先日、知人からこんな話を聞いた。
名前は仮にYさんにしておく。
Yさんの住んでいたアパートに
時々猫がえさをねだりに来ており
他の部屋の人が与えていたそうだが
その人が引っ越してしまった。
それからYさんがえさをやるようになり、
冬を迎える頃
部屋の中に招き入れるようになった。
もともと野良なので
警戒心が強く、
部屋に入るようになってからも
いつも彼女と対角線上に位置していた、という。
また、彼女が実家に帰ったりして家を空けると
とても怒って噛み付いて来たという。
「それがね、いつも絶対に動脈の上なの」
と彼女は微笑みながら話す。
「野良だから、ツバメやネズミを捕って食べていたのも見たことがあるし
ここぞ、という場所を分かっていた野生の子だたんだよね」
その猫がしゃべったことが
2回、あったそうだ。
1回目は
彼女が仕事のことでへこんでいたとき。
「大丈夫?」
という声が
頭の中に直接響いて来たそうだ。
ふっと振返ると、猫が顔をなめてくれた。
「あんたなの?」と聞くと
猫は向きを変え、知らんぷりをしていたと言う。
2回目。
あるとき、
彼女が1週間ほど実家に帰ることになり、
猫を置いて行くのがしのびなかった彼女は
実家に連れて行った。
その間、気に食わなかったらしい猫があばれて大変だったそうだ。
そしてアパートに帰って来て1週間ほどした頃。
仕事をしていた彼女に
外に出してくれと猫がねだり、
この忙しいときに…
と思いながら玄関のドアを開けてやった。
猫は、外に出ると振返って
「ねえ、いなくなっても大丈夫?」
と言ったのだそうだ。
彼女は反射的に
「何言ってんの、大丈夫に決まってるじゃない」と答えた。
それっきり、猫は帰ってこなかった。
何週間も探したが全く見つからず、
大家さんに尋ねてみると
庭で猫が死んでいた日があったそうだ。
色や大きさなどの風体や
死亡の日時がいなくなったときとほぼ一緒だったので
彼女は「あの子だ…」と思ったという。
「…こんな話、誰にでもできるわけじゃないけどね」と
うちの猫を眺めながら、
Yさんはいつも通りにニコニコしながら語った。
その笑顔が、
あまりにいつもと変わらないので
わたしは猫の亡き後、彼女がどんなことを感じたのかを
聞くことができなかった。
**************
愛情は人との間だけでやりとりしているものではない。
言葉は交わさなくても
一緒にいたり、何年か過ごしているうちに育まれていくのだな。
心配しているつもりが、心配されたり。
切ないけれど、とても心に残った。
…さて、うちの猫はしゃべったことはないけれど、
ちょっとしたエピソードがあるので
それはまたいつか書いてみようと思う。
名前は仮にYさんにしておく。
Yさんの住んでいたアパートに
時々猫がえさをねだりに来ており
他の部屋の人が与えていたそうだが
その人が引っ越してしまった。
それからYさんがえさをやるようになり、
冬を迎える頃
部屋の中に招き入れるようになった。
もともと野良なので
警戒心が強く、
部屋に入るようになってからも
いつも彼女と対角線上に位置していた、という。
また、彼女が実家に帰ったりして家を空けると
とても怒って噛み付いて来たという。
「それがね、いつも絶対に動脈の上なの」
と彼女は微笑みながら話す。
「野良だから、ツバメやネズミを捕って食べていたのも見たことがあるし
ここぞ、という場所を分かっていた野生の子だたんだよね」
その猫がしゃべったことが
2回、あったそうだ。
1回目は
彼女が仕事のことでへこんでいたとき。
「大丈夫?」
という声が
頭の中に直接響いて来たそうだ。
ふっと振返ると、猫が顔をなめてくれた。
「あんたなの?」と聞くと
猫は向きを変え、知らんぷりをしていたと言う。
2回目。
あるとき、
彼女が1週間ほど実家に帰ることになり、
猫を置いて行くのがしのびなかった彼女は
実家に連れて行った。
その間、気に食わなかったらしい猫があばれて大変だったそうだ。
そしてアパートに帰って来て1週間ほどした頃。
仕事をしていた彼女に
外に出してくれと猫がねだり、
この忙しいときに…
と思いながら玄関のドアを開けてやった。
猫は、外に出ると振返って
「ねえ、いなくなっても大丈夫?」
と言ったのだそうだ。
彼女は反射的に
「何言ってんの、大丈夫に決まってるじゃない」と答えた。
それっきり、猫は帰ってこなかった。
何週間も探したが全く見つからず、
大家さんに尋ねてみると
庭で猫が死んでいた日があったそうだ。
色や大きさなどの風体や
死亡の日時がいなくなったときとほぼ一緒だったので
彼女は「あの子だ…」と思ったという。
「…こんな話、誰にでもできるわけじゃないけどね」と
うちの猫を眺めながら、
Yさんはいつも通りにニコニコしながら語った。
その笑顔が、
あまりにいつもと変わらないので
わたしは猫の亡き後、彼女がどんなことを感じたのかを
聞くことができなかった。
**************
愛情は人との間だけでやりとりしているものではない。
言葉は交わさなくても
一緒にいたり、何年か過ごしているうちに育まれていくのだな。
心配しているつもりが、心配されたり。
切ないけれど、とても心に残った。
…さて、うちの猫はしゃべったことはないけれど、
ちょっとしたエピソードがあるので
それはまたいつか書いてみようと思う。
楽しみにしております。猫も犬も飼えない
団地住まい故、よその猫や犬を見てはよだれを
垂らしておりますわ。
もし、私の知ってる彼女なら。
たいへんな事態でもニコニコ顔でサラっと言ってなんとかしようとする。
彼女のまわりにはゆったりした空気がいつも流れていて、その愛情が花にも、動物にもそそがれている。
あ~。仕事対応のために殺伐とした心理状態でバタバタ動く私には受け止める度量ないなぁ。
人生生きてく上で、どっちが幸せって、彼女がしあわせなんだと今思ってます。(比較できないのはわかってるけど)
身近ゆえ、
話さないゆえ、
かえっていろいろなことを感じます。
では続きをお楽しみに…!
どちらもありですね。
わたしは
ヨロコビも悲しみも、どんなことでも
味わい尽くしたいなあ、と思います。
ツラい事があって落ち込んでると、少し離れたところから
じっと見てて、「どうしたの?」
と聞くそうです。
いろんなこと、ちゃんとわかってるんだ。
そうですか…
話しかけてくれる猫、
けっこういるんだねえ。
うちのは話さないな、まだ。
いつの日か心待ちにしているのですが。