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基礎研究から応用、そして実用化。大学が投資ファンドを始める理由

2020-06-23 13:25:27 | ビジネス

日経新聞をチェックしていたら、興味深い記事があった。
日経新聞:新型コロナを不活性化 人に無害な紫外線「光明」を照らす

この記事の元となっているのは、神戸大学とウシオ電機が共同で研究を進めていた基礎研究によるもののようだ。
神戸大学:皮膚がんなどの発症なし 222nm紫外線(UVーC )繰り返し照射の安全性を世界で初めて実証

「紫外線」と聞くと、「皮膚がんや白内障を引き起こす光線」ということを、思い浮かべる方は多いだろう。
その一方で、一定量の紫外線を浴びないと、体内でつくられる「ビタミンD」が欠乏して、「くる病」と呼ばれる骨の病気になる、ということも言われている。
「くる病」については、ヴィクトル・ユーゴ―作の「ノートルダム・ド・パリ」に登場する、醜い「せむし男」といえば、どのような病気なのかイメージできると思う。
そのため、日本よりも日照時間の短い北欧などで見らえる病気というのが、一般的な認識だと思う(高校生の頃?そのように習った気がする)。
最近では、日本でも過剰なUVケアによって、「くる病」になるケースも見られるという。
たまひよ:赤ちゃんのUVケアのしすぎでビタミンD欠乏性くる病になる!?

とはいっても、多くの人がイメージしている「紫外線=悪いもの」であるコトには、変わりないと思う。
その「紫外線」が、「新型コロナ対策」になるということに、疑心暗鬼になってしまうのは当然かもしれない。
実際には「紫外線」の中には、様々な波長のものがあり、その中の一つが「人に無害で、ウイルスや菌を不活性化させる」という効果がある波長が分かった、ということのようだ。

ここまでの研究は「基礎研究」といわれる範疇で、これから先「応用研究」を経て「実用化」となるのだが、この「基礎研究→応用研究→実用化」のスピードによって、この基礎研究が大いに社会に貢献できるのか?ということが、決まってくる。
それだけではない。
「基礎→応用→実用化」の過程で、特許を取得することができれば、基礎研究をした大学や企業にも「特許料」が支払われることになる。
今のような経済状況の中では、研究費用を調達すること自体大変厳しいであろう、というのは想像できるし、大学の特許収入は米国とでは随分違う。
日経新聞:大学の特許収入、米は日本の22倍 進まぬ産学連携

潤沢な特許収入が得られれば、日本の大学はまた新たな基礎研究に再投資し、取り組むことができるのにもかかわらず、それができていない、という現状があるのだ。
そして、問題解決の為と思われる動きが、既に一部の大学で起きている。
大学が自ら投資ファンドを立ち上げ、産学協同の連携を強め、ベンチャー企業を支援するという動きだ。
大阪大学:大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社

大学と共同研究をした企業、特にベンチャー企業への再分配が行われることは、今後の日本の経済の発展という面だけではなく、世界的に影響を与えるイノベーションになるかもしれない。
今回の「紫外線(UV-C)によるウイルスや菌の不活性化」というシステムであれば、「新型コロナ」によって次々と中止に追い込まれているコンサートや野外フェスなどの会場に、入場ゲートとして設置することで、開催が可能になるかもしれない。
もちろん、最初に導入されるのは駅や空港など、不特定多数の人たちが集まる公共施設などへの設置、ということになるだろう。
それだけでも、今の社会を覆う「閉塞感や窮屈感」から解放されるのではないだろうか?
「新型コロナウイルス」に限らず、人とウイルスや菌による感染症はこれからも続くはずだ。
とすれば、その中で「安心」を提供するという意味は、とても大きいはずだ。

大学での研究のほうが、自由裁量があり「イノベーションを生む基礎研究」がし易い環境にあるだろう。
その資金調達という点で、大学投資ファンドがサポートするようになるのが、当たり前となる日は近いのかもしれない。