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本当に「リニア」は必要なのだろうか?

2020-06-27 17:57:40 | 徒然

JR東海が行っている「リニア新幹線」の工事。
現在、東海地区の新聞各社の紙面をにぎわしているのは、「JR東海VS静岡県」という問題だ。
日経新聞:リニア、27年開業延期の公算 JR東海と静岡県合意できず

静岡県側としては「工事により大井川の水源が失われる」ということを懸念し、その問題解決ができなければ、工事の着工は認められない、というのが主張だ。
一方、JR東海側は「工事を進める」の一点張り(のように思える)。
ただ、メディアなどの報道を見る限りでは、静岡県側に分が悪いような印象がある。

今世間では「JR東海VS静岡県」ということばかりに注目しているが、実は静岡県よりももっと大きな問題が、「リニア新幹線工事」にはある。
それは、工事をしている所で多数起きている「土砂崩れ」だ。
Googleなどで「リニア工事 土砂崩れ」と、検索すると2017年ごろから「トンネル工事による土砂崩れ」の記事を複数見つけることができる。
「リニア新幹線」のルートが南アルプスを横断するようになっている為、どうしてもトンネルだらけになってしまうのだ。
確かに、高速で移動するためには地上よりも空気抵抗の少ないトンネルのほうが、良いのかもしれないが(素人考えなので、間違っていたら指摘をしていただきたい)、そのトンネル工事の各所で、土砂崩れや地盤沈下のようなことが起きているのだ。
日経XTECH:リニア新幹線の南アルプスルートは安全か

このような指摘は2009年ごろには、既にされているのにJR東海側はルートの再検討も行わず、「リニアありき」で工事を進めてきた感がある。
過去のJRの工事の進め方を見ると、「静岡県が悪い」というよりも、地盤調査や環境アセスメントなどを、十分にJR東海側はしてきたのだろうか?という、疑問が起きてくる。
静岡県が指摘している「大井川の問題」も決して小さな問題ではないが、単発的に報じられる「工事に伴う土砂崩れ」の問題のほうが、「工事そのものの根幹にかかわる問題」のように思えるからだ。
このような問題には、JR東海側はほとんど触れてはいないような印象を持っている。

それだけではなく、実はリニアそのものが、とても電力を使う交通システムである、という指摘がある。
新電力比較サイト:リニア中央新幹線の消費電力
現在運行している新幹線の約4倍の消費電力を必要としている、というのである。
その電力は、どこから供給されるのか?
そのことに関してJR東海からの明快な回答は出ていない、という記憶がある。
開業する前なので、実際のところは分からないにしても、運行するうえで現在の新幹線の4倍の電力を使って運航する意味とは、何だろうか?
リニアの最大のメリットは、「東京⇔名古屋間を45分で結ぶ」という、速さだけ(といっては失礼だが)なのだ。

他にも、東京を中心に感染拡大が収まっていない「新型コロナウイルス」によって、生活者の価値観は大きく変りつつある。
仕事にしても「出張をする必要があるのか?テレワークやリモートワークで済むのでは?」という考えも広がりつつあり、積極的にテレワークやリモートワークへと勤務形態を変更する、企業も登場してきている。
とすれば、リニアによる「ビジネス利用」は、計画当初の見込みよりも随分低い利用となるだろう。
言い換えれば、それほど「新型コロナウイルス」の感染拡大は、社会に与える影響が大きいと、言えるかもしれない。

「観光の移動手段」としてのリニア、という考えもあると思う。
何より、元々は現在の新幹線に対する補完的交通手段として、リニア中央新幹線が考えられたという背景もある。
だが、ほとんどトンネルの中を移動するリニアでは「観光気分」を味わうことは、難しいだろう。
現在の新幹線に対する補完的交通手段という考えであれば、現在の中央線のルートを活用するという方法もあるのでは?

JR東海の「リニアありき」という発想は、昭和の発想のような気がしている。
そして「国が関わる大規模プロジェクトであれば、地方自治体や住民は言うことを聞くべきだ」という、驕りのような考えが見え隠れしているような気がする。