にのじ@ばよりん的日常

バイオリン弾きにのじの日常生活!
仕事や遊び、色々書き込んでます。お気軽にコメントを書いて下さいね!

若さ

2011-06-29 01:24:43 | Weblog
先週のサントリー定期とオーチャード定期は三ツ橋敬子さんの指揮でベートーベンを。
颯爽としたテンポの英雄はなかなか聞いていて気分爽快だったそうです。
若さ故の爽快さとも言えますでしょうか。

その若さ、これが何とも恨めしいもの。
我々のような年齢になってしまうと30歳そこそこ、などという年齢のなんと眩しいことか。
しかし同時に危なっかしいとも思えるのが、若さの恨めしさ。

若さ故のエネルギーと、若さ故の未熟さと。
それらが合い混じった時の何とも不可思議な魅力は抗し難いものです。

三ツ橋さんの指揮にはこのエネルギーと未熟さとが混じり合い、でも我々はその若さの前にたじろぐ事も度々。
リハーサル中にさらけ出された未熟さはこれからの年月で消えて行く事を期待しつつ。
でもやりたい事が沢山あって、それを全身で表現するエネルギーには感服もするのです。

2回の本番は両日ともにチケットは完売。
演奏後のお客さんの反応ももの凄く、皆さんの期待の大きさを感じながら。
また満足の高さも感じるもの。
これからどんどん経験を積んで、人と人との関わり合い方を勉強してもらえれば。
将来が楽しみな指揮者である事に間違いないと思うのです。
でもまだまだ勉強しなきゃ。
今のままではオケは疲れ果ててしまいますから。

昨日からはTOC定期のリハーサルとなっています。
こちらも指揮はバリバリの若手、川瀬賢太郎さん。
何回かお手合わせをしていまして、さすがに慣れた感じがします。
練習そのものにも良い意味での若さがあって楽しいのです。
未熟さも消えている感じで、揉まれて育ってきた姿が見て取れます。
本番は明後日、こちらの演奏会にもたくさんのお客さんがお運びくださると嬉しいですね。
生きの良い若手の姿を少しでも多くの皆さんに見てもらいたいもの。

しかしこの二人、ソリストとして中村紘子さんや前橋汀子さんという大御所様と共演。
緊張しまくる若者と優しく見守る年長者。
そんな図式がピッタリと来る、何とも微笑ましい光景が。
和みますよ。

桁違い

2011-06-21 01:31:11 | Weblog
今日の仕事は2本だて。
まずはバルバラ・フリットリさんのリサイタルの歌合わせから。

昨日はメトロポリタン歌劇場のボエームでミミを歌っていたフリットリさん。
その疲れもあるし、なんて言葉で始まった今日の歌合わせ。
最初のうちはさすがにセーブしつつ調子を見ている感じでしたが。
曲が進むにつれエンジンも全開。
途轍も無く美しくも力強い声。
でも決して荒くなることはなく、どんな高音でも楽々と柔らかい声で歌いきってしまいます。
調子が出てくればもう彼女のワンマンショー。
歌の曲ばかり立て続けに歌いきってしまいました。
途中10分間の休憩があっただけ、見事なまでのすばらしさ。
久しぶりに味わう本物のソプラノ。
桁違いのテクニック、感情表現、声の美しさ。
圧倒的でした。

本番は明後日、名古屋の芸術文化センターで行われます。
凄い事になりそうです。
考えただけで興奮してきます。


そして2本目は週末に行われるサントリー定期・オーチャード定期の練習。
こちらは指揮者が話題の三ツ橋敬子さん。

今回はエロイカとベートーベンのピアノ協奏曲2曲というプログラム。
今日のリハーサルはエロイカのみ。

小さな体から発散されるエネルギーは半端ではありません。
全身を使って自分の目指す音楽を表現してくれます。
今日が初めてという事で興奮もしていたようにも見受けられました。
オケとの呼吸が合わなくなることも何回か。
でも練習も会を重ねれば落ち着いて指揮も出来るのではないかと思われます。
冷静さと情熱とのバランスが上手く取れればいいですね。

でも話題になるだけあってグイグイとオケを引っ張っていきます。
将来面白い指揮者になってくれそうです。

昔一日だけ三ツ橋さんの指揮で敷いたことがありました。
中央フィルの合宿でベートーベンの1番の交響曲だったかな?
その時とはもう別人ですね。
頑張って欲しいと思います。

でも東フィルとの仕事がいきなり定期というのはちょっとプレッシャーかな?
あと2回のリハーサルで良い出会いにしたいですね。

一区切り

2011-06-19 00:57:18 | Weblog
今日は新国「蝶々夫人」の千秋楽。
コジが5回、蝶々夫人が5回と続いた新国のピットの仕事もこれで終了です。

蝶々夫人、とにかく指揮者のアベルさんに尽きます。
我々が一番演奏しやすい流れを作って行く。
自然な流れに沿って演奏していくだけで良いのです。
後は音楽が本来持っているドラマが自然に出てくる。
しかし毎回同じ事をやっている訳ではありません。
その日、その瞬間に応じた変化を付けてくる。
これだけ楽しく、ストレスを感じること無しに演奏できるのも珍しい事。
ぜひまた指揮台に立って欲しいものだと、切に希望します。

今日は最終日と言う事もありましたが、ちょっと落ちついたテンポでドラマのスケールを際立たせていました。
このままずっとプッチーニの音楽に身を浸していたかった。
終わりが来る事が残念で残念で。

さて今日で一区切り。
明日からはステージの仕事の連続となります。
まずはメトロポリタン歌劇場のミミでも好評だったバルバラ・フリットリさんの演奏会。
それから二つの定期と続いていきます。
フリットリさんの演奏会とサントリー・オーチャード定期の指揮者はどちらも女性。
これからの1週間、女性指揮者とのお仕事となります。
定期は三ッ橋敬子さん、イタリアでのコンクールで一躍時の人となった指揮者ですね。
ベートーベンプロという重たい物をやりますがどんな指揮ぶりを見せてくれるのか楽しみです。


三人のマエストロ

2011-06-14 01:15:21 | Weblog
今日はオペラシティのリサイタルホールでテレビ番組の収録でした。
NHKで放映中の「Deep People」という番組の録画。
今回の企画は指揮者について。

3人の指揮者にそれぞれ同じ曲の同じ場所を振ってもらい、それぞれがどう違うのかを確かめるのです。
また演奏の合間には3人でそれぞれの演奏を語り合い、また音楽について思いの丈を述べるというもの。

今回の3人は、炎のコバケンこと小林研一郎さん、広上淳一さん、下野竜也さんの3人。
ベートーベンの第九を素材にそれぞれが東フィルを振り自分を主張しました。
やはりというか、この3人に中で自分を一番主張するのはコバケンさん。
もう見事としか言いようのないコバケンワールドに周り中を引きずり込みます。
とにかく見ていただければコバケンワールドの構築方法が解ります。

放送は8月1日。
楽しみです。

今日の収録はリハーサルなど一切無し。
指揮者はいきなり指揮台に上がって我々を指揮するのです。
一発勝負ですがそれでも個性はきちんと出てくるのです。
何も言わなくても下野さんと広上さんの音が違います。
コバケンさんは更にその上を行きます。
表現欲と言うか自己顕示欲と言うのか。
とにかくその持てるエネルギーを全て使って自分の理想とする音を追求していきます。
ぜひ放送をみて実感して頂きたいものです。

それと3人のお話がもの凄く面白いです。
あれだけの時間喋り続けていたのですが、放送ではそのうちの何割が出るんでしょうね。
2時間番組にならないかな。

入魂の

2011-06-07 23:31:41 | Weblog
昨日は新国立劇場で「蝶々さん」の本番初日でした。
コジ・ファン・トゥッテも公演中ですが昨日からは交互に公演が行われています。

指揮者はイヴ・アデルさん、カナダ出身のイケメンであります。
ですがそのイケメンぶりは姿だけではなく指揮ぶりにも遺憾なく発揮されていて実に清々しい。
また才能が憎い程あるのです、外見も内面も揃っている希有な存在でしょうか。

そんな指揮者の振るオペラですから悪くなりようが無い。
それどころか昨日は久々に蝶々さんで感動させられてしまった次第。
オケが持てる力を全て出し切りました。
今まで積み重ねてきたこのオペラに対する財産を惜しげもなく出し尽くしたのです。
この指揮者のやりたい事が全て解り合えた、そんな気持ちにもなった演奏でした。

近年、椿姫の演奏頻度が下がった代わりに、この蝶々さんの演奏頻度は急上昇。
でも演奏会数が増えてもなかなかこれぞ!という公演には出会えません。
今回の公演は一回一回がとても大事に思えます。
こんな指揮者に出会えた事がまず第一の収穫です。
あと4回、心を込めて。

何年ぶり?

2011-06-05 00:06:43 | Weblog
昨日は文京シビックセンター大ホールでコンサート。
でも出演した訳ではなくお客さんとして。

私の母校、明治学院大学のオーケストラの定期演奏会だったのです。
学校を卒業してから何年かは定期にも出て合宿にもお邪魔してと活動していましたが。
東フィルが忙しさを増してからというもの、現役のオーケストラの方には全く顔を出すことも無くなってしまいました。
かろうじてOBオケの方には出られる限り出演してきましたが、何故か現役オケは足が遠のくばかり。

昨日はちょうど休日だったこともあり実に久しぶりに定期演奏会を聞くことが出来ました。
指揮者の汐澤先生も総監督となられたトレーナーの岩熊先生も昔のまま。
実に懐かしい雰囲気の演奏会でありました。

学生たちは入れ替わり、人数もぐんと増えて技術的にも我々の頃とは雲泥の差が。
でもそこに流れている雰囲気と空気は変わっていない。
これが伝統という物なんでしょう。

終わってからはOBオケで一緒のメンバーとお酒などを飲みながら。
これといって中身のある話をする訳でもなく。
でも楽しく時間を過ごしてきました。

学生時代の先輩後輩は掛け替えのない大切なもの。
改めてその事を実感した夜でした。

耳に入る

2011-06-02 01:33:21 | Weblog
どうしても仕事柄、何をしていても音楽が流れてくるとそちらに耳が吸い寄せられるのです。
歯医者さんでも流れてくるBGMのピアノの音を拾ってしまうし。
弦楽四重奏でも聞こえてきたらもう大変。
全神経がそちらに集中してしまいます。

今日も買い物に行ったお店で流れるバロック音楽に聞き耳を。
バッハの無伴奏バイオリンの為のソナタとパルティータという、バイオリン弾きにとっては避けて通る事の出来ない、でもみんな大好きな超名曲がありますが。
今日のお店ではこの曲をピアノで弾いているバージョンやギターで弾いているバージョンも流れてまして。
これが調も違うしテンポも違う。
その楽器ならではの音楽に変貌しているわけでして、面白いなと思ったり変だぞと思ってみたり。
特にピアノで流れてきたパルティータ第1番。
バイオリンで演奏しようとするとひたすら続く重音に苦労するのですが。
ピアノだといとも簡単に全部の音がビシっと鳴る訳でして。
しかもバイオリンでは一度に4つの音までしか鳴らせませんが。
ピアノならば同じ和声の音ならばもっと音域を拡げることも出来るし音を増やすことも出来るわけで。
なんとも羨ましいものだとも思ってしまうのです。

まあそんな訳ですから、ドラマや映画を見ていても耳は台詞を通り越して音楽に吸い寄せられもするのです。
その場面にピッタリの音楽が流れてくれば感動も3倍4倍となるし。
聞こえてくる音楽がショボければどんなに良いシーンでも興ざめに。

先日テレビでハチ公の物語のハリウッド版をやってまして。
物語は泣かせるものでしたがどうにも音楽がいけません。
どんなシーンにも同じ音楽がずっと流れているのです。
ちょっと残念でしたねえ。

今日はあるテレビドラマを見ていて驚く音楽の使い方に出会いました。
借金の取り立て屋に返済を迫られた男性が自殺をして、それを取り立て屋が見つけるシーンでしたが。
流れてきた音楽のあまりの場違いさに驚くと共に感心もさせられました。
聞こえてきたのは昔懐かしいチンドン屋さんの調子の良い音楽。
しかしサックスとクラリネットが演奏しているのはワーグナーのワルキューレの騎行!
自殺を見て落ち込みながら歩く取り立て屋のまわりをチンドン屋がワルキューレを景気良くドンドンと演奏しながら行進していくのです。
凄いシーンでした。
どうやったらこのシーンにチンドン屋を登場させ、さらにワルキューレの騎行を演奏させるなんて考えつくんだろうか。
考えついた人物に会ってみたいものだと本当に思った次第。
世の中にはとんでもない事を考える人も居るものです。

さて明日はコジの2日目。
初日独特の緊張感も解けて歌手たちももっと走り回ってくれる事でしょう。