原発問題

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【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※20回目の紹介

2014-07-19 21:00:00 | 【原発ホワイトアウト】

*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽  から何度かに分けて紹介します。20回目の紹介  

 現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!

 「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」

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カスタマーレビュー)から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。

  「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。

  こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。

  私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。

  さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)

読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。

そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。

  「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。

この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。

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★過去に紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1回~16回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り  ※20回目の紹介

-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「第4章 落選議員回り」 を紹介

前回の話:【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※19回目の紹介

【登場人物】
 小島 厳 日本電力連盟常務理事 関東電力総務部長を経て日本電力連盟に出向

(11)

 小島が頭角を現したのは、政治改革の美名の下で小選挙区制が導入され、保守党と、保守党から分裂した新政党との間で二大政党制が成立するようになったときである。

 従来の蔵田のやり方であれば、保守党と新政党との双方に保険をかけることになる。すると、個々の集金額を倍にして、二つの党に献金しなくてはならない。しかも、政党同士が小選挙区で競うということだと、資金面のニーズはエスカレートすることになる。その一方、小選挙区制の導入と同時に税金という公費で政党を支える政党交付金制度が導入されたため、政治献金やパーティー券購入については厳しく制限されることになった。

 政治献金の量的規制が強化され、政治資金管理団体の収支報告書で一定額以上の献金やパーティ券購入は公開されることになったため、電力会社が表立って動くと、かなり目立つことになりかねない-そんな窮屈な制度となったのだ。

 蔵田が日本経済団体連盟会長を退任したあと、小島は日本経済団体連盟から関東電力に戻り、本社の総務部総務課長に着任した。総務課長として小島は、関東電力の資材の調達先、燃料の購入先、工事の発注先、検診・集金業務の委託先等を一元管理し、政治献金する新しいシステムを考案した。

 電力会社は地域独占が認められている代わりに政府の料金規制を受けているが、その料金規制の内容は、総括原価方式といって、事業にかかる経費に一定の報酬率を乗じた額を消費者から自動的に回収できる仕組みとなっている。

 ただ、事業にかかる経費自体、電力ビジネスの実態を知らない政府によって非常に甘く査定されているし、経費を浪費したら浪費しただけ報酬が増えるため、電力会社としても、より多くの経費を使うインセンティブが内在している。そのため、結果として、電力会社から発注される資材の調達、燃料の購入、工事の発注、検診・集金業務の委託、施設の整備や清掃業務等は、世間の相場と比較して、2割程度割高になっているのだ。

 -この2割に小島は目をつけた。

 購入する金額が常に2割高であるため、取引先にとってみれば、電力会社は非常にありがたい「お得意様」となる。電力会社が取引先から「大名扱い」される謂れでもあった。

 現代の激動する経済社会のなかで、それぞれの企業がグローバルな競争にさらされてる状況の下、電力会社は、取引先にとって2割増しの単価で仕事をくれる非常においしい存在であり、多少の利幅を減らしてでも確実に維持したいお得意様であった。

 しかも、電力会社の調達先を調達分野ごとにランキングしてみると、子会社・関連会社、そして人的資本的な関係のある関係会社といった電力のファミリー企業はもちろんのこと、人的資本的関係がない会社であっても、なぜか受注の順番や比率が固定化されている。

 小島はこの超過利潤である2割のうち、1割5分を引き続き発注先の取り分とする一方、残り5分については、電力会社を頂点とする取引先の繁栄を維持するための預託金としてリザーブすることを、取引先に提案した。取引先のうち気心の知れた仲間の企業を「東栄会」という名前で組織化し、各社受注額の約4パーセント程度を東栄会に預託するのである。

 燃料購入を除いても、関東電力の外部への発注額は年間で二兆円もあるので、約800億円が、形式的には受注会社が東栄会に預託したカネ、実質的には関東電力が自由に使えるカネ、となる。

 それ以外に、燃料購入でも、商社を通じてカネがプールされた。産油国の王家への接待や政治工作のための裏金が、スイスやケイマン諸島の銀行口座にプールされていった。

 東栄会の会員企業には、「衆議院議員水野幸彦君を励ます会パーティ券10枚の領収書」、あるいは「筑紫女子大学への寄付講座」といった領収書が送りつけられてくることになる。

 すなわち、小島の管理下の総務課に置かれた東栄会のパソコンから、エクセルで割り振った配分結果が記された指摘メールを自動配信するだけで、各社においてカネが機械的に処理されるのだ。各社ごとに見れば、政治資金規正法による収支報告書への記載下限額未満であるから、名前は一切、表に出ることはない。

 そして、東栄会の会長職は関東電力の総務部長が勤めているが、これは職務としてではなく、個人として任意団体の代表を務めているという建て前である。カネの流れとしても、会員企業から東栄会への金銭の預託であるので、外形上、法律上は、東栄会の会長の薦めに従って、会員企業が自らの判断で、パーティ券なり、大学の講座に寄付をしているに過ぎない、ということになる。

 法律上はまったく違法性がない、表には関東電力の名前がまったく出ない、それでいて政治献金の相手方に関東電力への恩義を感じさせることができる・・・これが、このスキームの優れた点であった。それに加え、関東電力の代わりに会員企業との商取引をかませることで、表面上は合法的な取引を装いながら利益供与することもできる。

 関東電力の名誉相談役に退いていた蔵田以下、歴代の社長、会長も、この小島が生み出した集金・献金システムにゴーサインを出し、その後、関東電力の政界に対する影響力は急速に浸透することになった。

 それだけではない。小島と関東電力幹部は、日本電力連盟を通じ、地域独占をしている他の電力会社9社にも、同様に、この集金・献金システムを導入することを強く勧奨した。

 こうして、東栄会、道栄会、みちのく栄会、日本海栄会、東海栄会、近畿栄会、中国栄会、四国栄会、九州さかえ会、琉球栄会と、全国で地域独占を謳歌する10の電力会社に対応した任意団体が、たった1年以内に誕生した。

 さらに、業界全体の反映を維持するための共通の預託金として、各団体に預託されているカネのうち2割が、日本電力連盟に再預託されることになった。

 -驚くベきことに、日本電力連盟自体も、法人格を取得していない任意団体であった。

 


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