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姉妹殺し/ベルナール・ミニエ

2024年03月18日 | もう一冊読んでみた
姉妹殺し 2024.3.18

ベルナール・ミニエの作品を二冊続けて読みました。

  『
  『姉妹殺し

いずれもフランス本国でベストセラーに入るだけあって面白い。
二作とも後半で意外な展開が待っている。大変、驚かされた。

フランスで人気のセルヴァズ警部シリーズ。
主人公のセルヴァズ警部とは、どのような人物なのか。

直感力に優れ、文学に通じている。人柄はいいが、何かとふさぎ気味で、不器用なうえ反抗的だ。そして、無謀でもある。

父親の我が子に寄せる限りない愛情と生きることへの激励。それについて考えさせられた。

父の死後三十年近くがたって、マルタン・セルヴァズのもとに、父からの手紙が届く。

 マルタン
 私が旅立ってどれくらいたってから、おまえはこの手紙を読んでいるのだろう。
 時とともに、おまえがこの手紙を読んでも苦しくなくなるように願うばかりだ。


 おまえがこの手紙を開けたということは、あの家は売られたのだろう。これで、この世でおまえを私に縛りっけていた最後のものもなくなった。別れの挨拶ができるときが来た。
 マルタン、私はおまえを愛している。私はいっも、おまえの強さに感心していた。私もおまえくらい強くなりたかった。だが、現実には、私はおまえほど強くなかった。マルタン、おまえは葦だ。折れない葦だ。おまえは衝撃をたわんで受けとめることができる。私はといえば、雷に打たれたナラの古木だ。ずっと前に死んだ木だ。私は、おまえの母さんが死んだときに、一緒に死んだ木だった。


 もし今、おまえに妻や子どもがいて、私の話をするのなら、おまえがまだほんの子どもだった頃の私を思い出して話してほしい。父親という名にふさわしい一人の父親だったときのことを……。マルタン、一緒に遊んだときのことを覚えているか? 私たちは岩の上で大きな砂のお城をつくったり、夏の夜には、物語を朗読したりした。私はおまえのために、のっぽのジョン・シルバーやジム・ホーキンズの登場する『宝島』、『トムーソーヤーの冒険』や『八十日間世界一周』を集めたものだ。息子よ、あの頃の私は誰よりも幸せな父親だった。

 もっと前におまえにこんな話ができなかったことを、申しわけなく思う。必要なときに、私は勇気も言葉も見つけられなかった。私にはあまり勇気がなかった。マルタン、少なくとも、おまえと同じほどには。
 私は天国には行かない。これだけは確かだ。そもそも、天国などより、地上で生きる人生のほうが、はるかに素晴らしいものだ。おまえには詩人になって、人生がどれほど華麗なものかを見つけてほしい。柔らかな葉が風にそよぎ、さわやかな空気が顔をなで、太陽がおまえの体を温める。これほど美しくて、貴重なものがあるだろうか。夏に遊ぶ広大な海、誰かと感動を分かちあうこと、キスの味、優美な言葉、文学、音楽。これ以上素晴らしいものがあるだろうか。いや、これ以上美しいものや素晴らしいものがあるはずがない。
それはつまり。天国は存在しないということだ。
 マルタン、この人生を力いっぱい生きるんだ。力の限り全力で、人生を味わうんだ。一つ一つの瞬間を大切に生きていってほしい。感じたことや思ったこと、何かをしたこと、そのすべてを合わせたものが、人生なのだから。おまえは、自分自身や自分のしたことを何も恥じなくていい。おまえは素晴らしい人間だ。


 そろそろ、さよならを言うときが来た。マルタン。お別れのときだ。息子よ、おまえがこれからも生きつづける世界----その世界でおまえの居場所を見つけてほしい。そして、できる限り幸せであってほしい。


    『 姉妹殺し/ベルナール・ミニエ/坂田雪子訳/ハーパーBOOKS 』

    『 夜/ベルナール・ミニエ/伊藤直子訳/ハーパーBOOKS 』


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