tarou 「政治家としては自分はたんつぼのような存在。たんつぼ上等ですね」=24日、札幌市内、豊間根功智撮影/朝日新聞
今日(28日)朝日新聞朝刊。
朝日1
ちょっと長いけど、突き放すようなインタビュアーの質問に、1つ1つ丁寧に答えていく形式がいい。
朝日新聞 (インタビュー)ポピュリストなのか れいわ新選組代表・山本太郎さん
 消費税10%への引き上げを前に、れいわ新選組の山本太郎代表が消費税廃止を旗印に全国行脚を始めた。原発事故後に俳優から反原発運動に転じて注目されたが、今の訴えの中心は疲弊した生活の立て直しだ。「庶民」に聞こえのよい政策を声高に訴え、ポピュリストとも批判される山本さんに聞いた。何をしたいのですか?
 ――7月の参院選挙後初めての地方遊説を北海道でスタートしました。稚内や札幌などでの街頭演説や集会でも多くの人が集まっていました。気分いいですか?
 「もともと芸能人だったので、自分が『消費される』存在であることはよく知っています。政治家は芸能人と一緒ではないけども、似た部分はある。特に気分がいいとかはないですね」
 ――「れいわ新選組」は比例の特定枠で重度障害者の2人が当選して注目を浴びました。落選したとはいえ、「れいわ」の代名詞はやはり山本さんです。
 「よく街頭でも言っていますが、政治は宗教活動やアイドル活動とは違います。政治家は信じる対象ではありません。よく『信じていいんですか』と言われるんですが、今の有権者にとって政治とは裏切られるもので疑心暗鬼なのでしょう」
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 ――山本さんは2011年の原発事故で、福島などから避難しようとネットで訴え、その後政治の世界に入りました。最近は消費税廃止や最低賃金1500円の政府保証をはじめ「お金」の話が中心になっています。なぜですか?
 「確かに『反原発』のシングルイシューというイメージがあるけど、最初の選挙から、三つの柱を掲げてきた。人々を被曝(ひばく)させない、TPP(環太平洋経済連携協定)反対、そして飢えさせない、です。メディアは反原発の文脈で自分を取り上げてきた。貧困問題も議員生活を通じて掘り下げてやってきたつもりです」
 「もともと自分の経済についての考えは、ものすごくオーソドックスなものでした。税をいかに集めて分配するかが政治で、何かをするためには税でとるしかないだろう、と。ただ自分の経済政策は『弱い』と思っていました」
 ――「弱い」ですか。
 「『原発やめます』と訴えると、どうやってという話になる。日本は過疎地のほおを札束ではたいて全国に原発をつくり、引き受けさせてきた。だからやめるとすれば別にお金が回る仕組みが必要になる。社会保障関連費は削れないし、景気動向で税収は変わってしまう。原発問題にしろ、貧困問題にしろ何かするには財源がいるのだけど、それが税金だけだと相当にハードルが高い、と」
 ――今は消費税を廃止しても、国の借金でお金は調達できると訴えています。
 「日本経済について勉強し直して、消費税こそ日本経済を弱らせるトリガーになったと考えるようになった。財源として二つ挙げています。ひとつは税制改革、もうひとつは国債発行。税制改革は累進制を強化し、大企業を特別扱いしない。所得税の最高税率を上げる。20年以上デフレが続く日本では経済の底上げが欠かせない」
 ――消費税を廃止すればその穴は20兆円を超えます。できます?
 「むしろできない理由がわからない。これまでの消費増税分は結局どこに行ったのか。かなりの額が所得税・法人税の減税分の穴埋めにあてられている。つまりお金持ちを優遇するために使われてきた。だから金があるところからとる、と言っているだけです。消費税とは要するに消費に対する罰金です。罰金なくすよ、と。それによって消費を喚起してお金を社会に回るようにしようと言っているんです。消費に対する税の影響力は大きい。新聞だって部数が落ち込むのが嫌だから、軽減税率の適用を求めたわけでしょう」
 ――では、なんでこれまでできなかったんでしょうか。
 「誰が得しているのか。自民党の屋台骨です。企業経営者や組織票をくれる人は、自分たちの利益を大きくしてほしい。企業にとってのコストは、人件費と自分たちが支払う税金です。当然コストカットしたい。それを政治が忖度(そんたく)してきた。でも財源は必要だから。そこに消費税がでてきた。政権をとっている人たちがそういう人たちだった」
 ――国の借金は膨大です。民主党政権時代でも財政健全化が大きな問題でした。
 「財政健全化ってなんですか? 逆に聞きたいんですけど。ある程度景気が回復しないと健全化なんてしようがないわけですよ。20年以上もデフレで、人々の生活も追い詰められているのに『健全化』ってなんなんだ、と」
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 ――かつては今ほど消費税の話はしていませんでしたよね。
 「世論調査をみれば、有権者が投票先を選ぶときに何を重視しているのかはっきりしています。目の前の生活なんですよ。安保法制も憲法改正も重要ですが、この問題でピンときて『やはり野党だな』という人がどれほどいるか。私自身重要な問題と思っているので政権奪取できれば、安保法制はなくします。でも、原発でさえ争点にならなかったのが日本社会です。一方で、消費税は誰しもが毎日払っている。自分ごととして引き寄せやすい。これに野党が取り組まなきゃ何をやるんだろう」
 ――れいわは参院選比例区で228万票を獲得しました。ただ他の野党の票を奪って、選挙後も野党共闘の足を引っ張っているという指摘もあります。
 「もっともらしくそういうことを言う人がいるんですけど、何の根拠があるんですか」
 「そもそも野党票を削るなんて『せこい』ことは考えていない。そんなことで政権なんてとれるはずない。私が一番リーチしたいのは投票を捨てた人たち。そこが最大の票田ですから。その人たちに『もう一度かけてみないか』と」
 ――野党共闘できないと、与党を利するだけではありませんか。
 「野党共闘して勝てるならとっくに政権奪取していますよ。『必ず投票に行きます』って層に野党が訴えるだけでは社会を変えられない。世の中が大きく変わるのは、今まで投票に行かなかった人が投票するときなんだから」
 ――れいわが注目された参院選投票率は48・80%、有権者の半分超が投票に行きませんでした。
 「あきらめたくなるような世の中ですからね。ギリギリの生活をしていて、自分の人生でさえも逆転できる要素がないのに、世の中を変えるなんてできるはずがないと思い込んでしまっている。でもそれはとんでもないことで、その人たちこそが鍵を握っている。あなたがいなくちゃ始まらない、と訴えていくことです」
 ――関心を引くためにできもしないことをやれると言う政治家をポピュリストと呼ぶことがあります。山本さんにも批判が向きます。
 「生活困窮に陥っている人を何とか救うのが政治で、それを実現すると訴えることがポピュリストなら、間違いなく私はポピュリストですね」
 「疑いの目を私たちに向けてくれていいんですが、他の政党に対しても、同じように厳しくチェックしていますか? デフレが放置され、人の命が奪われてきたと言って過言ではないのに、それにもかかわらずその責任がある自民党に審判が下されていない」
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 ――元々俳優でした。映画やバラエティー番組に出演していた。なぜ生活に苦しむ人たちのための政治にこだわっているんですか。
 「僕自身、生活に行き詰まったことは一度もありません。芸能事務所に入って、16歳のときから給料をもらい、同世代の中でも収入はずっと多かった。『やればできる、頑張ればできる』という世界観で生きてきたし、自分もそう考えてきた。今でも自分の人生だけ考えるなら別に政治に関わらなくてもやっていける自信がある」
 ――貧しい人の苦しみが自分はわかっている、と言っている印象があります。
 「原発事故があっていろんな人たちに会っていくうちに、貧困問題があったり、労働問題があったり、世の中は数々の問題であふれていたのに、何も知らなかった。自分はこの地獄のような世の中をつくった側の人間なんだと思い知らされました」
 「自分の力でやっていけると思っていても明日どうなっているかは本当にわからない。原発事故もそうでした。たとえどんな状況になったとしても、手をさしのべてくれるのが行政であり、国じゃないと生きていけない。これはみんなのための安全保障であり、自分に対する安全保障でもある」
 ――日本をどういう社会にしたいですか。
 「自助と共助というものを強調するような政治は変えなきゃならない。政治とは、人々が国のために何ができるという話ではない。国として人々の幸せをどう担保するのか。政府を小さくして自助と共助を強調してきて、日本は行き着くところまで行き着いてしまった。今必要なのは新しい大きな政府なんです」
 (聞き手・高久潤、稲田清英)
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 やまもとたろう 1974年生まれ。91年に芸能界デビュー。2013年の参院選で初当選。「生活の党と山本太郎となかまたち」を経て4月に「れいわ新選組」を設立。
長いけど、読んでみてください。