風そよぐ部屋

ウォーキングと映画の無味感想ノート

映画/ルーム

2016年11月07日 | 映画



文句なし 最高の秀作です。
アイルランド・カナダの映画は、日本では珍しいです。
、主演のブリー・ラーソンが88回アカデミー賞・主演女優賞を受賞しましたが、作品賞には選ばれませんでした。
作品賞を受賞したのは、「スポットライト 世紀のスクープ」、その他「マッドマックス 怒りのデス・ロード」、
「レヴェナント・蘇えりし者」などだそうです。アメリカのアカデミー賞とは所詮、そんなものですが…。
原作の小説も映画もフィクションですが、オーストリアで起きたフリッツル事件をベースに着想を得たと言われています。
私はその事件を知りませんでしたが、実の父に24年間も監禁され、性的虐待を受け、7人の子供を出産した事件だそうです。
この映画を見始めた時は、私は少し小馬鹿にして見ていました。奇をへつらう「際物」映画のような気がしたからです。
しかしその思いはすぐ消えました。女性が監禁された事情などを細々説明すること無く、監禁の「日常」を坦々・淡々と
テンポ良く、かなり無機質チックに描きます。
その坦々・淡々さが、二人が置かれた日常の「異常」さを見事に描いたからです。
それは、これから先のストリー展開の興味より、恐ろしい程の戦慄的恐怖を覚えさせました。
若い女性・ジョイは変質者に拉致され、納屋に監禁されます。
彼女は、そこで男の子・ジャックを産み、育てます。
二人の外界とのつながりは天窓しか在りません。

ジャックが5歳の誕生日を迎え、彼女は「決死」のしかし彼女にとっては絶望的脱出作戦を考えます。
絶望的というのは、脱出するのは息子だけで、彼女は脱出できないからです。
風邪を引き高熱で苦しんでいるからジャックを医者に診せてと言う嘆願作戦は失敗します。
その失敗で、部屋の電気が止められます。次の作戦は、ジャックの死、です。
男に、ジャックは死んだので彼を埋めて来てと頼みます。
この決断は、ジョイにとっては「永遠の別れ」になりかねない危険性を孕んでいます。
絨毯に包まれたジャックは、その隙間から初めて、世の中を見ます。
このシーンの描き方も、大袈裟すぎず、映画的にはかなり禁欲的描き方で出色でした。
彼は、ママから言われ練習した様に、トラックの荷台から逃げだし、助け出されます。
ここから登場する人々は、テレビのインタビュアーを除いて、善意の、良い人々でした。
ジャックの訴え、説明は普通なら、「何を訳のわからないことを言っているの」と、無視されるからです。
最初に彼を助けた男性、連絡を受けた女性警察官、この二人は特に素敵でした。
ジャッックの訴えをまともに受け入れ、的確に対応したからです。
ジョイとジャックの肉体ははこうして解放されますが、心の「解放」には大きな困難が待ち受けています。
ジョイの母親と彼女の新しいパートナーの優しさ、豊かさが、映画のこれまでの戦慄的恐怖を解放し、
私達に人の優しさ、暖かさを取り戻してくれましたが、映画の後半のこのテーマは前半よりはるかに難しく、
「息切れ」してしまい、残念ながら成功とは言えません。
それはカウンセリングやセラピー、旅や、時の流れだけで簡単に癒えるものではないでしょうし、
映画で描くのは簡単では無いからです。
この映画で、セックスシーンが無かったのはとても良かったです。
その後、二つのかなりショッキングなエピソードがありました。
一つは、テレビのワイドショウの格好の題材となり、何とも無神経なインタビューを受けたことと、
二つは、母親と離婚したジョイの父親がジャックと目を合わせることが出来なかったことです。
ジャックの「父親」は、その犯罪者なのですから…。
自由となったジョイですが、心の安寧を取り戻すのは簡単ではありません。
彼女は、自死を試みますが、一命を取り留めます。
ジョイは、ジャックに「父親はいない」と告げます。
この言葉には深く、いろんな意味が宿っていると私は思います。
過去と決別し、前を向いて生きようというジョイの静かだが強い思いが秘められています。
映画後半は、息切れしてテーマを十分掘り下げることは出来ませんでしたが、それでも文句なし 最高の秀作です。
「誘拐・監禁」をテーマにした映画は、古典的映画となった「コレクター」を始めいくつも作られています。
そしてこの種の犯罪は、今日でもなおしばしば行われ、つい最近も日本で起きました。  【10月31日鑑賞】
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