*『世界が見た福島原発災害』著者:大沼安史
「第15章 校庭に原発が来た!」を複数回に分け紹介します。1回目の紹介
福島原発災害は、東電、原子力安全・保安院など政府機関、テレビ・新聞による大本営発表、御用学者の楽観論評で、真実を隠され、国民は欺かれている。事実上の報道管制がしかれているのだ。「いま直ちに影響はない」を信じていたら、自らのいのちと子供たちのいのち、そして未来のいのちまで危険に曝されることになってしまう。
本書は、福島原発災害を伝える海外メディアを追い、政府・マスコミの情報操作を暴き、事故と被曝の全貌と真実に迫る。
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**『世界が見た福島原発災害』著書 「第15章 校庭に原発が来た!」の紹介
なぜ80キロではないのか
日本政府が4月21日午後12時(22日午前零時)をもって「フクシマ」の半径20キロ圏内を「警戒区域」として立ち入りを禁止すると宣言したのは、同日昼前のことだった。
違反者は10万円以下の罰金。勾留されることもあり得る。
枝野官房長官は発表の記者会見で、この罰則規定について「地域以外の方が入れば、法に基づき厳しく対応したい。住民の皆さんには、強制措置を取らないで住むよう理解いただきたい」と語った。
「警戒区域」というと警察官がパトロールして住民の安全を守ってくれそうなイメージだが、実質は半径20キロ圏内を無人化する強制措置だ。
日本政府が「周辺住民」に対して権力のキバを剥いた瞬間だった。「住民の皆さんには、強制措置を取らないで済むよう理解いただきたい」ー下手に出た言い方のようだが、上意下達の厳しい警告だった。
この日本政府の強制措置を外国メディアは驚きをもって報じた。
「VOA(アメリカの声)」は、「日本政府、原子力圏への立ち入りに法的な罰を科す」と主見出しで報じた。
英紙ガーディアンは、「フクシマの避難民 帰宅したら逮捕」とはやり主見出しで報じた。
成田空港の農地の強制収用を思わせる強権的な措置だった。問答無用で「ふるさと」を追われる人々・・・。「フクシマ・ダイイチ」は半径20キロの人間の営みを、ついに全面的に破壊した。住民を永久追放して無人の原子野をつくり、「フクシマ」周辺を「核の一大廃棄場」にするつもりなのだ。高濃度の汚染地帯を封印するつもりなのだ。
人々の「住所」が消されるのだ。「番地」も「本籍」も消されるのだ。住民基本台帳に「住所」「本籍」の「記載」は残っても、それに対応した「土地」がない事態が生まれる。
立入り禁止の「20キロ圏」は「30キロ圏」になり、やがて鉄条網で囲まれることになるだろう。「フクシマ」の「爆心」を中心に、鉄のイバラの線が「円」を描くのだ。円形の型でクッキーの生地をくり抜くように、福島県の一角が国有地に編入されるのだ。
地図の上にコンパスで円を描いて設定された20キロ警戒区域(避難圏)ー。政府権力ー中央の国家権力というもののありようをこれほど見事に示すものは、ほかにないかも知れない。地元の人々の意向などお構いなく、1世帯100万円の仮の一次金支給の約束だけで、一気に無人の圏域を線引したのだ。それも発表当日の深夜に発行させてしまう強引さで。
※続き「第15章 校庭に原発が来た!」は、6/23(火)22:00に投稿予定です。