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新イージス艦(8200t型ミサイル護衛艦)建造費、防衛省来年度予算概算要求へ盛り込み

2015-08-19 23:37:34 | 防衛・安全保障
■イージス艦8隻体制完成とNIFC-CA統合防空システム
 防衛省の来年度予算概算要求へイージス艦建造費一隻が盛り込まれる方向で調整中とのこと。

 8200t型ミサイル護衛艦の二番艦にあたり、はたかぜ型ミサイル護衛艦しまかぜ後継となります。これにより海上自衛隊のミサイル護衛艦8隻はイージスシステム搭載艦に統一される事となり、ターターシステム搭載艦は、1965年に就役した初のミサイル護衛艦あまつかぜ以来の艦隊防空任務をイージス艦へ譲る事となります。

 新しいイージス艦ですが、今年度の平成27年度予算に8200t型護衛艦1隻の建造費とともにもうい1式のイージスシステム等取得費が盛り込まれており、このイージスシステムを搭載する護衛艦として船体とイージスシステムを除く兵装システム等が来年度予算に盛り込まれる事は事実上決定していましたが、こちらが具体化したかたち。

 海上自衛隊は、1993年就役の、こんごう型ミサイル護衛艦よりイージスシステムの導入を開始し、7200t型として4隻が就役、続いて7700t型としてミサイル護衛艦あたご型2隻が就役し、ターターシステム艦はたかぜ型2隻と8隻のミサイル護衛艦が護衛艦隊の艦隊防空を担っています、8200t型では、イージスシステムは最新型となり、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦最新仕様と同型のベースライン9が採用され、レーダー部分もSPY-1DMk7が搭載されます、米海軍の海軍統合火器管制防空システムNIFC-CAと統合防空ミサイル防衛能力IAMDへの協同が可能となります。

 NIFC-CAは、航空自衛隊が導入する新早期警戒機E-2Dにも目玉装備となるもので、艦隊のリモートセンサーとして早期警戒機や、またデータを連接する事で戦闘機との接合も可能となります。NIFC-CAは米海兵隊が米海軍との協同作戦にも用いられ、艦隊防空能力を陸上に展開した戦闘部隊の防空掩護に応用する共同交戦能力にも応用されるため、艦隊間の防空能力を高めるだけではなく、米海軍や米海兵隊との共同運用、将来的には航空自衛隊の防空システムへの海上自衛隊艦艇の参入を可能性として含みます。

 言い換えれば航空自衛隊の防空をイージス艦が参画する可能性も示し、導入されるであろうスタンダードミサイルSM-6/RIM-174ERAMとの連接性も示します、これは対航空機用に現在運用されているSM-2の後継となり射程は、SM-2の100kmから実に370kmに達し、水平線を越えての防空任務が可能となりましょう。

 統合防空ミサイル防衛能力IAMD能力付与が併せて行われ、アメリカ海軍の弾道ミサイル防衛システムと海上自衛隊イージス艦の協同がより迅速に且つ広範に展開可能となります。これは日米のイージス艦センサーの統合運用に関する可能性が大きく開けます。元来、イージス艦は艦隊防空にあって水平線上に展開する敵索敵機や哨戒機を長射程のSM-2スタンダードミサイルにより迎撃し、情報優位を相手に取らせない能力が求められました。

 加えて多数の対艦ミサイルによる飽和攻撃に対し、同時多数の迎撃能力を行使し艦隊防空に当たる事が求められました。旧ソ連の超音速爆撃機バックファイア60機がイージス艦2隻により護衛される護衛隊群8隻を攻撃した場合でも第一撃で20%の損害に抑える事が出来るという当時の研究があり、大きな防空能力が期待されてきました。

 一方、現在審議が参議院にて進む安全保障法制における集団的自衛権行使に関する核心部分は、弾道ミサイル防衛での日米共同の強化が視野に含まれており、NIFC-CAへの連接能力を視野に、技術に対応した能力構築へ法整備を進めているといえるやもしれません。自衛隊のイージス艦は勿論、多くの装備はネットワークに加入することで共同交戦能力を行使します、これを欠く運用はあたかもインターネットに接続しないパソコンのようなものですから。

 こんごう型の就役から今年で22年、そろそろ延命改修を視野に含めねばならない時期となり、こうした時期にイージス艦8隻体制が完成するわけですが、こんごう型のミサイル防衛能力付与に続き、あたご型へのミサイル防衛能力付与と近代化改修が行われます、8隻体制完成は、長い期間を要しましたが、ようやくその完成が見えてきたといえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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外洋公海専任群 (動画恒久的価値)
2015-08-20 01:06:14
私の提案したいところは定数微増による冷戦期のような50艦以上の護衛艦体制が構築される事となった事で、基本とされるDDG8艦体制に機動的防衛力整備の海上基幹部隊とする為に、ターターシステム搭載のはたかぜ型に近代化延命改修を行った上で、出雲級2隻+多目的艦(最低タラワ級以上の能力を付加改修)1隻というフレキシブルな艦隊構築案であります。

要は、タラワ級最終艦ペリリュー号が最近退役し、モスボールされているとの話が前提とする案で、この最新型(タラワ級強襲揚陸艦の中ではという意味)をこちらの費用持ちで、我が国のドックまで回航してくれば、その大きな船体から記事の中で、ご指摘のNIFC-CAを搭載する形でのオーバーホール作業+不必要なアナログ機器の現代標準のデジタル機器との入れ替え作業、再命名式(候補は単艦「ほうしょう」級など)と再進水式を執り行い、新たに外洋や公海警備専任群を構築するとの提案となります。

もちろん艦隊防空任務は高性能艦が務めるべきなのは言うべきもなく、前述のはたかぜ型改修2隻に、これも偉大な決定である潜水艦定数増によって生まれる余剰艦を近代化改修(魚雷発射型ハープーンなど)の上で艦隊の基幹部分を構成する事とします。個人的にはSM2最新ブロックの搭載次期改あたご型もこの艦隊に充てたい所でありますが、それは各部署との連携を強化するという目標に沿った形で参謀本部担当者に決めて頂く事とし、とりあえずは4艦隊+ジブチ→アラビア海・インド洋→マラッカ海峡→南シナ海・バタン海峡もしくはビシー海峡(中華民国が中華人民共和国により危機に陥ったと認められる場合には、90年代の台湾関係法に基づく米海軍同様に、同盟国として膨湖諸島や台湾海峡への外交的措置による展開も想定すべき)→東シナ海の巡行コースにて、日本の国益を護るための外洋型の常時遊撃艦隊とします。旧式艦が多いのは百も承知ですが、ここは自称:中華海上カジノ(遼寧号)元ヴァリャーグ型空母の例も参考にする事とし、中共海軍がしきりにプロバガンダに使用しているこの艦をモデルにし、まずはこの2代目ほうしょう型遊撃艦隊が持つ国民への士気発揚効果を重要視したい次第。

続いては、形から入ったこの艦隊の内面的な充実による実質的国防力強化に向け、必要であれば次期DEX新鋭艦も艦隊対潜警戒艦として導入するなど、徐々に内実の質的向上を目指すものであります。そもそもインドやロシア海軍などがよく使う手ではありますが、多国間演習において、豊富な知見を持つ一部将校以外は、その艦隊そのものの威容を感じ取り、結果的にそれが他国の外交方針に影響を与える(特に日本のようにまともな軍事知識を持たない代議員が多くを占める、議院内閣制の民主主義国家に多く見られる国家的行動です)冷戦時代における例が多数見受けられますので、形の身であっても、徐々に構成艦を入れ換えるまでの間仮想敵国や仮想的中立国を牽制する事が可能である遊撃艦隊を常時行動させる事は、各種国境を超えた動画投稿サイトなどであらゆる国籍の個人がプロパガンダ的活動を行い、視聴した動画から革命すら起きうる現代社会においては、これらの艦隊による広告効果とそれに伴う副次的効果による国家的利得は、理論を超えた諸国民や諸外国上院議員(大多数の民主主義国家では日本国と同様素人同然の軍事知識しか持たない場合が多い事を国際的現実として認識すべき)の感情面に訴えかける効果が、大きいものと考察致す次第。これらは予算であれば数十億円程あれば、かなりのクオリティを誇るプロパガンダ動画が外注できるほど、世界中のクリエーターが持つ動画処理能力は向上しております、もちろんはるな様のような専門的な文体ももちろん研究者などからは非常に貴重な考察材料として、歓迎されている事は百も承知ですが、やはり深く考察する程の知識的素地を持つ事無く、日々の生活に追われる一般大衆に(国籍問わず投票権や国際的世論を構成する重要要素です)対しては、その費用対効果から考えると地味で目立たないにも関わらず、多大なる中長期的な心理的効果を発揮する物と確信しております。中華民国(中華人民共和国ではなく民主主義体制である国諸国家、つまり軽く3億人を超える人口を持つ東南アジア諸国の民衆と接する機会があれば皆感じますが、彼らは想像以上に動画投稿サイトの投稿作品の印象によって諸外国への印象を変更しうる状態にあります。これを有効に活かさない手はありませんし、実際に各国ともテレビ放送の時代は終わりつつあり、ほとんどインターネット上での情報戦が主体となりつつあります、この波に取り残されない為には、あえて極論を申しますと、「専門企業に外注する動画作成に対して最低50億円程の年間予算策定と軍事的知識を持たない大衆でも理解しやすい全通甲板艦船とワンセットとなった艦隊行動映像」があれば、事実として中共海軍遼寧号が果たしているように、職業軍人たる海軍への応募者増加も見込める上に、相乗効果として「その艦の本来の軍事的能力以上の見えない外交的影響力を世界中の諸国民に発揮させる」が大いに期待できます。質的向上はいくら文字としても大半の民主主義国家国民(個人的な経験から欧米諸国民も含みます)は「あの動画のカッコいい艦隊と何が変わったの?まぁとりあえずあの動画では、あっちの国のほうが好感持ってるよ」ぐらいの感想しか持ちえないという絶対的事実が有ります。これは個人的な趣味選択が自由になり、多様化した現代社会において、はっきりとした効果にならずとも現在世界中で巻き起こっている「日本国観光ブーム」は間違いなく、このようなサブカルチャーと言わ白眼視されてきた日本のマンガやアニメといった動画文化(訪日客のほとんどはこの程度の動機で日本国に来ております、なぜか放送がされていない地域でも暗黙の了解で動画サイトにおいて、各国語訳付きのアニメなどを視聴していると推測される)によって日本に好感を持っているのであります、また日本国内のマスコミが伝える内容とかけ離れた国際認識として、まず私たちが頭に置かなければいけないのは世界中の国に「良い影響を与えている」という国際アンケートにおいて、カナダや北欧の国々と並んで、毎年日本国がトップ3に入っている「一部の正気ではない国以外の世界中ほとんどから好感を持たれ、親近感を持ってして応援されている」という現実を認識しなければなりません。第二次世界大戦後の自虐史観の感覚を持った人間には理解できないでしょうが、21世紀の日本及び日本文化は、それらとタイアップして国家的宣伝キャンペーン動画を作成した暁には、間違いなく国際的好感度トップクラスの国家である現状をさらに向上させる事ができ、冷静かつ戦略的な思考で考察すれば、イタリアのローマ空爆を連合国がかなり躊躇したように、自国人を含めた大量の外国人観光客が常時存在する国を弾道弾などの大量破壊兵器をもって攻撃する事は、事実上全世界に宣戦布告すると同様の行動であるとみなされ、スマートフォンや無料WIFIなどが普及した現代社会において、冷戦時代のような情報封鎖は実質的に不可能であり、国際法違反と思われる行動に出た国家は、日本国で直接または間接的にそれらの不法な行動を見た各外国人個人の「各動画サイト経由での自由な情報発信を行う」行動により、世界中から非難され、即座に有志連合諸国によって国家解体、断罪の憂き目に遭う事でしょう。つまりどの国を指しているかは明示しなくとも、これら観光立国を目指し、その急速な実現によって、経済的恩恵のみならず直接的先制攻撃に対する強力な抑止力として彼ら外国人観光客(日本への攻撃を企図する可能性のある仮性敵国国籍者も含みます)が機能しているという現実を正しく認識しなければなりません。これらの施策は真に正しい方向であり、中長期的国防力向上にも観光業全体としての、収支の黒字化(約半世紀ぶりの出来事)が予算編成の面で大きく寄与する事は明白であり、LCCをはじめとしたオープンスカイ関連事業は、まさに一石二鳥ならぬ一石三鳥の国家国防政策であるともいえるのです。これら「説明が要らず見栄えのする」艦隊の構築や宣伝動画作成はこれからの国際世論を左右しかねない大きな潮流となるのは確実だと存じます。逆に戦後の世界史の流れを冷戦終結まで考えますと、インターネットが存在しなかった時代に絶大な西側諸国の応援団として機能していたのはいわずもがなアメリカ・ハリウッド映画界であります。それは実際のアメリカ軍の戦力以上の全世界住民への基盤的価値観の構築をもたらし、「西側=全体主義への大義を持つ」というレーガン大統領期の「ソ連は悪の帝国発言」や、最終的に冷戦を日米含む西側勝利に導いた「スターウォーズ構想」に代表されます、費用対効果の面から、冷戦の西側陣営勝利による終結という事象に莫大な貢献をした事はあまり注目されません。現在の動画サイトはかつてのハリウッド映画によるプロパガンダよりも、コストを掛けずにその何倍もの全世界へのプロパガンダ効果を有する物だと評価します。何気ない動画宣伝が言葉の通じぬ異国の民衆には、最高の広報活動となる事を軽んじてはいけません。国際的情報戦の本番はこれからだと思われます。だからこそ国防予算によって補助するべきです。尋常ではない費用対効果です。
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Unknown (アリアンロッド)
2015-08-20 13:23:29
長すぎるコメントは要点を欠き、興味を持たせられないし読む人は稀であろう
基本的に榛名氏のご意見も個人的なモノであり、そのご意見に賛同若しくは疑問を呈するなら正当であるが、自身の主張を声高に述べたいのであればご自身でサイトを開設すればよろしいかと思う
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