浅田彰氏「逃走論」

2022-02-13 13:00:54 | 日々思うこと

 

小さい春。

先日新聞で浅田彰氏の名前を見た。

浅田彰・・・遠い遠い昔の記憶の中にある。

でも最近のわたくしの頭の中からはすっぽり抜け落ちていた名前だ。 

 

若い批評家として「構造と力」、「逃走論」を世に出した。

我が家の本棚のどこかに紛れ込んでいるはずである。

コロナ禍の閉塞感の中で、現実から「逃げたい」と思うことが

あってもなかなか逃げ出せない有様を考えるという企画である。

 

世は今受験シーズンである。

「逃走論」から先日の名古屋の高校生の東大前刺傷事件を思い出した。

共通テストを受けに来た高校生と70代の会社員男性が刺された事件で

会社員への殺人未遂容疑で高校生が逮捕された。

「東大医学部を目指していたが成績が上がらず自信を無くした。

人を殺して死のうと思った」と述べているという。

「東大」「医学部」に固執してそれ以外の道への逃避は彼にとっては

考えられないことだったのだろうか。

 

彼が在学している名古屋の高校には我が家も少し関りがある。

息子は幼稚園の3年間は私立だったが小学校、中学校は地元の

子どもたちと一緒に決められた市立に通った。

高校受験が近づいてきて、我が家から近い、父親も祖父もその

兄弟たちも一族すべてが通った高校(旧制一中)を受験する

予定なのだが同級生たちは公立を受ける前に私立を受験して

おくという。

試験当日何があるか分からない。

県立高校1校しか受験しなかったわたくしも「それもそうだ」

と思って息子に聞くと「名古屋のT校を受けたい」という。

無頓着なわたくしは試験当日友人のW君と朝早く出かける息子を

見送った。

T校が何処にあるかも知らず(今回の事件で初めてネットで調べた)

校風も知らず、ただ東海地方屈指の高校であることは聞いていた。

帰宅した息子に「どうだった?」と聞いたら「大丈夫だと思う」と。

一週間ほどあとに「今日は合格発表で、もし受かっていたら入学金

を納めてくる」とW君と結果発表を見にいって「受かっていたから

納めてきた」という。

「W君はどうだった?」「補欠だったけれどやっぱり納めてきたよ」。

結局2人とも高校は異なったけれど県立高校に入ったのでこの入学金

無駄になったけれど安心料だから納得である。

入学した県立高校は比較的自由で例えば日曜日に模擬試験が行われる

息子は「代休」と言ってよく休んだ。

温泉旅行に行くとついてきて土、日、月の2泊3日の月曜日は親は有給

休暇がとれるが高校生にはないので、ホテルのロビーの公衆電話で

わたくしが「熱が出た」とか「お腹の具合が悪い」とかとずる休みの

加担して高校に連絡をしたりした。

まだスマホがなかった。部屋は2部屋とる。

卒業まじかになって月曜日の授業の単位が大丈夫かと心配したけれど

何とか卒業して幸いにも運よくかねてからの志望であった文一に

合格できた。 

 

T高校は仏教系らしく、学力も校風も極めて良いそうだ。

でも、今回の事件で(当時からそうだったかどうか知らないけれど)

とても我が子には無理だったと思う。

医学部志望者が多いことも知らなかったが、朝早くの満員電車での

通学、高校からの入学者なので中学からの生徒にはついて行かれ

なかったろうし、A、B群に学力で分けられるシステム。

どれからも落ちこぼれたに違いない。

週1回ピアノのレッスンには通っていたものの近所の子供たちが

行っていた塾にも行っていなかった。

 

浅田氏は「逃走で固執を解毒しよう」というがその中に入ったら

なかなか抜け出るのは困難かもしれない。

この高校生に「逃げ道」を誰も教えられなかったのだろうか?

刺された高校生、本人、家族、学校すべてが大きな痛手を負った。

近頃多い短絡的、衝動的な事件で大きな危惧を覚えるが、事前に

何とかならなかったのかとやり切れない思いもしている。

 

 

 

 

 

 

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