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買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 683 週間リポート ロッテオリオンズ編

2021年04月14日 | 1977 年 



さらばじゃ、ご存じ長谷川一夫
「トレード話はホンマに難しいわ。もうワシはやめた」と匙を投げたカネやん。ところがその舌の根が乾かぬうちに電撃トレードを敢行した。長谷川選手(31)、倉持投手(24)を放出してクラウンから白選手(33)、安木投手(29)を獲得した。カネやんが遺恨試合の相手球団クラウンライター・中村オーナーとの直接電話で商談を成立させた事に周囲は「おぉぉ」と驚いた。昭和38年に大宮工高から入団した長谷川は「どうして僕が出されるのかさっぱり分かりません。本当にショックです」とキツネにつままれた顔つきで嘆く。

プロ入り後に打者に転向して15年目の昨季は108試合・打率.258・5本塁打・33打点といぶし銀の活躍を見せた。「確かに選手は球団の商品ですけど一言の相談もなくクラウンに行ってくれと言われてもね…」とロッテ一筋15年の長谷川だけにショックは大きい。入団当時から往年の大映映画の大スター・長谷川一夫と同姓同名の長谷川のファンは多い。それだけに本人以上にファンの失望も大きい。もう一人の倉持投手はリリーフ役に転じてから頭角を現した若手だけに放出に反対する声は多い。

一方、白は東映➡クラウン➡ロッテ、安木はヤクルト➡クラウン➡ロッテと共に過去にトレードは経験済み。カネやんによれば白は打倒阪急の切り札だそうだ。「白は昨年の阪急戦で打率.328・4本塁打・14打点と打ちまくった。ガッツもあるし守りも上手い。これで補強は万全や!」とカネやんはしてやったりの笑顔。だがクラウン側に言わせれば「倉持は伸び盛り、長谷川は熟練。ウチの方が得したよ」と坂井球団代表。果たしてどちらが得をしたのか間もなく明らかになる。



サッシーってこんなものか
鹿児島キャンプ初の休日は14日。目と鼻の先にある湯之元でキャンプをしているヤクルトの練習を見学をしに出掛けた。お目当てはもちろんヤクルトキャンプで注目を独り占めしているサッシーこと酒井投手。「ワシはロッテの監督として行くんやない。プロ野球の先輩として行くんや」とイソイソと足を運んだが威勢のよい誉め言葉はなかなか出てこない。それどころか70球ほどの投球練習を見届けると「うぅ~ん、確かに素材は良い。だが…」ときわめて歯切れが悪いカネやんだった。

「これは投手の先輩として言うんや。意味を履き違えてもらったら困る」と前置きして「身体に力がないんや。これは酒井に限った話ではなく最近の子たちに共通した話で色々な意味で高校野球のレベルが落ちていると思うわな」といつになく落胆した表情。だがそれは酒井に対する期待への裏返しでもある。日頃からカネやんは「活きの良い若手が出て来んといつまでも年寄連中が頑張っても球界は発展せんよ」と若手の台頭を願っているだけに、ついつい口調も厳しくなる。

伝えられる情報によると酒井の周りにはコーチと名の付く人間が6人いるという。それに対してもカネやんは「大人のおもちゃになったらあかんで。言われたことを全部やっていたら身体が持たん。自分に必要なものを取捨選択できる能力を身に付けんとな。投手は孤独なものなんや。過保護になってはあかん」と忠告する。百獣の王ライオンは我が子を深い谷に突き落とし厳しく育てる。さしづめ酒井は子ライオンだ。カネやんは酒井に並々ならぬ関心を寄せている。



ワシの投げる球が打てるかな
3月23日の対ヤクルトのオープン戦開始前にカネやんが余興で野球に覚えのある腕自慢のファンと対決する事となった。「ワシの球を打てるもんなら打ってみい。もしヒットを打ったら1万円を贈呈しまっせ。まぁ打てるわけないけどね」と。ロッテ名物の " 死のランニング " が始まるとカネやんもラバーコート着込んで隊列に加わり汗の絞り出しに懸命だ。とても43歳とは思えない軽いフットワークで遅れることなく走るカネやんに選手もビックリ。

「ピッチングは下半身でするもの」の持論通りランニングの効果は絶大で、いざブルペンで投球練習をすると球の伸びは大したもの。あの独特な大きなカーブも往年と変わらない。「ワンポイントならまだまだ通用するでぇ」のカネやんラッパもあながち嘘とは思えない。「お客さんに喜んでもらうにはチームとの間に壁があってはダメ。グラウンドで一緒に野球をするのが一番エエんや。プロのスピードを肌で感じて欲しいので手加減せんよ、覚悟してかかってこい!」と腕を撫す。

オープン戦開始前の僅かな時間だが400勝投手の生きた球を打つのは滅多にない機会だけに、既に多くの参加希望者が殺到しているという。あの長嶋監督がプロデビュー戦で4三振を喫したカネやんが相手で、バックにはロッテのレギュラーメンバーがズラリと守備を固めるだけに仮にヒットを打ったならば末代までの自慢話になるのは間違いない。今回の企画が好評を博したならシーズン中の主催ゲームでも同様の対決を催す案も検討されている。

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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
>サッシーってこんなものか (内之倉世代)
2021-04-15 12:27:18
毎週、更新ありがとうございます。
かねやんの酒井投手への評価。
見事に当たっていますね。
今も昔も、プロ入り前の評価通りにいかない選手は多いですが、一目見て、将来が予言できる、かねやん。
さすがの眼力です!

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