◆富士学校祭2008の写真から
日曜日に行われる富士学校祭の紹介を本日から掲載してゆこうと思います。富士学校は、陸上自衛隊の装備する戦車、各種装甲車や火砲を一度に見ることのできる注目の行事です。 富士学校、といえば自衛隊の普通科部隊や機甲科部隊、特科部隊の戦術研究や運用研究、幹部の養成や専門教育を行う自衛隊の学校です。学校ですから開校祭をやるのですが、全国津々浦々の学祭どれと比べても火力と機動打撃力では富士駐屯地の富士学校よりも上に出る学校はありません。
富士学校は普通科、機甲科、特科を統合した学校です。諸外国では歩兵学校、戦車学校、砲兵学校と分かれているのですが、日本ではなぜ一つにまとめたのか、そもそも普通科、機甲科、特科というのは自衛隊の中でどういう位置づけか、ということをみてゆくと富士学校の意義がよくわかってきます。
普通科、というのは旧軍の歩兵にあたるのですけれども、戦争というものは基本的に土地の収奪が根底にあるのですから小銃や機関銃を手に敵部隊と交戦して日本の国土から引き吊りだして、我が国土に迫る脅威には地面にかじりついて頑強に抵抗して対戦車火器や迫撃砲で押し留めるのが普通科です。
一方で、機甲科は戦車を中心として機動力と防御力と火力を併せ持ち敵戦車を撃破し、立て直す間も与えずに後続する随伴部隊に直接火力をぶつけて、機動力と防御力を駆使して火力下での戦闘を継続します。また情報を収集する偵察部隊も機甲科職種に属する部隊となっています。
特科は、綿密な地域観測を瞬時に行い敵が占領する拠点や移動する補給車両、場合によっては敵戦車にたいしても攻撃を加え行動を阻むとともに、我が方の部隊に対して同様の敵対行動をとろうとする敵砲兵にたいし位置を把握し即時にその先頭力の無力化を図る対砲兵戦を展開します。
これらの戦闘は協力下で行われてこそ有機的に機能するものであり、普通科だけでは打撃力が不足で戦闘の最後の決着をつけるのは普通科ですが能力には限界があります、機甲科だけでは強力な打撃力と装甲突破能力を発揮するのですが陣地占領が出来ず、特科だけでは火力戦闘以外の戦闘が出来ません。
つまり、現代の戦闘は普通科、機甲科、特科が協同して展開されるものなのですから、専門教育や戦術研究は一つの研究機関において行うことが望ましい、ということで陸上自衛隊の戦闘部隊の機関として挙げられる三つの職種学校が富士駐屯地の富士学校に統合されたわけとのことです。
こうして、上記目的を達成するために富士学校には様々な装備がそろえられています。富士学校は研究した戦術を実際に運用して、もしくは入校した幹部自衛官が実際に指揮運用を行うために実動部隊をもっていて、最新装備が少なくとも中隊規模で一定の数配備されているのです。
実動部隊としては、普通科教導連隊、戦車教導隊、偵察教導隊、特科教導隊が主な部隊としてあげられるのですけれども、主要装備として、軽快な機動力と少数部隊の集合分散を迅速化させた陸自自慢の軽装甲機動車、高い加速力と大きな収容力に小回りを併せ持たせた高機動車等広く配備されている装備。
一個小銃班に装甲防御力と高い路上速度による戦略移動能力を兼ね備えた96式装輪装甲車、強力な35㍉機関砲と射程4kmの対戦車ミサイルにより乗車する一個小銃班を強力に援護して装軌式による突破能力と戦車に準じる高い防御力と高度な夜戦能力を普通科に付与した89式装甲戦闘車というような普通科部隊装備として北海道以外では中々見る事の出来ない車両。
世界初の光ファイバー誘導方式を実現させた上陸阻止精密誘導火力の新鋭96式多目的誘導弾システム、上陸用舟艇から戦車まで大型弾頭で破壊する79式対舟艇対戦車誘導弾、射程が13kmにまで達する前線直接掩護火力の主柱120mm重迫撃砲RT等が普通科教導連隊に配備されています。
機甲科装備では、避弾経始を重視した装甲に守られ油圧サスペンションによる姿勢制御と弾道コンピュータや測距装置により精密な射撃を行う事が出来る第二世代の74式戦車、この戦車を元に現代戦闘のカギというべき夜間戦闘能力を飛躍的に向上させたものの試作に終わった74式戦車改。
複合装甲と120㍉滑腔砲と1500馬力エンジンを50㌧の車両に上手くまとめ自動装填装置と自動追尾装置により高度な火力と戦闘能力を盛り込んだ90式戦車が戦車教導隊に配備されています。また偵察教導隊には87式偵察警戒車や斥候車両、地上レーダー装置等も配備されています。
52口径の長砲身155㍉砲を最大限機能させる自動装填装置と特科情報システム端末を搭載した99式自走榴弾砲、半自動装填装置や自走能力など今なお高い戦闘能力を維持するFH70榴弾砲、上陸部隊を遠距離から同時に面制圧して無力化するMLRS,内陸から超低空で遥か沖合の洋上目標を日本上陸前に撃滅する88式地対艦誘導弾。
50kmをプログラミングして飛行し目標情報を得る遠隔観測ヘリコプター、同時多数の砲弾を空中で捕捉して敵砲兵部隊の位置を瞬時に通知する対砲レーダー装置、加えて砲弾の飛翔を左右する気象データを特科部隊に通知し精密射撃を担う気象観測装置が特科教導隊に配備されています。
このほか教育支援施設隊が施設作業車や92式地雷源処理車、91式戦車橋等を装備していて、陸上自衛隊のかなりの装備を一度にみることができるわけです。普通科や特科の装備で富士学校に配備されていないのは、96式自走迫撃砲、73式装甲車、75式自走榴弾砲くらいでしょうか。
68式ロケットや75式自走多連装ロケット等の退役装備は展示保存地区に並べられています。 ここまで多くの装備がみられるとなりますと最新鋭の07式機動施設橋や03式中距離地対空誘導弾、AH-64D戦闘ヘリコプターも見たくなるのですが、こちらは勝田駐屯地の施設学校、下志津駐屯地の高射学校、明野駐屯地の航空学校に装備されていますので、こちらの行事の方へどうぞ。
それならば航空機は0ですか!?、と思われるかもしれないのですが滝ヶ原駐屯地に航空学校が教育支援のための富士飛行班を派遣してくれていますので、富士学校祭ではヘリコプターも参加します。まあ、現代戦にはヘリコプターも重要な位置を占めていますから、当然と言えば当然なのでしょうが、ね。
このように各種装備を見る事の出来る富士学校祭ですが、最も注目されている今年の目玉は、10式戦車が展示されるのか、という事でしょうか。これは何とも言えないのですが、富士学校祭のポスターをみてみますと、写真ではありませんが期待させるようなシルエットが描かれています。
HARUNA
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
富士教導団は昔から首都防衛の戦略予備、といわれていて、有事の際には中隊規模で師団に配置させ、強化に充てるようです。駒門の第1機甲教育隊も多数の戦車を運用していますので、いざとなれば頼りになります。
しかし、教導団を教導旅団として投入するのは難しいようです。理由は簡単で、輸送や後方支援部隊が、そもそも東富士演習場よりも遠くに移動することを考えていない編成ですので、戦略機動や後方支援拠点の構築能力に限界がある訳です。朝霞の輸送学校等を有事の際には統合運用する教導集団を編成しては、と思うのですけれどもね。
松島でF-2Bを運用する21飛行隊、新田原の飛行教導隊として知られる第23飛行隊、有事の際には戦略予備として一応考えられていると思います。T-2時代から松島基地の第4航空団は防空に充てられる計画だった、と言われていますから、ね。
今年の富士学校祭で10式戦車が展示されるか?
について、Jウイング誌今月号のイベント案内頁で
は 「試作車展示予定」 となっております。
「予定」というのが曲者ですが、いやがおうにも
期待が高まります。
まずはおしらせを。 ではまた。
言う記事を見たことがありました。
10式ですが、ううむ、なるほど予定、と出ていましたか。装備品展示だけに出るのか、観閲行進に参加するのか・・・。
しかし、ポスターには、最新装備が!、と書かれている訳で。最新装備と言えば、96式装輪装甲車2型と10式戦車でしょう!、と。
その昔は第1戦車大隊が61式だけだった頃に、第1機甲教育隊の74式戦車を中央観閲式の時だけ管理換えをして第1戦車大隊の戦車として参加させた、ということもあったのだとか。首都圏は実はかなりの戦車が控えています。
航空雑誌の記事ですが、そんな事を言う方がいたのですか・・・、教導隊や練習飛行隊まで充当するなんて、末期状態としか・・・。
10式戦車ですが最初の配備は、富士学校の戦車教導隊、続いて駒門の第1機甲教育隊、同時期に土浦の武器学校、というところでしょうか・・・。隊本部付で戦教と1機教に同時配備というのも考えられるのですが。
・・・、当方近場の今津駐屯地(3戦・10戦)に配備されるのはいつになる事やら・・・。