『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 990

　アエネアスらの声がオキテスの耳に届く、彼ら三人が試作艇の浮かぶ至近の浜に姿を見せる、オキテスとドックスが三人の傍らに立って声をかけた。
　『統領、戦闘艇の試作艇が出来上がりました』
　『お～お、出来あがったな。いい出来栄えだ。新艇に比べて、艇の長さが長いな』
　『そうです。櫂座を片舷１２座設けています。両舷合わせて２４座です』
　『ほう、そうか』
　『新艇と比べれば、衝角構造としている関係で、艇の総重量が少々重くなっています』
　アエネアスをはじめ一同は波打ち際まで降りて海上に浮かんでいる試作艇を見つめた。
　『統領、今日、ギアスの帰りを待って、これから試乗をしようとと考えています』
　『そうか、解った。乗せてもらう。軍団長、そういうことだ』
　『了解しました』
　『パリッ！何を考えている？』
　『はいっ！ドックスが試作艇の建造によく考えてくれていると感じ入っています』
　彼らが試作艇に見入っている前をヘルメスが通過していく、オロンテスらが帰ってくる、彼らもヘルメス艇の上から試作艇を目にしている、キドニアから帰った一行が浜を小走りに駆けてくる、波打ち際に横列して試作艇に見入った。
　オロンテスが口を開く。
　『お～お、出来あがりましたな。カッコヨク出来ていますね。均整がとれている、申し分ない船に出来上がっています』
　オキテスがギアスに声をかける。
　『おう、ギアス、ご苦労。これから試乗をやる。漕ぎかた２４名、操舵２名だ。メンバーをそろえて乗艇準備をしてくれ』
　『解りました』
　『軍団長、準備出来次第、試作艇の試乗をやります』
　『解った』
　オキテスは、パリヌルス、オロンテスにも声をかけた。
　間をおくことなく、ギアスがオキテスに準備完了を伝える。
　オキテスが統領に声をかける。
　『統領、準備が整いました。乗艇してください』
　『おう！』と答えて、海中を歩いて試作艇に乗る、続いて一同も艇上の人となる、ギアスは要領よく漕ぎかたの一同を櫂座に就かせる、オキテスが艇上を見渡し、乗艇者たちと目を合わせる、関係者一同の乗艇を確かめた。
　オキテスがギアスからの報告を受ける。
　『オキテス隊長、漕ぎかた一同、櫂座に就きました。操舵担当も位置についています』
　『おう、そうか』
　オキテスがドックスに声をかける。
　『ドックス、艇上の人員のことだが、もう４人ほど乗艇させてくれ』
　ドックスが急いで作業者４人を連れてきて試作艇に乗せる。
　オキテスが試作艇上を見廻して状況を確認した。