■直接ではなく間接的に寄与する戦闘集団の本質
災害派遣を考えると73式装甲車や89式装甲戦闘車のような装甲車両部隊を広範に配備維持する異議はあるのかな、という一視点。
装軌式装甲車は今回の東日本大震災をみていますと、原発での事案に対する出動や、完全に瓦礫に覆われた地域での不整地突破能力などを考えた場合、もっとも73式装甲車は北部方面隊に集中配備されているという実情を差し引いて考える必要もあるのですが、たとえば普通科連隊の一個中隊でも装甲車中隊、施設部隊の一部に装甲車があれば、それなりの能力は発揮できたのだろう、とはあの種の車両の性能を知っている人ならばだれでも考えるはず、そういう状況でした。
しかし、今回の災害派遣のように、10万規模の部隊が集中するとロジスティック、後方支援分野での能力不足が顕著になるわけでして。10万規模の部隊を維持して活動させる基盤だけでも、そもそも海外派遣を大規模に行うことも考えていない陸上自衛隊では相当な苦労があったのではないか、ともおもったりします。海上自衛隊や航空自衛隊は業務トラックからボンネットトラックまで出動させているので、さらに大変なのですけれども。
これを転じて考えてみましょう。96式装輪装甲車について、こちらのコメントで、あれはほとんど戦車並に手間がかかるので、普通科部隊にはちょっと手厳しい装備、という声がありました。また、73式大型トラック、最近は3t半とよんでいるようですが、馴染みある呼称の24名乗りトラックと4名乗りの軽装甲機動車は燃費が同じなので、一個小隊移動させるために必要な燃料が全然違ってくる、という話もコメントでお寄せいただきました。
そんな話を踏まえて全国の部隊に装甲車をできるだけ配備してはどうか、なんというと、話聞いていましたか?と書かれてはしまいそうなのですが、視点を変えてみましょう。とにかく装軌式装甲車は長距離を自走すると道路に深刻な損害を与えてしまうので輸送車の支援が必要になります、そして多い整備支援、加えてものすごい燃費。災害派遣に装甲車部隊を集めるとすれば、ものすごい負担になるでしょう、移動から整備まで、ね。
ところが、装甲車部隊が必要とする整備支援能力と燃料備蓄能力を全国に配置していた場合、大災害の際には装甲車部隊も装甲車を置いてトラックで全国から参集した、と考えましょう、トラックが多数集まっても、受け入れる部隊の整備能力が装甲車部隊への整備を念頭にした余裕のあるものであれば、整備支援能力を十分発揮できるのでは無いでしょうか。
そして燃料備蓄も、予算が認められれば、という大前提になるのですが、平時の必要定数であっても、73式や89式といった装甲車14両を支援できる規模であれば、全国からどれだけのトラックを支援できる能力になるか、換算してみると、意外な結果になるかもしれません。
もっとも、全部の師団の普通科連隊に、というと無理は生じるでしょう、機械化部隊はある程度の規模がなければ十分な能力が発揮できません、各普通科連隊の対戦車中隊や第五中隊を装甲化、というのでは非効率になるのならば、師団に一個普通科連隊を装甲化して、ほかの部隊は軽装甲機動車や高機動車で、という方式でも問題はないのでしょうが、それでも管区ごとに大規模な整備支援能力があるかないかでは大きく違ってきます。
また、装軌式装甲車は輸送に専用の車両が必要になっている、とは書きましたが、これら輸送する車両にしても災害時のコンテナ化された物量や施設車両などの輸送、そして各種補給品の輸送に転用すれば、それだけ多くの物資を被災地へ運ぶことができます、なぜなら、輸送能力が必要になり、その必要なものを置き換えただけなのですから。
先にも記載しましたが、今回は自衛隊の輸送能力の限界を超えた任務となっています、業務トラックからボンネットトラックまで動員される災害派遣というのは、自衛隊の自動車化が進展した今日ではあまり聞きません、装甲車とその維持や移動に必要な装備品をそろえることで防衛力を通じた抑止力を高めるとともに災害への対処能力を充実させる、そういう意味からも検討してほしいのが装軌式装甲車の充実。
自衛隊は災害派遣専門の組織ではありません、自活能力と自己完結能力、そして任務遂行能力の高さ、戦闘集団としての能力が災害派遣に転用されているのですから、平時から必要以上のロジスティックス能力を付与させる、というのは本線から逸脱してしまいます。しかし、必要水準の必要性、言い換えれば必然性の水位を上げてみれば、結果的に災害派遣に寄与することとなるように考えます。
HARUNA
(本ブログに掲載された本文および写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
1980年代に一度は構想されたのも束の間、
1990年代劈頭の高額装備導入に押し流され
た命題に今こそ真摯に取り組むべきことと痛感
併せて従前の徒歩部隊を基準とした支援体系
の組み替えも推進すべきことと思われ
80年代は、装輪式装甲車広範装備案が、そもそも日本では不整地突破能力が必要と棚上げになり、冷戦後は小型装輪装甲車により一応装甲化は進んだものの、これでは戦車に充分随伴出来ないという難題を突き付けられている現状。
ただ、考えれば、一応軽装甲機動車を大量に配備した事で曲がりなりにも肥大化した装備体系は、今回の地震の限界を超えている支援を、限界の水準を多少押し上げることにはなっていたのかな、とも考えたりしました。
なぜそんな状態で、配備したんですかね?
またなぜ改善されないのですかね。
なぜそんな状態で、配備したんですかね?
またなぜ改善されないのですかね。
96ですが、八輪式なので懸架装置や駆動系が四輪駆動に対して複雑になっているのが原因で、エンジン出力が大きい分エンジンも大型ですし、変速機も面倒になっています。
単純な話、四輪駆動にすれば整備はトラック並になるのですが、その分不整地突破能力が低くなってしまいます。
戦車と協同作業を行う場合、八輪でも限界があるのですが、四輪では簡単に泥濘等に車輪を取られてしまいますから、戦車に追随できなくなります。
それならば装軌式装甲車の方が良いのでは、と思われるかもしれませんが、路上機動能力では輸送車が必要な装軌式装甲車と比べて大きな差が出てきますし、整備に手間はかかるのですが整備の頻度が路上走行時で大きな差が出てくる訳です。