prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「博士の愛した数式」

2006年02月04日 | 映画
この映画でも何度か名前が出てくるデカルトは、数学者であると同時に哲学者でもある、というよりもともとその頃の哲学は「知」全般を含んだ総合的な学問で、デカルトがどこでも誰にでも通用する普遍的な原理として数学の原理を核として採用したのであり、そこから一方で物理学などの自然科学全般、一方で遠近法といった芸術上の技法の発展につながっていった。
その意味で、数が世界全体に通用する、また人と人とをつなぐ原理として語られるのは、突飛なようでそうではない。
とはいえ、数学と愛情を結びつけ、こういう物語を編み上げた手腕はお見事。

一方で、それが行き過ぎて現代では学校の成績、会社の業績などなんでも数字で評価され、計量化できないもの、数値化できないものは存在しないような扱いになっている。
美しい数式、という表現が作中で語られるが、変な表現になるが株価みたいに根拠の曖昧な数字は、なるほど美しくないなと思う。
ここでは、その表面的な数字では表せないものを見事に表現している。一つは本当の数式の美しき楽しさ、もう一つは、人の心。

小泉堯史監督はもちろん黒澤の最期の助監督(というか、弟子)だった人だが、もうそういうレッテルと関係なく独自の作風を確立したといっていい。端正だが、堅苦しくない。肩の力が抜けた、のびのあるピッチングという感じ。

寺尾聰が学者のなんとなくおかしい感じをよく出した。深津絵里の初の母親役も温かみを自然に出して好演。出番は少ないが、浅岡ルリ子が貫禄。
吉岡秀隆の子供時代を演じた齋藤隆成が子役時代の吉岡とそっくりの顔をするのにびっくり。

それにしても、「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」「容疑者Xの献身」そしてこれと、最近妙に数学者が主人公の話が流行る。
(☆☆☆★★★)

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1 コメント

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Unknown (ヒカル)
2006-02-04 06:31:00
映画「博士の愛した数式」は、

清々しくて心温まる、そして涙の止まらない素敵な映画でした。

URLは同映画のクチコミ応援サイトです。よろしくお願いします。

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