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レフティやすおの新しい生活を始めよう!

50歳からが人生の第二段階、中年の始まりです。より良き老後のために良き習慣を身に付けて新しい生活を始めましょう。

2025年8月13日は50回目の<国際左利きの日>INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY

2025-08-13 | 左利き
今年2025年の8月13日は、1976年の第一回から、50回目の8月13日<国際左利きの日>になります。
(詳細は、以下に↓)

 ・・・

毎年書き続けていることですが(継続は力、といいます)、
8月13日の<国際左利きの日>を日本語でGoogle検索しますと、
《イギリスにある「Left-Handers Club」という団体により、1992年に制定》といった結果が上位に登場します。
以前は上位10件すべてこの調子、ということもありました。

でも今年は違いました。
7番目にこういうのが出ていました。


8月13日は49回目の「国際左利きの日」INTERNATIONAL ...
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/0c08203a44b3c0b279250570c69aa9d2

元の記事は、
「レフティやすおのお茶でっせ」版 2024.08.13
8月13日は49回目の「国際左利きの日」INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY――始まりは1976年アメリカ
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/08/post-2af44d.html


次に<左利きの日>で検索しますと、こっちは残念ながら大半が「1992年イギリス説」でした。

私の上記のブログ記事は、14番目でした。

8月13日「(国際)左利きの日」について調べるのなら、英語の<INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY>で、検索していただくのが一番です。
外国で始まった行事ですので。
イギリスにしろ、アメリカにしろ、英語の国ですので、英語で調べるのがベストでしょう。

もちろん、現役で頑張っているイギリスの「Left-handers Club」は偉大ですが、先駆者も忘れて欲しくはありません。


 ●イギリスの「Left-handers Club」からのメールには――「our first ~ 」

ついでに書いておきますと、今年8月3日に届いたイギリスの「Left-handers Club」からのメール「Lefthanders Day 2025 - Special Offers & more」には、
This August 13th, Anything Left Handed is celebrating 33 years since we launched our first Left Handers Day,
(筆者訳)この8月13日、エニシング・レフト・ハンデッドは、33年お祝いし続けています、私たちの最初の「レフトハンダーズ・デイ」を始めてから。
とあります。
続けて以下の商品を、8月1日から14日までの2週間「信じられない33%のディスカウント」で販売するとも、ありましたね。

ここで、明確に書かれていますように、「Anything Left Handed(エニシング・レフト・ハンデッド)」が、「our first Left Handers Day(私たちの最初のレフトハンダーズデイ)」を始めてから33年祝い続けている、ということです。
あくまでも「私たちの~」であって、何も「世界で最初に私たちが始めてから」と書いていない、という事実です。


 ●世界で最初の「レフトハンダーズ・デイ」

話を戻して、世界で最初の「レフトハンダーズ・デイ」について書いておきます。

昨年の上記記事から、そのまた前年(2023年)の文章を孫引きしておきます。


『レフティやすおのお茶でっせ』2023.8.12
8月13日国際左利きの日を前に~メディアに注文-週刊ヒッキイ第647号
goo「新生活」版

--
 
英語の「International Lefthanders Day」
 「International Lefthander's Day」等で検索しますと現れます、
 英語版のWikipediaやその他の左利き系サイトには、

 (私の英語読解力に誤りなければ)
 1976年、アメリカ・カンザス州の州都トピカに開店した
 左利き用品店のオーナー、ご自身左利きである、
 ディーン・キャンベル(Dean R. Campbell)さんが、
 開店一周年を機に左利きの人の会(Lefthanders International)を始め、
 左利きの人の生活向上のために左利き用品の普及を目指し、
 開店記念日にあたる<8月13日>を
 「国際左利きの日」(INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY)という
 記念日に制定したのです。

--

昨年の記事の写真も再掲しておきます(三番目は、今回新規に追加)。


(画像:英語版ウィキペディアの「INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY」の項目冒頭――下線部分:「国際左利きの日」は「レフトハンダー・インターナショナル」の創設者ディーン・R・キャンベルによって1976年に最初の祝祭が行われた-2021.8.13)


(画像:1993年11・12月号~1996年3・4月号 定期購読していた、アメリカ・カンザス州トピカのディーン R. キャンベルによって設立された「Lefthanders International」発行の隔月刊の雑誌「Lefthander Magazine」から、チェアマンのキャンベルさん)


(画像:ディーン・R・キャンベル(Dean R. Campbell)さんがチェアマンを務めるアメリカの左利きの人の会「レフトハンダーズ・インターナショナル(Lefthanders International)」が発行していた左利きの人のための隔月刊の雑誌「レフトハンダー・マガジン(Lefthander Magazine)」1995年7-8月号(JULY/AUGUST 1995)の「国際左利きの日」を祝う記事の一部――《"Some 20years ago"(約20年前)》の文字が見える)


来年は、この「goo」ブログ版の記事は消滅してしまいますので、どうなるかわかりません。

この記事なり、過去の私の記事なりが上位に入ってくることを祈っています。
っていうか、何年も前から言っている、たぶん日本における誤認識の元凶だと思われます、日本語版ウィキペディアの記述が改められれば済む問題、だと思うのですけれど。


ちなみに、左利きの本の類いで、この「国際左利きの日」の情報を正しく記述している日本人による著作は、私の知るところでは、

『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉/著 PHP新書 2023/9/16



『左利きあるある 右利きないない』左 来人/著 小山 健/イラスト ポプラ社 2017/2/7



ぐらいでしょうか。

*参照:上記昨年の記事より
『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉/著 PHP新書 2023/9/16
――旧著『見えざる左手』から二十数年、新たに「日本左利き協会」を設立された発起人の一人として、左利きの問題に取り組んだ著作。
 「国際左利き日」については、イギリス「Left-Handers Club」による活動を紹介する箇所の注に、始まりは1976年アメリカのキャンベルさんによると明記している。



 ●50回目の記念日

1976年の第一回から数えますと、今年はなんと50年、50回目となります。

50年記念といいましても、私は別になにもいたしませんけれど。
どなたが何かしていただければ、幸いです。

ちなみに、8月13日の「国際左利きの日」の行事で記憶に残っているのは、飲食店でお箸を右向き(⇒)に置く運動を続けておられた「レフチャス」という活動がありました。

2007年8月13日から始まり、2019年8月までは、Facebookに情報が残っています。
しかし「レフチャス」サイト(http://www.lefteous.jp/)は消えています。
2020年に始まったコロナ禍により外食産業や旅行業界は大きな被害を受けました。
「レフチャス」運動も被害を免れなかったようで残念なことです。

*参照:
LEFTEOUS - Facebook



『レフティやすおのお茶でっせ』の「レフチャス」過去記事
・2007.8.14
少数派の気持ち伝える「左利きの日」企画開催される
・2013.8.18
レフチャス(LEFTEOUS)day2013:<国際左利きの日>情報2
■ お箸を左右逆さまに置くイベント/お箸をいつもと反対に置くことで、左利きの人たちの感じる違和感を右利きの人たちに楽しんでもらうイベント》【レフチャスDAY2013】fecebookより

・2016.8.10
今年もやります!8月13日レフチャス(LEFTEOUS)の日―国際左利きの日
今年もやらせてもらいます!8月13日レフチャスの日。
今年は、「れふ茶す」!みなさんをレフチャスのお茶の世界へご招待します。
(略)お散歩がてら、マイノリティの気持ちを体験にいらっしゃいませんか?



 ●この一年に出版された<左利き関係の本>を紹介

最後に、この一年のうちに新たに出版された<左利き関係の本>を紹介しておわりにします。

「できるかな絵本」シリーズ
『おはしを じょうずに もてるかな』深見春夫 作・絵 岩崎書店‎ 2024/11/18


岩崎書店サイトより

おはしを じょうずに もてるかな


 
左ききも大丈夫!箸の持ち方がわかる絵本

 
おはしの正しい持ち方をわかりやすく、ていねいに伝えます。/
 右きき、左きき、どちらでもおはしをじょうずに持てるようになる、
 画期的な絵本!


右手例と左手例が対等に、同じ大きさで説明されています。
しかも、ちょっとお姉さんふうの「左手」さんが幼児ぽい「右手」ちゃんに教えるという設定になっています。
この点は、いつも嫌な思いをしてきた私のような左利きさんには、少しですが優越感のようなものを感じさせてくれて、ちょっと溜飲が下がるといったところでしょうか。

*参照:
メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!)
第689号(Vol.21 no.12/No.689) 2025/7/5
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ―特別編―
右利きも左利きも共存のお箸持ち方絵本
『おはしを じょうずに もてるかな』」

ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2025.7.5
<親御さんへ>特別編―左右共存お箸持ち方絵本『おはしをじょうずにもてるかな』-週刊ヒッキイ第689号
goo「新生活」版



参照:ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』―過去の「8月13日は<国際左利きの日>」の関連記事

・2024.8.13
8月13日は49回目の「国際左利きの日」INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY――始まりは1976年アメリカ
goo「新生活」版
・2023.8.12
8月13日国際左利きの日を前に~メディアに注文-週刊ヒッキイ第647号
goo「新生活」版
・2022.8.13
2022年8月13日左利きの日INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY合併号-週刊ヒッキイ第624号
goo「新生活」版
メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
 第624号(No.624) 2022/8/13
 「2022年8月合併号―「8月13日は国際左利きの日」―」
・2021.8.12
8月13日「国際左利きの日」を前に、左利きメルマガ「週刊ヒッキイ」創刊600号達成
goo「新生活」版
・2021.8.7
「左利き差別」問題と「みにくいアヒルの子」-週刊ヒッキイ創刊600号記念号
goo「新生活」版
・2020.8.12
2020年8月13日は1976年の制定から45回目の国際左利きの日
・2019.8.13
8月13日は国際左利きの日-1976年の制定より今年は44度目
・2018.8.13
8月13日国際左利きの日ILHDとAKB48Team8左利き選抜のことなど
・2017.8.13
8月13日はハッピーレフトハンダーズデー!
・2016.9.1
8月13日は〈国際左利きの日〉特別編-左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii第474,475,476号
・2016.8.14
昨日(8月13日)アメブロで「今日は左利きの日」をやってました
・2016.8.10
今年もやります!8月13日レフチャス(LEFTEOUS)の日―国際左利きの日
・2015.8.12
明日8月13日は1976年制定から40回目の国際左利きの日
・2014.8.12
8月13日は39回目の国際的な<左利きの日>&LEFTEOUS2014年
・2013.8.13
8月13日<国際左利きの日>企画「ヒダリキックマガジン」で始まる!
・2013.9.2
『グリグリくりぃむ』左利き選手権:<国際左利きの日>情報5
・2013.8.28
ブログネタ「両利きになる練習したことある?」:<国際左利きの日>情報4
・2013.8.19
雑学フェアにて~渡瀬けん著『左利きの人々』:<国際左利きの日>情報3
・2013.8.18
レフチャス(LEFTEOUS)day2013:<国際左利きの日>情報2
・2013.8.13
8月13日<国際左利きの日>企画「ヒダリキックマガジン」で始まる!
・2012.8.12
8月13日は37度目の“左利きの日”
・2011.8.13
国際“左利きの日”を迎えて&週刊ヒッキイ273号特別編「個人モデル」から「社会モデル」へ
・2010.8.21
今週の-週刊ヒッキイhikkii225名作の中の左利き(番外編)はさみ
・2010.8.14
今週の-週刊ヒッキイhikkii224《矯正/直す》表現に思う(5)前編
・2010.8.13
13日の金曜日はナント…左利きの日
・2009.8.22
今週の週刊ヒッキイ―第193号「<左利きプチ・アンケート>再版第33回」
・2008.8.13
33回目の8月13日国際左利きの日
・2007.8.14
少数派の気持ち伝える「左利きの日」企画開催される
・2006.8.13 
きょう8月13日は≪国際≫左利きの日です
・2005.8.13 
今年も今日8月13日はINTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY
・2004.8.13 
きょう8月13日はINTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY 「左利きの日」
・2004.8.12 
明日8月13日は「左利きの日」


カテゴリ:8月13日国際左利きの日

カテゴリ:2月10日左利きグッズの日


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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載

" target="_blank">2025年8月13日は50回目の<国際左利きの日>INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY

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7月25日、神戸新聞くらし欄に左利き用品オンラインストア「左ききの道具店」紹介される

2025-08-11 | 左利き
【1976年から、50回目の8月13日<国際左利きの日>をまえに】
(※末尾に詳細を↓ )

 ・・・

兵庫県の30年来の右利きの“支援者”である友人からの一報です。
(この方は、現在、聴覚障害者の支援を仕事にされています。
 筆者と知り合い、「左利き」という「少数派」の「社会的弱者」に接したことが、「社会的弱者」の存在に気付き、その支援者となる決心をするきっかけになったのかも……、と勝手に想像しています。)

 ・・・

神戸新聞7月25日(金)の“くらし”欄に、「左ききの道具店」(オンライン販売、岐阜県各務原市に実店舗)の店長・加藤礼(あや)さんが登場。
お店や左利き用品と共に紹介されていました。


左ききの道具店(https://hidari-kiki.jp/)


左利き、専用グッズで快適に》の見出しのもと、前説として
 左利きの人にとって、左利き用の使いやすい道具は重宝されるアイテム。そんな人向けに実用的でおしゃれな用品を扱う「左ききの道具店」(岐阜県各務原市)が人気を集めている。自身も左利きという店長の加藤礼(あや)さん(46)は「暮らしが快適になったり、料理や勉強などが少しでも楽しいものになったりすればうれしい」と笑みを浮かべる。
とあります。

次に《オンライン販売、岐阜に実店舗》と小見出しが出ています。
まずは、日本人の約一割は左利き、右利きを前提に製造された道具は多いが、左利き用は数もバリエーションも少ないという現状を紹介しています。
さらに、《左右兼用も》と小さく、《台所用品や文房具100種以上》と大きめの見出し。

内容は、
 昔は、左利きの子どもが親に右利きに強制されるケースが珍しくなかった。加藤さん自身も箸は右手に持てるように直したが、筆記はどうしても左手の方が書きやすく、変えられなかった。「隠れて左手で書いて、怒られたこともあった」
といいます。

この「お箸は右で筆記(書字)が左」というのは、筆者の経験からいいますと、非常に稀な例ではないか、と思います。
筆者の知る“どちらかのみ左右転換成功派”(元々左利きだけれど、○○は右使いになった)の人の場合、「お箸など食べるのは元々の左使いで、字は右使いに変わった」という人が多かったものです。
やはり食べるのは本能的な行動で早い時期から始まりますが、字を書くのはある程度年齢がいってから始まる教育的な行動です。
そのへんに原因があるのでは、と筆者は考えています。
「隠れて左手で書いて、怒られたこともあった」という経験は、本当に悲しいものです。
右利きの人でこういう経験をする人はまずいないでしょう。
上に紹介したお箸を変えられなかった人のなかには「隠れて弁当を食べていた」という人がいました。
これも悲しい経験でしょう。
筆者は、外食が苦手でした、人前で字を書くのも嫌なものでした。


さて、こうして加藤さんは、自身の経験や
買いたいと思える左利きの道具があまり見つからなかったことから、2018年に左利き御人のためのオンラインショップをオープン
しました。
加藤さん自身が使って良かったという製品や、
品質やデザインが良い100種類以上を販売している

2023年に実店舗での営業も始めましたが、月に4、5回程度の不定期とのこと。
「みんなが使いやすければそれがベスト」
という加藤さんのお考えで、
左利き、右利きどちらでも使いやすい商品も積極的に取り扱っている
という方針のようです。

この点ですが、左右性のある道具類では、左用が絶対必要です。
例えばハサミや片刃の刃物類、料理道具ではフライ返し(ターナー)、バターナイフなど。
しかし、左右性のない道具、例えばお箸などは絵柄さえ横配置でなければ、どちらでも使えます。
スプーンなどの左右対称の道具類は、そのままで右手左手に関係なく使えます。
(ただし、へんに角度をつけた右手用のようなスプーンも時にはありますが。)

そういう観点から「何が何でも左利き専用」と力み返ると、かえって消費者に優しくない価格になってしまうケースもあります。
どうしても譲れない部分と譲り合える部分をうまく調整することが重要でしょう。

このお店特有の「左右兼用の商品」例として、初期に発売されていたシロクマさんの「左右兼用オリジナルクリアファイル」というのがありました。
切り欠き部分が左右にあり(位置が上下にずらしてある)、どちらからでも利用できるというものでした。


(画像:シロクマの左右兼用「左ききの道具店」オリジナル・クリア・ファイル)

「左利き専用の商品」例として、このお店オリジナルの商品の一つとして有名な「左利き用の手帳」があります。

この新聞紙上では、「左利き用の手帳」や左右どちらでも使いやすいレードルや左利き用のフライ返し等が写真で紹介されていました。


この「左利き用の手帳」は、初めはクラウドファンディングで製作されたと記憶しています。
新規に左利き用の商品を開発するというのは、メーカーさんにとっても冒険のようで、左利きのユーザーの意見は通りにくいものです。

左利き用品店の場合、どうしても取り扱う商品の性質上、一般人のお客様にとって消耗品ではないものが多く、どうしても一回ポッキリの購入が多くなります。
経営上、左利きという限られたユーザーが顧客となりますので、常に新鮮な商品の確保というのが、ポイントになると思われます。

新商品に果敢に挑戦する姿勢は、これからも大事にしていただきたいものです。
また、私たち左利きのユーザーも、メーカーさんや販売店さんの心意気をむだにしないように、できる範囲で協力したいものです。

このお店も、8月13日の<国際左利きの日>にオープンだった、と記憶しています。
今年もその記念日が近づいています。
この機会に大いにお店の存在と商品のあれこれを大いにアピールしてほしいものです。

(ちなみに、『左ききのブログ』の「みんなで祝おう! 8月13日は「左利きの日」」の説明に誤りがあります。訂正をお願い致します。
 詳細は↓に書いております。)

今後もかわらず、新商品の開発や世界中からの発掘、そして第一に永年継続しつづける安定経営を期待しています。

世界的に見ましても、左利き用品のお店というのは、かつて結構ありました。
1990年代の半ば過ぎぐらいが一つのピークだったかも知れません。
当時筆者が定期購読していたイギリスの左利きの会「Left-Handers Club」の雑誌「The Left-hander」のなかで世界各地の支店? の紹介が出ていたものがありました。
その後、こういうお話は出なくなり、たぶんその多くが閉店されたのではないか、と考えています。
海外旅行者の間でもあそこにあった、ここにあったといった情報が飛び交っていたものでしたが、いつしか聞かなくなりました。
それらも、たぶん閉店の憂き目に遭ったということではないか、と考えています。
どうしても左利き用品店の場合、主だった製品がお客さまに一巡してしまいますとリピーターではなくなってしまう、という事情があるのではないでしょうか。


「左ききの道具店」さんの今後の方向性として、できれば文具や調理道具といった生活用品のみならず、もっと広く「趣味」の世界の道具類にも領域を広げてもらえれば、うれしく思います。
今、筆者は、楽器類の左用について、メルマガで可能性を探っています。
そういう展開も考えてもらえればいいなあ、という思いがあります。
例えば、子供用の鍵盤ハーモニカのような商品を!

 ・・・

「国際左利きの日」(INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY)の始まり――
1976年、アメリカ・カンザス州の州都トピカの左利き用品店のオーナーで自身左利きである、
ディーン・キャンベル(Dean R. Campbell)さんが、開店一周年を機に、
左利きの人の会(Lefthanders International)を始め、
左利きの人の生活向上のために左利き用品の普及を目指し、
開店記念日にあたる<8月13日>を「国際左利きの日」(INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY)という記念日に制定し、行事を開催した。


(画像:英語版ウィキペディアの「INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY」の項目冒頭――下線部分:「国際左利きの日」は「レフトハンダー・インターナショナル」の創設者ディーン・R・キャンベルによって1976年に最初の祝祭が行われた-2021.8.13)

(画像:1993年11・12月号~1996年3・4月号 定期購読していた、アメリカ・カンザス州トピカのディーン R. キャンベルによって設立された「Lefthanders International」発行の隔月刊の雑誌「Lefthander Magazine」から、チェアマンのキャンベルさん)

(画像:ディーン・R・キャンベル(Dean R. Campbell)さんがチェアマンを務めるアメリカの左利きの人の会「レフトハンダーズ・インターナショナル(Lefthanders International)」が発行していた左利きの人のための隔月刊の雑誌「レフトハンダー・マガジン(Lefthander Magazine)」1995年7-8月号(JULY/AUGUST 1995)の「国際左利きの日」を祝う記事の一部――《"Some 20years ago"(約20年前)》の文字が見える)

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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
--
--
『レフティやすおのお茶でっせ』より転載

" target="_blank">7月25日、神戸新聞くらし欄に左利き用品オンラインストア「左ききの道具店」紹介される

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7月12日、元SKE48須田亜香里さんのドラゴンズ戦サウスポー始球式

2025-08-10 | 左利き
【1976年から、50回目の8月13日<国際左利きの日>をまえに】
(※末尾に詳細を↓ )

 ・・・

(左利きの芸能人等による<サウスポー始球式>の拾遺です。)

脚がピン!元SKE48・須田亜香里が衝撃始球式 白ミニスカ姿で豪快脚上げにバンテリンDどよめき 見事ノーバンに飛び跳ねガッツポーズ
によりますと、
名古屋出身の元SKE48須田亜香里さんが、7月12日のバンテリンドームで行われた「中日-広島」戦で始球式に登場。
中日のユニホームに白のミニスカート姿でピンと脚を伸ばしての豪快フォームで観客を沸かせて、ボールは見事ノーバウンド、とのこと。

(画像:始球式に登場した須田亜香里(撮影・市尻達拡)((C)デイリースポーツ))







「ネオドラちゃんねる」のYouTube
元SKE48の須田亜香里による始球式!!足を大きく上げた投球に会場から驚きの声が上がる!(2025/7/12)


*【過去の<サウスポー始球式>】:
・2025.8.1
7月31日、二宮和也さんがガンホー協賛ロッテ戦でサウスポー始球式

・2024.8.16左利きの鈴木福くん、大好きな広島カープでマエケン体操から入ったサウスポー始球式
「新生活」版
・2024.8.48月1日「日本ハム-オリックス」戦でGACKTさんサウスポー始球式
「新生活」版
・2024.4.8元卓球女子五輪メダリスト石川佳純さんがサウスポー始球式
「新生活」版
・2023.9.3西武ライオンズファンの乃木坂46向井葉月さんが左腕で初始球式
「新生活」版
・2022.5.18サウスポー始球式二連発(1)5月14日玉木宏(2)5月15日新川優愛、プロ野球西武-楽天戦で始球式
「新生活」版
・2022.3.21サウスポー“スーパーガール”桃月なしこが始球式で左腕から大暴投
「新生活」版
・2021.11.22左利きの女優・吉高由里子さんが4年ぶりプロ野球日本シリーズ第2戦でサウスポー始球式
「新生活」版
・2021.4.2
左利きの女優・森七菜さんのサウスポー始球式
「新生活」版
・2018.4.19
地元アイドルNegiccoのKaedeさんが左投げで新潟知事の代役始球式
「新生活」版
・2017.10.30
吉高由里子がサウスポーで伸びやか始球式 日本シリーズ第2戦
・2017.6.15
左利きの女優・剛力彩芽さん、四度目の始球式登板も…
・2017.5.26
サッポロビールイメージガール川辺優紀子さんの左利き始球式
・2017.5.7
女優の松井愛莉さんがサウスポー始球式
・2017.5.2
ピンクラインのサウスポー、女優でモデルの新川優愛さんが始球式
・2016.8.17
左利きのSKE48日高優月(ひだかゆづき)が始球式
・2016.7.23
左利きの女優すみれさん左腕で始球式
・2016.6.29
左利きの剛力彩芽さんの3度目の始球式は大暴投: レフティやすおのお茶でっせ
・2016.6.5 AKB48Team8/AKB48TeamB兼任の坂口渚沙さん (画像のみ)
AKB48選抜総選挙、暫定21位倉野尾成美・同53位坂口渚沙はTeam8の左利き
・2016.3.7
左利きのあっちゃん前田敦子の始球式

・2014.8.6 右利きの石原さとみさんの左投げ(撮影で右腕を痛めたということで「サウスポーでやります」と宣言。)
終わったはずのクチコミ「右利き? 左利き?」がまた

・2013.12.4 体操新技「シライ」の白井健三選手
体操新技「シライ」の白井健三選手は左利き
・2011.5.12 『五体不満足』の著者の乙武洋匡さん
乙武洋匡さんのサウスポー始球式
・2004.11.11 アテネオリンピック女子マラソン金メダリストの野口みずき選手
素敵な光景:野口選手の左利きの始球式

*【カテゴリ:<サウスポー始球式>

※「国際左利きの日」(INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY)の始まり――
1976年、アメリカ・カンザス州の州都トピカの左利き用品店のオーナーで自身左利きである、
ディーン・R・キャンベル(Dean R. Campbell)さんが、開店一周年を機に、
左利きの人の会(Lefthanders International)を始め、
左利きの人の生活向上のために左利き用品の普及を目指し、
開店記念日にあたる<8月13日>を「国際左利きの日」(INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY)という記念日に制定し、行事を開催した。


(画像:英語版ウィキペディアの「INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY」の項目冒頭――下線部分:「国際左利きの日」は「レフトハンダー・インターナショナル」の創設者ディーン・R・キャンベルによって1976年に最初の祝祭が行われた-2021.8.13)


(画像:1993年11・12月号~1996年3・4月号 定期購読していた、アメリカ・カンザス州トピカのディーン・R・キャンベルさんによって設立された「レフトハンダーズ・インターナショナル(Lefthanders International)」発行の左利きの人のための隔月刊の雑誌「レフトハンダー・マガジン(Lefthander Magazine)」から、チェアマンのキャンベルさん)


(画像:ディーン・R・キャンベル(Dean R. Campbell)さんがチェアマンを務めるアメリカの左利きの人の会「レフトハンダーズ・インターナショナル(Lefthanders International)」が発行していた左利きの人のための隔月刊の雑誌「レフトハンダー・マガジン(Lefthander Magazine)」1995年7-8月号(JULY/AUGUST 1995)の「国際左利きの日」を祝う記事の一部――《"Some 20years ago"(約20年前)》の文字が見える)

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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載

" target="_blank">7月12日、元SKE48須田亜香里さんのドラゴンズ戦サウスポー始球式

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週刊ヒッキイ第691号-楽器における左利きの世界(33)まつのじんさんのご意見(2)右手と左手

2025-08-08 | 左利き
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!)
【最新号】

第691号(Vol.21 no.12/No.691) 2025/8/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(33)
過去のブ左利きのヴァイオリニストまつのじん(松野迅)さんの
ご意見から考える(2)右手と左手・他」



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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
  【左利きを考える レフティやすおの左組通信】メールマガジン
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第691号(Vol.21 no.12/No.691) 2025/8/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(33)
過去のブ左利きのヴァイオリニストまつのじん(松野迅)さんの
ご意見から考える(2)右手と左手・他」
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 前々回、過去6回に渡ってご紹介しました、
 左利きのヴァイオリニストまつのじん(松野迅)さんの
 左利きに関するサイト、エッセイ集の左利きに関する文章をヒントに、
 私なりに左利きにおける楽器の演奏について考えようという企画の下、
 私自身の「うれしかった情報」について書きました。
 今回は、その二回目です。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆

 {左利きの人は左利き用の楽器で演奏しよう!}

- 「左利きに優しい社会」づくりは左用楽器の普及から! -

 左利きと楽器演奏について考える

  左利きのヴァイオリニスト・まつのじん(松野迅)さんの
   ご意見から考える(2)右手と左手・他

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●まつのじん(松野仁)さんの左利きエッセイ

まつのじん(松野仁)さんの本とサイトの左利きエッセイは下のとおり


著作:
『すみれのスミレの花かご ヴァイオリンのある喫茶室』松野迅
 未來社 1992/1/1

a.「II マイ・プライベート・ライフ」<涙のひだりきき>


第676号(Vol.20 no.21/No.676) 2024/12/7
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(27)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(2)」
【最新号・告知】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.12.07
週刊ヒッキイ第676号-告知-楽器における左利きの世界(27)まつのじん(2)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/12/post-55f0a7.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/3b193894c6d7a3499fa16569f8282e7a

サイト:
 まつのじんのエッセイ&書評 Essays(Japanese)
b.「ゴーシュからの左右考」2019年7月27日
http://mjin.m1001.coreserver.jp/2019/07/27/%e3%82%b4%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%a5%e3%81%8b%e3%82%89%e3%81%ae%e5%b7%a6%e5%8f%b3%e8%80%83/


第674号(Vol.20 no.19/No.674) 2024/11/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(26)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(1)」
【最新号・告知】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.11.02
週刊ヒッキイ第674号-告知-楽器における左利きの世界(26)まつのじん(1)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/11/post-9afc9f.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/c61c87eab970c035e076d6c9e5e0876d

c.「左ききは、アカン!? WHO is LEFTY■(?の倒立像)」
(2019年8月13日)
http://mjin.m1001.coreserver.jp/%e3%83%92%e3%83%80%e3%83%aa%e3%82%b9%e3%83%88/


 ●利き手は、「好み」と「巧みさ」

b.「ゴーシュからの左右考」から――

 《わたくし、まつのじんは、
  幼い頃からヴァイオリンを演奏してまいりました。
  楽器(Violin)を左手に、弓(Bow)を右手に持って演奏しています。
  (略)
  幸せなことに私は左利きで、同時に「左手利き」です。
  ヴァイオリンを演奏する際、私の右手が持つ弓はなかなか思い通りに
  動いてはくれません。私はそれもひとつの個性と捉えながら、
  今もなお楽しく、時に厳しくつきあっています。》


「左手利き」なので、

 《私の右手が持つ弓はなかなか思い通りに動いてはくれません。》

といいます。

当然といえば当然のことでしょう。
だって、「左手利き」なんだもん! です。

利き手というものには、二つの性質があります。
一つは「好み」といわれるもの。
もう一つは「巧みさ」です。

「好み」というのは、
特に理由はない(理由は利き手だから、です!)のですが、
「つい使ってしまう側の手」ということです。

「巧みさ」は、説明の必要はないでしょう。

で、この二つの性質を鑑みて、先のまつのさんの言葉がいかに当然か、
は分かりますよね。

利き手ではない右手が思い通り動いてくれない、当然のことでしょう。


 ●「まつのじん稽古場」

このあと、

 《「まつのじん稽古場」には、左(手)利きの方々が
  自然に参集しています。》

とあります。

これも当然のことでしょう。

 《楽器や社会、そして人間関係と向き合う中で、各々が悩みと苦闘の
  体験の末に出逢った、かけがえのない接点を持っているのです。》

同じ悩みを共有できる「仲間」「同志」なのですから。

私にもこれだけの師匠がいれば、もっと活躍できたのでしょうけれど、
残念ながら、出会う機会がありませんでした。

今ならいろんなSNSなどでつながりを持つ機会がありますけれど。
昔は今のように知らない人同士で出会う機会が少なかったのです。

左利きは「組織化されていない数少ない少数派」といった言い方を
されます。
しかし、それはあくまでも、漠とした共通性のない現場でのことです。

「まつのじん稽古場」のような親密な集団が生まれるケースは、
実際の仕事上の困難さによるのでしょう。
音楽家、なかでもヴァイオリニストのような人々は、
非常に限られた職人さんというイメージですので、
そういう特殊な職業の場合には、また違うのかも知れません。

次に紹介します、まつのさんの著作にこうあります。

 《 左利き特有の演奏上の苦労は、本当は左利き同士でないと
  分かり合えないだろうと思う。》

 《 人知れぬ苦労を
  胸にしまって、左利きは成長していくのだ。》p.100


 ●左利きのままで育つ

a.『すみれのスミレの花かご』
「II マイ・プライベート・ライフ」<涙のひだりきき>から――

 《 小学校に入る前から、僕は左利きだった。文字を書くのも、
  絵を描くのも、箸を持つのも左である。それで、
  不自由を感じたことは、子供の頃はただの一度もなかった。
   しかし、いろんな人から言われて戸惑った記憶はある。
  「お箸を持つ手が右手で、お茶碗を持つのが左手でしょ」。
  その度に、ずいぶん困ったのである。》p.96

子供の頃から「左利き」で、
字も箸もという典型的な「左利き」だったようです。
「右と左」の混乱は、左利きの子供によくある悩みですね。

左利きの子にとっての最初で最大の危機というものがあります。
それは、左利きの「矯正」(右手使いへの転換させられること)、
もしくは「強制」です。

 《さいわい、僕には誰も、そんな強制はしなかった。》

これはよかったですね、と私は思います。
人間として当然のことなのですけれど、自然なままで育つのが一番です。

「社会がこうだから~」云々ではなく、自分本位でいいのです。

だって、右利きの人はそういう風に育っているわけじゃないですか。
それで誰も「アカン!」とか、何もいわないわけですから。

右利きが右利きのままでいいのなら、
左利きも左利きのままでなぜいけないのでしょうか?


 ●右利き社会の実態と左利き

 《左利きの人間は、右利きの人が気づかないところで、
  右利き社会のギャップとたたかいながら、
  さまざまな不便さを味わっているのである。》p.97

例として、よくあることですが、ハサミがあげられています。
まつのさんは、左手ではなく右手で使うそうです。

こういう人も多いようです。
子供なりの知恵なのでしょう。

通常のハサミは右手用ですので、右手用なので右手で使う、というのは、
当然のことなのでしょうけれど、私には思いつかないことでした。


ヴァイオリンもまた右利き用なので、左利きとの関係は?

 《 じつは、関係がないどころか、大ありなのである。
  ヴァイオリンをはじめ、すべての楽器の演奏が、右利きに適した
  構造になっている。とりわけ弦楽器は、
  左手で弦を押さえるだけでは音は出ない仕掛けになっている。
  弓で弾いたり、弦をはじいたり……、
  つまり右手が音を出す手段となっているのである。》p.99

音を出すのが、音楽の基本です。
“音を楽しむ”と書くぐらいですから。

そして、“音を楽しむ”のは心の作用です。
私の持論は、いつもいいますように、「利き手は心につながっている」。
すなわち心の作用を演じるのは、利き手です。

「利き手で音を出せない楽器」=「楽器ではない」
といっても過言ではない、というのが私の考えになります。


左手の動きと右手の動きについては、こうあります。

 《 ヴァイオリン演奏は、左手が細かく動くので、右手より左手の
  ほうがむずかしいように見えるのだが、じつは逆なのだ。》p.99

 《 右手、つまりヴァイオリニストにとっては弓を持つ手の方が、
  音量、奏法ともにむずかしいのである。だから右利きの人なら、
  何も考えなくてもできるテクニックが、左利きの僕らには、
  ときに非常に困難なものになったりもする。》p.99

右利きの人なら《考えなくても》勝手にできてしまう演奏テクニックが、
左利きの人には難しい、といいます。

なるほど、ですね。
この《考えなくても》という点がポイントです。

自然にできてしまう、これが利き手の不思議なのです!

 《 その代わり、左手のビブラートなどの、細かい音色の変化を
  表現することなどでは、何の不自由も感じないのである。》

このへんが、
「“左手の方が難しいから”左利きの人でも右利き用でいいのだ」
といった右利きの人の発言につながってきます。

しかし、何度も言いますが、音を出す方の手が本来の主役です!

左手でいかに巧みに弦を押さえて見せても、音は鳴りません。
巧みに弓を弾いてこそ、音が出て、名演奏ともなるのです。


 ●左用のヴァイオリンとその演奏へのまつのさんの感想

ヴァイオリンにも、左用に作り替えた楽器がある、といいます。

 《 弦を左右張り替えたり、内部の魂柱(こんちゅう)(表板と裏板を
  つなぐ柱。これによって音の振幅を広げる)やバスバー(力木=
  低音を響かせるために表板の裏につけられた板)をチェンジしたり
  しなければならないそうだ。/ でも、そのために名器を改造した、
  などという勇ましい話は聞いたことがない。》p.100

こういう事情もあってか、「名器を弾きたければ右利きで」といった
「迷言?」が出て来るのでしょうか。

名器といっても、所詮は人間が作ったもの、
今後はどうなるのかわかりません。

ストラディヴァリウスも、世界中で数百台とか。
いってみれば、メジャーリーグのレギュラー選手の数ぐらいでしょうか。
日本のプロ野球選手にも、
メジャー級の選手もいるのではないでしょうか。
メジャーだけがメジャー級ではないはずです。
さらに、準メジャー級といえる選手も、当然いるでしょう。

名器だけが名器ではないのでは?
少なくともストラディヴァリウスだけが名器ではないでしょう。

どこかのだれかのお言葉ではありませんが、「二番じゃダメなんですか」
ならぬ「名器でなくちゃダメなんですか?」みたいな。

もちろん、実力があれば試してみたいと思うのが人情です。
でも「オレが名器を作る」ぐらいの意気込みではダメなのでしょうか。

名器を上回るほどの左弾きの名手になる、というのでは?

そして、
ドイツの楽団の中に左利き用のヴァイオリンで演奏している人を見た、
まつのさんの感想です。

 《(隣りの人と弓がぶつからないかなぁ?)などと、余計な心配ばかり
  しながら、演奏を聴いたのを覚えている。》p.101

このへんは、事情を知っているゆえの心配ごとなのでしょう。
それで演奏を聞くのに身が入らない、ということはあるかも知れません。

右利きの人たちも、そういう余計な“雑音”に気を取られてしまう、
ということはあるかも知れませんね。
だから、(右利きとは違う“異端”? の存在の「左利き」は)嫌だと。

 ・・・

――次回は、c.「左ききは、アカン!? WHO is LEFTY■(?の倒立像)」
から、主に「左利きヴァイオリニストあるある」についてのご意見を
みてみましょう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(33)左利きのヴァイオリニストまつのじん(松野迅)さんのご意見から考える(2)右手と左手・他」と題して、今回は全紹介です。

左利きのまつのじんさんの左利きエッセイから、左弾きのヴァイオリニストとしての左利きに関する専門的なご意見を、<左利きライフ研究家>としての左利きの観点から改めて紹介しています。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
週刊ヒッキイ第691号-楽器における左利きの世界(32)まつのじんさんのご意見(2)右手と左手
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7月31日、二宮和也さんがガンホー協賛ロッテ戦でサウスポー始球式

2025-08-06 | 左利き
【1976年から、50回目の8月13日<国際左利きの日>をまえに】
(※末尾に詳細を↓ )

久しぶりに、<サウスポー始球式>です。

7月31日、東京ドームで行われた、ロッテ―楽天16回戦のファーストピッチセレモニーに二宮和也さんが登場しました。

二宮和也 お見事!ノーバン投球に超満員の東京D大歓声“虹色球”&背番号「23」 自己採点「100点」

「ノーバン始球式」二宮和也が感動、25歳ドラ1からの〝たった一言〟に「こんな嬉しい事…」
によりますと、
《ロッテはガンホー・オンライン・エンターテインメントの冠協賛試合「ガンホースペシャルナイター」を開催。ガンホーのスマホゲーム「パズドラ」のイメージキャラクターを務め、CMに出演中の二宮が始球式を行った。》
見事ノーバン投球だったといいます。

(画像:<ロ・楽(16)>ファーストピッチセレモニーに登場した二宮和也(撮影・長久保 豊))




(画像:ロッテ対楽天 ファーストピッチで投球する二宮和也(撮影・鈴木みどり))



*【過去の「二宮和也」さんの左利き記事】:
・2015.06.11
『嵐にしやがれ』次回予告「左利きの大変さのニノ」のこと
・2015.06.14
『嵐にしやがれ』「左利きの大変さのニノ」のことpart2


*【過去の<サウスポー始球式>】:
・2024.8.16左利きの鈴木福くん、大好きな広島カープでマエケン体操から入ったサウスポー始球式
「新生活」版
・2024.8.48月1日「日本ハム-オリックス」戦でGACKTさんサウスポー始球式
「新生活」版
・2024.4.8元卓球女子五輪メダリスト石川佳純さんがサウスポー始球式
「新生活」版
・2023.9.3西武ライオンズファンの乃木坂46向井葉月さんが左腕で初始球式
「新生活」版
・2022.5.18サウスポー始球式二連発(1)5月14日玉木宏(2)5月15日新川優愛、プロ野球西武-楽天戦で始球式
「新生活」版
・2022.3.21サウスポー“スーパーガール”桃月なしこが始球式で左腕から大暴投
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・2021.11.22左利きの女優・吉高由里子さんが4年ぶりプロ野球日本シリーズ第2戦でサウスポー始球式
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・2021.4.2
左利きの女優・森七菜さんのサウスポー始球式
「新生活」版
・2018.4.19
地元アイドルNegiccoのKaedeさんが左投げで新潟知事の代役始球式
「新生活」版
・2017.10.30
吉高由里子がサウスポーで伸びやか始球式 日本シリーズ第2戦
・2017.6.15
左利きの女優・剛力彩芽さん、四度目の始球式登板も…
・2017.5.26
サッポロビールイメージガール川辺優紀子さんの左利き始球式
・2017.5.7
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・2017.5.2
ピンクラインのサウスポー、女優でモデルの新川優愛さんが始球式
・2016.8.17
左利きのSKE48日高優月(ひだかゆづき)が始球式
・2016.7.23
左利きの女優すみれさん左腕で始球式
・2016.6.29
左利きの剛力彩芽さんの3度目の始球式は大暴投: レフティやすおのお茶でっせ
・2016.6.5 AKB48Team8/AKB48TeamB兼任の坂口渚沙さん (画像のみ)
AKB48選抜総選挙、暫定21位倉野尾成美・同53位坂口渚沙はTeam8の左利き
・2016.3.7
左利きのあっちゃん前田敦子の始球式

・2014.8.6 右利きの石原さとみさんの左投げ(撮影で右腕を痛めたということで「サウスポーでやります」と宣言。)
終わったはずのクチコミ「右利き? 左利き?」がまた

・2013.12.4 体操新技「シライ」の白井健三選手
体操新技「シライ」の白井健三選手は左利き
・2011.5.12 『五体不満足』の著者の乙武洋匡さん
乙武洋匡さんのサウスポー始球式
・2004.11.11 アテネオリンピック女子マラソン金メダリストの野口みずき選手
素敵な光景:野口選手の左利きの始球式

*【カテゴリ:<サウスポー始球式>


※「国際左利きの日」(INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY)の始まり――
1976年、アメリカ・カンザス州の州都トピカの左利き用品店のオーナーで自身左利きである、
ディーン・キャンベル(Dean R. Campbell)さんが、開店一周年を機に、
左利きの人の会(Lefthanders International)を始め、
左利きの人の生活向上のために左利き用品の普及を目指し、
開店記念日にあたる<8月13日>を「国際左利きの日」(INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY)という記念日に制定し、行事を開催した。


(画像:英語版ウィキペディアの「INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY」の項目冒頭――下線部分:「国際左利きの日」は「レフトハンダー・インターナショナル」の創設者ディーン・R・キャンベルによって1976年に最初の祝祭が行われた-2021.8.13)

(画像:1993年11・12月号~1996年3・4月号 定期購読していた、アメリカ・カンザス州トピカのディーン R. キャンベルによって設立された「Lefthanders International」発行の隔月刊の雑誌「Lefthander Magazine」から、チェアマンのキャンベルさん)

(画像:ディーン・R・キャンベル(Dean R. Campbell)さんがチェアマンを務めるアメリカの左利きの人の会「レフトハンダーズ・インターナショナル(Lefthanders International)」が発行していた左利きの人のための隔月刊の雑誌「レフトハンダー・マガジン(Lefthander Magazine)」1995年7-8月号(JULY/AUGUST 1995)の「国際左利きの日」を祝う記事の一部――《"Some 20years ago"(約20年前)》の文字が見える)

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7月31日、二宮和也さんがガンホー協賛ロッテ戦でサウスポー始球式
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<夏の文庫>フェア2025から(2)集英社文庫『存在の耐えられない軽さ』

2025-08-03 | 本・読書
古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!)
【最新号・告知】【別冊 編集後記】


2025(令和7)年7月31日号(vol.18 no.13/No.393)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2025から(2)集英社文庫・
『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ~一回限りの人生~」




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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2025(令和7)年7月31日号(vol.18 no.13/No.393)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2025から(2)集英社文庫・
『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ~一回限りの人生~」
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 今年も毎夏恒例の新潮・角川・集英社の
 <夏の文庫>フェア2025から――。

 今年も、一号ごと三回続けて、一社に一冊を選んで紹介します。

 今年のテーマは、大阪関西万博の年ということで、
 「大阪」もしくは、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」
 ということで、大阪ものの小説や「いのち」に絡んだ作品に
 取り組んでみましょう。

 二本目は、集英社文庫から、一回限りの人生についての物語、
 ミラン・クンデラさんの作品『存在の耐えられない軽さ』を。


角川文庫夏フェア2025 | カドブン
https://kadobun.jp/special/natsu-fair/

ナツイチ2025 広くて深い、言葉の海へ| web 集英社文庫
https://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/
よまにゃチャンネル - ナツイチ2025 | 集英社文庫
https://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/yomanyachannel/

新潮文庫の100冊 2025
https://100satsu.com/


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ◆ 2025年テーマ:<大阪関西万博2025> ◆

  新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2025から(2)

  ~一回限りの人生~

  集英社文庫―『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

●集英社文庫ナツイチ2025 広くて深い、言葉の海へ

ナツイチ2025
https://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/

2025年テーマ
言葉は海にそっくりだ。
水平線のようにつづく世界。
深海より底のしれない一行。
ビーチみたいにしずかな時間。
とおくまで泳ぐのも、じっくり潜るのもいい。
さあ、よまにゃ。



(対象書目 86点)

すべてを書き写すスペースはもったいないので、
気になる作品、既読作品をピックアップしてみましょう。

・映像化する本 よまにゃ (5)
水滸伝 一 曙光の章 北方 謙三

・心ふるえる本 よまにゃ (21)
塞王の楯 〈上〉〈下〉今村 翔吾
チンギス紀 一 火眼 北方 謙三
幻夜 東野 圭吾
N 道尾 秀介

・手に汗にぎる本 よまにゃ (26)
帰去来 大沢 在昌
真夜中のマリオネット 知念 実希人
布武の果て 上田 秀人
ハヤブサ消防団 池井戸 潤

・心ときめく本 よまにゃ (11)
午前0時の忘れもの 赤川 次郎
愛じゃないならこれは何 斜線堂 有紀

・じっくり浸る本 よまにゃ (23)
地獄変 芥川 龍之介
存在の耐えられない軽さ ミラン・クンデラ
星の王子さま サンテグジュペリ
人間失格 太宰 治
こころ 夏目 漱石
うまれることば、しぬことば 酒井 順子

――以上、やっぱり古典といいますか名作と呼ばれるもの以外は、
ほとんど読んでいません。


 ●<じっくり浸る本 よまにゃ> から『存在の耐えられない軽さ』

『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ/ 千野 栄一/訳
集英社文庫 1998/11/20




 《女たらしの外科医トマーシュと純朴なテレザは愛し合うが、
  「プラハの春」へのソ連軍事介入に運命を翻弄される。
  チェコの悲劇を背景にした純愛大河小説》

とあります。

今年のテーマから「いのち」をの本としてこれを取り上げてみました。
以前私は、文学の王道は恋愛小説ではないか、というお話をしたか、
と思います。
この本を選んだ理由の一つでもあります。

Amazonには、

 《苦悩する恋人たち。不思議な三角関係。
  男は、ひとりの男に特別な感情を抱いた。鮮烈でエロチック…。
  プラハの悲劇的政治状況下での男と女のかぎりない愛と転落を、
  美しく描きだす哲学的恋愛小説。

  フィリップ・カウフマン監督、主人公トマシュに
  ダニエル・デイ=ルイス、テレーザにジュリエット・ビノシュを迎え、
  1988年に映画公開された原作小説。》

とありました。

で、まずは全巻読み終えての感想です。
読み終えての結論的なものとも言えます。


 ●感動的なラスト

いきなり、結末までバラしてしまうのはどうかという気もしますが、
推理小説のようなエンタメ作品ではないので、
感動した部分を素直に書いてしまってもいいのではないか、と思います。

冒頭、ニーチェの永劫回帰という言葉が出てきます。
これは結構キツいぞ、と思いながら読み続けますと、
著者と思われる“私”が登場してあれこれとものをいいます。
これが哲学的な文章です。

最初は少し戸惑いましたが、とにかく最後まで読み切ってしまおう。
評価はそれから、ということで。

で、色々と難しい文章もありますが、最終的な着地点というのが、
主人公たち二人のカップルが、女性の飼い犬と二人と一匹で、
牧歌的な田舎で暮らし、土地の人ともお付き合いをします。

しかし、二人の愛犬カレーニンが癌におかされ、
日々衰えながらもけなげに生きていき、最後には安楽死――。

この二人と一匹の悲しいけれど、美しいラストが、感動的です。

それまでの難しい政治的な論理や人の心の愛情の問題や、
何やかやの展開もすべて流し去って、
美しい思い出だけが残るラストになっています。


 ●登場人物とストーリー

では、簡単にストーリーを紹介しましょう。

登場人物は、登場人物表にもありますように、主な登場人物は、
外科医のトマーシュ、その恋人のテレザ、
トマーシュの愛人のサビナ、サビナの愛人のフランツ、
フランツの前妻との息子シモン、そしてテレザの愛犬カレーニン。

次に、目次 です。

第I部 軽さと重さ
第II部 心と体
第III部 理解されなかったことば
第IV部 心と体
第V部 軽さと重さ
第VI部 大行進
第VII部 カレーニンの微笑

「第I部 軽さと重さ」は、プラハでのトマーシュとテレザの関係。
トマーシュは優秀な外科医で、女たらしで、
愛人を次々ととっかえひっかえしています。
一方で、テレザがいないと生きていけないというのです。

 《 トマーシュは、女と愛し合うのと、いっしょに眠るのとは、
  まったく違う二つの情熱であるばかりか、対立するとさえいえるもの
  だといっていた。愛というものは愛し合うことを望むのではなく
  (この望みは数えきれないほどの多数の女と関係する)、いっしょに
  眠ることを望むである(この望みはただ一人の女と関係する)。》p.22

ソ連がチェコに侵攻したのち、二人と一匹はチューリッヒへ移ります。

 《(略)かたつむりが自分の家を運ぶように、自分の生き方を運んで
  いると彼は幸福そうにつぶやいた。テレザとサビナは彼の生活の
  二つの極、遠く離れた極、和解しがたく、しかもともに美しい極を
  代表していた。》pp.39-40

しかし、この生活は長くは続きません。
テレザは、ソ連の侵攻に抵抗する人々の姿を写真に撮ったものを、
西側の新聞や雑誌に売り込みに行きますが、相手にされません。
テレザは、祖国への思いからプラハに帰ってしまいます。
当座、独り身の「軽さ」を覚えたトマーシュでした。
サビナと会うときも嘘の出張話を持ち出す必要もないのですから。
ところが、半年もするとテレザのいない生活には耐えられず、
彼もプラハに帰って行きます。


「第II部 心と体」は、テレザとトマーシュとの出会いと、
テレザのそれまでのお話。
トマーシュは二人の出会いには六つのありえない偶然があった、と。
テレザは、トマーシュの《一夫多妻生活の第二の自己になる》ことを
意識して、トマーシュの愛人であるサビナに接近し、カメラに撮ります。


「第III部 理解されなかったことば」は、サビナと愛人のフランツとの
関係です。
サビナにとって女であることは自分が選んだ運命ではなかったのです。
フランツにとっては妻マリー=クロードのなかの女を大事にしなければ
ならないと考えていました。

 《 人生のドラマというものはいつも重さというメタファーで表現
  できる。われわれはある人間が重荷を負わされたという。その人間は
  その重荷に耐えられずにその下敷きになるか、それと争い、
  敗(ま)けるか勝つかする。しかしいったい何がサビナに起こったので
  あろうか? 何も。(略)彼女のドラマは重さのドラマではなく、
  軽さのであった。サビナに落ちてきたのは重荷ではなく、存在の
  耐えられない軽さであった。》p.156


「第IV部 心と体」は、テレザとトマーシュの生活です。
テレザは、トマーシュの髪に女のデルタの臭いを嗅ぎとります。
バーで働くテレザはある時、男の誘いに乗り、浮気をします。
男の部屋でソフォクレースの『オイディプース』の翻訳本を見つけます。
テレザはトマーシュに復讐しようというわけではなかったのです。


「第V部 軽さと重さ」で、トマーシュは『オイディプース』にヒントを
得て書いた文章を週刊新聞に送ると、編集部から呼ばれ掲載されます。
ロシア人の軍隊による占領を招いた共産主義者たちは、公然と自分たちの
目を刺すべきだ、というトマーシュの意見に対して圧力をかけてきます。
しかし「あれ以上大事なものはありません」と拒否したトマーシュは、
外科医の職を奪われ、地位の低い地方病院の医者に、さらに窓掃除人に。
そこでも彼の名は知られていて、反体制派の人物が接触してきます。
そこにトマーシュの息子も。前妻は共産主義だが、息子は違いました。
サビナはプラハは嫌な町になったといい、トマーシュに田舎へ引っ越そう
と話します。彼にとってサビナは『饗宴』でいう片割れなのでしょうか? 

 《 トマーシュはプラトンの有名なシンポジオンという神話を思い出し
  た。人びとは最初、男女両性具有者であったが、神がそれを二等分
  したので、その半身はそれ以来世の中をさまよい、お互いを探し求め
  ている。愛とは我々自身の失われた半身への憧れである。》p.304

この後、アメリカへ移民したサビナの話や、政治的な話が出てきます。


 ●『存在の耐えられない軽さ』とは?

ストーリーを追うのはこのへんにして、私なりの感想を書いていこうか
と思います。

男女の愛と性をめぐるお話と、チェコの民主化を阻むソ連軍や
それに迎合する共産主義者によって、祖国を守ろうとする人々や
政治犯とされる人々が追い込まれていく政治的なお話が展開されます。

人間にとって大事なことは、男女の愛(と性)の生活なのか、政治的に
自由な生活なのか、<存在の耐えられない軽さ>とは何なのか。
正直なところ、よくわかりません。

「第VI部 大行進」で、

 《(略)テレザとトマーシュは重さの印の下で死んだ。彼女(引用者注
  ・サビナ)は軽さの印の下で死にたいのである。彼女は空気よりも
  軽くなる。これはパルメニデースによれば、否定的なものから
  肯定的なものへの変化である。》p.344

とあります。
確かに、トマーシュは発言を撤回させず、社会から抹殺されていきます。
トマーシュは銃殺され、最後にはテレザも死んでしまったようです。
それは思想的な理由で殺される重い死だったようですし、
それに比べれば、アメリカに逃れた? サビナの最期はまた違ったものに
できるのでしょう。


 ●「第VII部 カレーニンの微笑」

しかし、先にも書きましたように、
そのラストは非常に感動的なものでした。
その場面での存在のなかには、男女以外に愛犬がいました。

 《(略)カレーニンとテレザの愛は、彼女とトマーシュとの間のそれ
  よりもよいという考えである。よりよいのであって、より大きいと
  いうのではない。(略)》p.372

 《 犬への愛は無欲のものである。テレザはカレーニンに、何も要求
  しない。愛すらも求めない。私を愛している? 誰か私より好き
  だった? 私が彼を愛しているより、彼は私のことを好きかしら?
  というような二人の人間を苦しめる問いを発することはなかった。
  愛を測り、調べ、明らかにし、救うために発する問いはすべて、愛を
  急に終わらせるかもしれない。(略)》p.373

 《(略)テレザはカレーニンをあるがままに受け入れ、自分の思う
  ように変えることを望まず、あらかじめ、カレーニンの犬の世界に
  同意し、それを奪おうとはせず、カレーニンの秘め事にも
  嫉妬しなかった。犬を(男が自分の妻を作り直そう、女が自分の
  亭主を作り直そうとするように)作り直そうとはしないで、ただ
  理解し合っていっしょに暮せるような基本的な言語を学べるように
  と育てた。/ さらにいえば、犬への愛はだれかがテレザに強いた
  のではなく、自由意志に基づくものである。(略)》p.373

 《(略)人間の時間は輪となってめぐることはなく、直線に沿って
  前へと走るのである。これが人間が幸福になれない理由である。
  幸福は繰り返しへの憧れなのだからである。/ そう、幸福とは
  繰り返しへの憧れであると、テレザは独りごとをいう。》p.374

カレーニンとの暮らしは、基本的に毎朝、同じことの繰り返しでした。
そして、時が来てカレーニンにお迎えが来て、安楽死させた二人は
決めていたリンゴの木の間に埋葬します。

考えてみれば、私たちの暮らしというものも、基本、同じことを繰り返し
続けられるうちが花で、しあわせな日々といえるのかも知れません。

トマーシュは、外科医を辞めさせられ、愛人との生活も失われ、
テレザとカレーニンとの田舎での暮らしとなりました。

時には、トマーシュのために着飾ったテレザを見た若い男と農場長たちと
ホテルのバーのダンスホールに出かけ、楽しい時間をすごしました。

テレザが真に彼の失われた片割れであったかどうかはわかりません。
しかし、最終的に彼らが選んだのは、二人(と一匹)の生活でした。

 《(略)人生はたった一度かぎりだ。それゆえわれわれのどの決断が
  正しかったか、どの決断が誤っていたかを確認することはけっして
  できない。所与の状況でたったの一度しか決断できない。いろいろ
  な決断を比較するための、第二、第三、第四の人生は与えられて
  いないのである。/ 歴史も、個人の人生と似たようなものである。
  チェコ人の歴史はたった一度しかない。トマーシュの人生と同じよう
  にある日終わりを告げ、二度繰り返すことはできないであろう。》
   p.284(「第V部 軽さと重さ」)

 ・・・

色々と考えさせられる小説でした。
難しいといえば難しいですし、こういう展開の仕方はストーリーとして
どうなんだ? と問われたら、こういうのもありなんでしょうね、
としかいえません。

とにかく、一度は読んでおきたい小説です。
みなさまもどうぞ、機会があれば!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2025から(2)集英社文庫・『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ~一回限りの人生~」と題して、今回も全文転載紹介です。

本文中にも書きましたように、人生というのは一回ポッキリのもので、やり直しはできません。
セカンド・チャンスはありません。

それだけにその時その時の決断というものが重要になって来ます。

しかし、考えすぎては、チャンスを逃がすことにもなりかねません。
難しいものです、何十年生きてきても。

でも、それだからこそ「人生はおもしろい」とも言えるのかも知れません。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

『レフティやすおのお茶でっせ』
〈メルマガ「楽しい読書」〉カテゴリ


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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載

" target="_blank"><夏の文庫>フェア2025から(2)集英社文庫『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ-楽しい読書393号

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『左組通信』復活計画(39)左利き自分史年表(5)1994-1995.6(春)―紙の時代(2)『LL(Lefties' life)』-週刊ヒッキイ第690号

2025-07-24 | 左利き
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
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第690号(Vol.21 no.13/No.690) 2025/7/19
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [39]
レフティやすおの左利き自分史年表(5)1994(平成6)-1995(平成7)6(春)
―紙の時代(2)『LL(Lefties' life)』」



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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第690号(Vol.21 no.13/No.690) 2025/7/19
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [39]
レフティやすおの左利き自分史年表(5)1994(平成6)-1995(平成7)6(春)
―紙の時代(2)『LL(Lefties' life)』」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 第657号(No.657) 2024/1/20 以来の 
 「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [39]
 レフティやすおの左利き自分史年表」です。

 前回は、「左利き自分史年表」1991(平成3)-1994(平成6)春まで、
 「紙の時代」第一期として『ひだりぐみ通信』の時代を紹介しました。

 左手用カメラを入手、そのフィット感から左利き用品に目覚め、
 「左利きの人は、自分の身体に合った左利き用の道具を使うべきだ」
 という考えをまわりの左利きの人たちに伝えるべく、
 紙による発信を始めたのが、紙の活動の時代でした。

 今回は、1994(平成6)春以後、夏以降の「紙の時代」の第二期として、
 いよいよ季刊誌『LL(レフティーズ・ライフ)』の時代に突入です。

 先月までは、その『LL(レフティーズ・ライフ)』そのものを紹介
 してきました。ここでは年表として組み込んでいきます。


――過去の「レフティやすおの左利き自分史年表」――

(第一回)~(第三回)分は、(第四回)の冒頭を参照してください。

(第四回)
・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第657号(No.657) 2024/1/20
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [27]
レフティやすおの左利き自分史年表(4)1991(平成3)-1994(平成6)春
―紙の時代(1)『ひだりぐみ通信』」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2024.1.20
『左組通信』復活計画(27)左利き自分史年表(4)1991-1994春―
紙の時代(1)『ひだりぐみ通信』-週刊ヒッキイ第657号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/01/post-36d5d0.html


 今回は、第四回の「1994(平成6)春」の分を付加しておきます。

 この年表は<左利きミステリ>を含む「左利き年表」になっています。

*(参照)<左利きミステリ>

■第4回
・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第640号(No.640) 2023/4/15
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書コラボ企画:
私の読書論169-<左利きミステリ>第4回 国内編(前編)」1900年代
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2023.4.15
私の読書論169-<左利きミステリ>第4回 国内編(前)
-週刊ヒッキイ640号×楽しい読書340号コラボ企画
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/04/post-d5c13e.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/131b4f7933014dcedf057c75702ff28e

・メルマガ『レフティやすおの楽しい読書』
2023(令和5)年4月15日号(No.340)
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書コラボ企画:
私の読書論169-<左利きミステリ>第4回 国内編(後編)」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2023.4.15
私の読書論169-<左利きミステリ>第4回 国内編(後)
-週刊ヒッキイ640号×楽しい読書340号コラボ企画
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/04/post-5b4e1e.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/d0e3f19af79760633cbcc87cac454f96

■第5回
・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第666号(Vol.20 no.11/No.666) 2024/6/15
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書 コラボ企画:
私の読書論185-<左利きミステリ>第5回 海外編
(前編)<ホームズ以前>紀元前から19世紀末まで」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2024.6.15
[コラボ]私の読書論185-
<左利きミステリ>第5回海外編(前)ホームズ以前-週刊ヒッキイ第666号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/06/post-d87703.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/d7779b9ff44e6ebb34960bcf9883dd82

・メルマガ『レフティやすおの楽しい読書』
2024(令和6)年6月15日号(vol.17 no.11/No.368)
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書 コラボ企画:
私の読書論186-<左利きミステリ>第5回 海外編
(後編)<ホームズ以後>19世紀末以降」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2024.6.15
[コラボ]私の読書論186-
<左利きミステリ>第5回海外編(後)ホームズ以後--楽しい読書368号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/06/post-47adad.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/3f2d372ae2e8a3073e2e853317ca3c76

■第6回
・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第680号(Vol.21 no.3/No.680) 2025/2/15
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書 コラボ企画:
<左利きミステリ>第6回 海外編(前編)新規発見作紹介」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2025.2.15
[コラボ]<左利きミステリ>第6回海外編(前)新規発見作
-週刊ヒッキイ第680号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/02/post-d8dc24.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/04302ce47c2cbca53937e7490e74f91e

・メルマガ『レフティやすおの楽しい読書』
2025(令和6)年2月15日号(vol.18 no.2/No.382)
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書 コラボ企画:
<左利きミステリ>第6回 海外編(後編)再発掘作」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2025.2.15
[コラボ]<左利きミステリ>第6回海外編(後)再発掘作-楽しい読書382号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/02/post-4c221d.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/ebac165aacd639b4e357741dc40953b6


┏ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┓
ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [39]
  <レフティやすおの左利き自分史年表>(5)
 
  1994(平成6)-1995(平成7)6(春) ―紙の時代(2)
  『LL(Lefties' life レフティーズ・ライフ)』
┗ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛      

 ●「1994(平成6)-1995(平成7)6(春)―紙の時代(2)『LL』
  【左利きライフ研究家】レフティやすおの左利き自分史年表-5」

*(参照)――<紙の時代>

・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第602号(No.602) 2021/9/4
「創刊600号突破記念―
 私が影響を受けた左利き研究家・活動家(2)第二期・紙の時代―その1」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2021.9.4
私が影響を受けた左利き研究家・活動家(2)第二期・
紙の時代1(創刊600号突破記念)-週刊ヒッキイ第602号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/09/post-57d0e5.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/e2aaaa56a6400bcc04d24d46a47d1d03
(2)第二期・紙の時代から―その1―
 ◆ 左利き用品の総カタログ的『モノ・マガジン』左利き特集号 ◆
  『モノ・マガジン』「左利き生活向上委員会」編集部A・K氏
 ●第二期・紙の時代―左手用カメラとの出会いに始まる
 ●『モノ・マガジン』左利き特集号がスゴかった!
 ●『Lefties' Lifeレフティーズ・ライフ』創刊
 ●左利き関連本あれこれ
 ●「左利き生活向上委員会」のA・K氏

・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第650号(No.649) 2023/10/7
「創刊19年に向けて―650号記念号―
 <左利きの人の自覚――意識の覚醒>が最も重要」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2023.10.7
<左利きの人の覚醒>左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii
創刊19年記念号-第650号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/10/post-158a3d.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/8396e0fae38c6eeab56013360f58d18e
 ●左利き活動の「初心」は?
 ●「来た、見た、買(こ)うた」
 ●左利き活動の始まりは、1990年末「世界初左手用カメラ」購入
 ●右手用のハンディカムの違和感
 ●『モノ・マガジン』左利き特集号との出会い
 ●存在を知らなければ、「存在しない」のと同じ
 ●最初はハガキサイズの「左組通信」という紙媒体
 ●左利き活動の「初心」について――もう一度
 ●始まりは左利きの人の覚醒にある


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「1994(平成6)-1995(平成7)年6(春) 
  ―紙の時代(2)『LL(Lefties' life レフティーズ・ライフ)』
 【左利きライフ研究家】レフティやすおの左利き自分史年表-5」
--------------------------------------------------------------------

*(注)科学書――特に脳・神経科学に関する本につきましては、
 最も発達が著しく、発行年代の古い本の場合、情報として
 古くなってしまっているものがありますので、ご注意ください。

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(太文字=西暦(元号)年齢) レフティやすおの出来事 (茶文字=社会の出来事)(青文字=左利き・利き手関連文献
====================================================================

1994(平成6)40歳

1/1『左利きは危険がいっぱい』スタンレー・コレン/著
 石山鈴子訳 文藝春秋 1994/1/1




――出版社のセンセーショナルな宣伝の結果、左利きの人は右利きの人より
 9歳寿命が短いという「左利き短命説」で有名になった本。統計の処理に
 問題があると言われけなされたり、左利きの人から嫌われることが多いの
 ですが、著者の言いたいことは、左利きの人たちが、右利き社会のなかで
 右利き用の道具を左使いすることの危険性について警鐘を鳴らし、左利き
 の人たちに結束して、左利き用品の普及と社会変革を促すように助言する
 内容の書。右利き社会に生きる左利きの危険性を訴える左利き応援本。

1/21『ひだりぐみ通信』「創刊3号」発行

1/(テニス)伊達公子WTAランキングトップ10入り(9位)
――NSWオープンで海外ツアー初優勝。オーストラリアンオープンで初の
 四大大会ベスト4。左利きだが、子供のとき見よう見まねで始めたため
 右手打ちになったという話を聞いたことがある。

2/ “Lefthanders International”より左利き用品を購入
――1991(平成3)年発行の『モノ・マガジン』左利き特集号(1991年4月2日
 号 No.188)で紹介されていた、アメリカ、カンザス州トピカに本部を
 置く、左利きの会“Lefthanders International”入会後、送ってもらっ
 ていた隔月刊の会誌「LEFTHANDER MAGAZINE」の通信販売コーナーに紹介
 されていた左手・左利き用品を購入(子供用ハサミ2点、逆立ちしない
 “Lefthanders International”のロゴ入り消しゴム付鉛筆、左利き電卓
 ZELCO DOUBLE PLUS calculator No.10731(手のひらに入るもので、右手
 で持ち、左手でキーを打つ)、左利き用フォルダー(右に開くと左側に
 用紙が配置されている)。

3/1『ひだりぐみ通信』「創刊4号」発行

3/『モノ・マガジン』(ワールド・フォト・プレス)で、
「左利き生活向上委員会」というコラム(隔号連載)開始

――左利きの編集者A・K氏による文字通り、左利きの人の生活の質を向上
 させられるような新たな左手・左利き用品を探し出そう、という内容の
 コラムです。同志を見つけたという思いから、ここに「LL」を送る。

4/「Anything Left-Handed」の通信販売で左利き用品を購入
――『週刊プレイボーイ』1993年12月21・28日号の特集記事<「個人輸入
 作戦」、いよいよ出動! 海外28店アドレス付き>で、イギリスの左利き
 用品専門店「Anything Left-Handed」の存在を知り、左利きの子供向け
 缶ペンケース入り文具セット(子供用ハサミ、15センチ定規、万年筆、
 シャープペンシル、鉛筆、鉛筆削り、消しゴム、スペアインク、レフト
 ハンダーズ・クラブのバッジ)、パーカー万年筆左利き用、30センチ
 定規、ドイツ製手回し鉛筆削り、などを購入し、顧客が参加できる
 「Left-handers Club」の会員になる。会員向け雑誌「The Left-hander」
 を「No.16」から定期購読。(1997年10月No.27まで、LHIの場合と同様
 英語力の欠如からコミュニケーションが取れず立ち消えに。のちにこの
 小冊子no.20で“LHC of JAPAN”として当時私が活動していた紙の季刊誌
 「Lefties Life(LL)」および私の活動が紹介される。)

*参照:
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2018.8.29
8月16日イギリスの左利き専門店“Anything Left-Handed”50周年
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2018/08/816anything-lef.html


夏/季刊誌『Lefties' Lifeレフティーズ・ライフ(LL)』創刊
(1996年秋・第10号まで季刊、1997(平成9)年夏号 終刊号)
LL1 1994(平成6)年 夏号 A4版1ページ
・前説―To Live In The Right-Handed World―右利き社会を是正する
・左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
 その1 Left-handed tools & goods―筆記具・定規・はさみ
・私のお気に入り左利き用品 ベストテン
――新たに手に入れた左利き用の商品紹介だけでなく、左利きについて語り
 たいこともあり、はがきサイズでは多くを伝えられないと思い、もう少し
 分量のある小冊子を出すことにしました。とは言え、仕事が忙しく休みも
 少なく、時間的に難しく、季刊誌に落ち着きました。ワープロ原稿を切り
 貼りし、コピーしたものをホッチキスでとめた手作り感満載の小冊子。



*参照:
・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第43号(No.43) 2006/8/12
<「国際左利きの日」記念号>「私にとっての左利き活動(3)」
 ■レフティやすおの左利き活動万歳■ ―隔号掲載―
私にとっての左利き活動(3)『LL』の時代
第660号(Vol.20 no.5/No.660) 2024/3/16
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [28]
『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(1)全号目次/LL1・LL2」


8/21 『ひだりぐみ通信』「第5号―特別編―」発行
――左利きアンケート編(1.ハンディズム(利き手差別)イメージ調査
  2.利き手・利き足・利き眼・利き耳調査 3.左利きで困ったことは?
  ・嫌なことは?・不利なことは?・右利き社会と思うか?・新しい
  習い事を始めるときは?(a.何も考えず左手で、b.手本が右手なら
  右手で、c.手本が右手なら頭の中で左右を入れ換えて左手で)

9?/ 岐阜県関市の川嶋工業(株)、調理用品<愛妻専科>シリーズで
左利き用11点を発売。高齢者用も同時発売。

(「産経新聞」平成6年9月27日(火)、記事掲載)



*参照:『左組通信』第11号(愛妻専科 左きき調理用品紹介号)
・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第686号(Vol.21 no.9/No.686) 2025/5/17
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [37]
『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(10)
LL10 1996(平成8)年 秋号(後半)」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2025.5.17
週刊ヒッキイ第686号-
『左組通信』復活計画[37]『LL』復刻(10)LL10 1996年秋号(後)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/05/post-e40654.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/6bee2c2cc9d5fd9c8b63de8a5bb9af9e



10/『モノ・マガジン』1994年11月2日号(NO.278)、編集部
A・K氏の左利きコラム「左利き生活向上委員会」に「LL」紹介される
――同志を見つけたという思いから「LL」を送っていたら紹介される。
 これが私の「国内」メディアでのデビューということになります。




(画像:『モノ・マガジン』1994年11月2日号(NO.278)に掲載された編集部A・K氏の左利きコラム「左利き生活向上委員会」の記事)

秋/『Lefties' Lifeレフティーズ・ライフ(LL)』第2号
LL2 1994(平成6)年秋号 A4版1ページ
・前説―To Live In The Right-Handed World―左右共用の製品を
・左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
 その2―はさみ

*参照:
・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第660号(Vol.20 no.5/No.660) 2024/3/16
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [28]
『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(1)全号目次/LL1・LL2」
・『レフティやすおのお茶でっせ』2024.3.16
『左組通信』復活計画(28)『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(1)全号目次
-週刊ヒッキイ第660号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/03/post-4ddd3a.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/d31a2f5c2182c628280422c8cfa8e866


11/1『【右】の不思議?【左】のナゾ! おもしろショックの
隠れた法則』不思議データ調査室編 青春出版社 青春BEST文庫 1994/11/1

――左右にまつわる雑学本。


冬/『Lefties' Lifeレフティーズ・ライフ(LL)』第3号
LL3 1994-95(平成6-7)年冬号 A5版4ページ
・前説 The Compliments of the New Year
新年明けましておめでとうございます。
・左利きの生活 To Live In The Right-Handed World―鍋を囲む
・知恵小僧の左熟語の基礎知識 なんの意味ダス!? その1
 Words & Phrases―小学館『国語大辞典』より
・左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
 その3―はさみ(つづき)
・よい品がいつでも 手軽に 購入できるようにしよう!
―いろんな用途のはさみ
・左利きの本だなぁ その1 お勉強編
 The Books on the Left-handedness―
 スタンレー・コレン著『左利きは危険がいっぱい』

*参照:
・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第662号(Vol.20 no.7/No.662) 2024/4/20
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [29]
『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(2)LL3」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2024.4.20
『左組通信』復活計画(29)『LL』復刻(2)LL3-週刊ヒッキイ第662号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/04/post-26b0e5.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/c44afca336774c5604749e1af1962327


--(1995 平成7)41歳

1/17(火曜日)5時46分 (日本時間)阪神・淡路大震災起きる
――淡路島北部を震源とするマグニチュード7.3、最大震度7の大地震。
大阪のほうは震度4でほぼ無事。早朝からの大きな揺れに飛び起き、
タンスを押さえたが、我が家の被害は屋根瓦が一部ずれただけだった。

春/『Lefties' Lifeレフティーズ・ライフ(LL)』第4号
LL4 1995(平成7)年 春号 A5版8ページ
・前説 The Compliments of the Spring Issue 発信し続けること
・From LHI (Lefthanders International/U.S.A)
  レフトハンダーズ・インターナショナル(アメリカ)より
・From LHC (Left-handers Club/U.K.)
  レフトハンダーズ・クラブ(イギリス)より
・左利きの生活 To Live In The Right-Handed World―
 (1)私のいちばん嫌(いや)~なことば――
  「○○君は、ぎっちょか。器用やなぁ。」
 (2)「転びキリシタン」あるいは「隠れキリシタン」のように
≪スタート! 新学期≫子供用品特集
・左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
 その4〔子供用左利き用品の紹介〕―
  文具(はさみ・鉛筆・鉛筆削り・定規・缶ペンケース入り文具セット)、
  野球/ソフトボール用グラブ・ヘルメット・手袋
〔手を使い分けよう〕
 久保田競著『手と脳―脳の働きを高める手』紀伊国屋書店より
〔左利きの子供に対する接し方〕
 箱崎総一著『左利きの秘密』立風書房より

*参照:
・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第664号(Vol.20 no.9/No.664) 2024/5/18
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [30]
『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(3)LL4 1995(平成7)年 春号」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2024.5.18
『左組通信』復活計画(30)『LL』復刻(3)LL4 1995年春号
-週刊ヒッキイ第664号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/05/post-4ee9c2.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/95b09d26c72d1aca35574e10b700d653


4/3 斎藤茂太さんに『LL』第5号で著者『左ききの人はなぜ
才能があるのか―左ききの性格分析』を紹介すると報告したところ、お葉書
をいただく

4/30『左手のシンボリズム: わが国宗教文化に見る左手・左足・
左肩の習俗の構造とその意味』松永 和人/著 九州大学出版会 1995/4/30


――副題にもありますように、日本の宗教文化に見る左右の研究。
(新版)『左手のシンボリズム「聖」-「俗」:「左」-「右」の二項対置の
認識の重要性』松永和人/著 九州大学出版会 2001/4/1


6/28 私の手紙と小冊子『LL』が紹介されたイギリスの左利き
の会“Left-handers Club”の会報「The Left-hander」No.20が届く
――『LL』の本文に、簡単な英語で内容をメモして送っていたところ、
「The Left-hander」第一面で、「A warm welcome to the LHC of JAPAN」
として紹介された。私の世界デビュー?
(後年、左利きの人のオフ会に誘われた際、この事実を紹介した次号の
『LL』のコピーを持っていったところ、現・日本左利き協会発起人の
大路直哉さんから、元の会報を見たことがあるとのお言葉をいただく。)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [39]レフティやすおの左利き自分史年表(5)1994(平成6)-1995(平成7)6(春)―紙の時代(2)『LL(Lefties' life)』」と題して、今回も全紹介です。

この当時の年表では、左利き活動を始めるにつれて年表に記入する事柄が増え、特に後年の参考のためにと詳細なメモを付けるようにしたところ、年表というより月表のようになってしまっています。
まあ、それでもいいかと思います。
いつか役に立つこともあるか、と。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』


『レフティやすおのお茶でっせ』
〈左利きメルマガ〉カテゴリ

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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
『左組通信』復活計画(39)左利き自分史年表(5)1994-1995.6(春)―紙の時代(2)『LL(Lefties' life)』-週刊ヒッキイ第690号
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<夏の文庫>フェア2025から(1)角川文庫『天衣無縫』織田作之助-楽しい読書392号

2025-07-20 | 本・読書
古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!)
【最新号・告知】x【別冊 編集後記】


2025(令和7)年7月15日号(vol.18 no.12/No.392)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(1)角川文庫・
『天衣無縫』織田作之助~大阪の作家~」



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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2025(令和7)年7月15日号(vol.18 no.12/No.392)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(1)角川文庫・
『天衣無縫』織田作之助~大阪の作家~」
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 今年も毎夏恒例の新潮・角川・集英社の
 <夏の文庫>フェア2025から――。

 今年も、一号ごと三回続けて、一社に一冊を選んで紹介します。

 今年のテーマは、大阪関西万博の年ということで、
 「大阪」もしくは、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」
 ということで、大阪ものの小説や「いのち」に絡んだ作品に
 取り組んでみましょう。

 一本目は、角川文庫から「大阪」ものの作家とされる、
 織田作之助さんの作品集『天衣無縫』を。


角川文庫夏フェア2025 | カドブン
https://kadobun.jp/special/natsu-fair/

ナツイチ2025 広くて深い、言葉の海へ| web 集英社文庫
https://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/
よまにゃチャンネル - ナツイチ2025 | 集英社文庫
https://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/yomanyachannel/

新潮文庫の100冊 2025
https://100satsu.com/



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 ◆ 2025年テーマ:<大阪関西万博2025> ◆

  新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2025から(1)

  ~大阪の作家~ 角川文庫―『天衣無縫』織田作之助
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


●角川文庫夏フェア2025 | カドブン

まずは、<角川文庫夏フェア2025>の対象94点を見ておきましょう。
といっても全部紹介するのはスペース的にキツくなりますので、
私の気になった作品、読んだ作品を上げておきます。

 ・・・

【角川文庫夏フェア2025】 対象94件

▼感 ヒューマンドラマ!――泣いたり、笑ったり、怒ったり 12件
・この夏の星を見る 上下(辻村 深月)
・オオルリ流星群(伊与原 新)

▼怖 こわ~い本!――蒸し暑い夏、冷や汗がポトリ 8件
・おそろし 三島屋変調百物語事始(宮部 みゆき)
・火喰鳥を、喰う(原 浩)

▼謎 ミステリ&サスペンス!――謎、心理戦、どんでん返しの嵐 12件
・黒牢城(米澤 穂信)

▼懐 あの頃流行ったベストセラー~時代を彩る名作たち~
 ――年代別にプレイバック
--1970年代 5
・復活の日(小松左京)・時をかける少女〈新装版〉(筒井康隆)
--1980年代 4
・セーラー服と機関銃(赤川次郎)
あわせて読みたい名作!1950〜1960年代 2
・女生徒(太宰治)・銀河鉄道の夜(宮沢賢治)
--1990年代 4
・リング(鈴木光司)・キッチン(吉本ばなな)
あわせて読みたい名作!1990年代 1
・アルケミスト 夢を旅した少年(パウロ・コエーリョ)
--2000年代 4
・バッテリー(あさのあつこ)
--2010年代 6
・小説 君の名は。(新海誠)
--2020年代 3
・小説 すずめの戸締まり(新海誠)
あわせて読みたい名作!2010〜2020年代 3
・ナミヤ雑貨店の奇蹟(東野圭吾)

▼細田守監督 原作小説特集 4件
・おおかみこどもの雨と雪(細田 守)

▼「かまわぬ」和柄カバー 6件
・こゝろ(夏目 漱石)・吾輩は猫である(夏目 漱石)
・注文の多い料理店(宮沢 賢治)

▼おすすめファンタジー3選
・烏衣の華(白川 紺子)
▼おすすめ時代小説2選
・江戸の探偵(鈴木 英治)
▼おすすめ100分読書4選
・100分間で楽しむ名作小説 人間椅子(江戸川 乱歩)
・100分間で楽しむ名作小説 瓶詰の地獄(夢野 久作)
▼おすすめまなびの2選
・(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、
あの名作小説を面白く読む方法(三宅 香帆)
▼「文豪ストレイドッグス」コラボカバー 8件
・羅生門・鼻・芋粥(芥川 龍之介)・D坂の殺人事件(江戸川 乱歩)
・青春の逆説・可能性の文学(織田 作之助)
・天衣無縫(織田 作之助)・斜陽(太宰 治)・晩年(太宰 治)


 ●『天衣無縫』――アニメ「文豪ストレイドッグス」コラボカバー

アニメ「文豪ストレイドッグス」コラボカバー
『文豪ストレイドッグス』は、横浜を舞台に、文豪をモチーフにした
キャラクターたちが繰り広げる異能バトルアクション漫画。
そのアニメ版のキャラクターが角川文庫の文豪名作とコラボ!
©️朝霧カフカ・春河35/KADOKAWA/文豪ストレイドッグス製作委員会

 ・・・

天衣無縫
著者 織田 作之助
定価: 704円 (本体640円+税)
発売日:2016年10月06日 判型:文庫判 ページ数:304
ISBN:9784041049136

戦中・戦後に無頼派として活躍した著者の、大阪の魅力溢れる名短編集!
太宰治、坂口安吾とともに無頼派として活躍し、大阪という土地の空気と
そこで生きる人々の姿を巧みに描き出した短編の名手による表題作を始め
「夫婦善哉」「俗臭」「世相」など代表的作品を集めた傑作選。


――以上、サイトより。

本書のカバー見た目は、劇画かなにかのようですが、
主人公たちは、そこまでかっこいいか、といいますと……。



 ●「大阪の作家」の作品集――『天衣無縫』織田 作之助

『天衣無縫』織田 作之助 角川文庫 (2016/10/6)


さて、まずは目次を――。
底本の、岩波文庫版『夫婦善哉 正続 他十二篇』(1.2.4.収録)と
『六白金星・可能性の文学 他十一篇』(5.-9.収録)を参考に、
それぞれの発表誌と発表年代、初出単行本をメモしておきました。
(「天衣無縫」は、ちくま文庫『名短篇ほりだしもの』2011年1月刊より)

1.夫婦善哉(めおとぜんざい):「海風」昭和15年4月、
 『夫婦善哉』創元社 昭和15年刊
2.俗臭:「海風」昭和14年9月、『夫婦善哉』創元社 昭和15年刊
3.天衣無縫:「文芸」1942(昭和17)年4月、
 『天衣無縫』新生活社 昭和22年刊
4.放浪:「文学界」昭和15年6月、『夫婦善哉』創元社 昭和15年刊
5.女の橋:「漫画日本」昭和21年4月
6.船場の娘:「新生活」昭和21年1月
7.大阪の女:発表誌未詳、昭和21年頃か、
  以上三作『船場の娘』コバルト社 昭和22年刊
8.世相:「人間」昭和21年4月
9.アド・バルーン:「新文学」昭和21年3月
  以上二作『世相』八雲書店 昭和21年刊


*参照:(底本)
・『夫婦善哉 正続 他十二篇』織田 作之助 岩波文庫 2013/7/18
・『六白金星・可能性の文学 他十一篇』織田 作之助 岩波文庫 2009/8/18


次に、作者・織田作之助について――

戦後、太宰治、坂口安吾らと共に「無頼派」「新戯作派」と呼ばれ、
「オダサク」の愛称で親しまれました。
大阪の市井の人々を大阪弁の台詞を交えたテンポの良い文体で活写した
「大阪の作家」と認められています。

大阪市南区生玉前町(現・天王寺区)の生国魂神社近くの裏店「魚鶴」の
子として生まれ、大阪府立高津中学(現・高津高校)卒業まで、この地で
育ち、京都の第三高等学校(現・京都大学)に進学します。
家業を嫌い、生育環境からの脱出を図ったのでした。
そこで、様々な人と出会い、作家へと進んでゆきます。
卒業を前に結核にかかり、白浜で転地療養をしますが、
そのまま中途退学したそうです。
のちに東京に出て行きますが、結核で享年33歳で亡くなりました。
実働7年ほどの作家生活となります。

オダサクの生まれ育った地、高津や生国魂神社周辺などは、
私も多少は知っている土地でもあります。
作品の舞台となっている難波や道頓堀、心斎橋、日本橋、黒門市場周辺
なども知っています。
そういう親近感から、彼の作品に親しめる下地となっているのでしょう。


 ●『天衣無縫』9篇から「夫婦善哉」

内容について書いておきます。
なんといっても代表作とされる「夫婦善哉」があります。

蝶子は、天麩羅屋・種吉とお辰の娘。小学校を出ると女中奉公に出され、
その後、持ち前の陽気好きの気性が環境に染まって芸者に――。
妻子持ちの三十一歳の維康柳吉(これやす りゅうきち)という、
梅田新道にある安化粧品問屋の息子といい仲になりますが、
遊び好きの柳吉は父親から勘当され、二人は東京へ駆け落ちします。
東京で集金した金で熱海に芸者遊びに行き、関東大震災に遭遇、
大阪に帰ることに。避難列車でやっと大阪に帰り、種吉の元へ。
蝶子は抱主(かかえぬし)に無断で飛び出したため、借金の300円を
種吉は月賦で払うといいます。
二人は黒門市場の路地裏に二階借りして所帯を持つのですが、
柳吉に職がないので暮らしに困り、蝶子が稼ぎに出ることになりました。
おきんという年増芸者でヤトナ芸者(芸者の花代より安い、臨時雇の
宴会の有芸仲居)の周旋屋の世話になるのでした。

柳吉というだらしない、遊び好きの坊ん坊ん(ぼんぼん)と、一回り年下の
しっかり者の蝶子という夫婦の物語です。
蝶子は、柳吉の実家の父親に嫁として認めてもらおうと、
二人で店を持ち独立しようと頑張ります。
柳吉のほうは、機会を見ては実家の跡継ぎに戻ろうという魂胆。
店を始めてもすぐに飽きてしまい、稼ぎも蝶子の貯金も遊びに費やす。
その都度、蝶子は昔の仲間から借金しては、何度もお店を出しては売り、
を繰り返します。
そうこうするうちに、実家では柳吉の娘の母親代わりの妹が婿をもらって
跡を継ぎます。そして、父親が危篤と呼びに来ました。
女と別れるといっては実家からお金をせびっていた柳吉。
いろんなつてをたどっては、お金を工面して、ダメな夫をもり立て、
嫁として認めてもらおうとしていた蝶子。
死の間際に認められることを願っていたものの夫は女と別れるといって、
遺産を分けてもらうつもりだった、といいます。蝶子は本当だと思った。
そして二人は、「うまいもん食いにいこか」という柳吉の誘いで、
法善寺境内の「めおとぜんざい」へ食べに行きます。

《(略)「こ、こ、ここの善哉はなんで、二、二、二杯ずつ持って来よる
  か知ってるか、知らんやろ。こら昔何とか大夫ちゅう浄瑠璃のお師匠
  はんがひらいた店でな、一杯山盛にするより、ちょっとずつ二杯に
  する方が沢山(ぎょうさん)はいってるように見えるやろ、そこを
  うまいこと考えよったのや」蝶子は「一人より女夫の方がええいう
  ことでっしゃろ」(略)》

なんともいえぬ関係の夫婦。

とにかく、この柳吉という男は、ええとこの坊ん坊ん(ぼんぼん)ゆえに、
芸者遊び好きで、食べ物にもうるさく、といっても高級料理というより、
南の庶民的な名店の名物料理をよく知っています。
ラストの「夫婦善哉」もそんな一つ。
他には「自由軒」のカレーもあります。


 ●「俗臭」「放浪」、表題作「天衣無縫」

「俗臭」は、和歌山県有田郡の魚問屋の息子が様々な仕事に手を出し、
金を儲けて、父の放蕩でちりぢりになった家族を、「俗臭」溢れる野心で
再興する、めずらしいことにサクセス・ストーリーです。

「放浪」は、両親が亡くなり、弟は大阪の仕出し屋の叔父叔母にもらわれ
板場の修業。娘の妊娠から名だけの夫となりますが、兄の死などがあり、
嫌になった順平は家を出、チンピラと知り合い、というふうに放浪――。
しかし板場の腕があれば生きていける、と。

表題作「天衣無縫」は、友だちに誘われて断れず、見合いの席に遅れて
くるような頼りない、お人好しで爺むさい男と所帯を持つ娘が主人公。

《 私は生まれて来る子供のためにもあの人に偉くなって貰わねばと
 思い、以前よりまして声をはげまして、あの人にそう言うように
 なったが、あの人はちっとも偉くならない。(略)》

そんなにまでして偉くならんといかんのか、といつになく怖い顔をして
私をにらみつけた、というラスト。


 ●「女の橋」「船場の娘」「大阪の女」

この三作は、一つずつ独立した短篇であり、かつ女三代の連作。

「女の橋」――伊吹屋の番頭は坊ン坊ン(ぼんぼん)恭助の遊び相手の
芸者小鈴を遠ざけ、嫁を探し、器量は悪いが家柄のいい嫁を取らせます。
が、小鈴は妊娠し、その娘を引き取ります。何も知らずに育った娘雪子、
女学校の卒業と共に名取になる披露の席で、話を聞いた小鈴は病の身を
おし三味線を弾きたいと申し出、身代わりとなりますが、死んでしまい
ます。そのとき、事情を知った雪子は、太左衛門橋を渡りながら、

《「うちは阿呆やった。うちは阿呆やった……」と、呟きながら、
 自分はもう船場とは何の縁もない人間だという想いが、
 ふっと頭をかすめた。》

「船場の娘」――伊吹屋の一人娘(実は妾の子・芸者の子)雪子と、
前科者の息子の丁稚秀吉の恋物語。父が弁護士を雇えていたら、という
思いから弁護士をめざし英語の勉強をしている秀吉に雪子は好意を持ち、
縁談を前に駆け落ちしようとします。が直前に、番頭に阻止されます。
東京へ行った秀吉から電話が来ます。住所を告げる前に、関東大震災。
五年後、雪子は芸者の子と知られ、嫁入り先から離縁され、実家も没落、
芸者になっていました。ある日、太左衛門橋で、ルンペンとなり大阪に
戻った秀吉と出会います。しかし、秀吉はすでに妻帯者……。

《 雪子は何ごともなかったような表情で、大和屋の玄関にはいって
 行った。》

「大阪の女」――戦後大阪に復員してきた、大阪船場道修町の薬屋の息子
島村は、雪子の喫茶店「千草」に来ます。雪子は娘の葉子と空襲のなか
太左衛門橋を渡って避難し生き延びたと話します。常連となった島村は
葉子が目当て。理想の仕事が見つかったので東京へ行くという島村。
島村は葉子に芸者の子でもかまわない結婚しよう、親は説得するというの
ですが、いつになっても報告に来ません。雪子は自分の過去の経験から
船場の坊ン坊ンとの結婚は難しいと分かっていたので、反対でした。
二人は駆け落ちしようとします。反対していた雪子でしたが、葉子の
「行きたい、行かせて!」の言葉に、考えを改め送ってゆきます。

《(略)雪子はふと葉子の覚悟や島村の理想はたとえ夢であるにしても、
 今はこの夢のほかに何を信じていいのだろうか、そうだ、自分はこの
 夢を信じようと、呟いた。》

 ・・・

底本となっている岩波文庫版『六白金星 可能性の文学 他十一篇』の
佐藤秀明さんの巻末解説「可能性の「織田作」」には、

《(略)いずれも通俗味の勝った読み物小説だが、女の一生を左右する
 微視的な時間と、それを時代の流れの一齣に見せてしまう巨視的な時間
 とをより合わせたところに、織田作ならではの手法を感じ取ることが
 できよう。(略)》

その背後の構造に船場の商家の伝統がある、といいます。
また、太左衛門橋が点景として描かれ、移りゆく時代と人の定点として、
効果を上げている、とも。

三作中では、やはり最後の「大阪の女」がいいですね。
先の二篇を踏まえて、戦後の自由と民主主義の新時代に期待する、
という当時の時代の気風を受けた、苦労人の雪子の、
「この夢を信じ期待する」という希望を感じさせるところが、
美しいラストでした。

先の佐藤秀明さんの解説では、代表作ではない、ということですが、
この短編集中でも気持ちよく読めた一篇でした。


 ●「世相」「アド・バルーン」

「世相」は、織田作之助自身を語り手に、「阿部定」事件を小説にしよう
と考え、公判記録を持つ男に借りるが、時が経ちすぎていることで、
結局は書けないという。文学論的な様々な小説のパターンを示しながら
構想を語り、作家としての悩みや事情を描くお話。

「アド・バルーン」は、人生双六のドラマを描き、オダサクの小説には
珍しい幸福なラストの美談です。落語家の息子に生まれたものの、里子に
出され、丁稚となっても店を転々とする私。そして、お金もなく、死のう
と思っていたとき、拾い屋の男に助けられ、仕事を始め、禁酒会に入り、
貯金の紙芝居をするのならと貯金もし、いつか命の恩人に会ったときに、
この貯金通帳を渡そうと心に決めます。この話を聞いた人から新聞記者に
話が伝わり、五年後、ついに恩人と出会うことに。そして再び、十年後の
約束を取り付けて……。


 ●大阪と放浪の物語

歴代の大阪の作家といえば、江戸時代の井原西鶴の名がまず上がりそう
です。代表作は『好色一代男』(1682年)『好色五人女』(1686年)
『好色一代女』(1686年)『日本永代蔵』(1688年)『世間胸算用』
(1692年)、生国魂神社で発句をしたことでも知られています。

そして、戦前・戦中・戦後の数年という短い時期でしたが、織田作之助が
います。

当時の特に、生玉から難波にかけての繁華街を舞台にした一連の作品。
おおむね頼りない男としっかり者の女の組み合わせが、下町の風情と
ともにおもしろい夫婦の物語となっています。

通俗的な物語を材に取りながら、そこに「可能性の文学」をめざそうと
する、オダサクの世界があるようです。

《一つの偶然が一人の人間の人生を変えてしまう可能性》
を書こうとした「アド・バルーン」のような作品。

「夫婦善哉」もまた、同じような変転の物語です。

《人生の変転は必ずしも転落にはならない》という物語。
 (岩波文庫版『六白金星 可能性の文学 他十一篇』佐藤秀明さんの
  巻末解説「可能性の「織田作」」より)


面白く読ませる小説が多く、底本となった文庫の作品なども、
少し読んでみました。

将棋の坂田三吉を扱った作品「聴雨」「勝負師」も楽しめました。

ただ、男たちの頼りなさと大阪弁で言う「へんこ」さ加減が、
人間的な魅力にもつながっているようで、
その辺がオダサクのおもしろさの一つかも知れません。

自分のことで精一杯という男の生き方の下手さ加減が、
頼りなさの原因なのでしょうけれど、そういう男に愛想を尽かさず、
付き合ってくれる女がいれば、そこに一つの夫婦ができるのでしょうか。

まあ、そんな気がします。

とにかく、男と女の間は難しいものです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2025から(1)角川文庫・『天衣無縫』織田作之助~大阪の作家~」と題して、今回も全文転載紹介です。

今年のテーマは、大阪関西万博の年ということで、「大阪」もしくは、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」です。
そこで、大阪ものの小説や「いのち」に絡んだ作品を、と考えていました。
角川文庫の夏フェアの小冊子を見ますと、「大阪の作家」として知られる、織田作之助の本が出ていましたので、これを採用しました。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

『レフティやすおのお茶でっせ』
〈メルマガ「楽しい読書」〉カテゴリ


--
『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
<夏の文庫>フェア2025から(1)角川文庫『天衣無縫』織田作之助-楽しい読書392号
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<親御さんへ>特別編―左右共存お箸持ち方絵本『おはしをじょうずにもてるかな』-週刊ヒッキイ第689号

2025-07-08 | 左利き
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!)
【最新号の告知】

第689号(Vol.21 no.12/No.689) 2025/7/5
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ―特別編―
右利きも左利きも共存のお箸持ち方絵本
『おはしを じょうずに もてるかな』」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第689号(Vol.21 no.12/No.689) 2025/7/5
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ―特別編―
右利きも左利きも共存のお箸持ち方絵本
『おはしを じょうずに もてるかな』」
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 今回は、<左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界>をお休みして、「特別編」として、
 お箸の持ち方絵本を紹介しましょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―特別編―

  ◆ 右利きも左利きも共存のお箸持ち方絵本 ◆

 『おはしを じょうずに もてるかな』深見春夫/作・絵 岩崎書店
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●お箸の持ち方を教える絵本

タイトル通り、お箸の持ち方を教える絵本です。

うまくお箸が使えない<みぎてちゃん>に、
<ひだりてちゃん>が、お箸の持ち方を教える、という内容の絵本です。

昨年の11月に出版された本でした。
まったく知らなかったのですが、最近ちょっと左利きの検索をしていて、
たまたま見つけました。

最近はあまりこういう検索をやってませんでした。
「必要な情報は必要とするときに手に入る」といった信念があり、
実際にけっこううまくいくのですね。
でもやっぱりそれは、絶え間ない努力の結果であって、
偶然手に入る、という生やさしいものでありません。

 ・・・

「できるかな絵本」シリーズ
『おはしを じょうずに もてるかな』深見春夫 作・絵 岩崎書店‎
2024/11/18


岩崎書店サイトを見ますと、


おはしを じょうずに もてるかな
https://www.iwasakishoten.co.jp/book/b10092368.html


《左ききも大丈夫!箸の持ち方がわかる絵本》
《おはしの正しい持ち方をわかりやすく、ていねいに伝えます。/
 右きき、左きき、どちらでもおはしをじょうずに持てるようになる、
 画期的な絵本!》

動画で見る
https://youtu.be/oBtAd5Z80nQ?list=TLGGGhiOhBF6smsyMDA2MjAyNQ

中面を見る
https://www.iwasakishoten.co.jp/news/n106633.html


絵本ですので、内容に関しましてはそのまま画像を出すのは、
著作権的にどうかよくわかりませんので、書影はともかく、
ブログにもサイトからの画像のみを勝手に転載紹介しよう、と思います。

 ・・・

本文の引用ではなく、
私流に言葉を換えて内容をおさらいしますと――

お箸の使い方がわからない<みぎてちゃん>が、
自己流でご飯を食べようとします。

お箸を突き立てようとしたり、色々挑戦します。
そのたびに食べられる方のご飯やおかずのハンバーグたちが、
意地悪をします。
そんな持ち方で食べられたくはない、というわけです。

そこへ(お姉さんふう?の)<ひだりてちゃん>があらわれて、
意地悪しないでと、正しいお箸の持ち方を教えてあげるのです。





まずは、上のお箸を動かす練習です。

親指・人差し指・中指の三本指でつまむように一本のお箸を持ち、
お箸の先を上下に動かします。

次に、下のお箸を動かす練習です。

下の方に当たるお箸を一本、薬指の先の方にある、
第一関節と指先の間の横の方にのせるようにします。
薬指には、下から支えるように小指を添えます。
お箸の上の方を親指と人差し指の間で固定します。

こうして、上の一本目のお箸は三本指で、
下の二本目のお箸は薬指で動かします。

というように、お箸の持ち方を教える、という内容の絵本です。


 ●【絵本レビュー】から

3歳男の子と6歳女の子のママが読み聞かせてきた絵本を紹介する
「はむはむ絵本 ~2児のママがおすすめする絵本のご紹介~」

2025-01-15
【絵本レビュー】おはしをじょうずにもてるかな / 深見春夫
https://mama-ehon.hateblo.jp/entry/4265831311_1

によりますと、

 《右利き、左利き両対応の配慮と、箸の持ち方の丁寧な解説/
  この絵本の一番の特徴は、右利きと左利きの子ども、
  両方に対応している点です。
  多くの箸の持ち方に関する解説書は、
  右利きを前提としたものが多い中、
  この絵本は、左利きの子どもにも同じように分かりやすく、
  正しい持ち方を教えてくれます。
  これは、子どもたちの個性と可能性を尊重する姿勢の表れであり、
  非常に重要な点だと考えます。
  左利きの子どもが、箸の持ち方に苦労する場面を何度も
  目撃してきた私にとって、この配慮は、感動的でさえありました。》

とありました。

その通りで、右利き・左利きの両対応の配慮がうれしい絵本です。

見る人の左側と右側にそれぞれのお箸を持つ手を配置して、
まったく対等の大きさで扱っています。


 ●従来の教本では

従来、こういった教本では、
右手例だけをのせてあることがほとんどでした。

()にくくって「右利きの場合」と注意書きがあればいい方でした。

例えば、岩波ジュニア新書の

『行儀作法の教科書』横山 験也/著 2010/08/21


「5章 食事 <(2)箸の扱い方>」において、
右利き用のお作法が示され、そのような表記がなされています。

そして、それは、「じゃあ、左利きの場合はどうすればいいの?」
に対する回答がないものでした。

左利きの場合は自分で考えるしかない、ということでしょう。
そのような場合、
たいていの左利きの人は「左右を入れ換えて解釈」したものです。
「右手」を「左手」に、「左手」を「右手」に、と。

たぶんこのような著書の場合、著者には適切な「解答」がない――
なぜなら左利きのための決まったルールが確立されていないので、
“現時点”でこれが「正解」といえる「答え」がないからでしょう。


 ●「左手箸」は「直したいお箸の持ち方」?

そして、かつては、ズバリ「左手箸」は「間違った持ち方の例」として
表現されることも多々ありました。

20年前に出版された、お箸の持ち方に関するお作法の教本

『箸づかいに自信がつく本 美しい箸作法は和の心』
小倉朋子・監修(リヨン社 2005/12/1)


「第1章 箸づかいってそんなに大事?」の 
<こんなお箸の持ち方していませんか?> で、
「直したいお箸の持ち方」として、
「平行型(スプーン型)」「交差箸」「つかみ箸」と並べて、
「左手箸」が紹介されています。

その説明は
 《食卓のマナーや配置などは、
  右手でお箸を持つことを前提に決められています。
  お箸は右手で持てるように練習しましょう。》
というものです。



(画像:左手箸を「直したい持ち方」と紹介する 2005年刊
『箸づかいに自信がつく本 美しい箸作法は和の心』小倉朋子・監修)


*参照:『箸づかいに自信がつく本 美しい箸作法は和の心』の
「左手箸」についての筆者の意見

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii
(レフティやすおの左組通信メールマガジン)』
・第42号(No.42) 2006.8.5 「左手で字を書くために(3)」
「左利き子育て一口メモ マナー本・作法本」

《悲しいけれど、これがひとつの現実です。

 正しい箸使いは、必ず身に付けるべき技術です。
 美しい箸使いもまた、身に付けておきたいものです。
 しかし、正しい美しいという価値判断に、右手使いか左手使いかが
 含まれるとは、私は考えていません。

 左利きの何たるかを知らないがゆえの偏見にとらわれて、伝統を守
 らんがために、人間としての本質を見落としてしまっている、とい
 うところでしょう。》

・第555号(No.555) 2019/11/2
「GO!GO!GO!号―15年目の左利き事情[左手箸について]」
『レフティやすおのお茶でっせ』2019.11.2
GO!GO!GO!号―15年目の左利き事情[左手箸について]
左利きで生きるには週刊ヒッキイ555号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2019/11/post-af53c0.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/1c41fb11890585350d2278a6599b451c

――日本左利き協会のリツイート
https://twitter.com/japan_lefthand/status/1187710343109201920

を紹介しながら、上記の筆者の意見を引用紹介し、日本左利き協会発起人
大路直哉さんの著書
『見えざる左手―ものいわぬ社会制度への提言』大路直哉/著
 三五館 1998/10

の意見や、

小笠原敬承斎(おがさわら・けいしょうさい)氏のサイトにおける挨拶
http://www.ogasawararyu-reihou.com/message/index.html

筆者のブログ記事↓の一部など紹介しています。

『レフティやすおのお茶でっせ』2007.6.30
「横澤彪氏「国分太一くん、箸は右手で…」発言に思うこと」
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2007/06/post_dade.html


 ●右利きにこだわる人は「伝統、伝統」というけれど……

伝統に関していいますと、
日本語表記の伝統は縦書きで、文章は右から左へ改行してゆくものです。
私の子供の頃は、ほとんどの教科書は縦書きでした。
横書きは、算数や理科、音楽の楽譜面ぐらいでした。
中学になって英語が横書きでした。

ところが、昨今の学校教科書は、国語以外はみな、
“西洋伝来”の横書きになっています。
国語の教科書だけは、伝統に則って縦書きです。

しかし、漢字の練習帳ではどうでしょうか?
大半の練習帳は縦書きで、ページは右から左へ進みます。
国語の伝統に則っています。
一方、ページ内では左から右へ展開する、
右手書きに都合のいい形にアレンジされています。

右手で書くときに、常にお手本の文字が見えるように左端にあり、
そこから順に左から右へ、なぞる枡、位置関係が分かる罫線の入った枡、
まったくの白紙の枡というように並んでいます。

日本語の伝統などどこへ行ったのやら……。

都合のいいときだけ「伝統、伝統」といいながら、
自分に都合の悪いときは、勝手に変えてしまう
「右利き偏重社会」の悪いところです。


 ●「同じ大きさ」という現実

絵本に戻りましょう。

左利きが少数派ではあるけれど、
ごく「普通の存在」となってきた時代ですので、
こういう本が出てきても不思議ではないのです。

しかし、長年左利きの問題と取り組んできたものとしましては、
非常にうれしいものがあります。


筆者の年上の知り合いに、
ご飯を食べるときになると一人で隠れて食べる人がいました。
「字は右になったけれど、箸は直らなかった」というのです。

食は、本能でもあり、生まれてすぐに必要になる技術です。
当然、利き手が優先的に使われ、発達するでしょう。
書字は、もう少し後に必要となる技術です。
まわりの大人たちの教えに左右される可能性が高くなります。
それゆえ、このふたつの技術の間には、
実際に使う手に違いが生まれても不思議ではないでしょう。


筆者も子供の頃は左手で箸を持って食べていると、
まわりの大人の人から色々と言われたものでした。

親戚の家でも、日常的に親しくしている人たちはいいのですけれど、
お正月など普段から付き合いの少ない方々も寄り合う場合は、
けっこうキツいものがありました。

今でも外食をほとんどしないのも、
一つにはそういうことが理由としてありました。

 ・・・

先のママさんのご意見にもありますように、
左右平等に行われる持ち方の説明は、

 《子どもたちの個性と可能性を尊重する姿勢の表れであり、
  非常に重要な点だと考えます。
  左利きの子どもが、箸の持ち方に苦労する場面を何度も
  目撃してきた私にとって、この配慮は、感動的でさえありました。》

ほんとうのその通りで、始めにルールありきではなく、
子供ファースト、子供本位の扱い方であり、
こういう本が「当たり前」のこととなったという現実が、
筆者には未だに嘘のように思われます。

もちろん、本当のことです。
2005年出版の『箸づかいに自信がつく本』から、19年――。
感慨無量!


 ●6年前の教科書の左手書字例と比べてみると

令和2年用の東京書籍から出版された、小学生一年生用の書写教科書で、
鉛筆の持ち方の説明図に、左手の図が初めて入りました。
ただそれは、右手よりも一回り小さいものでした。

*参照:『レフティやすおのお茶でっせ』2020.2.9
左利きへの配慮がなされた東京書籍・小学校教科書
「新しい書写 2年度用」
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/02/post-0fbe38.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/dd08c16d81a211f5c60266bf57191f20

『あたらしいしょしゃ 1 [令和2年度]
(小学校国語科書写用 文部科学省検定済教科書)』東京書籍 2019/3/1


(画像:東京書籍 2年度用小学一年「あたらしい しょしゃ」表紙)

(画像:上記サイトより無断拝借 ●1年P4-5、下は黄色枠「左手例」の拡大図)


それを思いますと、まったく同じ大きさで示されている、
本書のお箸の絵は、本当に画期的といっていいように思います。
これが6年の変化でしょうか?

「左利きは少数派だから(=多くの人にとっては不要なものだから)
小さな図でもいいだろう」ではなく、
左利きであろうと右利きであろうと同じ「人間」で、
それぞれの手なのですから、同じ大きさでいい、のです。

この絵本の登場は、大げさに聞こえるかも知れませんが、
筆者の願いである、
「右利きだけでなく、左利きにも優しい、左右平等・左右共存の社会」
への大きな一歩だ、と感じました。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ―特別編―右利きも左利きも共存のお箸持ち方絵本『おはしを じょうずに もてるかな』」と題して、今回は全紹介です。

元々は、見つけたときブログですぐに紹介しようかと思っていました。
でもその時点で半年が過ぎていましたので、今さら「すぐに」といっても、すでに半年が過ぎているので、即時性という点はどうにもなりません。

じゃあ、メルマガで紹介すればいいじゃないか、ということで。

最初は図書館で探してみたのですが、結構閲覧・貸出されているようでした。
やっぱり支持されているようだ、と思い、本屋さんで買うことにしました。
いつもの本屋さんに行くと、ありました。
児童書は今まで持っていませんでした。
こういう本も資料の一つとして持っていてもいいのかな、と思いました。

実を言いますと、改めて自分の持ち方を確認しました。
この本のような持ち方をしていました。

私自身、玉子の黄身をつまめるほど、じょうずな持ち方ではありませんが、割といい方だと思います。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』


『レフティやすおのお茶でっせ』
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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
<親御さんへ>特別編―左右共存お箸持ち方絵本『おはしを…』-週刊ヒッキイ第689号
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中国の古典編―漢詩を読んでみよう(35)陶淵明(12)「帰去来の辞」2-楽しい読書391号

2025-07-02 | 本・読書
古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!)
【最新号・告知】


2025(令和7)年6月30日号(vol.18 no.11/No.391)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(35)陶淵明(12)
さあ、帰ろう「帰去来の辞」2」



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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2025(令和7)年6月30日号(vol.18 no.11/No.391)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(35)陶淵明(12)
さあ、帰ろう「帰去来の辞」2」
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 「中国の古典編―漢詩を読んでみよう」陶淵明の12回目、最終回です。

 陶淵明編もいよいよ最後の一篇の後編です。
 
 今回は、『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
 「九、達観を目指して――陶淵明の世界」より、
 <さあ、帰ろう>「帰去来の辞」の詩の第四段を紹介します。
 一から三段目までは、前回の号をご参照してください。

 陶淵明の詩の紹介は今回が最終回となります。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

◆ 人生観の詩 ◆

 中国の古典編―漢詩を読んでみよう(34)

  ~ 陶淵明(12)さあ、帰ろう ~ 
 
  「帰去来の辞」第四段 他

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今回の参考文献――

『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
 江原正士、宇野直人/著 平凡社 2010/4/20
「九、達観を目指して――陶淵明の世界」より



 ●「帰去来の辞」(第四段)

 《今、自分の人生が終わりそうな予感にふと心を痛めたのを受けて、
  「已んぬるかな」と始まります。》p.408

 《最後は、自分の人生観のようなものに発展させてゆきます。》p.409

(四段目)

已矣乎      已(や)んぬるかな
寓形宇内復幾時  形(かたち)を宇内(うだい)に寓(ぐう)する
          復(ま)た幾時(いくとき)ぞ
曷不委心任去留  曷(なん)ぞ心(こころ)を委(ゆだ)ねて
         去留(きよりゆう)に任(まか)せざる
胡為遑遑欲何之  胡(なん)為(す)れぞ遑遑(こうこう)として
          何(いづ)くにか之(ゆ)かんと欲(ほつ)する

富貴非吾願    富貴(ふうき)は吾(わ)が願(ねが)ひに非(あら)ず
帝郷不可期    帝郷(ていきよう)は期(き)す可(べ)からず
懐良辰以孤往   良辰(りようしん)を懐(おも)うて
         以(もつ)て孤(ひと)り往(ゆ)き
或植杖而耘子   或(ある)いは杖(つえ)を植(た)てて耘子(うんし)す

登東皋以舒嘯   東皋(とうこう)に登(のぼ)り
         以(もつ)て舒嘯(じよしよう)し
臨清流而賦詩   清流(せいりゆう)に臨(のぞ)んで詩(し)を賦(ふ)す
聊乗化以帰尽   聊(いささ)か化(か)に乗(じよう)じて
         以(もつ)て尽(つ)くるに帰(き)し
楽夫天命復奚疑  夫(か)の天命(てんめい)を楽(たの)しんで
          復(ま)た奚(なに)をか疑(うたが)はん

 まあよろしい、くよくよするな
 我が肉体をこの世に預けること、もはやどれくらいであろうか
 どうして心を自然に委ねて、死ぬか生きるかの成り行きに任せないのか
 どうしてあくせくと忙しそうにして、どこに行こうとするのか

 財産も高い名誉も私の願うところではない
 仙人の都に行くことは期待できない
 そこで天気のよい日に一人で出かけて行き
 時には杖を立てかけ、
  自ら草を刈ったり土寄せをしたりしようではないか
 
 東の丘に登ってゆっくりと深呼吸でもして
 清らかなせせらぎにのぞんで詩でも作ろう
 そんなふうにしてとりあえず自然の万物の変化と一体になり
  わが生命が尽きることを納得しようではないか
 天命というものを楽しみ、もはやそれを疑うことはすまい


「形」は、肉体や身体。
「宇」は、空間を表わし、「宇内」で“天下、世の中”の意味。
(当時は)四十一歳でこういう感慨が出て来る。
「寓す」は、“寄せる、宿す”。

 《“人間の体はこの世の仮のものだ”という考え方だとすると、
  ちょっと道家的です。》

反語が続く。
「曷ぞ~せざる」の形で勧誘の間隔が強く、「ぜひ~しよう」。
もはや行く必要はない。
自分を納得させようとしている感じ。

「帝郷」は、仙人の住む都。
陶淵明さんは、神仙思想を信じていません。
「耘子」は、草を切ることと、土を耕すこと。

 《“これからは天命に従って生きてゆきましょう”と、
  悟りのような言葉で終わっている》p.410


 ●「帰去来の辞」が代表作とされる陶淵明さんは……?

四十一歳で悟りきってしまったような……

 《儒教の教えに従って、世直しを志して官職に就いたはずが、
  うまくゆかなかった。
  幼少期以来刷り込まれた考え方に背くわけですから、反作用として
  これくらい強いことを言わずにいられなかったんでしょう。》p.410

と、宇野さんの解説。

最晩年の詩と比べるとエネルギーが……

 《こちらは燃焼度が高いですね。やはり実際に、“これから理想の
  生活が始まるんだ”と希望に燃え、また自分を駆り立てる意味でも
  あったんでしょうか。実体験がまだない分、こういう観念的・
  理想的なことだけ言えたという気もします。》p.410

三十代で作った「五柳先生伝」もそうで、陶淵明さんには理想主義的な
「自分はこうありたい」という作風がある?

 《時期ごとに或る理想や願望に従って、その時々にそれを詩に吐露した
  という印象です。》p.401

後世の詩人は陶淵明さんをどのように見ているのか?

 《“世を見限ってわが道を大切に生きた人”と捉えるのが主流》同上

 《時々“それだけじゃ済まないぞ”と見破った人がいて、たとえば
  杜甫は“陶淵明は悟り切っていない。不徹底な人だ”という
  意味のことを言っていて、やはりよく見ていますね。(「陶潜は俗を
  避くるの翁なるも/未だ必ずしも能く道に達せず」――
  「興を遣る五首」其の三)》同上

 《北宋の蘇軾(そしょく)や、何層の哲学者の朱子、近代の小説家魯迅
  なども、「陶淵明は達観しているようでいて、実は反骨精神に満ち
  あふれている」といったことを述べています。》同上

 《本書ではとくに、陶淵明はその時々、拠り所が見つからずに迷って
  いた人だった、という面をクローズアップできたかと思います。》
   同上


本書『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』の著者の一人、
宇野直人さんの陶淵明の見方は、他の類書とは少し異なっています。

この点は、本書の「おわりに」に、

 《類書には見られない新しい見解が随所に示されています。》p.412

とあり、

 《陶淵明の、ためらい悩む気弱な一面など》同

が、それだ、といいます。
本編「帰去来の辞」でも、そういう面を強調されていました。

巻末の「主要参考文献」に上げているような、関連する書籍と
読み比べていただくことで、漢詩の世界がますます深いものとして
実感されることでしょう、といいます。


 ●興膳宏『陶淵明』の「帰去来の辞」解説

昨年12月に講談社学術文庫から出版された

『陶淵明』興膳 宏(こうぜん ひろし)/著 講談社学術文庫 2024/12/12


(原本は、1998年に『風呂で読む陶淵明』として世界思想社より刊行)

から、「帰去来の辞」の解説を引用しておきます。

 《「帰去来の辞」序の末尾に、「乙巳の歳(義煕元年、四〇五年)
  十一月」と署されていて、陶淵明が四十一歳の年、県令の地位を
  なげうって郷里の家に帰ってきて間もなくの作と知られる。
  窮屈な役人暮らしに決別して、かねてからの念願だった
  田舎での自由な生活に入ることのできた喜びが、
  飾り気のない筆で率直にうたわれており、
  陶淵明の文学の基点を示す作品といってよい。
  変わらぬ節義を象徴する松と菊、解放された自由の境地を暗示する
  雲と鳥、人をやさしく受け入れてくれる農村の自然と人情、
  そして生命の変化に身を任せて生きようとする死生観など、
  陶淵明の文学に現われる諸特徴がすでにここに集約的にうかがえる。ただ、
  「帰去来の辞」はともすれば悟りすました隠遁者の心境の表白として
  見られがちだが、実は、社会と自分との葛藤に悩み続けてきた
  孤独な人物の苦悩を、新生活の第一歩を踏み出すに当たって、
  かく生きたいという将来の願望の形で投影した作品と見るのが、
  むしろ妥当ではあるまいか。
  「辞」は、韻文の一種で、詩と賦の中間的な形式ととる。
  四種の韻を用いており、換韻ごとに一つの段落を構成する。
  この篇は『文選』にも収められる。》p.12-13


 ●陶淵明と「帰去来の辞」について

前回も書きましたが、「帰去来の辞」には「序」が付いていて、
どういう理由で役人を辞めて帰郷するのかという説明が入っています。

元々役人には向いていない自分だと分かっていたけれど、
生きるために、飯を食うために仕方なく職に就いたのだ、と。

そして、「帰去来の辞」は、いよいよ数え年で四十一歳になって、
故郷に帰ってあこがれていた自然の中での暮らし、
農耕生活に入っていくぞ、という決意の詩でした。

当時の社会では、彼の家ぐらいの地方の小貴族では、
出世も限られており、儒教を信奉する身であっても、
社会のためにできることは限られており、
そういう理想と現実のギャップの中で選んだ道だったのでしょう。

人生に負けた、というわけではなく、
新たな挑戦ということだったのでしょう。

結果的に、彼の人生はどうだったのでしょうか。

今では田園詩人のように言われていますが、
宇野さんや他の人の解説にもあるように、
平易な言葉で自分の生活を語る、あるいは、時に桃源郷のような、
山海経のようなファンタジーを扱ってみたり、
自由な作家であったように感じます。

唐代以前の詩人の中では圧倒的な存在だったと思います。
なにしろ、私のように無知な人間でも知っている名だったのですから。


 ●陶淵明の詩の有名なくだり――歳月人を待たず

陶淵明の詩の中でもっとも人口に膾炙しているくだりは、

「雑詩」其の一の
 《盛年 重ねては来たらず。一日再たびは晨なり難し。
  時に及んで当に勉励すべし。歳月 人を待たず」》
  (『陶淵明 全詩文集』林田慎之助/訳注 ちくま学芸文庫
   「解説」より)
でしょう。

このくだりを、「若い日は二度と来ないのだから勉強に励め」
というふうに解釈して引用されることがよくあります。

「時に及んで当に勉励すべし」の部分を、
「勉強に励め」というのではなく、
歳月は人を待ってはくれないのだから「存分に楽しめ」というのが、
正しい解釈であると多くの方々が述べています。

「飲酒」等の詩を読んできましても、その心はやはり、
後者の解釈が正しいのだろう、という気にさせます。

陶淵明さんといえば、田園詩人といわれ、
「歳月 人を待たず」の人として知られ、
そういうイメージで見てきました。

今回あれこれの詩を拝見し、改めて陶淵明さんの
様々な困難があって悩みながらも、自分なりの楽しみを見つけ、
まわりの人と酒でも酌み交わしながら、日々を暮らしてゆこうという、
人間的な魅力というものを知った気がします。

機会ある度にもっと色々とその詩を読んでみたいものです。
「歳月、人を待たず」ですから。

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本誌では、「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(35)陶淵明(12)さあ、帰ろう「帰去来の辞」2」と題して、今回も全文転載紹介です。

思いのほか長くなった感の陶淵明編でしたが、唐代以前の詩人では、『楚辞』の屈原以外では、陶淵明さんぐらいしか知らない人でしたので、まあ、そんなものかという感じです。
秋からは、いよいよ唐代の詩人に向けて再出発となります。

当初、この<漢詩を読む>は、屈原、陶淵明、杜甫・李白、白居易(白楽天)ぐらいで、イージーに行くつもりでした。
それが、平凡社のこのシリーズ『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』(江原正士、宇野直人/著)を知ってから、それに則りながら、気になった詩人とその作品を適当にピックアップしていくという形になりました。

その1巻目が終わり、いよいよ次からは唐代の詩人たちの2巻へ入ってゆくことになります。
これからも、このシリーズとともに進めていこうと考えています。
今後とも、よろしくお願いいたします。

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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
中国の古典編―漢詩を読んでみよう(35)陶淵明(12)「帰去来の辞」2-楽しい読書391号
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