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反グローバリズム旋風の二つの類型

2017年04月23日 12時38分42秒 | 政治経済、社会・哲学、ビジネス、

                                                   

                「 植草一秀の『知られざる真実』」

                             2017/04/21

          反グローバリズム旋風の二つの類型

           第1722号

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3月にオランダで総選挙が実施されたが、これから秋にかけて欧州で重要選挙
が相次ぐ。

4月23日、5月7日 フランス大統領選

6月8日 イギリス総選挙

6月11日、18日 フランス国民議会選挙

9月24日 ドイツ連邦議会選挙

が予定されている。

また、イタリアでは議会の任期が2018年3月で満了になるため、2018
年前半までに総選挙が実施されることになる。

3月15日に実施されたオランダ総選挙では、注目を集めた極右政党の自由党
が議席を伸ばしたものの第一党に躍り出ることはできず、中道右派の与党自由
民主党が第一党の座を堅持した。

ただし、極右自由党は大幅に議席を伸ばした。

昨年6月の英国EU離脱国民投票では、メディアの事前予想を覆して、英国民
がEU離脱の判断を下した。

その結果、キャメロン首相は辞任に追い込まれ、後任首相に保守党のメイ氏が
就任。

メイ首相はEUからの完全離脱の方針を掲げたが、新たな政策に対する信を問
うために本年6月に総選挙を実施することを決めた。

メイ首相の支持が高い一方で、労働党のコービン党首の支持が低迷しており、
総選挙ではメイ首相が所属する保守党が多数議席を維持するとの見方が強い。

他方、ドイツではメルケル首相が属するCDU(キリスト教民主同盟)と大連
立を組んでいるSPD(社会民主党)の党首が交代し、新党首のシュルツ氏が
高い支持を獲得している。

この流れが維持されると、9月総選挙後にメルケル首相退陣の可能性が浮上す
る。



さらに、イタリアでは来年までに総選挙が実施されるが、野党勢力として

「五つ星運動」

が躍進しており、イタリアでも政権交代が生じる可能性がささやかれている。

かように、2017年から2018年にかけて、欧州政治情勢は激動の渦に巻
き込まれる可能性が高い。

他方、お隣の韓国でも5月9日に大統領選が実施される。

与党ハンナラ党の朴槿恵(パク・クネ)大統領が政治の私物化疑惑で弾劾、罷
免されたため、朴政権を批判してきた野党「共に民主党」の統一候補に指名さ
れた文在寅(ムン・ジェイン)氏が次期大統領の最有力候補に浮上したが、こ
こにきて中道右派の安哲秀(アン・チョルス)候補に対する支持が文在寅候補
の支持を上回る事態が生じている。

世界各地で重要選挙が目白押しの状態である。

昨年6月の英国民投票、11月の米大統領選では、事前のメディア予測を覆す
結果が示された。

いずれの投票、選挙も僅差での決着になったが、大きな変化がもたらされてい
る。

最終的な結果こそ意味を持つわけで、歴史の分岐点というのは、このような紙
一重の決着によって生み出されるものなのかも知れない。



目先の注目点はフランス大統領選だ。

社会党のオランド大統領が支持を完全に失い、大統領選出馬断念に追い込まれ
た。

この結果、右派共和党代表のフィヨン氏の次期大統領就任が確実視されたのだ
が、フィヨン氏の妻などの家族に対する不正支出の疑いが浮上してフィヨン氏
がやや後退した。

他方、英国のEU離脱、米国のトランプ大統領選出に象徴される

反グローバリズムの旋風

を受けて、極右のFN(国民戦線)のルペン党首に脚光が当てられた。

他方、フィヨン氏の後退を受けて、39歳の新進気鋭の中道候補者であるマク
ロン氏が急浮上したのである。

選挙戦終盤までの世論調査は、マクロン氏とルペン氏が決選投票に進み、最終
的にはマクロン氏が大統領に就任するとの予測を示してきたが、番狂わせが生
じる可能性が指摘され始めている。

フランスの大統領選は1回目の投票で過半数を獲得する候補者がいない場合、
上位2者による決戦投票が行われる。

今回も決選投票にまでもつれ込むことは確実な情勢だが、誰が決選投票に進む
のかが投票日直前でまったく分からなくなっている。

フランスで発生した警官が死傷するテロ事件は、大統領選に影響を与えるため
に仕組まれたものであると思われる。

イギリスでも国民投票直前にEU残留を主張する議員が射殺される事件が発生
した。

イギリスの場合は、それでも主権者がEU離脱を決断した。

メディアの予測はあてにならず、結果を待つほかない。

フランス大統領選で台風の目になっているのは、選挙戦終盤で急伸している急
進左派候補のメランション氏である。

メランション氏が決選投票に進むのかどうかが最大の注目点である。



いま世界政治に巻き起こっている旋風は、

反グローバリズム旋風

である。

グローバリズムとは何か。

グローバリズムとは、

国境を超えて、大資本の利益を極大化するために、市場原理のみによって経済
社会を動かすことを目指す運動

のことである。

グローバリズムを推進する勢力は、

自由貿易

効率性

国境の撤廃

を求める。

そして、「これが消費者の利益をもたらす」と喧伝する。



たしかに、市場原理を突き詰めることによって、

モノの値段は下がる。

消費者はモノを安く購入できるという意味で恩恵を受ける。

しかし、ものごとには必ず裏側がある。

「陽」があれば「陰」があるのだ。

大資本が追求する究極の目標は

「労働コストの極小化」

である。

「安い価格」の裏側は「安い労働コスト」で支えられているのだ。



したがって、消費者は、

「モノを安く買える」

ようになるが、

「獲得する所得も減る」

のである。

問題は、生産活動の結果として生み出される付加価値

=総所得

を資本と労働に、どのような比率で分配するのかという点に集約される。



グローバリズムの最大の特徴は、

所得分配における労働分配率の低下が

必ずセットで付いて来る

という点にある。

圧倒的多数の労働者は賃金所得の大幅引き下げに直面するから、

モノの価格が下がっても、

差し引きでマイナスになる。



日本においてグローバリズムを推進する勢力が使用する

キメ台詞

がある。

それが、

「改革」

であり

「規制撤廃」

だ。



一般庶民=市民=生活者=労働者=主権者=国民

は、グローバリズム推進勢力の者が提示する

「響きの良い言葉」

に騙されてはいけない。

彼らは、大資本の利益極大化を目指しているのであって、そのことは、同時に
一般庶民の没落推進を意味しているからだ。



ようやく、世界の国々の人々が、「グローバリズムの毒」に気付き始めた。

しかし、その反応が二つに割れている。

格差拡大に反対し、貧困を解消する政策を要求する勢力



排外主義に逃げ込む勢力

である。

米国におけるサンダース支持者とトランプ支持者はこの側面を強く有してい
る。

フランスにおいては、極右FNが排外主義を主張し、急進左派メランションが
格差拡大阻止、貧困解消を訴える。

両者は、グローバリズムへの反攻に根差している面で淵源を一にする面があ
る。



反グローバリズム旋風が排外主義に突き進むのは人類にとっての悲劇である。

反グローバリズムを格差是正・貧困解消の政治新潮流に向かわせるよう、民衆
が叡智を結集するべきである。

フランスでは社会党候補のアモン氏が支持を集められず、大統領選で脱落しつ
つある。

この現実を踏まえれば、アモン氏の支持勢力は、その投票をメランション氏に
振り向ける努力を注ぐべきである。

「小異を残して大同につく」

連帯を実現しなければ、選挙での勝利を得ることができない。



日本においても、反グローバリズムかつ反排外主義の主権者の糾合を実現する
必要がある。

フランスでは総選挙においても、2回選挙制が採用されている。

1回目の投票で過半数票を獲得する候補者がいない場合、上位2者による決戦
投票が行われる。

手間暇はかかるが、選挙結果にできるだけ民意を反映させるための「工夫」で
ある。

日本では1回きりの小選挙区制の選挙が現状であるから、死票を少なくして、
民意に沿った政権を樹立するためには、選挙の前に、反与党の候補者を1人に
絞り込む「工夫」が極めて重要になる。

反グローバリズムの旋風は当然のことながら、日本でも吹き荒れるはずであ
る。

 


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