2017年6月28日(水)…から持ち越し
社会人になった次男と一杯やる機会があった。ワインなどは二人ともよく分からないので、店のハウスワインをピッチャーで頼もうとしたところ、若いウェイター君が「あの…」と口を出した。
「ウチの場合、グラスワインは縁まで一杯に注ぐので、グラスでお代わりされた方がトクだと思います。」
「君、親切じゃん、商売っ気ないね」
「アルバイトですから」
ホントなのかこれがマニュアルなのか分からないが、愛想笑いのない若者の自然さに魅かれ、注文ついでに話が弾んだ。大学でスペイン語を学んでいるが、入学早々アフリカの方が楽しくなり、アルバイトで金を貯めてはケニアだのウガンダだの旅しているのだという。旅が好き、アフリカが好き、「でも生活の安定を求める気もちもあります。家庭を持ちたい、つまり結婚はしたいんです。」
「それは、アフリカの人と、ってこと?」
「いえ、その部分は日本の中で」
「どなたか決まった人が?」
「いえ、それはまだ」
そこまで訊くかと次男が苦笑しているが、むしろここまで語るKD君の仕事(?)ぶりが僕には面白い。もちろん隠す権利も、ホラ吹く自由も彼はもっていて、そんなことは百も承知で言葉を選んでいるのに違いない。
スペイン語といえば、
「ガルシア・マルケスなんか読むの?」
「あ、『百年の孤独』ですね、途中まで…」
「あれすごいよね、あと『予告された殺人の記録』っての」
「あ、マルケス自身が『いちばんよく書けた』って言った作品ですか?面白いですか?読んでみます」
語り口こそゆっくりまったりしているが、書きとめてみれば発語に無駄がなく、けっして的をそらすこともないのである。いわゆる地頭(じあたま)はかなり良いのに違いない。こんな若者がアルバイトとスペイン語とアフリカの旅を経めぐる姿を見ると、ちょっと嬉しくなる。
マルケスの作品情報と引き換えに、ケニアで出会った元気な邦人の名前をいくつか教わった。公文和子女史に知らせてあげよう。彼女も嘗て地頭のよい、とびきり元気な若者だった。今は地頭のよい、とびきり元気な壮年として活躍中である。(今は出先なので、後日シロアムのリンクを張る。)
ところで…
Ω