「寒い国から帰ったスパイ」(「The Spy Who Came in from the Cold」、1965年、英)
監督 マーティン・リット
原作 ジョン・ル・カレ
脚色 ポール・デーン ガイ・トロスパー
撮影 オズワルド・モリス
音楽 ソル・カプラン
出演 リチャード・バートン
クレア・ブルーム
オスカー・ウェルナー
ピーター・ヴァン・アイク
冷戦時代、東ドイツに潜入させていたイギリス側のスパイが国境検問所
で彼を待ち受けていたリーマスの目の前で射殺された。
東ドイツ諜報部の中枢に居るモントを葬るべく、イギリス諜報部はリーマ
スを「裏切り者」として巧妙に東側に売りつける・・・。
「スパイを何だと思ってる!只、下品で惨めな人間だ、俺のような酔っ払
いや恐妻家が自警団気取りで働いてるだけだ」」
傑作「裏切りのサーカス」と同じ作者のヒット小説の映画化。
「裏切りのサーカス」ほど錯綜はしてませんが、実際の諜報戦とは「こうい
うものだろう」と実感させる優れた作品だと思います。
諜報戦とは情を一切排除した戦い、「情」を持てば相手に利用されるだけ、
きっと突き詰めれば感情を持たない機械同士の戦いに近いのだと思います。
そして盤上から排除されるチェスより、獲り駒を捨て駒として相手の急所へ
付き付ける将棋の世界に似ている。
でも、一切の情を排除し機械的思考で作戦を立てても、立てる者も駒とな
る者も感情を捨てきれない人間、ゲームの参加者同士の「貸し借り」もあっ
て極めて人間的世界も存在する魑魅魍魎。
そんな人間としてギリギリの世界には「麻薬」のような中毒性も有るのかも
しれません、皆、信じるモノの無い世界で疲れきりながら、「裏切りのサーカ
ス」のスマイリーのようにゲームを続けるか、この作品の主人公リーマスのよ
うに「フォールド(降りる)」するか。
無機質であるべき駒に血が流れてる皮肉、スパイ映画の面白さは機械の
ような非情っぷりと生身の人間の相剋に有るのであって、派手なドンパチに
有るのではない、この作品や「裏切りのサーカス」は、それを立証してるので
はないでしょうか。
リーマスの最後の行動を見て、僕はA・ワイダの「地下水道」のラストシー
ンを思い出しました。
「石を隠すなら石の中」とばかりに大物俳優を多用した「裏切りのサーカス」
と違い、こちらはR・バートン、C・ブルーム、O・ウェルナーくらいが有名ドコロ。
バートンの表も裏も知り尽くして疲れ切った感じ、ブルームの縁薄い女の純
真さ、ウェルナーの有能さを立証し続けなければならないユダヤ人としての
危機感、それぞれが見事に演じ切っていたと思います。
特にR・バートンは、僕が映画を観始めた時期と重なった事もあるけど、い
つもE・テーラーと対で出てきて、毎度、若くないリズに振り回される役ばかり
(笑)、いい印象の持ちようがなかった。
イギリスの名優と聞いていたけど、印象に残ってたのは「史上最大の作戦」
の負傷して動けない士官くらい。(「1000日のアン」は贔屓のジュヌヴィエー
ブ・ヴィジョルドばかり見てたからヘンリー8世の印象がない(汗))
漸く、印象に残る2作目に出会いました。(笑)
非常に地味だけど優れた作品だと思います。
※哀愁に倦怠を数滴垂らしたような印象的なテーマ音楽、それが有りながら
多用せず、静かに物語を進行させる演出に好感度が上がりました。
2016.7.3
DVD
監督 マーティン・リット
原作 ジョン・ル・カレ
脚色 ポール・デーン ガイ・トロスパー
撮影 オズワルド・モリス
音楽 ソル・カプラン
出演 リチャード・バートン
クレア・ブルーム
オスカー・ウェルナー
ピーター・ヴァン・アイク
冷戦時代、東ドイツに潜入させていたイギリス側のスパイが国境検問所
で彼を待ち受けていたリーマスの目の前で射殺された。
東ドイツ諜報部の中枢に居るモントを葬るべく、イギリス諜報部はリーマ
スを「裏切り者」として巧妙に東側に売りつける・・・。
「スパイを何だと思ってる!只、下品で惨めな人間だ、俺のような酔っ払
いや恐妻家が自警団気取りで働いてるだけだ」」
傑作「裏切りのサーカス」と同じ作者のヒット小説の映画化。
「裏切りのサーカス」ほど錯綜はしてませんが、実際の諜報戦とは「こうい
うものだろう」と実感させる優れた作品だと思います。
諜報戦とは情を一切排除した戦い、「情」を持てば相手に利用されるだけ、
きっと突き詰めれば感情を持たない機械同士の戦いに近いのだと思います。
そして盤上から排除されるチェスより、獲り駒を捨て駒として相手の急所へ
付き付ける将棋の世界に似ている。
でも、一切の情を排除し機械的思考で作戦を立てても、立てる者も駒とな
る者も感情を捨てきれない人間、ゲームの参加者同士の「貸し借り」もあっ
て極めて人間的世界も存在する魑魅魍魎。
そんな人間としてギリギリの世界には「麻薬」のような中毒性も有るのかも
しれません、皆、信じるモノの無い世界で疲れきりながら、「裏切りのサーカ
ス」のスマイリーのようにゲームを続けるか、この作品の主人公リーマスのよ
うに「フォールド(降りる)」するか。
無機質であるべき駒に血が流れてる皮肉、スパイ映画の面白さは機械の
ような非情っぷりと生身の人間の相剋に有るのであって、派手なドンパチに
有るのではない、この作品や「裏切りのサーカス」は、それを立証してるので
はないでしょうか。
リーマスの最後の行動を見て、僕はA・ワイダの「地下水道」のラストシー
ンを思い出しました。
「石を隠すなら石の中」とばかりに大物俳優を多用した「裏切りのサーカス」
と違い、こちらはR・バートン、C・ブルーム、O・ウェルナーくらいが有名ドコロ。
バートンの表も裏も知り尽くして疲れ切った感じ、ブルームの縁薄い女の純
真さ、ウェルナーの有能さを立証し続けなければならないユダヤ人としての
危機感、それぞれが見事に演じ切っていたと思います。
特にR・バートンは、僕が映画を観始めた時期と重なった事もあるけど、い
つもE・テーラーと対で出てきて、毎度、若くないリズに振り回される役ばかり
(笑)、いい印象の持ちようがなかった。
イギリスの名優と聞いていたけど、印象に残ってたのは「史上最大の作戦」
の負傷して動けない士官くらい。(「1000日のアン」は贔屓のジュヌヴィエー
ブ・ヴィジョルドばかり見てたからヘンリー8世の印象がない(汗))
漸く、印象に残る2作目に出会いました。(笑)
非常に地味だけど優れた作品だと思います。
※哀愁に倦怠を数滴垂らしたような印象的なテーマ音楽、それが有りながら
多用せず、静かに物語を進行させる演出に好感度が上がりました。
2016.7.3
DVD
ひと言でいうなら、こういう作品ですよね~♪
鉦鼓亭さんの記事は、とても手堅くて、読み応えがあって、大人な感じです☆
>※哀愁に倦怠を数滴垂らしたような印象的なテーマ音楽、それが有りながら
> 多用せず、静かに物語を進行させる演出に好感度が上がりました。
そうそう、音楽の事を書き忘れていました!
仰る通りに、印象的なのにも関わらず、あまり多くの場面で使っていないのがホントに良かったですネ~♪
今現在の映画作家の皆さまにもよくお勉強して頂きたいですよね~!
.
コメントありがとうございます!
とても手堅くて、読み応えがあって、大人な感じです☆
>過分なお言葉を頂き、ありがとうございます。
冷汗三斗です。
音楽の事
>良い音楽でした、しかも、本当に必要な所でしか使っていない。
音楽の使い方を心得てる感じがしました。
(未見ですが前作の「暴行」の評判が(日本では)散々で、観る前、少し不安だったのですが完全に杞憂でした)
この作品、タイトルは知っていたのですが、R・バートンだし、と余り食指が動かず少し避けていた気もします。
このなに良い作品だったとは・・・。
大感謝です!
P・フォーク
>週末、土曜の夜に映画館に行って、日曜日は完全休養日にする予定でいます。
(次週まで、その作品を上映してるか解らないし、TOHOシネマズのポイントを使うチャンスだし)
なので今月のお題は一週間遅刻させてもらいます。
(在庫を)調べてないのですが「ブリンクス」、「カリフォルニア・ドールズ」、「最高のルームメイト」の中から一本になると思います。