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タイ 取り戻したい“失われた文化財”

2017-10-20 06:00:00 | 報道/ニュース

9月30日 おはよう日本


タイ東北部にあるパノム・ルン遺跡。
一帯を支配していたクメール王朝が10~12世紀にかけて築いた寺院である。
彫刻が途切れて新しい石に置き換えられている場所が目立つ。
ここにはヒンドゥー教の物語に登場する王妃の彫刻があった。
何者かに盗まれ
いまは別の石がはめ込まれている。
こうした個所はこの遺跡だけで30以上あるという。
遺跡での盗難の実態について調査しているタノンサック・ハンウォンさん(58)。
(タノンサックさん)
「この門では表と裏の装飾がなくなっている。」
大学で歴史学を教える傍ら
6年前から盗まれた彫刻の行方を探してきた。
調査を進める中わかってきたのは
地元の村人たちが彫刻を持ち出していたということだった。
持ちかけたのは村の外からやって来た見ず知らずの人たちだったと言う。
報酬として提示されたのは月収の10倍にもなる額だった。
(村人)
「外から来た人たちが
 手伝えば4,000バーツくれると言った。
 私にとっては大金だった。」
彫刻などが多く持ち出されたのは1960年代。
(村の長老)
「当時ここは完全に放置されてジャングルのような状態だった。」
当時
遺跡は荒れ放題で村人は価値があるものとは考えもしなかったという。
(村の長老)
「当時は国中どこも貧しくて
 売れる物があれば何でも売っていた。
 価値があるなんて思いもしなかった。」
彫刻はどこへ消えたのか。
タノンサックさんは外国に持ち出された可能性があるとみて
世界各地の博物館などの貯蔵品を1つ1つ調べた。
当時
欧米を中心にアジアの文化財が高値で取引される実態があったからである。
調査を始めて4年。
タノンサックさんは盗まれた彫刻がサンフランシスコの博物館にあることを突き止めた。
(タノンサックさん)
「これだ!と言葉にならないほど驚いた。
 見つけてうれしかった。
 この彫刻は8,000万バーツ(2億7,000万円)かそれ以上で取引されている。」
さらに世界中の美術書や美術館のホームページを詳しく調べた結果
少なくとも133点の文化財がアメリカにわたっていたことも判明した。
タノンサックさんの調査を受けたタイ政府は
今年6月
文化財の返還を求めるための委員会を設置。
貴重な文化財の返還を求める動きがようやく始まった。
10月からはアメリカ政府と交渉を始めることも決まった。
まずは密売されたと証明できた2つの文化財について返還を求めていくことにしている。
(タノンサックさん)
「保存されているだけでは文化財は意味を持ちません。
 本来あるべき場所に戻って 初めて大きな価値と知恵を生む。」
タノンサックさんは多くの地元の人に文化財の本当の価値を知ってもらい
返還への機運を高めていく必要があると考えている。
(観光客)
「国の宝として守っていくべきだと思いました。」
「実物を自分の目で見てみたい。」
(タノンサックさん)
「人々に考えてもらい
 遺跡の重要性を認識してもらうことだ。
 なにが失われたのか理解してもらう努力をこれからも続けていきます。」

こうした文化財の返還をめぐる動きは
数多くの遺跡があるエジプトやカンボジアなどで活発になっていて
いま国際的にも機運が高まっている。
タイも文化財の取引を禁ずる国際条約に批准する準備をすすめるなど
文化財の返還を呼びかける取り組みを広げていくということである。

 

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