ウサギ、耳、伸びた、私、

このブログはたしかにイタい・・だがどうだろうか。痛みを訴えるのは大事なことだと私は思う。戦争より餓死の方が酷虐なのだから

第XI話プロモーションビデオ編~参の門~

2011-12-14 13:05:30 | NPC@13物語
二関門目を突破したエヌピィシィ一同は次のステージに進むべく山道を歩いていた

もうここに来て1時間は経つだろうか

ヤミヒロは歩きながら後ろを向くと一行の顔色をみてみる

・・・が、あまり芳しくない様子だ

普段ならここでムードメーカーのテルあたりが、なぁなぁ中学生なんだから元気に行こうぜ!とかなんやらいってくるのだが―

なんかもう一番顔色悪くね?

これでは元気になるわけねぇーだろうが!!!と怒りながら元気になることができない

今のエヌピィシィを二文字で表すなら“疲弊”そのものだった

なぜこんなことに・・・

そう考えているといつのまにか最後尾を歩いていた

どうやら皆の身体は良好なようだ

無駄な動きをしたり騒ぎ走ったり探し物をしたり踊ったりとそろそろ休憩を挟んででもいい頃なのだが皆の後ろ姿は実に安定している

山道は土でできていてまた整備もされているので足腰への負担が少ない

普段の都会生活ではアスファルトの硬い道なので思いのほかすいすい歩けていた

となるとやはり原因は・・・

小柄な背部を視界にロックする

ドンマロだ

「・・・」

別にドンマロが悪いわけではない

むしろここまでよくやってくれた

まだ半分しか問題は解かれていないが、だとしても今日のMVPはこいつで決まりだろう

そのくらいエヌピィシィに貢献した

・・・だがしかしドンマロだ

「・・・」

いやドンマロが原因なわけじゃない

ドンマロを見ていると疲弊の理由が分かりやすいだけだ

背中に答えが書いてあるといえばいいのか・・・

ふと前方で声が開く

「へっくしょんっ!」

「ん?ドンマロ風邪か?」

「違うと思うんだけど、誰かが噂でもしてるのかしら」

一瞬ビクつくヤミヒロ

「そうか、よかったんだぁ~・・・」

やや下に顔を向けながら話すテルに対し、全然よくないわよと呆れ顔になりながら

「テルの方が風邪なんじゃない?顔色悪いし」

返答はない、どうやら自覚はしているようだ

さて、どう労ったらいいのかと考えていると隣から話し声が生まれていた

「まだっすかね目的地、てかなんでこんな疲れてんでしょ・・・なにもしてないのに」

「バドシ君答えを言っていますよ。なにもしてないから疲れているのです・・・シュッシュッ」

「ですっすよねえ・・・」

この森に入った当初は、全員が年相応の好奇心に駆り立てられていた

あるものはラスボスに期待し

あるものは死闘の先の感動を求め

あるものは仲間との友情ドラマを先読みし

ようするに、やるぞ!という熱意で心地いい汗をかいていたのだ

それなのに

挫折する現実さえヌルイと言わざるを得ない「無」をぶつけられた超現実に

汗が冷えて風邪を引いてもおかしくはなかった

「少し話変わるっすけど、そもそもなんでクルタンは弟さんはペンを奪ったりしたんですかね」

「・・・」

「あ、話したくないならいいっすよ?こうやって協力してるにせよ家庭の事情は家庭の事情っすから」

「シュッシュッ・・・優しいのですね。しかしながら皆目検討がつかないのは事実です。三日前。私がペン回しの練習をしようと筆箱から愛ペンを取り出そうとしたら無くなっていて・・・代わりに交換条件の書いた紙が入っていました」

「普段からそういうイタズラは?」

「まったくないですね。基本的に無口で行動力はあまりないほうだと思います」

「そうすっか・・・」

謎は深まるばかりっすねぇと顎に手を置き歩いていると足元の感触の違いに気づく

「ついたわね」

土から石に変わった先には幅10メートルほどの川が左から右に流れていた

「ここが第三関門の舞台だぞオマエら」

最後尾のヤミヒロが、刮目するように!とオンラインカメラのディスプレイをこちらに向けた



~水中でペン回しの技であるトルネード(1.2スプレッドダブル)の成功動画をこのカメラで撮り送信しろ なお水中は指定した河川の中で行うこと~


これが第三関門だ

ノーマルというペンを親指に巻きつけるようにして回す技のモーメントを利用しさらに人差し指に巻きつけてキャッチする

これがトルネード

初心者最大の壁ともいえる技でエヌピィシィメンバーはいちよう皆できるが成功率をとてもよいとはいえない数字であり、しかもそれを流れも含む水中など、成功どころかどう失敗するのかさえも分からない未知の領域なのは間違いなかった



百聞は一見にしかず

とりあえずやってみようということで濡れないように靴と靴下を脱ぎズボンを捲った

「ドンマロはスカートじゃなくてよかったな」

「そうね、スカートなんてキャラじゃないのよ」

澄まし顔のその刹那、風が舞った

その異変を誰しもが認識する

そしてただ今起きた事象に口を開け首を動かすことしかできなかった

・・・

・・



「あー・・・なんか・・・あ、あれよね?・・・今、全速力で川にダイブして・・・馬鹿みたいにいなくなったけどあれは・・・風よね?」

・・・

・・



「あー・・・なんか・・・うおおおおおおおおおおおおお!!!とか言いながら飛び込んでそのあとはなんかもうゴボゴボいってたっすけど・・・あれは・・・なにっす?」

・・・

・・



「ゴボゴボのあとに、予想以上にふっけぇっええ!!!と聞き取れたのは私だけでいいです・・・シュッシュッ」

・・・

・・



「リーダーとして話まとめるけどさぁ・・・テルは?」

・・・

・・




テルは全裸で溺れていった


一目散に川へと飛び込んだテル。相当、泳ぎたかったのか、暑かったのかは定かではないがどうやら奥はかなり深かったらしくまた、水流も増していたため一瞬で流されてしまったぽかった

助けなければとも思ったが、満面の笑みで流されていったのが確認できたのでまぁ別にほっておこう

「さてどうしましょうか?」

第三関門早々に一名の脱落者に対するこれはもしかしたら難問ではないか?と示すものはもちろんない

「まずは手だけ川に入れて回してみるか」

奥は水流が速く、深い。手前は水流が穏やかで浅い。テルのおかげでおおまかな川の構造は知ることができた

となるとまずは人員が失われかねない奥は回転領域外とするのが必然だろう

手だけ水中に入れてペンを握る

水流は微かに感じる程度だ これならいけるかもしれない

勢いよくペンを親指に巻きつける、が、慣性が少ない水中においてなかなかペンがいうことをきかない

なかば強引に手首のスナップで回転させようとするがそれでも微かな水流に邪魔されたりと、なかなかうまくいかなかった


30分後


体勢は体育座りやしゃがみこむのではなく完全なうつぶせ状態が一番回しやすいので自然と皆が川の字になってペン回しをしていた

ドンマロは他のメンバーはどう水中で回そうとしているのかが気になりふと、立ち上がったが


・・・シュールねえぇ・・・


その光景にまったく身を隠すことができていないダメダメなチーターが脳裏に浮かんだドンマロはすぐにうつぶせに戻った


そこからさらに10分後


いまだに成功者は現われていないことにリーダーは提案を出す

「このままじゃ埒があかねぇな・・」

「・・・ということはなにかいい方法思いついたってこと?」

「いい方法かどうかはわからないが・・・そうだなあ・・・ちょっとクルタン手伝ってくれね?」

そういうと、ちょっと待ちなさいよ、流されたいの?との忠告を無視しクルタンと川に中部へを入り込んだ

「ほらな?この川の中心までならギリギリセーフラインなんだよ」

「らしいわね・・・でっ?」

ドンマロは怪訝の顔でヤミヒロを見つめる 彼らがそこでペンを回そうとしていることは大方予想がついていた、だが


・・・回せるわけがないわよ


たしかにその位置からならあるテクニックが可能となる

深さを利用した上下間の動きだ

それで下から上に押し上げるようにしてペンを回転させればうまくいくかもしれない
 
が、しかし深さと同時に水流の速さも増しているのだ

ペンを押し上げる前にペン本体が流されていくのが必然だろう

「先にいっておくけど 回すのは無理よ 帰ってきなさい」

ドンマロの警告にニヤリと笑うリーダーはクルタンに指示を出す

クルタンはそれの指示を聞き終えるとヤミヒロと距離をとり

・・・

・・



「!?」



・・

・・・

なるほどなとドンマロは驚く

~水流~
 
それは流れてこそ流れていくもの
 
ならば

そこに流されぬ物を置けば・・・

「どうだドンマロこれでも回せないと言い切れるか?」
 
ヤミヒロは片足で立って見せる

「水流を緩くするためにクルタンを使ったのね・・・!?」

そのドヤ顔フラミンゴは非常に気に食わないが試してみる価値はあるかもしれない

「名づけて『作戦!テトラポットタン』だ!!!」

上げた片足と両手の人差し指をこちらに向けて宣言された


・・・


・・





・・・さむいわねえ・・・





・・


・・・


内心でイラっときたがその矢先にヤミヒロの顔色が変わったのことを瞬時に理解する

「ちょっとヤミヒロ?・・・ちょ・・え!!??」


フラミンゴはバランスを崩していた


水流の影響ではない。ただ変なポーズをとってためで・・・ようするにこのままいくと自爆だ

クルタンが慌てて助けに向かうが、それと同時にヤミヒロはバランスが崩壊し一気に傾いた

「あぶない!?」

傾いた位置が悪かった 丁度後頭部を水面に打つ体勢 そして奥側に倒れようとしている

このままではテルと同じように流されてしまう・・・!?



すべてはクルタンの救助にかかっていた



「・・・!!!」

瞬時の動き

クルタンは己の右手を最大限に伸ばすと一人では転倒確実の角度に傾いたヤミヒロの腕を握ろうとする

・・・まにあうわよ・・・!!!

心の中でそう願うドンマロは瞬間の最中一つのある変化に眉を曲げた

・・・まだ腕を掴んでいないのに手を引いてる!?

クルタンはその伸ばした右手をキャンセルするように引き戻し、その代わりのようにして左手を伸ばした

「・・・!!!」

だが時すでに遅し

そんな無駄な動きを刹那が許すはずもない

「うっ・・・ちょ!?・・・ぎゃあああああっうっうっ・・・ゴボボボボボボ」

「シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ」

二人は溺れていった



「・・・」

「・・・」

脱落者計三名 残されたのはわずか二名。名前はドンマロとバドシ

もしかしてこの第三関門 ウルトラ難易度じゃね?と言い出すことはもちろんない

むしろ冷静に分析を始める

「・・・っで マロさん? クルタンはなにがしたかったんですかね」

「そうねえ・・今でもまだ見えると思うから、クルタンの右手 見てみなさい」

どういうことだろうか
 
バドシは下流に首を向けると、もうかなり流されていて中々見えずらい

・・・水流半端ないっすねぇ

自然の力に恐怖しながらその手を凝視するとなにかがしっかりと握られてる

「なんか 大事そうにしてるっすけど・・・あれってまさか」

「そう 右手にはライターが握られているのよ 大事なものだから万が一にでも濡らしたくなかったんでしょうね」

反射神経はバツグンだが状況判断は遅かったためはじめから左手を出すことができなかったというのがあの不可解な動きの原因だった

「なるほどっすねぇ普通は利き手の右手で反応しますしねえ・・・ってマロさんなにやってるんですかい?」

「なにって見ればわかるでしょ、手伝って」

そういうと浅瀬から持ち上げた小石を放り投げる

まったくわけがわからないバドシだったがとりあえず手伝ってみる

そうして10分ほどの時がながれると

「ん・・よいしょっと・・・えいっ、これでできあがり!」

「え?これで完成っすか?・・・いったいなにを・・・」

浅瀬には深さ一メートルほどの穴が開いていた

川水が濁って正確な深さは把握できないがしばらくそのままにしておけば沈殿して透明になるだろう

そのあとになにをするのか・・・疑問に思ったバドシはできあがった穴を覗き込み少し考えてみるがなかなか思いつかない

この水が透明になる頃にはこのモヤモヤも晴れるっすかね・・・

水中に虚無感を覚えたバドシに対しやけに好調のドンマロが近づいてくるとなぜか見下すようにして


「なに意味深に考え込んでるのよ・・・ここでトルネードを撮るネーど?」


「あ?ねぇえよ」

まさかのドンマロギャグ(極寒)による笑いよりもいきなり冷気をぶつけられた憤怒が勝ってしまった

そしてドンマロはごまかすように話題を変える

「時間の有効活用なのよ!」

ビシィッ!と人差し指でバドシを指すと濁った水穴の中に足を入れてペンを取り出す

「透明になるまでの時間 トルネードの成功率をあげるために練習するのよ!とはいっても穴の中でやっちゃうとまた濁っちゃうから空中でね」


・・・いや今、足入れたせいでまた濁ったっすけどね・・・


と思うが言わないでおこう なぜかドンマロさんはノリノリである

「ヤミヒロが考えた策をもういちど実行するのもありっちゃありなんだけど・・・、やっぱり危険すぎるって思うのよ 現にああやって流されてしまったしね だからこうやって穴を作ってなんとか上下間の距離を安全に稼ごうってことなんだけど・・・どうかしら?」

「んー、いい策だと思うっすよ」

不安要素がないといったら嘘になる

上下間の距離を稼ぐといってもヤミヒロとクルタンが失敗した川の真ん中の水深に比べたら微々たるものだ

いざ回すとなると下手に失敗したら水が再度濁り 透明になるまで撮影を中断しなければならないという現実的な問題もある

それでも賛成した理由は二つほどあり、やはり犠牲者がでないというメリットと

・・・もう一つは・・・まぁ恥ずかしいから言わなくっていいっすよねえ・・・

少し顔を赤らめたバドシは再度 穴の中をのぞきながらペンはトルネードの軌道を描く

「なかなか透明にならないっすねえ・・・って・・・え!!!???」

眼前の白肌足が急速な変化を与えていた

・・・まずいっすかね!?これ・・・・

穴の中に足を入れ宣言どおりトルネードの練習を行っていた彼女は”とある重大な問題”を忘れていた
 
それはミスだ

空中で失敗したトルネードはその激しい回転量からどこにとんでもおかしくはない

そして今まさに彼女の手からペンが離れ、遠くへ向かっている

・・・さっきまで水中で練習してたから忘れてたっすね・・・・

失敗の軌道を追いかけるようにして白肌の踵は上がる

その無意識な行動に、”追いかけている先の光景”は目で見ていても脳が処理しない

・・・このままじゃ 同じことになるっす・・・!!!

その光景は最悪なことに川の奥、すなわち多くの犠牲者を生んだ死の境地のことだった

そこに向かったペンの放物線は、案の定と割り切るべきか、災の連鎖と悲観すればいいのか・・・ともかくバドシはそこで起こる映像を目に焼き付けることしかできない


~条件反射の一歩目
 
彼女はペンをキャッチするために脚を走らせる

が、自分が穴の中にいるということを忘れて思いきり踏み外す


~異変後回しの二歩目


なぜ踏み外したのだろう

その疑念は、とにかく愛ペンを守らねば、という想いにかき消させる

アンバランスになりながら強引に片足の脚力だけで前へ跳ぶ


~全力全開の三歩目


奇跡的に体勢を立て直し三歩目の加速に挑むが、もうあと一回しか減速は許されないだろう

そう悟った両足は最後の跳躍を試みた

全力全開 バレーボールのスマッシュを返すようなダイブで水面を飛び出し、













「助けなさいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおごぶぼぶおぼぼぼぼぼぼ」



ドンマロは溺れていった


「・・・」

テルからはじまったこの負の連鎖はついに四連続 もはや一人ぼっちにされたバードシーにエヌピィシィPVの命運は握られている

もちろんバドシ当人もそのことはいやでも自覚せざるをえない状況ではあったが、それでもをなかなか吹っ切れない”気がかりな点”が一つだけ存在した

それは



・・・僕、かなづちなんすけど・・・





一つの液晶テレビを見つめる二つの影ある

そこに映る映像は緑が多く川が流れているのだが人間も一人立っているだが震えている

バードシーだ

「あの・・・パッ嬢、これ詰みじゃないですか?」

「そうかもしれませんわね」

そういう二人はクルタンのペンを盗み出した張本人。パックンとカラピンだ

少女らはエヌピィシィの動向を外部の監視カメラ越しにじっくりと眺めている

「そうかもってパッ嬢・・・どうするんですか、このままじゃ本題の第四試練までたどり着いてくれませんよ?」

「ぴいちゃん なにか勘違いをしてるようだから言っておくけど、どうするかはエヌピィシィが決めることよ ワタクシ達はそれを見ているだけ」

分別顔のパックンはそのまま手元のホットレモンティーを口にすする

「たしかにそうですか・・・この問題って二人以上いないと解けないというかなんというか・・・」

「だからなんですの?答えのないところから答えを探す 現実じゃそんなことばかりじゃないの」



すべてを託されたバドシはとりあえず先方が残した穴を使いトルネードを試みることにした

「・・・」

・・・ダメっすね・・・

予想以上に浅く とてもじゃないが回すことはできない

となると残されたのは水深が期待できる範囲に絞られてくる

一度は川奥までいってしまおうと足を伸ばしたがすぐに正気へと戻り静止してしまうもどかしさ

なにせ泳げないのだ

そんな体で溺れでもしたら命の保障できない

泳げる連中でさえ あの溺れ方、あの非力な犬掻きだ

それでなんとか呼吸は確保できていたようだが、区民プールで犬掻きの僕はなにで酸素を獲ればいいのだろう

エラ呼吸?

できるわけがないだろうがフフッ

フフッと軽く現実逃避したバドシはそういえば、と、ある疑問を抱いた

「なんでみんな溺れたんすか・・?」

答えは簡単だ。水深が深く水流も強い場所に飛び込んだためだ

しかしそこからさらなる違和感をバドシは得ていた


「なんで深さに気づかなかったっすか・・?」


ドンマロとヤミヒロ達はふいの出来事だったため認識できなかったととらえることもできるがテルはどうだろか
バカだから
と言ってしまえばそれまでだがそれにしたってあれほどの深さなら川の真ん中ぐらいを歩いた辺りで気づいてもいいはずだ

なのにどうして・・・

考えているだけではわからない

確かめてみる価値があるかは定かではないだが、見るだけなら、と勇気を振り絞り川の中部へと進み込む

一歩、一歩、

慎重にあえて斜めで前進む。水の抵抗を最大限弱めるためだ

そうして10分以上かけて慎重に中部まで辿りつくとさっそく検証の眼を奥へと飛ばす

すると


・・・


・・





そして


・・・!?・・・


それは閃きだった

「・・・なるほどっすね・・・水中トルネード・・・できるかもしれないっすよ・・・」

そのままの右手でカメラを構え、左手でペンを持つ




この不可解な行動はパックン一味も怪訝の顔色で監視カメラ越しに凝視していた

「パッ嬢?これまでの経緯をみるにバードシーという男、泳げないんですよね?」

「そうですわね」

「じゃあ なんであんな危険地帯でペン回し始めようとしてるんですか?救助船 手配しといたほうがいいのでは・・・」

「・・・おもしろいわね」



バドシは覚悟を決めた

チャンスは一回 失敗したらペンを追いかけるのはやめよう

そう肝に銘じたのはドンマロの教訓だ

調子にのるのもやめよう

それはリーダーの教訓だ

全裸もNGっすねえ・・・

もちろんバカの教訓だ

右手を構える拳にも落とさないようしっかり握り ペンを親指と人差し指の間に挟む

・・・いくっすよ・・!!

動画の撮影スイッチを入れ、ペンが射出された旋転

・・・!!

開始早々のそのペン回しはまさに異曲同工だった

その行動にパックン一味はとしたが、原因は二つある



『レンズの向き』

そして

『空間』



右手で構えられたレンズはペンの方を映しておらずそのカメラはまるで影でも撮るかのようにお辞儀しているのだ

二つ目の違和感は空間

これは単純に矛盾だ 水中でトルネードを取らなければいけないのに空中でペンを回している

いったいなにをしているのか

小屋の中にいる少女はそれに気づくやいなや声を高ぶらせた



・・・す、水面反射を利用しているだと・・・!?



バドシが策はまさに奇抜

なにせ”ペン本体を映す”のではなく、”ペンに映る水面の軌道を映す”というスピニングだったからだ

川の奥は今の時間帯だと丁度、太陽の光が木々に邪魔されず射し込む一番明るい場所

それゆえに反射光で川底まで視線は届かず、だから

・・・テルは落とし穴にでもかかるかのように溺れたっすね・・・!!

その仮定はすぐに”トルネードを虚像で映し出す”という閃きに起因した

無事 空中水中トルネードの撮影に成功したバドシはやや困惑な表情になりつつ

「ベストっすよね・・・」

たぶんこれは正規な解答ではないだろう

水中でトルネードを撮ったと豪語しても所詮は虚像 見せかけでしかない

だとしても泳げない自分が可能な限りの方法で生み出した答えだ

これが不正解でも悔いはない

その想いとともにエヌピィシィの最終生存者、バードシーはその”虚像の竜巻”を送信した


・・・



・・







仲間達はどうしているだろう

一試練を終えたバドシが真っ先に心配したのは仲間の安否だ

どいつもこいつもダイナミックな溺れようだったがそれが死因なら

うおおおおおお!!!
だの
ぎゃあああああ!!!
だの
助けなさいよお!!!
だの言っている暇などなく

ただ仏のように無言でそれでいて必死にもがき、溺れていくのが本当に危ない溺れ方だとカナヅチのバドシは幼少の頃から知っている

だからそれより後

どこまで流されてしまったのだろうかという不安が一番だった

オンラインカメラを見てみる

送信を終えたそのディスプレイにはまだなにも受信させてこない

・・・不正解っすかね・・・

二重の不安に掻き立てられるそのとき、一つの轟音が響いた



ゴオオオオオオオオオ!!!



すさまじい音に耳を塞いだがそれでもうるさい

・・・い、いったいなんすか・・・

重低音の響きは川の方からだと気づくと腰を落としながら下流方向に首を向ける



ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!



視線の先、ここは海か?と錯覚させる”あるもの”が猛スピードで近づいてきてる

はあ!!!???

クルーザーだ クルーザーが轟音エンジンと共にこっちにくる

慌てて非難したももの、それと同時に船は目の前で急停止を始め

理不尽な危機と共に全長30フィートの中型クルーザーは静止した


・・・交通事故にあうとこだった、ここ川なのに・・・


しかも

・・・甲板にいるあの見覚えのある四つの影・・・まさか・・・



クルーザーの先 黒い布で目隠しをされ拘束状態で直立している人間が見える

左から

テル、ヤミヒロ、クルタン、ドンマロ、

エヌピィシィメンバーだ

「なにやってるっすかあ!?」

すぐさま船に乗り込んだバドシは皆の拘束を解く

「うわっまぶしっ!・・・ってあれ?バドシじゃん久しぶり」

「感謝ですバドシ君・・・シュッシュッ」

「ふぅ・・・やっと開放されたんだぁ」

「た、助かったわよ・・・・・・」

生還を喜ぶ仲間達の安堵の笑みに彼はこう思う

・・・そうじゃねえぇだろ!?・・・

なんで拉致されてるんだこいつら?イミワカンネェ・・・

謎があまりにも連続しすぎてうまく言葉に出来ない

そうこうしていると近くから足音が聞こえてくる


タンタンタンタン


甲板の奥、丁度、船の中心部のドアが開くと綺麗な銀髪が風で靡いていた

穏やかなタレ目でエヌピィシィメンバーを一周すると右手で胸を押さえ華麗に頭を下げるやいなや 甘い香水のいい匂いとともに

「ようこそ皆さん。第四関門まで駒を進められたこと光栄に思います・・・当ゲームの主催者、パックンと申します」

「・・・」


ドンマロは最大限の警戒をしいた


・・・諸悪の根源と直接対面とはねぇ・・・

数十分前の溺れている最中

水流がある程度弱まった付近には犠牲者たちが皆、無事だった

まず泳ぎのうまいテルに助けられて、そこからどうやってバドシと合流しようかと会議していた矢先に突如
 
拉致されたのだ

・・・そんなことまでする奴だったとは・・・

これからなにをされるかわからない
 
いいようがない恐怖を怒りで塗りつぶした彼女は強く拳を握りパックンを睨みつけた

「・・・」

猜疑の視線がいききする

「・・・」

すると、すこししてから隣から声が響いた

「なあなあクルタン ひとついいか」

「なんですがテル君・・シュッシュッ」

「パックンってクルタンの弟っていってたじゃん?」

「・・・」

空気を読みなさいよ・・!!!とドンマロは苛立つ
 
~殺るか殺られるか~

そんな非常に重い空気なのだ。今は弟だの妹だのそんなことはどうでもいいだろう

なのにヤミヒロとバドシも あ!それ俺も思った!と暢気に同調しているもんだから


・・・まったく男って生き物はダメダメよねえ・・・


「シュッシュッ・・・そうですね 本当は妹でした」

「なんでそんな嘘ついたんすか?」

「シュッシュッ・・特に意味はありませんが、しいていうなら・・・」

一呼吸置き、はにかむと

「シュッシュッ・・・防衛的サプライズです」

・・・?・・・

「なるほどなぁ・・・」

・?????・

なぜ男どもは納得しているのドンマロは理解できなかった

そんなことよりも今は、


・・・そろそろ懲らしめてやろうかしら・・・

どうやらパックンはこちらが動いてくるまで行動を起こさないらしい

ならばやってやろうじゃない もはや第四関門などどうでもよくなった彼女は己の怒りとともに足元に力を入れた


・・・


・・





その瞬間





・・


・・・


・・・!?・・・

一つの音が隣から響いていた

それは、私とクルタン"意外"
ヤミヒロをはじめとするテルとバドシの共通の叫び声で






・・・






・・













「パックン萌えええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

・・・

・・



ドンマロは馬鹿三人を殴り飛ばした。


つづく、

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (カナヅチバドシ(実話))
2011-12-15 03:38:42
何気にバドシ活躍してますね…♂

川は海より怖い、これはガチ


そしてやっぱりテルの脳内再生が余裕でワロタ


今回は特に読みごたえがあったなw


続きに期待
返信する
Unknown (ナガサレヤミヒロ)
2011-12-15 13:09:50
ヤりますねぇ・・・♂

そういや全裸で溺れてたけどテル服は??w

おう!次回でPV編完結 今年までに公開予定です(^O^)
返信する
Unknown (トビコミマロン)
2011-12-17 01:46:16
バドシGJ!!

回を重ねる毎に文章力も表現力も上がってますな

次回作も期待!!
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