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護衛艦FRAM近代化改修と艦隊維持【03】護衛艦たかつき型能力向上とミサイル戦時代の到来

2016-11-26 20:50:57 | 先端軍事テクノロジー
■将来戦対応がFRAMの主眼
 しらね型護衛艦、はるな型護衛艦、建造当時の想定以上の長期運用へFRAMか延命改修を受け運用継続した護衛艦は多々ありますが、海上自衛隊におけるFRAMの始まりをみてみましょう。

 たかつき型護衛艦、一番艦たかつき、は1967年に就役した護衛艦で、ヘリコプター搭載護衛艦ひえい、等を建造しました石川島播磨重工業東京第2工場にて建造されました、社名は代わりましたが、ヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが、いせ、いずも、かが、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦建造を一手に担います、世界的に見ても経験豊富な造船所です。

 海上自衛隊最大の任務は有事におけるシーレーン防衛で、対潜戦闘を創隊以来最重要視してきましたが、たかつき型護衛艦はその象徴というもので、対潜兵装は、無人ヘリコプターDASHを搭載しソナーがとらえた遠距離の潜水艦への短魚雷投射能力を持ち、更にアスロック対潜ロケットを装備し水平線近くまでの敵潜水艦攻撃能力も付与という三段構え。

 満載排水量4300t、たかつき型護衛艦は探知能力も高く、AN/SQS-23ソナーは当時最新のアメリカ製低周波ソナーで捜索と解析や攻撃へマルチモードソナー機能を保持するものといい、ジェーン年鑑によれば最大37km以遠の潜水艦を探知する能力を持ち、加えて海水変温層の下に隠れる潜水艦へは、曳航式のAN/SQS-35可変深度ソナーを装備していました。

 しかし、護衛艦の障害は長く、第二次防衛力整備計画の時代には艦対艦ミサイルが護衛艦の標準的な対水上装備となる見通しは無く、当時搭載されていました5インチ単装砲の長大な射程で充分と考えられていた訳です、実際、初期の対艦ミサイル、イスラエル製ガブリエル対艦ミサイル等は哨戒艇へ5インチ砲の火力を装備させるための代替手段でした。

 これがミサイル時代という変革を受け、護衛艦のシーレーン防衛実施海域へもその脅威が及ぶようになり、護衛艦にもミサイルを搭載するとともに、相手が発射するミサイルへの迎撃能力の必要性が高くなったためです。対艦ミサイルの脅威はソ連のカーラ級巡洋艦、クレスタ級巡洋艦等がありましたが、アメリカ海軍との戦闘用という認識であったもよう。

 クリヴァクⅡ型ミサイル駆逐艦の大量建造、海上自衛隊が汎用護衛艦への全般的な対艦ミサイル及びその防御手段を必要とした転換点はこの一例であったといわれています。元々ソ連ミサイル巡洋艦はアメリカ海軍空母機動部隊への対抗が主眼であった為、海上自衛隊との戦闘において虎の子巡洋艦隊を消耗する事は避けるという想定が一転したかたちです。

 ソ連巡洋艦のミサイル攻撃を想定する場合、海上自衛隊も虎の子であるミサイル護衛艦あまつかぜ、を投入する事で防空体制を暫定的に確保する構想でしたが、ミサイル駆逐艦の大量建造と共に、ソ連軍が重視した沿岸部でのミサイル艇の延長運用ではなく、外洋を航行する汎用駆逐艦への対艦ミサイル搭載となれば、護衛艦隊正面に展開する可能性が高い。

 対空レーダーは護衛艦からの運用では見通し線30kmとなり、たかつき型は従来、小型飛行目標であるミサイルへは艦砲防御線8kmの防御能力のみ、ここで、短SAM防御線を18kmとして確保し、内側にCIWS防御線2kmを構築、クリヴァクⅡ型ミサイル駆逐艦の駆逐隊に対し、護衛隊一個で対応できる防空能力を確保する事が望ましい、としてFRAM計画が立てられた訳です。

北大路機関:はるな くらま
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