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香港 消えゆく暮らしをミニチュアで再現

2017-10-11 06:15:00 | 報道/ニュース

9月16日 おはよう日本


イギリスの植民地時代に東洋と西洋の文化が混ざり合い
独特の文化が育まれてきた香港。
中国に返還されてから今年で20年。
中国本土から巨額の投資マネーが流れ込み
暮らしは様変わりした。

高層ビルが立ち並ぶ香港中心部。
香港のショッピングモールで開かれているミニチュアの展示会。
人々が見入っているのは中国に返還される前の香港の暮らしを再現したミニチュアである。
ダイヤル式の黒電話。
ブラウン管テレビは実際に映像も映る。
雑誌の表紙も丁寧に描かれ
細部まで作り込まれている。
時代は1980年代。
円卓のすぐ奥に2段ベッドがあったり
狭い台所に洗濯物が干されていたり
貧しくとも家族のだんらんがあったころの庶民の生活である。
土地が狭い香港では小さな住宅に大家族で暮らしてきた経験を持つ人が多くいる。
この様子を子どもたちに見せたいと
展示会には家族で訪れる人が多く当時を懐かしんでいた。
「昔に戻ったような感覚です。
 10人兄弟だったので2段ベッドで寝ていたのは父と母だけ。
 私たちは床で寝ていました。」
「この時代を経験していない人たちでも当時の生活を見ることができるので
 とてもいいですね。」
展示会を開いたミニチュア作家の黎さん(50)。
香港が中国に返還され変わりゆくなかで
失われつつある風景と暮らしを残そうと作品を作り続けている。
(黎さん)
「この香港の理髪店は8年前から作り始めました。」
かつて香港のいたる所にあった理髪店を表現した作品である。
使い込まれた古い椅子に
壁掛け時計や
排水管のさびなど
全て12分の1のサイズで精巧に再現。
こうした理髪店では地元の顔なじみが集い世間話に花を咲かせていたと黎さんは言う。
黎さんはもともとは建設会社で建物の模型を作っていた。
昔の記憶や写真などを頼りに
3か月ほどかけて1つの作品を完成させる。
黎さんがミニチュアを通してよみがえららせたいのは自らの青春時代の香港である。
(黎さん)
「昔は近所の人たちと助け合っていましたが
 今は隣の人の名前すら知りません。
 だから昔見たり触れたりしたことを今の時代に再現したい。」
20年前にイギリスから中国に返還された香港。
中国本土から巨額の投資マネーが流れ込み高層ビルが次々に建設された。
一方で古い建物は姿を消していった。
「唐楼(とうろう)」と呼ばれる形式のアパート。
その多くは2階から上が住居で1階が商店となっていて
濃厚な人間関係が築かれていた。
こうした風景も今は少なくなった。
黎さんは100年以上前に建てられたある唐楼に強い思いを抱いている。
若いころ近くで働いていたため
時代とともに変わりゆく様子を見続けてきたからである。
(黎さん)
「昔と比べてすっかり変わりました。
 中にあった質屋や住宅もレストランになってしまいました。」
記憶をたぐりよせ黎さんの心の中にあった唐楼のミニチュアが完成した。
暮らしてた人たちの様子も再現しその息づかいを伝えようとしている。
(黎さん)
「香港は変化のスピードが速く
 私たちはそれに適応しなければなりません。
 ミニチュアをつくり
 なくなってしまった暮らしを次の世代に残していきたい。」
より多くの人に昔の香港を知ってもらいたい。
黎さんはミニチュアの作り方を教える教室を開いている。
希望者は年々増加し生徒は100人を超えた。
(生徒)
「香港の多くの場所はすでになくなってしまいました。
 ミニチュアをつくって思い出を残したいです。」
(黎さん)
「香港は私たちが生まれ育った場所です。
 世界中の人々に香港の昔の様子や香港人の生活を知ってもらいたい。」
急速に変わり続ける香港。
元の暮らしを見つめ直そうという取り組みに共感が広がっている。




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