Jun日記(さと さとみの世界)

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傘の思い出

2018-01-10 09:12:23 | 日記

 『なんて間がいいんでしょう。こんな所に傘屋が…』私は思いました。しかも、さあどうぞと言わんばかりにこの雨の日、傘は広げられその艶やかな背を道行く人に見せているのです。如何にも『さぁ、お入りになって麗しい私達を購入してください。』と笑いさざめいているようでした。私は美しい花の模様が色とりどりに花開いている様に目を奪われました。

 『奇麗な傘。』

私はその配色の妙に一目で彼女達に魅了されました。中でも赤や桃色を基調とした傘の2つに惹かれました。両者を見比べて思わず溜め息が出ました。確実に、欲しいなぁと思いました。しかし既に私には買わなくても普段使っている傘達がありました。それらはまだ十分健在でした。普段そう使わない折りたたみ傘にしても、古く無い物が家には存在していました。私にはその時、必要を迫られる傘の購入予定は全く無いのでした。

 『通り雨の様だし、直ぐに止むだろうから、此処でわざわざ傘を買って無駄遣いする事無いわ。』

そう思うと尚更に傘は必要ないのでした。私はお店に背を向けると、早く雨が止むとよいなぁと空を見上げたり、周りの家並みを眺めたりしていました。風景をよくよく眺めてみると、どうもこの界隈は取り壊されている区域のようでした。残っている古びた家が侘しく幾つか見えました。その家に比べると、今の私がいるアーケードを持つ家並みは、まだ体裁が整い古くてもそれなりに確りして見える家々なのでした。

 私はまだ降り続きそうな雨に、退屈まぎれにアーケードの通りを少し散策してみる事にしました。それはほんの5件程の家前を通って行き、また元の場所へ戻って来ただけの事でした。アーケードは直ぐそこで途切れていたのです。こうやって視察してみると、確りした家々だけが残っている感じでした。私は元いた傘屋の前に戻って来ました。

 雨天の地味な通りに、店の前まで来ると、ぱぁっと色彩が点っているような華やぎがまた目に入ります。『雨の日にこれだもの。』私にはお店の人の傘販売への思惑がありありと感じられて、何だか返って購入をためらってしまうのでした。私は人の思惑通りに動くという事に抵抗を感じていたのでした。もし家に傘が無く、今購入が必須でも、人の弱みに付け込んでいるようなこんなお店に入って、傘を買いたく無いわと、思ったのでした。 


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