石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:天然ガス篇 (5)

2017-08-03 | BP統計

 

2017.8.3

前田 高行

 

2.世界の天然ガスの生産量

(欧州・ユーラシアと北米で世界の天然ガスの55%を生産!)

(1)地域別生産量

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-2-G01.pdf 参照)

 2016年の世界の天然ガス生産量は年産3兆5,516億立方メートル(以下㎥)であった。これは石油換算では年産32億トンであり、またフィート換算では日産3,427億立法フィートである。

 

 生産量を地域別にみると欧州・ユーラシアが1兆㎥と最も多く全体の28%を占めている。これに次ぐのが北米(9,484億㎥、27%)であり、これら二つの地域だけで世界の55%に達する。その他の地域は中東6,378億㎥(18%)、アジア・大洋州5,799億㎥(16%)、アフリカ2,083億㎥(6%)、中南米1,770億㎥(5%)であった。

 

 各地域の生産量と埋蔵量(前章参照)を比較すると、中東は埋蔵量では世界の43%を占めているが生産量では18%に過ぎない。これに対し北米は埋蔵量シェアが世界全体の6%にとどまるのに対して、生産量のシェアは27%に達しており、埋蔵量と生産量のギャップが大きい。その他の地域の埋蔵量シェアと生産量シェアは欧州・ユーラシアは埋蔵量シェアが30%、生産量シェアは28%とほぼ均衡している。その他の地域の両者の比率は、アジア・大洋州が9%(埋蔵量)対16%(生産量)、中南米4%対5%、アフリカ8%対6%である。このことから天然ガスを他の地域に輸出できるポテンシャルが高いのは中東地域であると言えよう。

 

(他を圧倒する米国とロシア!)

(2)国別生産量

(表http://bpdatabase.maeda1.jp/2-2-T01.pdf 参照)

 次に国別に見ると、天然ガス生産量第1位は米国の7,492億㎥/年(723億立法フィート/日、6.9億トン/年)であり、全世界の生産量に占める割合は21%に達する。第2位はロシア(5,794億㎥、シェア16%)であり、この2カ国の生産量が飛び抜けて多い。

 

 この2カ国に続くのがイラン(2,024億㎥)、カタール(1,812億㎥)、カナダ(1,520億㎥)であり、米国或いはロシアのほぼ1/4である。6位から8位は中国(1,384億㎥)、ノルウェー(1,166億㎥)、サウジアラビア(1,094億㎥)であり、以上8か国が生産量1千億㎥を超えている。9位以下はアルジェリア(913億㎥)、オーストラリア(912億㎥)、マレーシア(738億㎥)。

 

 これら上位各国の生産量を昨年と比較するとオーストラリアが対前年比21%と顕著な増加を示している。同国は近年大型のLNGプロジェクトが次々と稼働を始めており、近い将来現在のカタールをしのぐ世界最大のLNG輸出国になると予測されている。このほかイラン(+11.2%)、サウジアラビア(+6.8%)も生産が伸びているが、両国の場合は生活水準の向上により発電・造水装置などの燃料用としての国内需要が強いことが理由と考えられる。

 

 一方上位10か国の中でロシア・カナダの2か国だけは需要が前年を下回っている。特にカナダは前年比6.2%と大幅に減退している。これは米国国内でシェールガスの生産が増加したためそれに見合うパイプラインによる対米輸出が減少したためである。カナダでは構造的な対米輸出の減少に対処するため太平洋沿岸に天然ガス液化設備を新設、アジア向けのLNG輸出を模索している。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

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