Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

美湾

2017-12-11 12:00:10 | 日記

 シドニーに着くと、直ぐにホテルに入り、夕食は久しぶりの日本食と日程表にありましたから、どんな和食が出るのだろうかと私はあれこれとメニューを思い描いていました。『天ぷらかしら?、お刺身かしら?』初めに思いつくのは大体そんな感じでしょうか。続けて考えていく内に、焼き魚とか奉書焼とか、鍋物風な物、懐石料理…等浮かんで来ます。考え出すと幾つでも出て来そうでした。

 そして実際にホテルに着いて、各自部屋に入り、その後集合していざ夕食へ向かうという時、ガイドさんが口を開きました。

「今日は和食料理店の方は不都合があって、チャイニーズ料理店に変更になりました。」

というような話でした。私はフルムーンの奥様がさぞやがっかりされた事だろうと、心配気に彼女の顔を覗き込みました。私には彼女の胸中を察して余りある物が有りました。何しろ、旅行3日目のグリーン島でさえ、もう食事が合わないと音を上げておられたのですから、さぞや今日の夕食でお米が食べたかったのではないかとお気の毒に思いました。それで、彼女から何か不満の一言があるのではと思いましたが、彼女からは全くそんな素振りが見えませんでした。彼女に言葉は無く、表情にもなんの変化も無く、案外私は意外な事だと思いました。

   他のツアーの皆さんからも何の文句の言葉もありませんでした。勿論、私も何も言葉を発しませんでした。皆暗黙の了解をしたようでした。静かに案内するガイドさんの後に着いて、並んでホテルの廊下を歩いて行きました。

 「今日は和食ね。」

やれやれという感じの声音で、フルムーンの奥様が歩きながら言われるので、私は怪訝に思いました。そして先程のガイドさんの言葉を彼女が聞き逃したのだなと1人合点しました。

「やっとご飯が食べられる。」

彼女は続いてそんな事を呟かれているようなので、私が、「さっきガイドさんが、和食のお店は不都合があって取りやめになった、と、そう言われましたよ。」と、ガイドさんが言われた事を彼女に伝えると、それでは今晩は何の料理なの?というお返事でした。

   ここで奥様の横におられたご主人が奥様にうまく話をされるのかと思いきや、ご主人は何事も無いようにだんまりでした。廊下を歩いて行く皆もひっそりとして静かです。それで、再び私がチャイニーズ料理だそうです。というと、それは何の食事の所なの?と言われます。中国料理ですよ。と私が答えると、中国?和食じゃないんだ。と仰って静かになりました。

 チャーニーズって?…そんな言葉が2ヶ所から聞こえて来ましたが、そのまま皆静かに廊下を進んで目的のお店に着きました。入ってみると、案内された席は円卓でした。皆ぐるりと輪になって座ると、中華料理特有の中央が回るテーブルでした。ご家族連れのご兄弟や新婚さんが、面白そうにくるくると、まだ料理の載っていない中央のテーブルを楽しそうに回します。


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