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ロンドンから徒然に

大聖堂の幾度かの危機

2008-01-20 | 旅・イベント
 広い広い展示会場をやっと今日全部制覇し、日の明るいうちに退出することができました。4日目になるのにまだ街の名所をどこも見ていないので、何はともあれ大聖堂だと、暗くならないうちにそちらに向かいました。

 ケルンのシンボルと言われるのも当然、その荘厳な姿は街のあちこちから目に入って来ます。ところが、この景観こそが実は意識して守られたものだったのです。

 1880年に完成したこの大聖堂は3代目のものです。歴史を遡れば、初代は4世紀には既に建てられていました。(但し、その形は正方形だったらしいです)2代目は818年に完成したのですが、1248年に焼失しています。
 この3代目、翌年の1249年に建設が始まったものの、その後財政難で工事が中断し、再開されたのは19世紀に入ってからでした。それから完成したのが1880年というわけですから、なんと550年近くもかかったわけです。
 
 その後も安泰というわけにはいかず、南塔に取り付けられた鐘が第一次世界大戦の際に没収されて武器に転換されたり、第二次世界大戦の時には空襲で内部がひどく壊されたりしています。

 1996年に世界遺産に指定され、今度こそやっと落ち着くかと思われたものの、周辺に高層建築物が計画され、2004年には危機遺産に指定されてしまうのです。
 ここで話が最初に戻るのですが、市当局は周囲に高さ規制を敷くなどして景観を守る努力をし、2年後には危機遺産指定を解除することができました。

 今日、こんな風に街の片隅からあの威風堂々とした姿を見ることができるのも、こんな裏話があってのことなのですね。

方向音痴?

2008-01-19 | 旅・イベント
 明日までケルンです。毎日朝から展示会に通っています。この入場券の裏側が町の交通機関の通し券にもなっているので、期間中は電車にタダで乗ることができます。
 交通案内図を見ると合理的に町を網羅していて、上手く乗り換えるとどこへでもちゃんと行けそうです。

 そうです、“上手く乗り換えると”です。

 電車は路面を走ったり、地下に潜ったりします。しかも同じ名前の駅で、地上に乗り場があったり、地下にあったりするのです。
 それだけではなくて、場所によっては交差している道の、互いからは見えない場所に乗り場があったり、ひどいところは道一本隔てたところにあったりもします。

 ここまで言うと想像がつくと思いますが、何回も乗り場を間違えて、30分もかからずに着くはずの場所に倍以上の時間をかけてしまいました。
 おまけに歩いていても、全然目的と違った方向に行ってしまったりするのです。悲しいことに町中だけでなくて、展示会場の中でもです。僕は方向音痴なのかな、と思わず自分で疑ってしまいました。

 旅に出るといつも(好き嫌いとは別に)土地に関する相性みたいなものを感じます。
 どことなく“匂い”を感じる場所は、地図を持たなくても目的の場所にすんなり行き着けるのです。それだけでなくて、思いがけず良い場所に巡り合えたりもします。
 今回はそれがダメなんですね。殆ど何も匂ってこなくて…..

 ところで電車ですが、さすがにドイツ、合理的にできています。路面からは殆ど段差なしに乗れる仕組みなので、車椅子のままでも乗りこめますし、自転車を置けるスペースも作られています。広々としていて、たくさんの人数が乗ってもあまり窮屈ではないし。
 日本もこんな風になったらいいんですけどね。あ、できればロンドンの地下鉄(特にピカデリー・ライン)も。


オー・デ・“コロン”

2008-01-18 | 旅・イベント
 仕事でケルンに来ています。ドイツにはあまり縁がなくて、今までフランクフルトしか行ったことがなかったのですが、今回初めてそれ以外の町を訪れることになりました。
 ロンドンから飛行機で1時間20分ほどの旅ですが、時差が1時間あるので時計の針を進めなければなりません。

 ケルンはドイツ語ではKoln(すみません、2番目の文字はここでは正しく表記できません。oの上に点がふたつ付きますね)と綴るのですが、英語ではCologne、フランス語も同じ綴りです。また、スペイン語とイタリア語はColoniaだったと思います。
 これらはみな語源を辿れば、ラテン語の『植民市』から来ています。ケルンがかつてローマ帝国の植民市だったことに由来するのです。

 空港に着いて車で町に入ろうとすると、遠くに威風堂々とした建築物が見えてきます。世界遺産にも指定されているこの大聖堂はライン川の畔にあって、町のシンボル的な存在になっています。(滞在中に内部を観ることができるでしょうか?)
 
 ところで、昔このライン川の水で香料を薄めて作ったのが『オー・デ・コロン』なのです。その国際的な名前の起源は『ケルンの(香)水』という意味だったんですね。
オー・デ・コロンeau de Cologneはフランス語で、ケルンはドイツの町、最初にこれを作ったヨハン・マリア・ファリナJohann Maria Farinaという人はもともとイタリア出身だったというのですから、最初から国際的な運命だったのかもしれませんね。

ジェームス・ブラント ロンドン公演

2008-01-17 | 音楽
 もう3年前(2005年)の初夏の話になります。イギリスで6週間連続チャートの1位になっているシングル曲がありました。ちょっと聴いただけでは地味な感じがしたのですが、哀愁のある声と、シンプルだけれどインパクトのあるメロディーが耳に残って、思わずサビの部分を口ずさんでしまいました。
 新人だというので、気になって調べてみたら、なんとNATOの平和維持軍の一員としてコソボで従軍していたという、あの繊細な声からは想像できない経歴があることが分かりました。

 そのシングル曲『ユア・ビューティフル You’re Beautiful』の収められたアルバム『バック・トゥ・ベッドラム Back to Bedlam』は、今度は9週間連続の1位を取るという、その年のイギリス最大のヒット作品となって、彼ジェームス・ブラントJames Bluntは一躍大スターになってしまいました。
 その年の冬にはアルバムが日本でも発売され、その後の世界的な成功は皆さんもご存じの通りだと思います。

 早くから注目していたので、初来日公演の決定の際はすぐにチケットを買いました。渋谷のAXで行われたのですが、先行予約はスタンディングしか発売されなかったので、念のためそれを買った上で、発売当日にまたわずかな席数の2階の指定席を買いました。それがなんと最前列という幸運。
 ちなみに余ったチケットは買った値段で売れればいいやと思いオークションに出したら、その後の人気の急上昇を反映して、何倍もの落札価格がついてしまい、申し訳なくて安くしてあげました。

 さて、前置きが大変長くなりましたが、実は昨晩ジェームス・ブラントのロンドン公演に行って来ました。イギリスでは女の子のアイドルのような書き方をする雑誌や新聞が多いのですが、見る限りでは客層は大変幅広く、大分年齢の高い人も男性も多かったです。
 ステージ上の彼は、この2~3年の実績で自信がついたのか、以前見た時よりも余裕が感じられ、何だかある種の貫録さえ醸し出していました。
 デビュー・アルバムと最新アルバム『All The Lost Souls』から要所を押さえた選曲でしたが(一部カバーや未発表曲も)、改めて楽曲の良さと声の魅力に惹き込まれました。

 会場では、今回のツアーのいくつかの場所から録音したライヴアルバムを1,500部限定で売っており、さらにこれには新曲のダウンロードと後日配送されるアナログレコード等が付いてくるという、面白い仕組みでした。
 もちろん買いましたよ。

 4月にはこのツアーが日本でも予定されているはずです。もうこれだけビッグスターになってしまうと、小さな会場でのライヴは見られなくなるんでしょうね。改めて初来日の時に行っといてよかったと思っています。

14.99ポンドで観放題

2008-01-16 | 映画・演劇
 昨日ゴールデン・グローブ賞の話を書きましたが、僕は昔からけっこう映画好きで、今でも月に5本から10本くらい観ています。
 ところが、こちらに来て最初の日曜日に繁華街の映画館で、その日封切の映画を観たら、なんと13.5ポンド(今のレートで約3,000円)もしたのです。
 この調子だといったい月に幾らかかるやらと不安になってシステムを色々調べたら、同じ映画でも場所や時間によって倍くらいの差があることが分かりました。

 さらに調べると各チェーンで色々とサービス合戦をやっており、これを上手く利用すると相当節約できるのです。
 そのひとつが cine worldが行っている“go unlimited”です。毎月14.99ポンド(約3,300円)で、イギリスとアイルランドのcine world系列のどの映画館でも、どの曜日でも、どの時間帯でも無料で観ることができるというものです。(但し、最短でも1年続けなければならないという制限はありますが)
 さらには僕のアパートメントの近くのフルハムロードやチェルシーの系列映画館では、他のところよりアート系の映画がかかる率が高いのです。

 早速ネットで申し込んで翌日から無料で観ています。何本でも観ることができるとなると、どうしようかと迷いそうな映画までとりあえず観ておこうということになり、さらに本数が増えそうです。
 学生時代に2本立て、3本立ての映画館で半日過ごし、お目当ての映画以外で感動した時には、何だか得したような気分がしたものですが、その時と同じ気分になれたらいいな、と今から期待しています。

波乱のゴールデン・グローブ賞 受賞式

2008-01-15 | 映画・演劇
 ゴールデン・グローブ賞が決まりました。作品賞はAtonement『 (邦題) つぐない』。この映画はこちらに来た時はとっくにロードショーは終わっていましたが、二番館ではロングランが続いていて、けっこう観客は多かったです(特にお年寄りの方)。作品の良さが評価されている証なのでしょう。

 この映画の終盤に往年の大女優ヴァネッサ・レッドグレーヴが出て来て懐かしく感じたのですが、今日の主演女優賞が、これまた懐かしいジュリー・クリスティでした。ふたりとも生まれたのは1940年前後のはずなので大ベテランですが、こうして活躍しているのを見るのは嬉しい限りです。

 ところで、今回のゴールデン・グローブ賞は前代未聞の事態になりました。米脚本家組合のストライキが続き、それに俳優組合が同調したため、従来の華やかな授賞式が取り止められて、記者会見方式での受賞者の発表になったのです。

 この授賞式の中止で一番打撃を受けたのが、これを放映する予定だった米NBCです。当てにしていたCM収入20億円前後が失われたとのことです。
 その他、授賞式後のパーティ代、取材のカメラマンのギャラ、運転手のギャラ、等々で合計すると約90億円の経済効果損失が見込まれるらしいです。

 今回の会場となったビバリー・ヒルトン・ホテルの前でデモを行ったIATSEに注目してみましょう。この団体、実は制作の現場のスタッフによる組合で、ヘアメイク、大道具、照明、ケータリング等の仕事に携わる人達の集まりなのです。
 彼等にしてみたら、このストライキが続く限り、自分たちの仕事が上がったりなわけで、早速食うのに困る人も出てくるというわけです。早く片付いて欲しいという願いは誰よりも切実でしょう。

 色んな人達の色んな思惑を含んで、2月のアカデミー賞の行方が注目されます。

 (写真は、うちの近くのよく通っている映画館です。ロサンジェルスのものとは違って寂しいですが)

ロシアの旧正月

2008-01-14 | 日常
 うちの近くにけっこう美味い台湾料理店があるのですが、先日ここで食事をしたら2月7日から一週間ほど休みになると言います。従業員が皆故郷に帰るのです。旧正月なんですね。
 そう言えば、中国の工場で商品を作る時も、旧正月は工場が機能しなくなるので、この時期の納品は注意しなければなりませんでした。

 この“旧正月”、実はロシアでもユリウス暦(the Julian calendar)に基づくものがあるらしく、今日はRussian Winter Festivalが開かれました。
 「トラファルガー広場が“赤の広場”に変身」という情報誌のコピーに惹かれて出かけてみました。いえ、そこに載っていたロシアの食べ物が美味そうだなと思ったのが本当の理由なんですが(笑)

 夕方広場に着くと、今朝からずっと晴れだった空から白い雪が。実はこれ人口の雪だったみたいで、トラファルガー広場だけに舞っています。
 名前を聞いても馴染みがないのですが、人気のロシア人ポップスターも出演するらしく、広場は人で溢れています。ロシア語の案内(何を言っているかさっぱり分かりません)が流れる度に大きな声援。ということは、ここに並んでいる人達は皆ロシア人?

 おなかを空かしていったのに入場制限が行われていて、広場の中に入るのを待つ長い列が続いています。これじゃいつになるか分からないと思って、堪え性のない僕は、遠目に民族衣装の踊りを見ながら戦線離脱です。

カンタベリーへの“鉄道の旅”

2008-01-13 | 旅・イベント
 土・日はメンテナンスのために、地下鉄の主要な線でさえも運行を休止することがよくあります。今日もサークル・ライン全部とディストリクト・ラインの一部が運休で、駅にはたくさんの人が溢れました。
 それならばと、あまり利用することのないナショナル・レイルウェイを利用して、近場の“鉄道の旅”に出かけることにしました。ロンドンから1~2時間も列車に揺られると、全然違う世界があるのです。

 今日はカンタベリーを訪ねました。鉄道の旅は駅に着いた時から何とも言えぬワクワク感があります。ケント州の美しい田園風景を楽しむにはまだ早い季節でしたが、ヴィクトリアから1時間半でカンタベリー・イースト駅に着きました。(チャリング・クロス駅から同じくらいの時間でカンタベリー・ウェスト駅に行く方法もあります)

 昔の城壁に囲まれた美しい街並みですが、それでも中心部は近代的な街に変身し、多くのチェーン店に溢れています。
 途中食事を取ったカフェで、ベルギー人の女性に話しかけられました。彼女は月に3回ほどこの街に来て仕事をしているらしいのですが、非常に気に入っているとのことです。ベジタリアンの彼女、写真を撮ろうとすると、実は若い頃モデルだったとのことで、さすがにポーズを取るのは慣れたものでした(笑)

 街のどこにいても見えて来るのが、世界遺産にも登録されている大聖堂。イギリス国教会の総本山に相応しい威厳のある姿です。
 前回訪ねた時は丁度内部でイベントが行われていて、全部を見学することはできなかったのですが、今日は改めてその巨大さ、荘厳さに圧倒されました。内部はなかなか複雑な構造で、奥に進むほど段が高くなり、その高くなった差を利用して、一番奥には地下室があります。まるで無数の小さな教会が集まって出来た複合体のようにも感じられました。
 
 街を練り歩くと、映画にでも出て来そうな中世の面影が残っていたりします。そう言えば、俳優のオーランド・ブルームがこの町の出身らしいですよ。

ボロー・マーケット

2008-01-12 | 日常
 ロンドン・ブリッジの近くのボロー・マーケットBorough Marketはロンドンで最も古く、最も大きいマーケットとして有名です。金曜日・土曜日は全部の売り場が開いているということで、夕方出かけました。

 この辺りは昔の街の面影が残っていて、なかなか良い感じです。それ故か、たくさんの映画にも登場します。最近の映画では『ブリジット・ジョーンズの日記』や『ハリー・ポッター』のロケ地として知られています。

 マーケットの中は非常に広く、肉類、魚介類から野菜、フルーツ、花、ワイン、チーズ….様々なものが売られています。ひとつひとつを良く見ると、決して他より安いわけではないのですが、それでも品質は良く鮮度が高そうですし、他では見ないような珍しいものもあります。久々にウサギや鹿がそのまま吊るされている姿も見ました。

 魚屋で牡蠣を見たら、どうにも食べたくなって、すぐ横の通りにあるシーフード・レストランでコーンウォール産の牡蠣を注文して、イギリス産のワインを飲みました。

 そう言えば、最近地球の温暖化のせいで、ワインの産地がだんだん北上して、イギリスのワインが注目され始めたと聞きました。そのうちワイン地図も塗り変わってしまうのでしょうか。

ゲイのメッカ

2008-01-11 | 日常
 昔ロンドンに来て、夜音楽を聴きに行こうとしたら、お目当ての店は遠くに移転して、そこは全然違った飲食店になっていました。仕方なく、近くにクラブか何かないかと訊いて、地図を描いてもらいました。
 出かけてみると、どこか違和感が…。何しろどこを見回しても男の人しかいません。それに、こちらに絡みつくような視線があちこちから。
 実はこの日はゲイだけが集まる日だったんですね。

 ロンドンではゲイやレズビアンはちゃんと市民権を得ていて、本屋にもそのコーナーがありますし、TIME OUTなんかの情報誌にもちゃんと催しが案内されています。
 それでもやっぱり、どこか彼らを忌み嫌う集団もいて、時々嫌がらせに会っているみたいです。
 そんなこともあってか、毎年夏には自分たちの権利を主張する催しがあって、この日はたくさんの同性愛者が集まって、街を練り歩きます。

 その中心になるのがオールド・コンプトン・ストリートOld Compton Streetです。
ピカデリー・サーカスやレスター・スクェアといった観光地から歩いてすぐのこの通りは、いつ行っても男性のカップルで溢れています。

 話の脈絡は全然ないのですが、時々その通りで立ち寄るお店があります。お酒の専門店で、ウィスキーのヴィンテージをたくさん並べています。何かの機会に買おうかと思うのですが、けっこうな値段がするので、さて何にかこつけようかと思案しています。