kaeruのつぶやき

日々のつぶやきにお付き合い下さい

「史実」としての『乱』。

2018-01-08 21:30:41 | 『乱』と「西郷どん」

   この『乱』は歴史小説ではなく史伝文学の列に入るもので、主人公のブリュネをデュマの『三銃士』のダルタニャンに模しながらブリュネを縦横無尽に活躍させる大衆小説ではない、と「解説」に書かれています。

磯貝は「史伝の特色としては」と、

【文章の中に史料を引用し、史料そのものに歴史や史実を語らせるという実証的な手法をとっていること、逸話エピソードを引用し、その中にある史実を活かしていること、「わたくしは、正しいと考える」「筆者わたくしはそのように解釈している」などのように、作者が直接的に表現をおこなっていることなどがあげられる。】

と書き記しています。本のなかに何枚かの写真が刷り込まれているのは、その意味で興味を引かれます。すでに「スフィンクスを背にした池田使節団一行」は紹介しました。「スフィンクス」以外の写真はブリュネの描いたスケッチが多く、彼が「聡明かつ熱心な士官である」と同時に「デッサンの能力は抜群」であるという「史料」を裏付けています。

それでは、はじめてのブリュネのスケッチを、

これは、ナポレオン三世が中央アメリカにおける市場獲得の好機と見てイギリス、スペインと共にメキシコへ遠征軍を送った時、砲兵二等中尉として従軍していたブリュネの描いたものです。

   ブリュネのメキシコ出征は1863年8月30日から1864年6月23日までですが、この6月23日はマルセーユで池田使節団一行が日本への帰国をしようと便船を待っていた日付でもあります。