『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  995

2017-03-24 08:21:18 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『はい、解りました』と答えるギアスは、連れてきていた漕ぎかたの二人に試乗感を述べるように促した。
 漕ぎかたの二人が話し始める。
 『私は、毎日、ヘルメス艇を漕いでいます。昨日、漕いだ試作艇は、重くなった艇の重さに対応して、ヘルメス艇の20の漕ぎ座に比べて4座も増えております。漕ぐ力は、ヘルメス艇とほとんど変わりません。しかし、出走する、波を割り始める、うまくは言えませんが、出走時に漕ぐ力がいるかなという感じです』
 漕ぎかたの二人が目を合わせて話した。
 『試作艇の造艇についての工作はドックス船棟梁より聞いたとおりであり、また、いま、我々が使用している船は、帆を張って航走する帆走、漕ぎかたの櫂操作で漕いで航走する漕走、その二方法による航走に関する操船する側の事情について聞いてもらった。これから、一同の試乗しての体感について話してもらいたい。これについては、私の方から一同に問いかける』
 パリヌルスが述べて、一同と目を合わせた。
 『試作艇の航走中における、タテユレ、ヨコユレについて話してもらいたい』
 オロンテスが手を上げて、起ちあがり話し始めた。
 『昨日の試走時における風波の状態において感じたことは、ヘルメス艇とは、艇体の構造、いわゆる、海面と接する船底の構造に違いが感じられた。私は毎日ヘルメス艇に乗ってキドニアを往復しているが、タテユレ、ヨコユレが少々小さくなっていると感じられる。また、海上における横方向にスベルといった感じも抑えられて走行安定性が向上していると感じられる。操船担当のギアス、漕ぎかたの感じた試乗感はどうであったかを聞きたい』
 『オロンテス隊長の言う通り、彼もそうであるが、ギアス艇長、漕ぎかたの連中は、他の出席者たちに比べて、海上で過ごしている時間の長さが我々とは格段に違う。ギアス艇長、漕ぎかたの試乗感を述べてくれ』
 ギアスが立ちあがる、話し始める。
 『私の役務上、海上で過ごす時間は、オロンテス隊長、パリヌルス隊長の言われる通り、出席されている一同に比べて長い時間を海上で過ごしています。パリヌルス隊長の問いかけについて話します。試作艇は、艇の構造、それによる艇の重さの違いによってヘルメス艇に比べて、航走の安定性が向上していることは間違いないといえます。艇体の深さも深くなり、喫水もそれに準じて深くなっています。浮力に対する艇の重心も深いところにあるのではないかと感じられます。艇の構造が海上に浮かぶ浮体物としての安定した構造条件となっていると感じられます。ヘルメス艇に比べて安心した操船ができると感じています』
 ギアスは、このように述べて一息をつき場を見渡した。


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