『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  65

2019-07-13 07:24:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスとイリオネス、二人は地図についての話を続ける。
 『統領の言われること、充分に理解できます。さもあろうと察しられます。あの日あの時、イデーの山の頂上から見た風景と言いますか、あの様子、状態から見て、高所から眺めたクレタ島の情景がありありと目に浮かびます』
 (この物語を書いていて『地図』と言う言葉を使って書いていますが、果たしてこの時代に『地図』なる言葉が存在したかどうかについては定かではありません)
 『しかしだなイリオネス、これを見てみろ!草木の皮をはいで重ね合わせてつくったペラペラのものだが、こんなものがあるのだな。年月が経っている、書かれた海岸線が所々消えかかているしぼけてもいる』
 『私は、このペラペラのものを目にするのは初めてではありません。トロイで目にしたことがあります。エジプトあたりのものと耳にしています』
 『ほっほう、そうか』と言って、アエネアスはしげしげと2枚のクレタ島の地図を見つめる。
 アエネアスは、地図を見て思案する、図上模擬実験航海が地図があることでやれる、ペロポンネソスの西海岸線が途絶えたことで、その先の海岸線と陸地の状態が全くつかめないでいる。
 『なあ~、イリオネス、その地図を何とかして手に入れたいと考えている。何かいい方途がないか?考えてみてくれ』
 『解りました。そのような地図を手に入れる!考えてみます。オロンテスにもはかってみます』
 二人は話し終える。
 イリオネスは、アエネアスの告げた案件について考える。
 『統領、やってはみますが、いい結果を期待できないかもですな』
 イリオネスは、出来なかったときはと、その案件の対処を課題として頭の隅に残すことにする。
 地図に関しての話し合いが終わる。

 文明的な発想で人類初めての世界地図なるものが描くというよりつくられたという方が言葉が当てはまる。アエネアスがクレタ島にいる時代を下って、約300年後、紀元前600年代になって、古代バビロニアで作成された粘土板に描かれたいや、彫り込まれた世界地図なるものである。現代に生きる我々が見ても理解に苦しむシロモノである。その時代に生きた彼らの想像した世界が偲ばれる世界地図なのである。
 クレタ島の古代地図は、先駆的文明のエジプト文明か、クレタ文明か、その時代のクレタ島の領主か、国王か、それを必要とした者であるかは全く不明である。
 ただ言えることは、それがつくられた時代の文明の所産であるということである。現存はしていない、言い伝えられているだけである。

 正確性のあやふやな地図、地図ののあるなしが、アエネアスがクレタ島から長途の建国の地の探索に5年有余の年月にわたって、地中海をさまよわせる。
 また、男と女の絡みが為すべきことを迷わせる。たけだけしい自然の力にも身をすくませる、それらに事変、争い事が絡む、多難であった。
 航海の先を見通す地図がない、それが目標遂行の手順、段取りをも狂わせるとは、アエネアスは、この時、まだ気がついてはいなかった。