Haa - tschi  本家 『週べ』 同様 毎週水曜日 更新

納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 833 週間リポート・ロッテオリオンズ

2024年02月28日 | 1977 年 



ナニッ!肩を氷で冷やす?
「もう肩は痛みません。これまでチームに迷惑をかけましたがこれからはその分をマウンドで返していきます」とキャンプ以来の右肩痛から解放された三井投手はキッパリ言い切った。一時はキャッチボールもままならず投手というより野球そのものが出来ない状態だったがオールスター戦明けから一軍に戻って来た。キャッチボールをしただけで翌日は痛みで腕が上がらず歯磨きをするにも苦労し「開幕した頃は夜も眠れなかった」そうだ。チームは投手不足で序盤リードしていても終盤に逆転され勝てる試合を失っていく。「自分さえまともな状態だったら…」とジリジリした毎日を送っていた三井投手はある決断をした。

全力投球をした後に右肩を氷で冷やすという荒療法だ。これまでの常識で言えば肩の最大の敵は「冷え」だがその常識に真っ向から突っかかった。とはいえ、やみくもに肩を冷やすのではない。肩を冷やすことは大リーガーのトム・シーバーやノーラン・ライアン投手などによって効果が実証されている。実際にやってみるとみるみるうちに肩の痛みが消えていった。前期シーズンは棒に振ったが後期シーズンには間に合った。常々「2イニングを抑えてくれる投手がいたらもっと勝てる」と言っていたカネやんも三井投手の復帰に大喜び。「成田も帰って来たしもう大丈夫や。やっと戦力が整った」と後期シーズンの巻き返しに鼻をうごめかせるカネやんだった。


ラフィーバー、復帰断念
三井投手の明るいニュースとは反対にコーチから現役復帰を目指し調整を続けてきたラフィーバーは左ヒザ靭帯の炎症が芳しくないことで現役復帰断念を27日に正式発表した。右の代打陣不足から突如浮上したラフィーバーの現役復帰。だが細かい動きをすると痛む左ヒザ。医師の診断を仰ぎ自ら復帰断念を決めた。「現役としてプレーするため精一杯努力してきたが無理だと分かった。これからはコーチ職に専念しチームに役立っていきたい」とラフィーバー。

オレ寂しいよ
神宮球場でのオールスター第3戦が終わると有藤選手は三塁側ベンチ中央にドッカと腰を下ろし「オレ寂しいよ」とため息をついた。左肩の捻挫が完治せず満足なスイングが出来ないまま出場した今年のオールスター戦。それもこれも20万票を超えるファンの後押しに応える為だった。ところが3試合に出場するも6打数1安打に終わり寂しい結果となった。怪我とあって仕方ないが本人としては不本意でならなかったであろう。昨年は優秀選手に選ばれ賞品を手にしただけに「今年は手ぶらで帰ることになり情けない」とガックリ。
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# 832 週間リポート・日本ハムファイターズ

2024年02月21日 | 1977 年 



これがプロだ!大リーガーだ
「ファン投票で何とか1人でも出場して欲しかったんですが…」とパ・リーグNo,1の観客動員を誇る日ハムのフロント陣はオールスター戦ファン選抜ゼロにちょっぴり残念顔だったが、監督推薦で高橋直投手・高橋一投手・加藤捕手・ウイリアムス選手の4人が出場を果たした。中でも「これぞプロ」とハッスルプレーを見せたのがウイリアムス選手。西宮球場での第2戦の8回裏一死に代打で登場し左前打。門田選手(南海)の投手強襲打で二塁に進塁。続く石渡選手(近鉄)の三ゴロで併殺と思った次の瞬間、田代選手(大洋)の二塁送球が高く逸れたのと門田選手の猛スライディングで二塁手のシピン選手(大洋)が転倒してしまった。

その一瞬の隙をついてウイリアムス選手は三塁を回ってホームイン。二塁ベース上でのクロスプレーに目を奪われていたファンはホームでスライディングするウイリアムス選手の姿に「あれれ、いつの間に」と我が目を疑った。この走塁に評論家は「ウイリアムス選手にとっていつものプレーだよ。常に次の塁を狙うのが彼のプレースタイルだから」と驚かなかった。確かに今回のような好走はペナントレースでは当たり前に行われていた。全パを率いる上田監督がリー選手(ロッテ)と並ぶ本塁打を放っているミッチェル選手(日ハム)よりウイリアムス選手を監督推薦で選んだのもこのあたりを考えたからだ。

また第2戦に三番手で登板した高橋直投手の好投も大いに評価を上げた。アンダースロー投手を代表する山田投手(阪急)が先発し、全セも小林投手(巨人)がリリーフ登板するなどアンダースロー投手の競演となった。高橋直投手は3回・被安打2・無四球・奪三振4と好投した。しかも三振はセ・リーグを代表する大杉選手(ヤクルト)、シピン選手・田代選手(大洋)、柴田選手(巨人)から奪った価値あるものだ。王選手は遊ゴロ、掛布選手は投ゴロに抑えた。専門家は「ストレートの速さは山田投手が上だがコントロール、駆け引きは高橋直の方が上」という評価が多かった。


2人分の日当
「晴れの球宴出場です」といっても練習の手伝いで神宮球場での第3戦に参加した藤原捕手。その日当を受け取りながら「2人分もらわなきゃ」と苦笑い。というのも全セの練習要員だった荒川捕手(巨人)が練習開始時間に遅刻した。フリーバッティングの捕手が不在で「普通の選手じゃケガをしたら大変だし、何とか」と頼まれて全セ・全パ両方のバッティング捕手を務めること2時間。「倍も仕事したから疲れちゃったよ」分かる、分かるご苦労様でした。
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# 831 週間リポート・近鉄バファローズ

2024年02月14日 | 1977 年 



こうして決まった太田の球宴出場
夢の球宴も終わり、いささか古い話で申し訳ないが太田幸司投手にまつわる裏話をしてみよう。パ・リーグ投手部門のファン投票では村田投手(ロッテ)、山田投手(阪急)に次ぐ3位で得票数は6万1999票。普通の場合はこの順位なら監督推薦で出場は問題ない。ところが人気先行の太田投手だけに全パを率いる上田監督は太田投手の推薦には慎重だった。太田投手は過去7回ファン投票1位で出場しているが監督推薦は一度もない。そして13日の近鉄対阪急戦の後期シーズン3回戦に太田投手が先発に起用された。

メンバー表を見た上田監督は「太田君はまだ6勝しかしていないが相変わらず人気があるねぇ。ファン投票であれだけの得票を得ているのだから監督推薦で選んでも問題はないけど、判断するのは今日のピッチングを見てからにしよう」と決めた。太田投手も「監督推薦で選んでもらえたら僕の実力を認めてもらったことになる。この試合で好投すれば上田監督の印象も良くなるかも」と密かに思っていたのは想像に難くない。選ぶ人と選ばれる人の様々な思いが絡み合い太田投手は勇んでマウンドに上がった。

しかし太田投手の立ち上がりは悪かった。初回いきなり3連打を浴び1失点。ところがこの失点で肩の力が抜けて以降は立ち直った。「僕にとってはリードされて勝利投手を意識せず楽な気分で投げられた」と太田投手は2回から4安打散発の好投を見せて対阪急戦2勝目を上げた。阪急戦で勝ったのは前期シーズン5月8日以来だった。「両サイドに球を散らしたのが良かった。阪急相手にはこうした投球が通用するんですよ」とエースの鈴木啓投手でも勝てない阪急相手に2勝した太田投手は安堵の表情を見せた。

一昨年のプレーオフでは出番さえ無かった太田投手だがその成長ぶりが今シーズンの対阪急戦の成績でよく分かる。「チームにとっても自分自身にとっても大きな勝ち星です。これで上昇気流に乗れそうです」といかにも嬉しそう。確かに大きな勝利だった。オールスター戦出場につながる1勝だからだ。敗戦後に移動のバスに乗る間際に上田監督は「太田君の投球は見事だった。今日の投球内容を見て監督推薦を決めました」と兜を脱いだ。こうして太田投手にとって初めてとなる監督推薦によるオールスター戦出場が決まった。


いい薬です?チョンボ石渡
成長著しい石渡選手がオールスター戦初出場でハツラツプレーを披露するかと思われたが第3戦で大チョンボをやらかした。オールスター戦が始まる前は「僕の出番はそんなに多くないと思うので先輩のプレーを見て勉強します」と控え目だったが、意外と出番は多く大忙しだった。第1・2戦は無難に終えたが第3戦の7回、二死三塁で打者ブリーデン選手(阪神)が打った打球は高く舞い上がった遊飛。落下地点で石渡選手はゆっくり捕球態勢に入ったがポロリと落球してしまった。照明の光が目に入ったのか石渡選手は黙して語らないが、この大失態を薬にして今後に生かしてもらいたいものである。

売りモノ
好投した鈴木啓投手、チョンボの石渡選手など今年のオールスター戦で話題をまいた近鉄勢だったが、玄人筋の拍手を浴びたのがもう一人の " コーちゃん " こと島本選手だ。強肩といわれる外野手は年々少なくなっているが、元投手の島本選手が矢のような見事な返球を見せ称賛された。評論家諸氏も「あの強肩は売りモノになる」と異口同音。当の島本選手は「大した成績を残していない僕を選んでくれたファンの皆さんに何かいいところを見せたかった。肩でも足でも何でもいいのでファンの皆さんが喜んで下されば」とニンマリ。
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# 830 週間リポート・南海ホークス

2024年02月07日 | 1977 年 



真夏の夜のビアガーデン
大阪球場のグラウンドを使って真夏の夜に風変わりな催し物が行われた。選手とファンが一堂に集まってビールパーティーを開いたのである。名付けて「南海ホークス選手とファン交歓ビアナイター」である。参加したのはオールスター戦出場組以外の選手・コーチ陣。ブレイザーヘッドコーチ、穴吹二軍監督、江夏投手や藤原選手なども顔を揃えた。グラウンドの中央にビールを積んだトラックがデンと停車し、周りには串カツなどの屋台がズラリと並びビアホールそのまま。その日はちょうどオールスター戦期間中の移動日でテレビ観戦もなく、ファンの出足も早く午後6時半の開始予定を繰り上げたほどの盛況ぶりだった。

昼間には中モズの猛練習でしごかれてクタクタになっていた選手たちも大喜びでビアナイターに参加した。このユニークな " 夢の酒宴 " は昭和38年に一度開催されたことがあり15年ぶりに復活した。ホークス球友会が音頭をとり入場料1人1000円で実現した。それだけに集まった連中は鷹キチばかり。選手とグラスを傾けながら野球談議に泡を飛ばすモノ、選手に注文をつけるモノなど続出した。ビール500リットル・1600人分を用意していたが、1時間も過ぎると品切れとなる盛会ぶりだった。ファンの多くは「選手にサインはもらえたしビールもたらふく飲んだ。会費1000円は安いねぇ」と大好評だった。

もちろん選手の方でも好評だった。「時にはこういう形でファンの皆さんと語らうのもいいもんですね。普段はグラウンドとスタンドに分かれていますが、たまには同じ場所で飲みながら話をするのも新鮮な気分です」と広瀬選手。また陽気な外人勢も大歓迎だそうだ。大リーグ時代にいろいろな催しに出席した経験があるブレイザーヘッドコーチやホプキンス選手は「ベリーナイス。この企画は最高よ」と手放しで、若い女性やチビッ子ファンにサインをせがまれると快く引き受け、また次の屋台に移動するなど大忙しだった。


運び屋
パ・リーグの一員としてオールスター戦出場を果たした金城投手。かつての同僚だったカープ勢をはじめセ・リーグ各球団の打者を相手に健在ぶりを示したかったが、あいにく出番は少なかった。もっぱらベンチで声出し応援をしたり野村監督や門田選手の表彰式に立ち会って賞品や記念盾の運び役ばかりさせられた。「オールスター戦出場は賞品の運び屋をやることだったんですかねぇ。僕も一つくらい何かもらいたいけどムリかなぁ(苦笑)」と少々ひがみ気味。「まぁ来年これを励みに出直します」と気分を切り替えた。
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