に閲覧できる。そこでは差し入れの制限もなく、食事の不自由もない。ようは外出の自由のないホテルのような場所である。
 このように、共産党の高級幹部は法律からも守られる。だから誰も彼もが共産党のラインにつながろうと懸命になるのだ。
 以上が、現代中国で大学生の多くが共産党に入党志願する理由である。


 中国では、多くの大学生が共産党に入党を志願している。その理由は、(共産党の思想・政策に共鳴しているからではなく) 出世や利権獲得に有利だからである、と書かれています。



 中国人は自分の将来 (…の出世や利権獲得) のために、共産党に入党しようとしている。そこでは共産党の思想・政策は問題とされていない、というのですが、

 ここには、中国人の「たくましさ」、ものの「考えかた」が現れていると思います。

 この「考えかた」は、「中国人は民主化を望んでいない?」で引用している中国人の「考えかた」と、結びついていると考えられます。つまり、

   中国人にとって、「独裁・専制政治は当たり前」であり、
   中国人は (社会全体の利益のために) 民主化を図ろうとするのではなく、
        (自分が) 独裁体制の一角に食い込み、特権を享受しようとする

という図式です。

 中国において、民主化運動を行った場合に得られる結果、すなわち逮捕・懲役などと、自分が独裁体制の一角に食い込んだ場合に得られる結果、すなわち出世・利権・特権の獲得などを比べれば、後者を目指すというのも、わからなくはありません。どちらが「正しい」かはともかく、すくなくとも後者の生きかたが「賢い」という考えかたは、あり得ると思います。



 ところで、上記図式には、「社会全体のために」何かをする、あるいは「正しいことをする」、という思考ではなく、「自分個人の」「得になる行動」は何か、という思考が現れているといえます。

 これが (圧倒的大多数の) 中国人のものの考えかただとすれば、中国人と意見が対立した場合には、「社会全体の利益」や「正しさ」の観点で話をしようとしても徒労に終わる (ムダである) 可能性が高いと思います。「あなた個人にとって得ですよ」と、「損得」の観点で話さなければ、埒が明かない (らちがあかない) と思われます。



 この意味で、中国人は「政治的」であり「打算的」だといえるのかもしれません。
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2 コメント

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私的利害・打算で動くのは中国人だけではない (井上信三)
2010-11-13 12:50:35
>この意味で、中国人は「政治的」であり「打算的」だ

 この事は中国人のみではないでしょう。世界中で、私的利害・打算を優先しない人はごく少数の人を除き、殆どの人の言動の基は打算的であります。

 たとえば、日本で言えば、敗戦後しばらくは左翼勢力が強く、かなりの数の政治屋が左翼政党の党員になった事がありました。今は忘れて殆ど覚えていませんが、たとえば、野中広務、鈴木善幸などは社会党員だったし、極端な例では左派社会党の戦闘的な活動家であった「林大幹」は、千葉県選挙区から代議士当選の翌日だかに左派社会党を脱党して自民党に入党した事がありました。次の選挙では当然落選するかと考えられましたが、引退まで連続当選、国務大臣を歴任して無事引退し、今は息子が世襲して自民党の要職を占めているはずです。

 バスに乗り遅れるな、は確か近衛内閣時代に言われた言葉ですが、最近の政権交代前後の様子を見ても、退潮が予想される自民党を見限って、上り坂の民主党に乗り換える個人や団体が引きもきらずにいると言うことは、日本人も中国人に負けず劣らず「政治的」であり「打算的」であることは間違いないでしょう。
Unknown (memo26)
2010-11-13 14:58:52
 おっしゃるとおりです。しかし私が言いたいのは、どの国にもその種の人間はいるが、たとえば日本に、欲得づくで民主党員になる (一般) 国民が多いか、欲得づくで自民党員になった (一般) 国民が多いか、ということです。その意味で、これは中国(人)に特く強くみられる傾向ではないか、と言っているのです。

 しかし、得られる利益(利権)との相関関係も考えられます。中国人が極度に政治的・打算的なのではなく、中国においては得られる利益が極端に大きいので、中国人にはこの種の傾向が特に強くみられるのではないか、とも考えられます。

 しかしどちらであっても、中国においては、政治的・打算的な傾向が「相対的に」強くみられる、といえるのではないでしょうか?

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