低予算映画というのがけっこう好きです。
俳優にもセットにも金かけられないとなると、当然他の部分で知恵を絞るしかなく、そこで見せる関係者のセンスみたいなものが光ると、思わず嬉しくて頬がゆるみます。
さらにそれが興行的にも成功となると、その快挙を讃えたくもなるというものです。
その意味では、ロンドンに来て最初に見た映画(いや、家探しでその前に一週間足らず訪れた時だったかな?)として思い出深い「ONCE」なんて良い例だと思います。アイルランド人のストリートミュージシャン(映画中では名前がなくGuyと呼ばれる)とチェコ系の移民(これまたGirlの呼称だけ)との、音楽を間に挟んだ悲しいラブ・ストーリー。
この映画を下敷きにミュージカルが作られたと聞いた時は、興味を持ったものの、何だか安易に作られていて失望したらイヤだなと思ってそのままにしていました。
それが先日何故かやたらと映画の中で使われた歌が頭の中をリピートし、これは何かの暗示かと、このミュージカル版のチケットを取ることにしました。
少し早めに劇場に到着すると、アイリッシュ・パブをイメージした舞台の上には既に出演者達が。ただ、よく見ると彼らに混じって明らかに違和感のある人達も。
そう、これが実はこの日の観客達。この舞台上のパブは実際にビールを売っているんです。
そのうち出演者達によるトラディショナルなフォークソングの演奏が始まり、それを囲む観客達という図が出来上がります。
これがまるでコンサートの前座のようにうまく機能しています。さりげなく観客達を本来の席に戻すと、さぁ本編の始まり、始まり。
このパブの他にセットで印象的だったのは、舞台奥(つまりパブのカウンターの後ろ)にある大きな鏡。
時には観客側に背を向けてピアノを弾くGirlの正面を映し出したり、あるいは舞台を暗くして俳優にスポットライトを当てると、そこに写るのは彼らの心象風景のように見えたりもします。
さらには舞台上方に設けられた字幕。
この字幕に映し出されるのはチェコ語。いや、もちろんチェコ語を理解する観客など多いわけがなく、出演者は英語で話すのですが、Girlを初めとするチェコの移民達同士の会話の時にはチェコ語が使われているのだということが、ここで観客達には分かる仕組み。
いや、そう書くだけではこの字幕の効果がいまいち伝わらないかと思いますが、実はこれがもどかしいほど初々しいふたりの主人公達の会話中のGirlの悲しい告白「I Love You」の時に生きるわけです(そう、アイルランド人のGuyはそれを理解できないんですよ)
これらが映画との外見上の違いですが、何よりも大きく異なっているのはGirlのキャラクターでしょう。
チェコのシンガー&ソング・ライター マルケタ・イルグロヴァによって演じられた映画版の方は素朴で繊細な女性でしたが、ミュージカル版の方(こちらはクロアチア出身の女優Zrinka Cvitešić。どう発音するんだろう?)はもっと陽気で口数も多く、ユーモア溢れる女性に描かれていました。それだけに最後が悲しいとも言えるのですが。
このキャラクター設定に関しては異論もあるかもしれませんが、僕はこちらもオリジナリティをきちんと出して、成功していたと思います。
でも、色々ある要素の中で、やっぱり映画もミュージカルも一番の成功の原因は何と言っても歌でしょうね。Best Original Song部門でアカデミー賞を獲得した一連の楽曲は本当に素晴らしい!
こんな話を友人にしたら、自身アイルランド人の血を引く彼女も映画は観たらしく面白い感想を。
(歴史上、国が貧しかった時期もあって)アイルランド人はずっと外国への移民として外に出て行くので知られていたけれど、この映画の中では逆に外国からアイルランドに移民が入ってきていて、何だか時代が変わったんだなって感じたわ。
この映画の公開年度は2007年。この年以降アイルランドは急激な経済の落ち込みに見舞われるわけです。低予算とはいえ、内容を考えるとこの時代でなければ出来なかった映画なのかも。
俳優にもセットにも金かけられないとなると、当然他の部分で知恵を絞るしかなく、そこで見せる関係者のセンスみたいなものが光ると、思わず嬉しくて頬がゆるみます。
さらにそれが興行的にも成功となると、その快挙を讃えたくもなるというものです。
その意味では、ロンドンに来て最初に見た映画(いや、家探しでその前に一週間足らず訪れた時だったかな?)として思い出深い「ONCE」なんて良い例だと思います。アイルランド人のストリートミュージシャン(映画中では名前がなくGuyと呼ばれる)とチェコ系の移民(これまたGirlの呼称だけ)との、音楽を間に挟んだ悲しいラブ・ストーリー。
この映画を下敷きにミュージカルが作られたと聞いた時は、興味を持ったものの、何だか安易に作られていて失望したらイヤだなと思ってそのままにしていました。
それが先日何故かやたらと映画の中で使われた歌が頭の中をリピートし、これは何かの暗示かと、このミュージカル版のチケットを取ることにしました。
少し早めに劇場に到着すると、アイリッシュ・パブをイメージした舞台の上には既に出演者達が。ただ、よく見ると彼らに混じって明らかに違和感のある人達も。
そう、これが実はこの日の観客達。この舞台上のパブは実際にビールを売っているんです。
そのうち出演者達によるトラディショナルなフォークソングの演奏が始まり、それを囲む観客達という図が出来上がります。
これがまるでコンサートの前座のようにうまく機能しています。さりげなく観客達を本来の席に戻すと、さぁ本編の始まり、始まり。
このパブの他にセットで印象的だったのは、舞台奥(つまりパブのカウンターの後ろ)にある大きな鏡。
時には観客側に背を向けてピアノを弾くGirlの正面を映し出したり、あるいは舞台を暗くして俳優にスポットライトを当てると、そこに写るのは彼らの心象風景のように見えたりもします。
さらには舞台上方に設けられた字幕。
この字幕に映し出されるのはチェコ語。いや、もちろんチェコ語を理解する観客など多いわけがなく、出演者は英語で話すのですが、Girlを初めとするチェコの移民達同士の会話の時にはチェコ語が使われているのだということが、ここで観客達には分かる仕組み。
いや、そう書くだけではこの字幕の効果がいまいち伝わらないかと思いますが、実はこれがもどかしいほど初々しいふたりの主人公達の会話中のGirlの悲しい告白「I Love You」の時に生きるわけです(そう、アイルランド人のGuyはそれを理解できないんですよ)
これらが映画との外見上の違いですが、何よりも大きく異なっているのはGirlのキャラクターでしょう。
チェコのシンガー&ソング・ライター マルケタ・イルグロヴァによって演じられた映画版の方は素朴で繊細な女性でしたが、ミュージカル版の方(こちらはクロアチア出身の女優Zrinka Cvitešić。どう発音するんだろう?)はもっと陽気で口数も多く、ユーモア溢れる女性に描かれていました。それだけに最後が悲しいとも言えるのですが。
このキャラクター設定に関しては異論もあるかもしれませんが、僕はこちらもオリジナリティをきちんと出して、成功していたと思います。
でも、色々ある要素の中で、やっぱり映画もミュージカルも一番の成功の原因は何と言っても歌でしょうね。Best Original Song部門でアカデミー賞を獲得した一連の楽曲は本当に素晴らしい!
こんな話を友人にしたら、自身アイルランド人の血を引く彼女も映画は観たらしく面白い感想を。
(歴史上、国が貧しかった時期もあって)アイルランド人はずっと外国への移民として外に出て行くので知られていたけれど、この映画の中では逆に外国からアイルランドに移民が入ってきていて、何だか時代が変わったんだなって感じたわ。
この映画の公開年度は2007年。この年以降アイルランドは急激な経済の落ち込みに見舞われるわけです。低予算とはいえ、内容を考えるとこの時代でなければ出来なかった映画なのかも。