Takekida's log

千里の道も一歩から

ウイルスが明かす疲労の秘密

2024-04-06 22:41:39 | Books
 
疲労とはなにか すべてはウイルスが知っていた 近藤一博 (著) 
「お疲れさま」の国日本。“Karoshi”のままで通じてしまうほどお疲れのこの国は実は疲労研究の先端にいるとのことでその第一人者が記した疲労研究の本です。 
まず語られているのが疲労そのものと疲労感の違い。疲労というのは客観的にでも観測できる事実であるのに対し後者はあくまで感覚。ただ個人の主観で答えるやり方では正確に測定するのが簡単でなかったというのがあります。筆者は疲労というのは唾液中のHHV-6(ヘルペスウイルス)の測定によってウイルスが活性化しているか否かで定量的にあらわさられることを明らかにしています。(ただ病的疲労の場合はHHV-6が抑えられている)
 疲労は1次的な生理的疲労と1次的ではない病的疲労に分けられるのですが前者は体内で出来た炎症性サイトカインが脳に働きかけることが原因であることがわかってきています。つまりは疲れたので休めという指令が末端から上がってくるというわけです。ではなぜ体内で炎症性サイトカインが産生されるのか?筆者が明かにしたのはこのメカニズムで前述のHHV-6の活性化には細胞内組織「eIF2α」がリン酸化 することによっておこるとのこと。このリン酸化のトリガーがISRというストレス応答でストレスがかかってタンパク質の合成がうまくいかない可能性があるのでやめよという指示になっているようです。
 この生理的疲労は休養により回復するのが基本ですが運動はリン酸化したeIF2αを元に戻す酵素を生み出すとのことで効果が確かめられてます。仕事で疲れていても軽い運動は回復効果があること期待されます。
 筆者はさらに踏み込んでうつ病やコロナ後遺症などで発生するか慢性疲労にも注目しています。生理的疲労との違いは脳の炎症の有無。ウイルスが作り出す特殊なタンパク質により嗅球細胞を破壊、嗅球の細胞死より脳内の炎症を抑える働きのあるアセチルコリンの生産能力が低下した結果、過労やウイルス感染で発生した炎症性サイトカインが脳に炎症を起こし、抗炎症回路の機能不全により脳内炎症が治まらず、倦怠感や脳疲労を発生させるというものとのことで筆者の研究の中でわかってきたものです。この原因遺伝子がSITH-1というものでこれはHHV-6(ヘルペスウイルス)を介して遺伝してくるようです。
 ということでかSITH-1を無くしてしまえばよいのではという発想にたどり着きやすくなるのですがSITH‐1自体は不安の亢進というような役割もありSITH-1を取り除いてしまうと変なことになる可能性が高そうです。つまりはある程度、自身のベース(慢性疲労に対する体制の強弱)を把握しながらうまく付き合っていくしかないのかなと思いました。

序章:疲労の定義と測定方法
1章:一般的な疲労の仕組み
2章:一般的な疲労と慢性疲労症候群の違い
3章:うつ病の原因ウイルスの特定
4章:新型コロナウイルス後遺症の原因物質の特定
5章:うつ病と新型コロナウイルス後遺症の発生メカニズム
6章:人類と疲労の共存の歴史
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