けれども、程無くして野原さんは小手川君と親しくなりました。彼女は退社後や休日共に彼と出かけたり、仕事帰りに彼の家に誘われて訪問する程の親しさになりました。
小手川君に案内されて行った彼の家は、古びた住宅街の一角にあり、周囲の家々に馴染むごくありふれた景観をしていました。建売住宅らしく、近隣は皆同じような色、形の家ばかりです。
そして、古手川君の家族は気さくな中にも慎みのあるご家族でした。野原さんは彼のご両親とも顔馴染みになり、一時はお母様とも誘い合わせて商店街にも出かけ、ショッピング等共にしたのでした。また、お茶に誘われて世間話をする程の親しさでもありました。
お母様の話では、彼は1人っ子であり、もし自分に他に女の子がいたら、こんな風に一緒に買い物などに来たかった、共に商品を見立て合い、こうやってお茶なども飲み、世間話をしたかったという事でした。
「まぁ、おば様ったら、私でよければいつでもどうぞ。」
微笑んだ野原さんは、にこやかに小手川君のお母様と談笑するのでした。