野口和彦(県女)のブログへようこそ

研究や教育等の記事を書いています。掲載内容は個人的見解であり、群馬県立女子大学の立場や意見を代表するものではありません。

2012-2013シーズンの初滑り

2012年10月31日 | スポーツ
先日、日本一早くオープンするスキー場として知られる、富士山の麓(ふもと)のイエティで、今シーズンの初滑りを楽しんできました。

今のところ、イエティの滑走可能コースは、人工雪でつくられた1本です。滑走距離は1キロほどでしょうか。私が行った時は、気温の低下により雪が締まったため、この時期にしては固めのバーンになりました。シーズン初めの足慣らしには、十分なコンディションでした。

今後、11月から12月にかけて、他のスキー場も次々とオープンしていくことでしょう。本格的なスキーシーズンの到来が楽しみです。


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読書は大切

2012年10月19日 | 教育活動
私は、学生に「本を読め」と言い聞かせています。他方、多くの学生は読書に抵抗感を感じています。メディアが発達して情報入手の手段が多様化した現在において、図書は1つの情報の媒体にすぎません。ですから、学生たちは、「なぜ本なのか」、「なぜネットではダメなのか」と思うのでしょう。

このように学生たちは、読書の重要性にピンときていませんので、「読書のススメ」には敏感に反応しません。ましてや専門書や社会問題に関する「堅い」書物となると、それを読むことは、学生たちにとって、一種の「苦行」なのでしょう。ですから、こうした文献は、ますます遠ざけられるわけです。

もっとも、学生の立場からすれば、読書が大切である根拠を示さずに本を読めといっても、あまり説得力がないかもしれません。そこで、今日は、読書の効用に関する脳科学者の見解を紹介したいと思います。酒井邦嘉氏(東京大学)は、人間の言語能力を鍛えるには、活字を読むことであると、次のように指摘しています。



「読書は、足りない情報を想像力で補って、曖昧なところを解決しながら自分のものにしていく過程だから、常に言語能力が鍛えられる」(酒井邦嘉『脳を創る読書』実業之日本社、2011年、122ページ)。

本の活字は、会話やインターネット、テレビよりも情報量が少ないので、読者は、脳を働かせて想像力を使いながら、本から情報を自分で引きだそうとします。その過程で、人間の脳は鍛えらるというわけです。では、本を読まないと、どうなるのでしょうか。脳が十分に鍛えられないということです。その結果、今度は読むに耐える文章が書けなくなるのです。再度、酒井氏の主張に耳を傾けてみましょう。

「あまり本を読まずに、想像力が欠如したまま大人になってしまうのは恐ろしいことだ。…だいたい自分勝手なことをそのまま書いただけでは、相手が時間をかけて読んでくれるはずがない。相手の立場から自分の文章を読んだらどう受け取るだろうか、という想像力が身について初めて、自分の真意を相手に伝えることができ(る)」(同書、122-123ページ)

勤務先の同僚の先輩が、かつて、こんなことを言っていました。「その人の知性は、ものを書かせれば一発で分かる」と。これまでどれほど読書をして脳を鍛えたかが、そのまま文章に反映されるということでしょう。

大学教育の現場では、新しい教育メソッドが注目されています。学生が授業に主体的に参加する「アクティブ・ラーニング」、インターネットを活用した「e-learning」など、さまざまです。もちろん、こうした教育方法には、それぞれの効用があります。しかし、それらが古典的な教育方法を無用にするわけではありません。

欧米の大学では、多くの授業で、おびただしい「リーディング・アサインメント(文献読破の宿題)」が学生に課されます。このことは、活字情報を読むことの大切さを示しています。他方、日本の大学はどうなのでしょうか。大学生が身につけるべき能力の1つとして、「コミュニケーション能力」が指摘されていますが、それに必要な「想像力」を読書により育成することなくして、なぜ、コミュニケーション能力がつくのでしょうか。学力低下、大学生の質の保証など、日本の高等教育には問題が山積していますが、それを解決する1つのカギは、読書にあると思います。

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日中安全保障関係の研究書

2012年10月04日 | 研究活動
尖閣諸島の問題をきっかけにして、日中関係に関心を持った大学生や一般の方は少なくないでしょう。そこで今日は、現代の日中関係を分析した良書を紹介したいと思います。

Richard C. Bush, The Perils of Proximity: China-Japan Security Relations (Washington, DC: The Brookings Institution, 2010).



著者のリチャード・ブッシュ氏は、米国のシンクタンク、ブルッキングス研究所北東アジア政策研究センターの所長です。なお、本書の邦訳も出版されています。リチャード・C.ブッシュ、森山尚美・西恭之訳『日中危機はなぜ起こるのか』柏書房、2012年です。

私が、本書を勧める理由は、次の通りです。

第1に、ブッシュ氏著『日中危機はなぜ起こるのか』は、日中関係の全体像をよく捉えています。すなわち、彼はマクロとミクロの視点から、日中関係を総合的に分析しているのです。言うまでもなく、日中関係はシステム・レベルの要因、国内レベルの要因、個人レベルの要因に影響されます。これら3つの要因の内、日中関係の構造的要因は、直接的に認識することが難しいので看過されがちです。しかしながら、ブッシュ氏は、このファクターが日中関係の分析に不可欠であることをハッキリと主張しています。

「緊張を引き起こすもう一つの理由を避けるのは難しい。つまり、緊張状態はある意味で構造的なものであり、これを両国の指導者がコントロールするには限界がある…。…この説明を無視すれば、たとえ関係が少なくとも表面的に改善したとしても、将来のトラブルの可能性が増すだけである」(p. 23, 邦訳、32ページ)。

なお、補足しておきますが、ブッシュ氏は、日中間のパワー・シフトといった構造的要因が日中関係の全てを決定すると言っているのではありません。日中の行動を制約したり拘束したりする構造的要因を無視しては、日中危機の全体像は見えてこないと主張しているのです。

第2に、本書は、日本と中国の政治制度や意思決定メカニズムにまで踏み込んで、日中関係を分析していることです。日本の対中政策に焦点を当てた、優れた学術書はたくさんあります。中国の対日政策や対日戦略などを分析した、素晴らしい研究書も少なくありません。しかしながら、日本と中国、両国の国内政治システムの特徴を細部まで掘り下げて明らかにすることにより、日中関係を比較分析する本格的研究は、それほど多くないでしょう。『日中危機はなぜ起こるのか』は、この点において、日中関係研究のギャップを埋める、優れた成果だと言えるでしょう。

このブッシュ氏の労作は、英語の原書が421ページ、邦訳でも422ページの大著なので、原著であれ訳書であれ、読み切るのは大変でしょう。ですが、本書には、こうした労力をかけるだけの価値が十分にあると思います。


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尖閣諸島「紛争」の行方

2012年10月03日 | 研究活動
海外の主要雑誌に掲載された尖閣諸島をめぐる日中の対立の記事には、この紛争が孕(はら)む戦争のリスクを正面から見据えたものがあります。そもそも領土紛争は、過去、戦争の主要な1つの争点を形成していたのですから、無人の島嶼とはいえ、尖閣諸島をめぐる「領土紛争」に関しても、こうした懸念が生じるのは、決して不思議なことではありません。他方、尖閣諸島の紛争が必然的に日中間の軍事衝突へと発展するわけでもありません。

The Economist誌は、「アジアは本当に、これら(尖閣諸島)をめぐる戦争に突入するのか―島嶼をめぐる争論は地域の平和と繁栄への深刻な脅威である」という記事を掲載して、日中対立に懸念を示しています。タイトルにある「戦争」という文字には、ドキッとさせられます。

Foreign Policy誌は、ジェームズ・ホルムズ氏(米海軍大学校)の強烈な記事「ロック・ファイト」を発表しています。この記事のリード文を読むと、「日本は尖閣諸島の戦争に勝つことができるだろうが、簡単なことではないだろう。確実に言えるのは、米国の支援抜きでは、そうであろうということだ」と書かれています。

以前のブログにおいて、尖閣諸島問題における日米同盟の実効性に疑問を呈した議論を紹介しましたが、ホルムズ氏は、地政学上の理由や尖閣諸島に対する日米間の価値の相違などから、同じようなことを主張しています。ホルムズ氏いわく、「日本政府は、米国が日本に約束したことを文字通り積極的に実行することなど、あてにすべきではない」ということです。

こうした記事が想定するシナリオの当否は別にしても、日米中のパワー・バランスの変化に伴い、日米同盟が難しい局面に突入していることは、確かなのかもしれません。






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インカレ国際セミナーのお知らせ

2012年10月02日 | 教育活動
「インカレ国際セミナー」とは、さまざまな大学に所属する学生や若手の社会人たちが、東アジアの国際関係について学ぶ、大学横断型の集会です。今年で10回目になります。日程は、2012年12月7日(金)~9日(日)、場所は、湘南国際村センターです(葉山にあります。ここからの海の眺めと富士山は、素晴らしいですよ)。



私は、中央大学の滝田賢治先生と共に、分科会「東アジアの安全保障環境」を担当します。なお、安全保障以外の分科会としては、環境や経済連携、文化交流などをテーマにしたものがあります。

東アジアの政治・経済・文化・環境・安全保障などに関心がある方は、ぜひ、インカレ国際セミナーに参加して頂きたいと思います。

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