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死刑制度はかけがえのない命を軽視すること

2018年07月27日 19時48分02秒 | 政治経済、社会・哲学、ビジネス、

                                

                           「植草一秀の『知られざる真実』」

                                     2018/07/26

             死刑制度はかけがえのない命を軽視すること

              第2096号

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7月26日、松本・地下鉄両サリン事件などで計29人の犠牲者を出した一連
のオウム真理教事件をめぐり、死刑が確定していた死刑囚のうち、7月6日に
執行されなかった、残りの6名の死刑囚に対する死刑が執行された。

この死刑執行を受けて、駐日欧州連合(EU)代表部、EU加盟国の駐日大
使、アイスランド、ノルウェー、スイスの駐日大使が、死刑廃止を訴える共同
声明を発表した。

https://bit.ly/2LngZNf

声明文は以下の通り。

「7月26日、6人の死刑が、日本の当局により執行された。刑が執行されたのは
1995年に東京の地下鉄で実行された、サリンによるテロ攻撃の犯人であること
が判明したオウム真理教のメンバーであった。

われわれの7月6日の声明で示したように、EU、その加盟国、アイスランド、ノ
ルウェーおよびスイスは、同事件が、日本そして日本国民にとってとりわけ辛
く特殊な事件であることを認識している。われわれは、心からの同情を表し、
犠牲者とその家族の苦悩を共有し、加害者が誰であれ、またいかなる理由であ
れ、テロ行為を断じて非難する。

しかしながら、本件の重大性にかかわらず、EUとその加盟国、アイスランド、
ノルウェーおよびスイスは、いかなる状況下での極刑の使用にも強くまた明白
に反対し、その全世界での廃止を目指している。死刑は残忍で冷酷であり、犯
罪抑止効果がない。

さらに、どの司法制度でも避けられない、過誤は、極刑の場合は不可逆であ
る。日本において死刑が執行されなかった2012年3月までの20カ月を思い起こ
し、われわれは、日本政府に対し、死刑を廃止することを視野に入れたモラト
リアム(執行停止)の導入を呼びかける。

われわれは、友人であり同じ考えを持ち、価値や原則を共有する日本を含め
た、全世界における死刑廃止を引き続き積極的に追い求める。われわれはそれ
を、建設的な精神を持って、また国連人権理事会の普遍的・定期的レビュー
(UPR)の枠組みにおける勧告に則って行う。」



声明が示す、死刑制度廃止を求める論拠は以下の三点だ。

第一に、死刑が残忍で冷酷な刑罰であること。

第二に、死刑に犯罪抑止効果がないこと。

第三に、過誤が避けられず、極刑の場合は不可逆であること。

死刑執行の命令を出した上川陽子法相は、前回の死刑執行の前夜である7月5
日に、自民党議員40名程度などが参加した「赤坂自民亭」なる「呑み会」で
「女将」を務め、メインゲストとして参加した安倍晋三氏と祝杯を挙げてい
る。

死刑は国家による殺人である。

安倍内閣は、わずか21日間に13名もの殺人を実行した。

その死刑執行の前夜に宴会を催し、祝杯を挙げるという感覚を理解できる国民
は少ないだろう。

事件そのものは許すことのできないものであるし、被害者および被害者の家
族、関係者の多くが極刑を求める心情は理解できる。

しかし、それでも世界の趨勢は死刑制度廃止の方向に確実に向かっている。

その最大の理由は、死刑そのものが残忍で冷酷であることによる。



刑罰制度が、単純な応報原則によって構築されているなら殺人に対する刑罰を
死刑とすることに合理性が認められるのかも知れない。

しかし、現代国家における刑罰は、単なる犯罪への応報であることにとどまら
ず、社会復帰の達成に資するものであることを求めている。

この考え方が、再犯の防止に役立ち、社会全体の安全に資するものであるから
だ。

また、国連自由権規約委員会や国連拷問禁止委員会等の国際機関は、日本にお
ける死刑制度ならびに被拘禁者に対する制度について、国際人権(自由権)規
約第6条(生命の権利)、第7条(非人道的な刑罰の禁止)、第14条(公正
な裁判の保障)等を根拠に、繰り返し改善を勧告してきている。

しかし、その勧告に対する見るべき改善はなされてきていない。

死刑が執行された者の多くが再審請求中であった。

過去の歴史事実は、何度も何度も再審請求を行った結果として、最終的に再審
が開始され、司法判断が覆った事例の存在を示している。

日本国憲法第32条は

「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」

と規定しており、再審請求中の死刑執行は憲法違反である。

私たちは、世界の趨勢が、なぜ死刑制度廃止に向かっているのかを、よく知
り、考える必要がある。

そして、日本においても死刑制度を廃止するべきである。



7月6日に死刑を執行された早川紀代秀氏は、『年報・死刑廃止』編集部の依
頼に応じて6月7日付で原稿を執筆している。

そのなかに、次の記述がある。

「オウム事件の場合、共同共謀正犯だからという理由で、自分では一人も殺し
ていない者が死刑で、自分で二人も殺している者が無期というのは、どうみて
も公正な裁判とは言えません」

裁判に公正さが欠けていることが指摘されている。

早川氏は、

「被害者の方々や、そのご遺族の方々、また何も知らなかった家族や友人、教
団の方々に対する申し訳なさは、事件発覚から23年経った今も薄れることは
ありません。」

とも記述している。



また、同じく7月6日に死刑が執行された新實智光氏は「恩赦の出願書 補充
書1」を執筆し、自分に万一のことがあれば公表してほしいと言い遺してい
た。

新實氏はこう書き遺している。

「今は償うことだけしか頭にありません。

生きとし生けるもののために私の残された生を捧げます。」

「生きとしいけるものとしての「私」と見た場合、どんな悪人であろうが、生
きて償うことの方が、慈愛に満ちた行為の選択です。」

日本のメディアは、死刑執行直前に中川智正氏が述べたという「自分のことに
ついては誰も恨まず、自分のした結果だと考えている」のコメントを大きく報
道し、死刑執行の正当性を強調する。

しかし、早川氏や新實氏の声を大きく伝えない。



松本サリン事件で、一時容疑者にされかけた河野義行氏は本日、7月26日の
死刑執行後にインタビューに応じて、次のように語った。

https://mainichi.jp/articles/20180727/k00/00m/040/105000c

「事件の真相はその人に聞かないと分からない。本当の真実はなくなった」

「本来、宗教は人を幸せにする。死刑囚自身や家族、大勢の市民を不幸にした
のは残念で、死刑は悲しい出来事」

「人は間違う。それでも死刑制度を維持するのは、かけがえのない命を軽視し
ていること」

河野氏の妻澄子さんは事件でサリン中毒となり、意識が戻らないまま2008
年に死去されている。

被害者感情を死刑執行の根拠にするなら、河野氏も死刑賛同となるはずのとこ
ろだが、河野氏は死刑制度に異議を唱えている。



殺人を憎むのは、殺人がかけがえのない命を奪う行為であるからだ。

その殺人に対する刑罰として命を奪うというのは、「応報原則」を除けば、矛
盾に満ちている。

作家の村上春樹氏による

『アンダーグラウンド』(村上春樹、講談社文庫)
https://amzn.to/2u1CoRp

は、丹念な取材をもとに作品に著したものである。

全篇を通じて私が感じ取ったものは、

「あちら側」と「こちら側」の境界が、明確ではないこと。

「こちら側」が「あちら側」に入れ替わる不安定性、危うさが濃厚に存在する
という現実である。



犯罪の処罰に際しては、このことを念頭に入れる必要がある。

日本国憲法には次の条文が置かれている。

第36条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

世界の趨勢、現代世界における人権の捉え方を踏まえれば、死刑は

「公務員による拷問及び残虐な刑罰」

に該当する。

そして、オウム裁判では事件の全容、全貌が、まったく明らかにされていな
い。

真実が明らかにされず、真実を明らかにせよとの要請が山のように積み残され
たまま、13名の死刑を執行したことは暴挙以外の何者でもない。

 

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1 コメント

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Unknown (鈴木仁)
2019-10-26 23:25:35
何か相談したいことがあるのなら03596ー69432法律教室鈴木に電話しましょう☎️TV📺にも出たことある伊東弁護士が相談にのります

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