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新国立建設白紙撤回が財政健全化の第一歩

2015年07月14日 11時11分02秒 | 政治経済、社会・哲学、ビジネス、

                    

「植草一秀の『知られざる真実』」

                             2015/07/13

新国立建設白紙撤回が財政健全化の第一歩

          第1191号

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無駄な競技場を作るのに2500億円もの巨大な費用を投入できる財力がある
なら、消費税の更なる増税は必要がない。

こんな無駄満載の利権事業を放置しておいて、国民に過重負担を強制すること
はまったく正当化されない。

そもそも、オリンピックを日本に誘致する必然性はない。

政治に対する不満、政治に対する関心をそらすうえでオリンピック誘致は有効
だろう。

また、スポーツは新しい巨大利権産業である。

この視点で、利益拡大のためにオリンピックが熱望されていることも事実だ。

スポーツそのものを否定する考えはないし、アスリートを批判する考えもな
い。

しかし、オリンピックを喰いものにしようとする利権集団、シロアリ集団は百
害あって一利なしの存在だ。

そもそも、日本のメディアは、日本の財政事情がギリシャ並みだと宣伝し続け
る存在である。

本当に日本財政が崩壊寸前というなら、とてもオリンピックなどにうつつを抜
かしている状況ではないだろう。

財政事情も厳しいから、

「コンパクトな大会」

にすると言うなら、既存の施設を有効活用して、費用をかけずに、国民に負担
をかけずに開催するのが筋である。

現に、オリンピック招致活動では、

「都市の中心で開催するコンパクトな大会」

と銘打っていたのではないか。



ところが、オリンピック招致が決まると、様相がまったく変わった。

国立競技場を解体して、新しい国立競技場を作るという。

その費用に2500億円もの金を注ぎ込むことが推進されている。

しかも、そのデザインについては、惨憺たる悪評がつきまとっているのであ
る。

コンペでデザインが決定されたと言うが、そのコンペ自体が疑惑まみれの代物
である。

『月刊FACTA』2014年9月号は、

「新国立競技場に森・石原「密約」」

と題する記事の冒頭に、次のように記述した。

「ベチャッとつぶれたカブトガニに似て、誰が見ても醜い。余計な尾剣とビラ
ビラの鰭を切りとった見直し案でも、窮屈そうでおよそ建築の美とはほど遠
い。2020年東京オリンピックのメーン会場となる新国立競技場の基本設計案の
ことである。」

このデザインを絶賛する専門家はほとんどいない。

FACTA記事は

「「出来レース」? 安藤コンペ」

の見出しを付けて、次のように記述した。

「コンペ自体が問題だった。審査委員会は委員長の安藤ら10人だが、46応募作
品からザハ案に絞っていく過程が、東京新聞の情報公開請求で明らかになっ
た。

最後はザハ案とアラステル・リチャードソン案と妹島和世案の三つに絞られ、
安藤がまず妹島案を落とした。

二次選考で最終判断を委ねられた安藤は「日本の技術力のチャレンジになる」
という理由でザハ案に決めたが、関係筋は「出来レース」と解説する。」

大きな問題になっている新国立競技場は、デザイン選定の過程から、疑惑が渦
巻く問題案件だったのである。

安倍政権は野田政権時代に決定されたと自己弁護するが、野田政権も安倍政権
も利権まみれ、利権複合体政権である点において、まったく相違はない。

目くそ鼻くその類いである。



安倍晋三氏は、新しいデザインを決定して新競技場を差し替えることは時間的
に難しいと言うが、そんなことで、血税を無駄な施設に投入することが許され
るわけがない。

建設が無理なら、大会開催を返上する決定を急げばよいだけのことだ。

日本の主権者の多数が、新国立競技場建設の現状案に反対している。

この声を無視することは許されない。

財政事情が逼迫していると政府が喧伝するなかで、2500億円、恐らくはそ
れ以上に膨らむであろう箱もの建設への無駄遣いを放置してよいわけがない。

直ちに建設計画全体を見直し、差し替えるべきである。



1996年以降のオリンピック開催地におけるメインスタジアム建設費用は以
下の通りである。

1996年 アトランタ 254億円

2000年 シドニー 660億円

2004年 アテネ 355億円(改修)

2008年 北京 513億円

2012年 ロンドン 600億円

2016年 リオデジャネイロ 550億円(改修)

2020年 東京 1625億円→2500億円

これを見ても、新国立競技場の建設費が飛び抜けて大きいことが一目瞭然であ
る。



箱もの建設の場合、政治屋に建設費の5%がキックバックされる、というのは
業界関係者の共通認識である。

箱ものに巨大な費用を投入することは、建設業者およびシロアリ政治屋にとっ
ての大きなメリットなのである。

新国立については、先述の「月刊FACTA」が次の事情を伝える。

「新国立? ああ、あれは2016年東京五輪招致失敗後、森喜朗元首相と石原慎
太郎都知事(当時)が交わした密約があるんですよ。国と都で建て替え費用を
折半するという密約がね。それが生きてるんです」

「国立競技場の運営主体、独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)に
よるコンペがほとんど密室で強行された理由も、この密約に帰す。

12年3月にJSCは新国立建設計画のため有識者会議を立ち上げるが、14人の委員
のうち建築家は安藤忠雄(72)だけで、森も名を連ねていた。

有識者会議はたった2回、下部の三つのワーキンググループも2~4回しか開か
ず、8カ月後にザハ案に決めてしまう。」

何と醜悪な実態であるか。



NHKはギリシャ情勢を報道する際に、ギリシャと日本を比較することを忘れ
ない。

日本の政府債務の対GDP比がギリシャよりも悪いと強調する。

たしかに日本の政府債務金額は1000兆円を超えている。

しかし、財務省とNHKが絶対に報道しない、もうひとつの重要な数字があ
る。

それは、政府資産残高だ。

2013年12月末時点の政府債務は

1167.1兆円。

たしかに1000兆円を突破している。

GDPの2倍以上の規模だ。

しかし、政府資産に目を転じると、驚くべき数値が記載されている。

2013年12月末時点の政府資産規模は

1167.5兆円

なのである。

政府資産の規模は、政府債務規模をわずかに上回っている。

財務状況を判断するときに、債務規模だけを見る馬鹿はいない。

資産とのバランスにおいて財務状況は判断される。

日本の場合、政府債務が1000兆円だが、政府資産も1000兆円あるの
だ。

これを財政破綻の危機と呼ぶ者は一人もいない。



NHKは日本財政がギリシャよりも悪いとの、虚偽情報を流布している。

その理由は、財務省が画策する消費税再増税を推進するためである。

箱もの建設には無駄な利権支出を満載にして、他方で、日本の主権者に過酷な
負担を強いる。

残念ながら、日本の政治は、あまりにも貧困なのである。

財政支出には法外な無駄が盛り込まれている。

法外な無駄の原因は、

利権政治屋と利権業者と利権官僚へのバラマキが絶えないことにある。

他方で、国民の生命と生存と生活を支えるための支出は冷酷に切り刻まれてい
る。

プログラム支出を切り、利権支出を温存するのが、現在の財政運営の基本精神
である。

この基本精神に裏打ちされて、消費税大増税が強行されている。

日本の主権者が目を醒まし、財政の構造、政治の構造を直視して、こうした腐
敗した状況に

NO

を突き付けなければ、日本の利権政治屋と利権官僚は、今後も横暴の限りを尽
くすだろう。

この現状を変える第一歩が、新国立競技場建設計画の白紙撤回である。





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