6時半の開演に間に合うようにと、雨の中を車を走らせていた。その日は、楽しみにしていた芝居を観る日だった。気がかりなことが一つ頭に浮かぶ。会場は駐車場が狭い。車を止められるだろうか。
できるだけ早く会場に着きたいと思いながら、燃料の残メータに目をやると、何と残り0。給油マークが黄色に光っている。左手に給油スタンドのマークが見えて来た。一瞬、「開演時刻に間に合うか。」という思いが過ったが、ガス欠の不安の方が上回り、ハンドルを慌てて左に切った。給油を満タンにして、出てきたレシートを確かめると一万円を超えていた。最近のガソリン高騰は頭が痛い。
6時過ぎに会場に着き、恐る恐る駐車場に視線を移すと、係の人が赤い誘導棒を片手に入れない合図を何度も送っている。「ダメだったか」と独りごちて、有料の駐車場を探した。空のマークが目に入ったのは、以前利用したことがある駐車場だった。料金が高いと思った記憶が蘇る。しかし、時間も無く、他を探すのも面倒だったのでそこを利用することにした。駐車すると、開演時刻が迫っていたので慌てて駐車場を後にした。
会場に入ると、8割ほどは席が埋まっていた。できるだけ前の席を狙っていた。チラホラと空席があったが、座席の合間を縫って空席を確保する気力がなく、中程の席に落ち着いた。しかし、幕が開くとそれを後悔することになった。最近、加齢による聴力の衰えもあり、役者のセリフがよく聞こえない。セリフが聞こえないと、集中力も途切れがちになってしまう。いつの間にか、舞台が遠のき、意識が飛んでいた。それでも、後半は何とか舞台に集中することができた。
3時間あまりの舞台の幕が降りると、窮屈だった座席を畳み、濡れた歩道を足早に駐車場に向かった。「いくらくらいになるのだろうか。」と不安に駆られながら、駐車番号を押して清算ボタンを押すと料金が表示された。表示された金額を見て驚いた。予想を遥かに超える高額な駐車料を請求されたからだ。「やっぱり高かった!」とこの駐車場に止めたことを激しく後悔した。