*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 から何度かに分けて紹介します。11回目の紹介
現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!
「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」
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(カスタマーレビュー)から
救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)
読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。
そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。
「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。
この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。
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【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(49) ※11回目の紹介
-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「終章 爆弾低気圧」 (49)を分けて紹介-
前回の話:【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(49) ※10回目の紹介
正午過ぎから、格納容器の圧が高まっていた。溶け出した核燃料が圧力容器を破壊し、格納容器のコンクリートと反応し、大量の水素と一酸化炭素が発生している証左であった。ベントを行うしかなかった。
「ベントだ、ベント!」
と、原子力事業本部長が、画面越しに新崎原発側に指示する。
「周辺自治体への連絡はどうなっているの?」
と聞くのは官房長官だ。
「県はつかまりました。周辺市町村は連絡が取れないところが多く・・・」
以外にさばさばした表情で、画面越しに所長代理が告げる。
「県に連絡させたらいいだろ!」
その表情を見てか、珍しく官房長官が声を高める。
「周辺諸国はどうしますか?」
と官房副長官。
「外務省に適当に連絡させとけ・・・・」
典型的なたたき上げの経歴を持つ官房長官は、その有能ぶりと総理を支える姿勢が国民に広く評価されていたが、このときその声には、まったく力がこもっていなかった。
その官房長官は、午後11時、政府・関東電力事故対策統合本部で記者会見を行った。
官邸と原子力規制委員会と関東電力の三者が、バラバラではなく、ワンボイスで記者会見を行う-これは、フクシマから得られた教訓の一つだった。
「現在、新崎原発の格納容器の圧力が上昇中であります。したがいまして、準備が整い次第、ベントを実施いたします。これにより、直ちに人体の健康に影響が生じるものではありませんが、念のため新崎原発周辺10キロ圏内の住民銃印には、避難勧告をいたします」
記者が指名を待たずに質問する。
「スピーディの予測はどうなっていますか?」
官房長官の表情には、今も覇気が感じられない。人間の価値は、大きな危機のときにこそ試されるというのに。
「・・・あとで事務方から提供させますが、現在も、新崎上空は激しい降雪となっておりますので、放射性物質はそれほど拡散せず、降雪とともに原発周辺の地表に到達するものと思われます。フィルターで放射線量は数百分の1から1000分の1にまで低減されております」
それだけ低減されているとはいえ、降雪とともに地表に到達した場合の汚染度は、住民が立ち退きを余儀なくされる程度である-そのことについては、官房長官は、積極的に言及しなかった。民自党政権の官房長官と同じように・・・。
続き>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(49) ※12回目の紹介