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『私は女になりたい』(窪美澄)

2021年05月02日 | ★女装の本・雑誌
『私は女になりたい』
市立図書館の新刊紹介でこのタイトルを見つけました。
「これは、トランスジェンダーの本に違いない♪」と直感し、速攻で予約を入れました。

そして図書館から予約確保のメールが来ましたので、読み出しました。
結論からいうと、男性が女性にトランスする本ではありませんでした。

主人公は赤澤奈美。
美容整形医院の院長。仕事に生きる女という。
47歳のシングルだが前夫との間に大学生の男の子がいる。
医院のオーナーは高齢の資産家。
性関係ないが月に一度、高級ホテルの一室で時を過ごす。

ある日、奈美の医院に薄毛を直したいということで33歳の業平公平がやってくる。
結婚式を控えているので、ということだ。
しかし、公平は相手に婚約を破棄された。
そんなとき、偶然に街で奈美は公平に会う。
公平も思わぬ偶然に喜び、奈美を居酒屋に誘う。

こうして47歳の女と33歳の男が付き合いだした。
そして、奈美のマンションで二人は身体を重ねる。


「本気?」
「えっ」
「あの、本気で私としようと」
「何言うてんの」
「だって」
「赤澤さん、初めてするわけじゃないでょう?」
 彼が笑いながら言う。

「……あのね、正直に言うね」
「うん」公平が隣に座り、私の頭を撫でた。
「今もののすごく緊張している」

 そう言うことにすら勇気がいった。
 「僕もや。だけど、僕、赤澤さんとこうしたいんや」

 彼が私の目をのぞきこみながら言う。その目に暗い炎のようなものが灯っているような気がした。私は死ぬまでにあと何人の男と寝るだろう。男に体を求められるのはこれが最後なのではないか。男にこんなふうに見つめられる機会などもう来ないか心しれないのだ。それならば。

 キッチンとリビングの灯りを消した。私は公平の手を取り、寝室に誘った。灯りはつけなかった。一度、彼がべツドサイドテーブルのランプを灯そうとして、その手をひっぱった。見苦しい裸体は見られたくなかった。公平が自分の服を脱ぎ、私心自分の服を自分で脱いだ。妊娠の危険などはぼないのに、彼に避妊具を渡した。それら昨日、私が自分で買ったものだった。明日は公平と休を交わすことになるかもしれない、と思ったとき、すぐ さま性感染症、と、医師の頭で思って買った。

 彼が私の両足を開き、いちばん見られたくはない部分に□をつけた。濡れているのが自分でもわかった。年齢を重ねても濡れるものなのだ、と自分の体の不思議を思った。私は公平自身を口にふくんだ。私は正直に言えば、この行為が好きではない。けれど、お返しのような気持ちだった。縁を舌でなぞり、全体を目いっぱいに會んで顔を動かした。苦しげか吐息が頭から降ってくる。公平は早急だった。私の腫を掴んだまま、雨足を折り曲げて、私のなかに入ってくる。最初は異物感があった。何年ぶりのセックスなんだろうと数えてはみたが、すぐに快感の波にさらわれてわからなくなった。声を出すのはためらわれた。目を閉じて耐えた。

 彼の汗が私の顔に降ってくる。彼が登りつめていくのがわかる。自分が逝くことなんて、どうでもよかった。自分の体が彼に快感を与えていることがうれしかった。
「声」息も絶え絶えに彼が言う。
「声、出して」 そう言われたときに快感がダムの放流のように流れていった。ためらわずに声を出した。医師でも、母でもない、女の声で私は叫んだ。彼の腰の動きが速くなる。私も昇りつめていた。
 そのとき、私たちはただの男と女だった。彼とほとんど同時に果てたとき、自分は女だったのだ、と私は思った。



>医師でも、母でもない、女の声で私は叫んだ。
そう、赤澤奈美の「私は女になりたい」という願いは叶えられたのです。
しかしこの幸せは続きません。
松任谷由実の『14番目の月』のように、満月のようだった幸せは徐々にかけていくのです。


トランスジェンダー小説だと勘違いして読み出しましたが、熟年層にある私にとっても興味深く読めた恋愛小説でした。
いや、恋愛小説というよりも人生を考える小説といってもよいでしょう。

『私は女になりたい』(窪美澄)

コメント (2)
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