*『世界が見た福島原発災害』著者:大沼安史
「第13章 カク・ミチオ教授の警告」を複数回に分け紹介します。3回目の紹介
福島原発災害は、東電、原子力安全・保安院など政府機関、テレビ・新聞による大本営発表、御用学者の楽観論評で、真実を隠され、国民は欺かれている。事実 上の報道管制がしかれているのだ。「いま直ちに影響はない」を信じていたら、自らのいのちと子供たちのいのち、そして未来のいのちまで危険に曝されること になってしまう。
本書は、福島原発災害を伝える海外メディアを追い、政府・マスコミの情報操作を暴き、事故と被曝の全貌と真実に迫る。
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**『世界が見た福島原発災害』著書 「第13章 カク・ミチオ教授の警告」の紹介
前回の話:『世界が見た福島原発災害』第13章 カク・ミチオ教授の警告 ※2回目の紹介 <避難指示も何もなかった>
東電のあまりにお粗末な「事故対応計画」
APの「スクープ」はまた、世界各国の「対策」を紹介し、日本との比較を試みていた。
たとえば米国ー。 米政府は原発直近の10マイル(16キロ)圏の住民に詳細な非常時に備えた避難計画を毎年、供給するよう義務付けている。ニューヨーク市に近い「インディアン・ポイント原発」の場合、ヨウ化カリウムの服用法などを含む緊急時マニュアルを周辺全世帯に配布している。事故発生は電話・メール・サイレンで知らせる。
APは東電の緊急事態の内部マニュアルを入手してもいた。
82ページの「マニュアル」の中にあるのは、たったのワン・センテンス(「住民に対する義務付け」)と、その下に書かれた「4つのポイント」のみ。すなわち、「放射性物質」や「原発災害の特殊性」を知らせる「必要性」が記されているだけだ。
APの「スクープ」は、2008年の「フクシマ」の訓練(住民1800人が「参加」した、とされている)が、「冷却水が失われ放射性物質が放出された」という今回の事故とほぼ同じ「想定」で行われていたことも暴露している。
(ということはつまり、今回の事故は「想定内」だったわけだ! この点についても後述)
避難住民の証言はさらに続く。
「マイクロシーベルトなんて聞いたこともなかった」
「学校に放射線測定器は設置されていなかった」
「政府と、原発は安全だということを信じていた」
一人、こう証言した女性がいた。原発から25キロ離れたところで暮らしていた人だ。「みんなが原発というものを、ちゃんと知っていたら、もっと冷静に対応できたかも知れない」
この彼女は、学校の「歴史」の授業で、「チェルノブイリ」を学び、原発の恐ろしさを知っていたという。
しかし、彼女はあくまでも例外。周辺住民は「安全神話」を素直に受け容れていたのだ。
政府・東電としては、重大事故を想定した大規模な住民避難訓練を行うと、「安全神話」が崩れかねないと恐れていたのだろうが、十分な訓練を怠っていた責任は免れようのないものだ。
放射性ヨウ素対策のヨウ素剤も備蓄が行われていたはずだが、独自判断で手持ちのヨウ素剤を配布したいわき市を除き、避難民に行き届いた形跡はない。
さてここで年に1回だけ行われていた「ダイイチ」の防災訓練がどんなものだったか、見ておくことにしよう。
私が3月下旬段階で、ネットでアクセスを試みた双葉町役場のサイトの記事によると、昨年2010年11月25、26日の両日、「5号機」を対象に行われた「福島県原子力防災訓練」では、「外部交流電流が喪失し、さらに発電所内の非常用発電機が全て故障」した事態を想定して行われていた。
先ほどのAPのスクープ記事では、2008年に今回の事故とほぼ同じ状態を想定し訓練が行われていたとしていたが、昨年の福島県の防災訓練でも「想定」は「全電源喪失」だったわけだ。
しかし、その「全電源喪失」の防災訓練は東電に、そうした事態を引き起こす「想定内の津波」対策をとらせるものにはならなかった。つまり東電は「全電源喪失」を想定した防災訓練には参加したものの、その想定に沿った、肝心の発電所そのものの想定内の防護対策の強化の方はおろそかにしていたわけだ。
まるで自分が垂れ流す「安全神話」の毒が周り、判断力を失ったような東電のありさまだが、実際、福島第一原発の防災体制はお粗末きわまりないものだった。
ウォールストリート・ジャーナルの3月31日付スクープ記事によると、事故を起こした「ダイイチ」には、なんと「担架が1台、防護服50着」あるだけだった。
こんなお粗末な「事故対応計画」および「事故マネジメントプロトコル」を、日本政府は承認していたというからあきれてしまう。東電も東電だが、日本政府も日本政府である。
この東電の事故対策文書には、東京消防庁、自衛隊、在日米軍の装備に関する記述も一切なかった・・・。
※続き「第13章 カク・ミチオ教授の警告」は、7/22(水)22:00に投稿予定です。